病院で検査をしてもわからない「原因不明のからだの症状」は、原因がわからないために治療ができない状態であったり、わからない怖さや不安感に苛まされることも少なくありません。

原因不明のからだの症状に対して、考えられること、できること、カウンセリングと心理療法の可能性について追求していきます。

原因不明の症状


身体的な症状が発現しているにも関わらず、病院の検査を行っても検査的異常がみつからない場合に「原因不明」という言葉を一般的に用います。

近代医学の発展はめざましいものがありますが、まだまだよくわかっていない病気や症状、人体の仕組みがあります。

医師に相談を行い、様々な検査、治療、経過観察を経てもなお改善の余地がなかったり、悪化する状態であれば、当人はどうしていいかわからなくなります。

子供さんの原因不明の熱などで心配されるお母さんも多いとお聞きします。当人だけでなく保護者の方、家族も大変心配になるものです。

原因もわからずどのように治療を行えばいいかもわからないので安心感の欠如が否めません。

長期的に悩まされる原因不明の症状がある場合、精神的ダメージや心的負担も溜まっていくため精神的サポートや支援も必要になる場合も少なくありません。

原因不明の症状として

  • 原因不明の体調不良
  • 原因不明の熱、微熱、風邪
  • 原因不明の頭痛・めまい・耳鳴り
  • 原因不明の痛みやしびれ
  • 原因不明の湿疹、かゆみ、熱感、皮膚の異常
  • 原因不明の倦怠感、だるさ、違和感
  • 原因不明の冷え、のぼせ、寒熱往来
  • 原因不明の喉の詰まり、違和感、閉塞感
  • 原因不明の生理異常・不妊・流産
  • 原因不明の出血、腫れ
  • 原因不明の吐き気、嘔吐、ゲップ
  • 原因不明の便通異常
  • 原因不明の歩行困難、歩行異常
  • 原因不明の脱力、緊張、多汗、体臭、脱毛
  • 原因不明の咳
  • 原因不明の機能低下(聴力低下、視力低下など)
  • 原因不明の睡眠障害

などが訴えられる症状としてあります。

医師の診断によって

  • 自律神経失調症
  • 心身症
  • 心気症(病気不安症)
  • 身体症状症(身体表現性障害)
  • 機能性○○
  • 心因性○○
  • 過敏性○○
  • ストレス性○○
  • 更年期障害
  • 慢性疲労症候群
  • 線維筋痛症

といった病名が診断されることも少なくありません。

自律神経失調症は、該当する検査的異常がなく、自律神経系の異常があると考えられる場合に診断されることが少なくないようです。

心身症は、精神的ストレスや緊張など心理的影響が関与している場合に診断されることが多い病名です。

心気症(病気不安症)は病気にかかっているのではないかという思い込みが強い場合に診断されることがあります。

身体症状症(旧:身体表現性障害)は、6ヶ月以上の日常生活に支障をきたす身体的症状があり、その症状に不釣合いな思考、思い込み、強い不安、費やされる労力や時間がある場合に診断されます。

器質的(物質的)な病変が見つからないが身体症状がある場合、機能性○○という病名が診断されることがあります。

心理的影響が関与する場合「心因性○○」、ストレスが関係する場合「ストレス性○○」、過敏性が関与する場合の「過敏性○○」といった病名が診断されることもあります。

原因不明の症状に対する考察


身体症状における相談先の第一選択は病院やクリニックです。

医師による検査・診断・治療・経過観察を行っても改善が見られない、悪化していく場合は、より多角的な検査をしていくことが必要かもしれません。

セカンドオピニオン、総合診療医などへの相談も有用かもしれません。

そういった手順を踏んでも何も明らかにされない、改善の余地がない場合にはどうすればいいか途方に暮れます。

以前多くの原因不明の症状で困られている方々のサポート、カウンセリングと心理療法を行ってまいりました背景から少しでも参考になるように考察をしていきたいと思います。

考察①多角的な視点からみる

病院やクリニックで原因や検査の異常が見つかれば良いのですが、いくら行ってみても見つからない場合、視点を広げてみていくことも必要かもしれません。

整体学的な視点から身体の歪みや過緊張のリリースというところからアプローチしていく、東洋医学の体質改善、寒熱、五臓六腑のバランスといったところからアプローチするのも一つです。

