「ストレスを感じると胃が痛む」「ストレスが溜まると胃痛がひどくなる」「胃痛自体がストレスになっている」などストレスに関係する胃の痛みで悩まされることがあります。
お薬などでの治療で良くなることは理想的ですが、ストレス性独自の難しさがある場合があります。
「ストレス性の胃の痛み」に対しての理解とカウンセリングの有用性についてここでは説明していきたいと思います。
もくじ
胃が痛いとは?
胃が痛い(英語:stomachache)とは、みぞおちからおへそにかけての部位が痛む時に一般的に用いられる言葉です。
痛みの種類としては、
・シクシクと鈍く胃が痛む
・キリキリと鋭く胃が痛む
・ズキズキと脈打つように胃が痛む
・キューっとさしこむような胃の痛み
などがあります。
胃が痛い状態には、「胃酸タイプ」「胃痙攣(いけいれん)タイプ」「胃腸機能低下タイプ」に大別できます。
胃酸タイプ
胃酸が過剰に分泌され、胃粘膜を守る胃粘液とのバランスが崩れ、荒れて炎症が起きている状態です。
空腹時にキリキリ、シクシク痛む事が特徴的です。
暴飲暴食やストレス、ピロリ菌、逆流性食道炎などによって胃酸過多が起こりやすくなります。
胃痙攣タイプ
胃の筋肉が痙攣し、キューッと差し込むような痛みが出ることが多く、吐き気や食欲不振などを伴うこともあります。
精神的緊張やストレスなどによって胃痙攣が起こりやすくなります。
胃腸機能低下が影響するタイプ
このタイプでは、胃の痛みやもたれ感はが食後に多く、胃腸の機能低下に伴い胃の不調が現れてきます。
病院で検査をしても特に物理的な異状がみつからない場合、「機能性ディスペプシア」と診断されることがあります。
身体的ストレスや心理的ストレスなどが胃腸機能を低下させてしまいます。
胃が痛くなる原因や要因
胃が痛くなる原因や要因には、以下のようなものが挙げられます。
・暴飲暴食
・脂っこい食事
・緊張
・ストレス
・ピロリ菌
・食中毒
・胃腸機能低下
・睡眠不足
・喫煙
・刺激物(アルコールやカフェイン)
・鎮痛剤などの薬剤
・不安
・自律神経の乱れ
・頑張りすぎや疲労過多
ストレス性の胃の痛み
「心因性の胃の痛み」という言葉があるほどストレスや心理的な影響と関係が深くあります。
※心因性とは、心理的な要因によって引き起こされる場合に用いられる言葉です。
それほどストレスや心の悩みや問題が深く関わっています。
ストレスを自覚している場合もあれば、医師の「原因はストレスでしょう」といった言葉で認識するようになる場合もあります。
※自覚的にストレス性だと思っても念のため医師による診断や検査を行うことを推奨します。
臨床相談の実例から、ストレスを感じてすぐに胃の痛みが出る方と少し時間をおいて胃の痛みが出る方がいるようです。
また対象の誰かと同じ空間にいると胃の痛みが出たり、対象の場所に行くと胃の痛みが出たりすることもあるようです。(行く前から胃の痛みがでることもあります)
ストレスがなくなると胃の痛みもなくなるケースもあれば、ストレスがなくなっても胃の痛みが治らないケースがあります。
前者であれば問題もないのですが、後者の場合、何が原因かわからない不安やどうすれば治るかわからないつらさを伴います。
その場合、後述する「神経可塑性(シナプス可塑性)」などによって学習が繰り返され、「癖(くせ)」になってしまっていることや過敏性、身体注目による影響の可能性があります。(詳しくはカウンセリング内で)
作用機序などまだわかっていないところが多い前提でどのようなメカニズムによって「ストレス性の胃の痛み」が起きてしまうのかを考察していきます。
自律神経失調モデル
一般的によく説明されているのがこの「自律神経失調モデル」です。
精神的ストレスによって自律神経のバランスが失調し、
・胃酸過多
・胃を守る粘液の分泌異常
・胃の筋肉や蠕動の異常
・胃や消化器機能の低下
などの異常により胃の痛みが誘発されてしまう可能性があります。
自律神経が整ってくると回復していく「胃の痛み」がこのモデルに該当すると思われます。
ストレスや囚われがなくなることによって改善しやすい傾向があります。
緊張モデル
ストレスや無意識的な力み(りきみ)などによって自分でも気づいていない緊張によって発現してくる「胃の痛み」のモデルです。
リラックスできない、安心できない、気が抜けないなどの状況で起こりやすいかもしれません。
リラックスしたり、緩めたり、ほぐしたりすることも効果がありますが、プレッシャーをいかに上手く扱い、適度な緊張にしていくことが大切です。
