人生を歩む中で「気がなかなか抜けない」「気が休まらない」と感じることがあります。
心理的に実感する場合もあれば、体調を崩して感じることもあります。
そういった時にどのように対処するべきか、カウンセリングの有用性も踏まえて書いていきたいと思います。
もくじ
「気が休まらない」とは?
「気が休まらない」という状態は、やるべきことが多くて気が休まらない状態もあれば、頭や心の中でなんらかの思いや動向が気になって休まらない状態になっていることもあります。
そのため落ち着くことができず、心配や不安、悩みによる苦悩を引き起こし、心や頭が休まらないことが多くあります。
「気が休まらない」の「気」は、今で言うと頭や脳、心などの精神が休まらないことを指しています。
身体的側面で言えば、交感神経の亢進(興奮)を引き起こし、体や脳、内臓、神経を休ませることができず、回復する機能をうまく使えない状態になってしまうこともあります。
そのため疲労感や心身に異常がでることもあります。
うつ病やこころの悩みなどで休職したり、学校を休んでも頭や心で気が休まらない時にはせっかく休んで回復したいところがなかなか難しくなってしまうこともあります。
休日でも学校や人間関係、仕事のことを考えて、思慮している時には「休んでいる感覚」が薄れてしまう経験をした方も多いのではないでしょうか。
気が休まらないことが短期間で終わればいいのですが、長期にわたって慢性的になると精神や身体への負担が大きくなってしまいます。
現代をより良く生きていくためには「気を休ませるスキル(能力)」も育てていく必要性もあるように思います。
では、実際にどのようなケースで気が休まらないことを私たちは感じているのでしょうか?
- 真面目すぎて休みの時でも考えてしまう
- 気になることがあって頭から離れない
- 悩みがあって気が休まらない
- 勇気を出せなくて悶々としてしまう
- 人間関係が気になって考えてしまう
- 考える癖が強くて考えてしまう
- 気を休ませる感覚がわからない
- 仕事や学業のプレッシャーで気が休まらない
- 嫌な人がいて気が休まらない
- 家族の中でも気が休まらない状況がある
- 休みが少なくて、やることが多くて気が休まらない
- 安心できなくて心が休まらない
- 不安や恐怖に思うことがあって休まらない
- 怒りがこみ上げてきて気が休まらない
- 成績が気になってしまう
- 自分の言動が他人にどう思われているかがずっと気になる
- 人の目を気にしすぎる
- オンとオフがうまくできない
- 未来や将来のことを考えると気が休まらない
- 納得ができずにずっと考えてしまう
- 原因を探しすぎて気が休まらない
- コンプレックスが気になる
- 嫌われるんじゃないかと気になる
- 他人が自分をどう思っているか気になる
- 楽しみでワクワクして気が休まらない
- うまく睡眠をとれなくて気が休まらない
- 痛みや症状の発現で気も体も休まらない
- 余計なことを考えてしまう
- 中途半端な案件を抱えている
- 会社や人から連絡が来て気が休まらない
- うつ病や反芻などの影響で気が休まらない
- 完璧主義が悪い方に行ってしまう
- 気疲れや精神的消耗で気が休まらない
- 過剰緊張状態が抜けない
- 気が抜けないことが多い
- 気苦労が多い
- 妊娠・出産・子育て
- 結果が気になる
- 監視されている、見られている感覚がある
- また何か悪いことがおこるんじゃないか?と思ってしまう
などが挙げられます。
自分に該当するものもあれば、そうでもないものもあるでしょう。
人の数だけその理由や要因(原因)が考えられます。
ではどうすればいいか?について次の項で書いていきたいと思います。
気を休ませるにはどうすればいいのか?「対処法を探す」
では気を休ませるにはどうすればいいのでしょうか?
端的に言えば、「気を休ませる」「リラックスする」ということでしょう。
これが簡単にできればもうすでにやれているかもしれません。
気が休めない状態からどのようにしてリラックスできる気が休んだ状態ができるかを例えを用いて説明してみます。
今、熱々の油が入っている揚げ物用の鍋と火が付いたコンロがあるとしましょう。
この状態にリラックスしようとして水を入れたらどのようになるでしょうか?
燃えたり、爆発したりして、なかなか穏やかな温度になりません。
なぜならコンロの火はまだ付いています。
ではこんな時にどのようにして温度を下げるでしょうか?
そうです、コンロの火を止めて時間をかけて冷ましていきますよね。
時間はかかりますが、それが一番安全に用いられる方法です。
ということは、気が休めない状況に「火をつけているもの」を特定して、その火を消すことが大事になります。
いきなりリラックスできないときは、この方法が最も安全で効果がある方法になります。
※もちろんいきないリラックスする練習を行い、うまくその状態を取り込めたらそれも尚良しですが。
今ご覧頂いているあなたの休めない「火をつけている」はなんでしょうか?