栄養学や食物アレルギーの観点から改善を促す方法もあるでしょう。

時に軽視されるクライエントもいらっしゃいますが、生活習慣や生活環境も非常に重要であることが多いものです。

心理的アプローチでは、心理面のみのアプローチと誤解されていることもありますが、行動に関してもアプローチを行っていきます。

様々な専門家が協力しながら「原因不明の症状」で困っている方に適切な治療、介入、サポートが行われることが理想だと感じています。

詳しくは「生物-心理-社会モデル」

しかし多角的な視点でみることにデメリットもあります。

あっちの先生は「○○が原因」だと言う、こっちの先生は「○○が原因」だと言うようなことがおきることがあります。

当事者は困惑し、何を信じていいかわからなくなることもあります。

考察②抑圧と抑制

少し混同されることもありますので、心理学(精神分析)での「抑圧」と「抑制」を説明します。

受け入れがたい耐えられない経験・記憶・感情、実現不可能な願望、衝動的な欲求などから自分を防衛するために意識下へ押し込めることで忘れようとしたり、排除して消すような防衛機制において無意識的に行われるのが「抑圧」、意識的に行われるのが「抑制」といいます。

受け入れられない出来事や嫌な感情が沸いた時、受け入れがたい衝動的な想いなどから自分を守るために起きます。

抑制は、自分でも気づきやすいレベルですが、抑圧は「自分でも思ってもなかった」ということがあるぐらい無意識的です。

そういった抑圧と抑制が体に表現されて症状として発現することを心理学では「身体化」とか「転換」といいます。

抑圧と抑制により忘却されたり、排除された感情、想い、記憶、出来事、衝動、欲求などへ慎重にアプローチしていくことで改善が期待できることがあります。

考察③精神的ショックによる影響

予期しない事態などに遭遇し、強い衝撃や動揺、精神的ダメージを受ける「精神的ショック」によって「原因不明の症状」が発現することも多いかもしれません。

精神的ショックを受けやすい出来事として

  • 天災によるもの(台風、洪水、地震、竜巻、大雨、落雷)
  • 大病や度重なる病気や症状の発症
  • 事故(加害者・被害者)
  • 大きな失敗
  • 解雇・倒産・落第
  • いじめや孤立
  • 大切な人(動物)との別れ(生き別れ・死別)
  • 挫折
  • 裏切り・詐欺
  • 犯罪
  • 自己イメージの崩壊
  • 他者イメージの崩壊
  • 流産・不妊
  • 虐待
  • 子どもに関する問題
  • コロナ禍による影響

などがあります。

人前で恥をかくような出来事も繰り返し体験することで精神的ダメージが蓄積され精神的ショックを受けてしまうこともあります。(例:発表による緊張・失敗、過敏性腸症候群、会食恐怖症など)

非常に強いストレスがかかっても精神的ショックを感じない人もいれば、精神的ショックを感じる人もいますので個人差がある領域でもあります。

また本人が「精神的なショックはない」と主張していても実は無理をしていてジワジワと長期的に苦しむ場合も有り、かえってそのように捉えている方がいい場合もあります。

出来事の衝撃度、ストレスの耐性、どのように捉えるか、などの影響によって精神的ショックが変化します。

詳しくは「精神的ショックに対するカウンセリングと心理療法」へ

精神的ショックを受けた後の段階として

①絶望的になる
②希望がもてなくなる
③他人が羨ましく感じ、孤独感が強くなる
④死にたくなる
⑤動けなくなる
⑥抑うつ状態になる
⑦体に症状が出てくる
⑧感情が麻痺する

のような状態になる場合があります。

このような状態になって仕事や学業を休み、何もすることなく家にいると「なぜか変な症状が出てきた」という報告もよくお聞きします。

この時期がすぎれば、また希望を感じて立ち上がっていくことができますが、この時期は本当に絶望的に見えやすくなりますし、希望を感じにくくなるものなのです。

考察④ストレスによる起因と持続

一般的によく知られていますようにストレスによって身体的な症状が発現してしまうことがあります。

強い精神的ストレスの場合もあれば、持続的な心的負担によって発現することもあります。

ようするにストレスが起因となる症状です。(起因:原因となって起こる意味)