その場合、心理療法やカウンセリングが有効です。
感覚過敏モデル
胃の痛みをくり返し、胃の痛みに関係している神経などが過敏になってしまうことにより発現してしまうモデルです。
その背景には、トラウマや恐怖条件付けなどが関連している可能性があります。
過敏性が穏やかになり本来の鈍感性を取り戻すことにより変容するタイプの「胃の痛み」がこのモデルに該当すると思われます。
学習-神経可塑性(シナプス可塑性)モデル
神経やシナプスは、くり返し長期にわたって使用することによりその神経(シナプス)を強化したり、新たな神経を形成する可塑性(かそせい)という仕組みがあります。
胃の痛みにつながる条件付け学習などによってこのように神経の形成や強化が行われ、発現してしまうモデルです。
長期的に原因不明の「胃の痛み」に悩まされている場合、このアプローチが経験的に功を奏すことが多くありました。(エビデンスレベルは個人レベルですので低いです)
既存の学習を強化しないようにすることを基本として、消去する、新たな学習で再構築することによって改善するタイプの「胃の痛み」がこのモデルに該当すると思われます。
医学博士のマイケル・モコヴィッツは慢性痛をこのように定義しています。
慢性痛とは、「学習された痛み」である。
マイケル・モコヴィッツ
恐怖-不安-傷つきモデル
恐怖や不安が強ければ自律神経も乱れやすく、感覚を研ぎ澄まして身構える必要があるため「過敏」になりやすくなる傾向が有るように思います。
胃の痛みが怖い「胃痛恐怖」、胃の痛みがでることに不安を感じる「胃痛不安」、胃の痛みに対して強い感情が現れる場合、自律神経が乱れやすくなり、長期化してしまう傾向があります。
精神的ショックな出来事によって精神的に傷つき、恐怖や不安が出やすくなることがあります。
恐怖や不安、傷つきに対してアプローチを行い、それら感情が軽減すると改善がみられる「胃の痛み」がこのモデルに該当します。
身体化モデル
抑圧された衝動や葛藤、不安、ストレスなどが様々な身体症状となって表れる適応・防衛機制のことを「身体化」といいます。
人間には欲求が満たされない場合や心理的苦痛から自我を適応させたり、守るための働きがあります。
そのことを心理学では「適応機制」とか「防衛機制」といいます。
身体化は以下のようにさまざまな捉え方ができます。
- 抑圧された衝動や葛藤、不安、ストレスの身体化
- 相手にストレスを抱えていることを示すための身体化
- 助けて欲しいという抑圧を表現する身体化
- もう限界なのに限界と思えない自分に対しての身体化
- 休む必要があるのに休まないことによる訴えとしての身体化
などのように自分や周囲の状況によってこのような捉え方が役に立つことがあります。
認知的評価と性格的傾向モデル
「認知」とは対象を知覚した上で、それが何であるかを判断したり解釈したりする過程です。
ものごとの考え方や捉え方、信念、バイアス(偏り)などの認知によりストレスが大きく感じたり、小さく感じたりするものです。
また性格的傾向もストレスや緊張と関係が深いものです。
性格的傾向を「性格」という言葉にしていないのは、変化する性格もあれば、変化しない性格もあり、またそれには個人差もあるため境界線を引きにくい傾向があります。
ストレスによる胃の痛みには、役職や仕事・学業の責務、プレッシャーなどが関わることが多いですが、その責任感やプレッシャー、ストレスを強めてしまう認知的評価や性格的傾向も合わせてアプローチすることで精神的負担が減り、身体的な負担もそれに伴って軽くなり、胃の痛みの改善が期待できます。
またストレスを強めてしまう解釈や捉え方にもアプローチを行うことも大切です。
このような認知的評価と性格的傾向が変化したり、成長することで「胃の痛み」が軽減、改善する場合、このモデルが該当します。
個人による差異
上記のような7つのモデルが単体もしくは複雑に絡み合って発現している可能性があります。
これらは、ストレス性の胃の痛みに対するカウンセリングと心理療法を多く行ってきた経験から考察を行いました。
人それぞれ気になるところや背景などが異なっており、一概にひとくくりにできないような傾向があるように感じます。
■胃の痛みの改善には
胃の痛みを悪くするものを知り、積極的に摂らないことを行いながら疲労回復やストレス発散、ストレス耐性をつけることでベースアップすることが大切です。