- 自分の置かれている状況
- 他者が関係するもの
- 仕事や学業に関係するもの
- 社会やモラル、ルールに関わるもの
- 世の中の不条理さ
- 病気や医療の状況
- 自分の性格的特徴や捉え方
などひとつだけではなく、複数の要因が絡み合って「火をつけている」状態も多くあります。
自分の範疇ではコントロールがどうしてもできない領域があれば、コントロールできそうなところもあります。
自分がコントロールができないところは「仕方がない」と肯定的に諦めたり、現実を受け入れたりするしかありませんね。
これは簡単のようで難しいこともありますが、非常に効果的であったりします。
しかし自分の捉え方や性格的特徴に関しては、ある程度コントロールができます。
認知行動療法やカウンセリングなどを活用すると非常に深い特性から変容のアプローチを行うことも可能になることがあります。
前項で書いたような気が休まらないケースの紹介を参考にすると、その反対側に応えがあったりします。
しかし極端に人間は変わることは難しいので少しずつ反対の特性を使っていくと良いでしょう。
例えば、
- 真面目を少しだけ減らして、少し不真面目になる
- 気になることがあっても今より少し気にしないようにする
- 悩みがあってもいいと受け入れる
- 勇気を出してみるけど、全力で出せなくても「まあいいか」とする
- 人間関係が気になっても「まあ仕方ないか」とする(少し気にしないようにする)
- 考える癖をあまり使わないようにする
- 気を休ませる感覚を覚える(リラクゼーションや心理技法などを用いてみる)
- 仕事や学業のプレッシャーを過剰に感じすぎず、少しのびのびした感覚も取り戻す
- 嫌な人がいてもまあいいかと受け入れる気持ちも持つ
- 家族の中でも気が休まらない状況だけど、気を休める場所も確保する
- 休みが少なくて、やることが多くても少しでも気を休めるようにする
- 安心できなくても「まあいいか」と安心する気持ちも混在させる
- 不安や恐怖に対処し、受け入れる
- 怒りがこみ上げてきて発散させたり、受け入れたり、アンガーマネジメントの実践
- 成績が少し悪くても許せる自分になる(完璧主義を休ませる)
- 他人にどう思われているかが気になる自分と嫌われる自分を受け入れる
- 人の目を気にしすぎる場合は、嫌われてもいいと思える自分も育てる
- オンとオフがうまくできない場合は練習をしていく(ゆっくり長期で)
- 未来や将来のことはわからないので考え過ぎないことも大事
- 納得ができないところを納得できるようにすることを増やす(許す・具体的行動も)
- 原因がみつからなくても改善したり、解決できることもあることを知る
- コンプレックスを少しでも受け入れられる自分になる(改善行動も含む)
- 嫌われる怖さを受け入れて慣れていく(嫌われない人はほぼいないことを知る)
- 他人が自分をどう思っているか気になる場合は、直接聞く、嫌われても受け入れる
- 楽しみでワクワクして気が休まらない場合は、どうしようもないがあえて考えないようにする
- 睡眠に適切な治療と環境設定、心理的アプローチなどを行う
- 痛みや症状の発現で気も体も休まらないも同様
- 余計なことを考えてしまう場合、考えられない環境設定やその癖に心理的アプローチを行う
- 中途半端な案件を減らし、あっても休める練習をする
- 会社や人から連絡が来て気が休まらない状況を受け入れながら休ませるコツを学習する
- うつ病や反芻などの影響で気が休まらない場合も適切な治療、環境、心理アプローチを行う
- 完璧主義が悪い方に行ってしまうことに気づき、その偏りをすこしずつ変容させる
- 気疲れや精神的消耗の場合、緊急性がある場合があるので相談と適切な療養、その体質を変える
- 過剰緊張状態が抜くための心理的・身体的アプローチを行う(カウンセリングや整体、リラク)
- 気が抜く練習と抜けない理由にアプローチ(失敗への恐れなど)
- 気苦労が多い状況に関して環境設定やサポートを付ける、気苦労体質の変容
- 妊娠・出産・子育てにサポートや相談、心理・身体的相談を
- 結果が気になる場合は、出来ることが終われば時間が解決すると考え少し休む
- 監視されている、見られている感覚がある場合は、医療や警察等へ相談を
- 悪い事が起きると思ってしまう要因に専門的な心理アプローチをする
といったように対処することが考えられます。(文章の関係で簡潔に書きました)
真面目を不真面目にするといった0から100のような大転換はする必要はありません。
0だったのに10の不真面目さが入って10:90位の割合になればいい場合もあります。
完璧主義も同様に割合で考えていくことを推奨しています。
言葉になると急に極端になる構造があります。
「私は○○な人です。」といってもそれはその人の特徴の5%も表していません。
そういった極端になっているところを適切に見ていく練習をすると、自分の実像が真に見えてくるものです。
ONとOFFの切り替え
私たち人間をパソコンに例えてみましょう。
パソコンが立ち上がり、朝起きます。