ストレスが弱まったり消失すれば、症状も弱まったり消失していきます。

しかしストレスがなくなっても症状が持続的に発現してしまうこともあります。

最初のきっかけはストレスですが、人体における学習機能によって条件付けが行われて症状が慢性化することがわかってきています

それは恐怖条件付け古典的条件付けとオペラント条件付けなどの学習により慢性化してしまう生理的病態があることに由来しています。

慢性化した症状に対して原因を探しても見つからない場合もあり、このような学習性に着目してアプローチを行うことによって変化が訪れる場合も少なくありません。

考察⑤条件付け学習と神経可塑性

ネズミに音を聞かせながら電気ショックを与えると翌日から音を聞いただけですくみや硬直状態といった反応を示すようになります。

本来その音には何も条件付けられていないので怖くもないですし、痛みを連想させるものでもありません。

このようにふたつ刺激を関連付けて学習し、反応するようになることを古典的条件付け(レスポンデント条件付け)といいます。

今度は音を聞かせて餌が与えられるように繰り返し行っていくきますと以前は恐怖からすくみや硬直状態として反応していましたが、少しずつその反応が変わってきます。

最終的には音を聞いただけで唾液が出るようになります。

このように新たな学習によって「消去」することができたり、学習の上書きによる「新たな反応」へと変化が起こる働きも持ちます。

神経可塑性は、神経細胞間の結合強度が刺激によって変化していく性質のことを指します。

神経も条件付け学習と同じように神経細胞間の結合が強化されたり、弱化されたりします。

以前は傷ついた神経は修復されないという常識がありましたが、修復されたり、新たに新生されることも研究で明らかになり、脳の再生能力が備わっていることがわかりました。

簡単ではありませんが、新たな学習により新たな神経結合が新生されるということがありえるのです。

慢性化した「条件付けによる症状」は、回避行動(オペラント行動)により消去が行われる行動を取れなくなり、改善する機会を失います

地道に新たな学習を繰り返していくことにより慢性化した条件付けよりも新たな条件付が優位となって反応として現れてくるようになります。

この条件付け学習はシンプルであり、奥が深く、これからその有用性が益々報告されていくものだと思います。

考察⑥不安、恐怖、焦り、治療への強烈な執着

わからない不安、恐怖から焦りや治療への強烈な執着が生まれるこの一連の心理的状態に対するアプローチを行うことにより、心的負担が減り、改善や寛解に行き着いたケースもあります。

「原因がわからない」という安心感の欠如と、どうにでも推測できることから事実以外に思い込みや不釣り合いな発想も生まれやすくなります。

本人にとっては、医師や周囲の方から理解されないことも多く孤立感と孤独感を抱えることもあり、ますます「何が原因なのか!!」と調べていく強烈な執着を生んでしまいます。

調べていくことは大切なのですが、かえって苦しんだり、治癒の妨げになってしまうこともあります。

これらへのアプローチは治療のみならず、医師による治療の補助的なサポートとしても有用なものです。

考察⑦医師への信頼感の欠如や病院・検査嫌い

過去の経験などを理由に病院や検査が嫌いであったり、医師への信頼感の欠如によってその方が本来受けるべき検査や治療が受けられなくなることがあります。

そういった方のお話を聞く機会も多く、「確かにそうなるのも仕方ないな」と思うケースもあります。

また西洋医学を否定的に捉えるスピリチュアル的な思考が強い場合や過度な自然療法に傾倒している場合も適切な検査や治療の機会が喪失してしまうことがあります。

そういった方々が適切な検査や治療を行うことができるように支援することも心理職にとって大切な職務です。

少数の方に起きる希少疾患などは、認知されていることが少ないために診断に行き当たらない場合があることをお聞きしたことがありますので念の為以下にリンクを張っておきます。

希少疾患・難病一覧|メディカルノート

カウンセリングと心理療法の可能性


原因不明の症状に対するカウンセリングと心理療法は、上述したようにさまざまなアプローチを可能とします。

クライエントの心的負担、精神的ダメージ、ストレスの軽減・除去だけではなく、慢性化しやすい条件付け学習を理解し、消去、再学習(再構築)を行うことも有効な手段として用いることができます。

また西洋医学への連携、治療との併用や補助サポート、単体での治療などさまざまな形として提供することができるものです。

慢性的に原因不明の症状に悩まされている方の多くは理解されづらく、孤独にひとりで戦っていたりします。

そういった方々のサポートと適切な治療や支援がなされるように切に願っております。

※病院やクリニックに通い、主治医がいらっしゃるケースではカウンセリングを行うこと、併用することを主治医に伝え、許可を得てはじめてカウンセリングを行うことができますのでご了承ください。

記事監修
公認心理師 白石

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