「ストレス性の胃の痛み」に対するカウンセリング
病院やクリニックに通い、主治医がいらっしゃるケースではカウンセリングを行うこと、併用することを主治医に伝え、許可を得てはじめてカウンセリングを行うことができますのでご了承ください。
ストレスに関係する、連動する胃の痛みに対するカウンセリングでは、どのような胃の痛みがどれくらいの頻度や強さで発現するか、どのようにして悪化し、どのようにして改善するか、どのようなことが悪影響や好影響をあたえているかどうかを改めて理解していく必要性があります。
胃の痛みの臨床相談の経験では、精神的プレッシャーや精神的緊張、ストレスの蓄積と「胃の痛み」が関係していることが多くありました。(エビデンスのレベルは臨床経験ですので低いかもしれません)
もしそのような状況がありましたら、少しずつプレッシャーに強くなる、緊張しにくい方向へ向かっていくことがクライエントにとって有益な効果を得られることに繋がります。
そう簡単なものではないですが、地道に続けていくことで変化が見えていきます。
専門的な心理アプローチがありますので直接お聞きください。
ストレスという言葉は、幅広く捉えることができ、自分の中で何がストレスになっているか実は気づいていない場合もあったりします。
そういった点を踏まえながら、クライエントのストレスになっている事柄についてカウンセリングを行っていきます。
ストレス性の強い事柄もあれば、ストレスを強くしてしまう性格的傾向や認知的評価をしている場合もあります。
そういった特性もクライエントの意志次第で修正も成長も行うことができます。
カウンセリングは、クライエントが自分のペースで話しながらカウンセラーは受容的・共感的にお話を聞いていきます。
話すということは基本的な欲求でありながら、好きなように話せるという機会は一般的に少なく、通常は制約があります。
そのような制約の少ない、秘匿性の高い守られた場所で話していく様はなかなか経験できるものではありません。
自分の中で処理しにくい問題でもそのような場で、共感的・受容的な態度に見守られながら話していくことで気づきが生まれたり、言葉に出して初めて外に出すような経験を通してすっきりしたり、気持ちが楽になっていったりします。
出来事などのストレスだけではなく、胃の痛み自体がストレスになっていることもあり、「胃の痛み⇒ストレス⇒自律神経の乱れや緊張⇒胃の痛み」といった悪循環が起こっている場合も少なくありません。
そのためストレスだけではなく、症状自体のストレスも含めて「心的苦痛」や「つらさ」にスポットを当ててカウンセリングを行う場合もあります。
慢性化している場合はなおさら「つらい」ものです。
クライエントの状況から上記に挙げた
・自律神経
・緊張
・感覚過敏
・学習-神経可塑性(シナプス可塑性)
・恐怖-不安-傷つき
・身体化
・認知的評価と性格的傾向
に対してアプローチを行っていきます。
上記の7つのモデルを理解していくことによって、原因がわからない苦しみが癒されたり、希望が持てるようになることもあります。
少しずつ気持ちが楽になり、胃の痛みも自然に改善が進んでくるとさらに気持ちが軽くなり、自律神経にも身体にも好影響を与えます。
「なんであんなに悩まされていたんだろう」という状態へ持っていけるように一歩ずつ丁寧に進めていきます。
学習性の癖になっている場合は、「焦り」が禁物です。
「まだ治ってない」「まだ治ってない」と毎度のように刷り込んでいくようなことが起きないように気をつけなければなりません。
どのように焦りを扱うか、どのように改善していくは人によって異なることもあり、カウンセリングの中でクライエントに最適化していきます。
ストレスの耐性(抵抗力)や回復力、対処能力(コーピング能力)を向上させることにより「ストレスに強くなる」といった成長を加える事ができるのもカウンセリングならではかもしれません。
そのような自己成長につながると、カウンセリング終了後の人生において大きな心的財産をつくることに繋がります。
なによりあの胃の痛みやストレスに悩まされない毎日が過ごせますように大切にカウンセリングを行っていきます。
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記事監修
公認心理師 白石
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