そしてやることを無意識で行って(バックグラウンドで必要な機能を実行する)、今日やることや考え事をします。
いろいろなインターネットウインドウをオープンしたり、アプリを起動し、それを開いて実行したり、保留したりしています。
そのウインドウやアプリがたくさんあれば、パソコンのメモリーを消費して動きが重たくなってしまいます。(パソコンの負担、身体の負担も大きくなります)
学業や仕事、主婦業など必要な仕事を終えて、ウインドウやアプリを閉じられれば、軽くなって帰宅できますが、開いたままだとまだパソコンは重たい状態です。
この状態で寝る前まで行ったり、眠れないといった事が起きることが「気が休まらないとき」によく起きます。
この中途半端さや納得がいかない状態でも一度ウインドウを閉じる、アプリを消すことが「気が休まる状態」には必要不可欠です。
全てではなくていいのですが、完璧主義にならず、ある程度閉じる練習からしていきましょう。
「明日やればいい」のですから。
「特に今考えてもどうにもならない」という案件ほど閉じていくとよいでしょう。
これは練習です。難しいです。ですが長く練習していくと慣れていくものです。
ただ意識的に閉じる練習をしないといけません。
「もう十分やった」「今考えても意味がない」と呪文のように唱え、さよならをしてみるのもいいかもしれません。
近年になって仕事量が増え、早い処理を求められるようになった高度な社会に私たちは生きています。
原始時代のように、「獲物が取れたからいいか。」といった単純な生き物ではなくなりました。
未来や将来を見据え、人間関係の中でうまくやっていかなければいけない状態へ社会が発展してきました。
ようするに考えることが増えたのです。
ですので考えることが進化してきたのですが、それがやっかいなことに頭を休ませることを阻みます。
ですのでマインドフルネスなどの心理的技法が流行り、一流企業で取り入れられているのです。
気が、脳が、心が休まりにくい時代になったからこそ、休む技術を獲得することが大切なのです。
人間には脳神経系の可塑性というものがあって、使えば使うほどその神経が形成され、定着しやすい機能を私たちは持っています。
気を休める練習を行い、そのスキルが定着するまで数ヶ月かかりますが、脳神経系が休むスイッチや休みやすい神経モデルを形成してくれます。
一日のある程度の時間になったら、「今日はもうおしまい、よく頑張った」と力を抜きましょう。
そこからお休みモードになって、朝にやる気スイッチを押す。
寝ている時にスリープ状態もいいのですが、シャットダウン状態になるようにしていくと睡眠の質も高まります。
そういった練習を数ヶ月繰り返していくと、自然にできるようになってきます。
シリアスに行っていくこともいいのですが、この機会に「気楽さ」の能力も育んでいくことで休む能力の向上に寄与してくれます。
もうひとつ定着させていくためのコツがあるとすれば「最初からうまくリラックスできなくていい」と思って実践することです。
最初はリラックスに慣れていない、その神経が育まれていない状態ですので、身体に教えていくといった幼児教育的な発想が必要です。
そういった訓練を行うためにカウンセリングや心理療法のプロと一緒に作り上げていくことも推奨されます。
カウンセリングや心理療法の有用性
脳神経系の可塑性を利用した「気が休まる体質」にしていくためにカウンセリングや心理療法は効果的であったりします。
なぜ「気が休まらない」か?に対して原因や要因を特定し、適切にアプローチできるからです。
それは自分自身の中で考えている時よりも広い範囲で特定が行いやすく、偏りも少なくなる傾向があります。
- 物理的にやることが多い場合、周囲のサポートや支援を受ける
- 人に頼る認知的能力を伸ばす
- 認知の偏り
- ストレスコーピング(ストレス対処能力)
- 自己肯定感や自己効力感
- 対人関係スキルと認知的問題
- 考えすぎる・気にしすぎる特性に対する変容アプローチ
- 話す事によって生まれる放出感
- 共感や理解を受ける安堵感
- 解決法や改善策をもっと広い視野から獲得できる
など相談によって適切なアプローチ方が見えてくるものです。
また優れた専門家に相談すると、心理だけにとらわれず、身体的アプローチや社会的資源の活用、周囲のサポートを得るための統合的な支援も期待できます。
関係フレーム理論による関係フレームづけなど専門的な学術内容を知っていくことでなぜこのような問題が起きやすいか?といったことも理解できていきます。
「気を休める」ためには、皆さんそれぞれのご事情や人間性の違いがあるのでそういった多様性に個別対応できる点も優れています。
この機会に「気を休める能力」を育みたい方は相談してみてください。
なにより皆様が「気を休めて」メリハリのある毎日を過ごせますように願っています。
最後までお読みいただけましたら幸いです。
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記事監修
公認心理師 白石
「皆様のお役に立ちますように」