「見捨てられ不安(分離不安)」という言葉を知っている方もいれば、知っているけど意味はわからないという方、知らない方といろいろな方がおられると思います。

この記事では「見捨てられ不安(分離不安)」について理解が促されるように説明をし、カウンセリングと心理療法の有用性について考察していきます。

読まれる方にとって少しでも役にたちますように学術的な内容も含めて記載していきます。

見捨てられ不安(分離不安)とは何か


「見捨てられ不安(分離不安)」とは、見捨てられることや離別などの喪失に対して非常に強い不安や恐怖を感じることを意味しています。

精神科医・児童心理学者であるマーガレット・マーラーの「分離個体化理論」で提唱されたことにより広く認知されるようになりました。

マーラーの「分離個体化理論」とは、母親からの精神的に離れることができる「分離」と自らが独立できる「個体化」がどのように形成されていくかを「正常な自閉期」「正常な共生期」「分離個体化期」と分けて説明している理論です。

見捨てられ不安(分離不安)を理解するためには参考になることも多いので以下に「正常な自閉期」「正常な共生期」「分離個体化期」を説明していきます。

■生まれてから1ヶ月の「正常な自閉期 」

外部から入る刺激の反応が少なく、内部と外部や自分と他人の区別もあまりつきません。心理的な反応よりもお腹が空けば泣くといった「生理的反応」が優勢な時期です。

■生まれて1~6ヶ月の「正常な共生期 」

内部で起こった空腹などによる欲求と外部からもたらされる空腹を満たすものがあることを区別できるようになりますが、自分と他人の区別はまだつきません。

そのため母子が一体となる共生感を感じる期間でもあります。かすかな自我「原初自我」が芽生え始めます。

■4つの分離個体化期

○生まれて6~10ヶ月の「分化期」 

自分と他人の区別ができるようになり、母親かそうではない人かの特定ができるようになります。そのため人見知り反応が始まる時期です。

○生まれてから10~15ヶ月の「練習期」

母親から一時的に離れてまたもどるといった「母親を基地」としてハイハイのような這う行為、つかまり立ちなどの身体的動作の練習と親から離れる分離の練習を行っていく時期です。

○生まれてから15~25ヶ月の「再接近期 」

一人歩きができるようになり、共生していた母親を離れたところから認識することにより依存、愛情、承認を強く求めるようになります。

この時期に最も分離不安が高まるとされています

※この時期に見捨てられ不安が解消されないことと「境界性パーソナリティ障害」の発症との関係性が深いと考えられています。

○25~36ヶ月の「再個体化期」

母親との分離に慣れたり、耐えることができるようになり、母親とは違うほかの子供と遊ぶことができるようになります。

安定的に支えられてきた場合、こころの中に自分を支えてくれる母親像をもつため、母親と離れていても安定的な精神状態を確立しやすくなります。

また母親の両価性である「良い母親」と「悪い母親」という2つの側面を統合してひとりの人間であることを認識する時期でもあります。

どの時期も「愛着形成」に大切な時期であり、

・母親から離れる「分離」
・自律心を持つこと「個体化」
・人間の両価性(良い面と悪い面)の統合
・精神の安定

をつくる上で重要な期間です。

「見捨てられ不安(分離不安)」は一般的には、4歳頃まで強く出ることが多いとされていますが、人によっては大人になっても強く続くこともあります。

しかし大人になっても出てくる「見捨てられ不安(分離不安)」を持つ自分を恥じる必要はありません。

時代によって、ご家庭によって愛着形成の難しさや仕事と家事の両立、病気などの影響によって起こった理由があるものです。

また強弱はあるものの誰でも根底には持っているものかもしれません。

子供の場合の「見捨てられ不安(分離不安)」のサインや行動として、

  • 離れることができない
  • しがみついてしまう
  • 離れると泣く
  • 後追い
  • わざと困ることをする
  • 過剰にいい子を演じる
  • 嫌いと言う
  • ふてくされる・拗ねる
  • 過剰に顔色を伺う

などがあります。

大人の場合でも上記内容を含みますが、

  • 親しくなると不安になる
  • 愛情が本当のものか確かめたくなる
  • 相手がなにしているのか確認したくなる
  • スマホや携帯を見てしまう
  • ストーカーのようになってしまう
  • 受け入れてもらえないことに非常に強い感情が出る
  • 思い通り振舞ってくれないと非常に強い感情が出る
  • 見捨てられる不安から付き合わない
  • 見捨てられる不安からひとりでいる
  • すねてしまう
  • 疑い深くなってしまう
  • 自分に注目していないと強い感情がでる
  • 相手の態度が非常に気になる
  • 相手を試してしまう
  • 束縛してしまう
  • 距離が離れていると不安
  • 一緒にいたい気持ちが非常に強くなる
  • 自分を最優先にして欲しくなる気持ちが強い

などの行動や状態が現れやすくなります。

見捨てられ不安(分離不安)の原因や要因


幼少期の愛着形成がうまく行われていなかったり、うまく伝わらなかったりすることが原因として多く報告されています。

「うまく伝わらなかったり」と書いたのは、カウンセリングを行っていく中で「上手く伝われるように表現できなかった親」と「成熟してないために汲み取れなかった子供」という構図が明らかになることも少なくなかったからです。

またその当時は子供であるため、情緒や認識力が育っていないために誤解や思い込みが過剰に働いてしまうこともあるかもしれません。

・親が仕事で忙しかった
・病気を患っていた者へ注力していた
・手をかけなければいけない者へ注力していた
・自分の嫌な性格と似ている要素を持つ子供への抵抗
・大変で手がまわらない親
・親もその親から与えてもらえていない連鎖
・生きるのに必死でそれどころではなかった事情
・病気や心労などで他者に愛情をかける余裕がなかった
・離婚
・預けられていた
・離ればなれになった
・養育者が変わった
・暴力や虐待があった

など親からの愛情や愛着をうまく感じられない理由がそれぞれの家庭によって異なります。

また過保護にされてきたがゆえに分離経験を上手く行えず、「見捨てられ不安(分離不安)」症状が強くなってしまうこともあります。

どのような理由でも当人は、

・顔色を伺わなければいけなかった
・心の中ではさみしかった
・心の中では孤独だった
・安心感がなかった
・愛されていないと感じていた
・自分はいない方が良いと感じていた
・自分は邪魔者だと感じていた
・自分のせいだと感じていた
・実は不満がたくさんあった
・もっと愛して欲しかった
・もっと自分に注目して欲しかった
・もっと受け入れて欲しかった
・自分だけを見て欲しかった
・独占したかった

という心情を抱えていたかもしれません。

自分と親という構図だけでなく、おじいちゃんやおばあちゃん、親戚、兄弟姉妹との関係性によってこのような心情を抱えてしまうこともあります

今では少し考えられない方もいるかもしれませんが、「厳しく育てれば強くなる、甘えさせれば弱くなる」という一点が非常に強調された子育て論が常識の時代も長くありました。

確かに今でも大切なことでもありますが、子供のこころを無視した過剰な厳しさがあったり、子供の成長を考えての厳しさであることが伝えきれずに行われることもありました。

そういったところから苦しみや誤解も生まれやすかったかもしれません。

また悪いことをしたら、悪い態度であったら「外に出して鍵を閉める」「子供をおいて先に行く」といったような伝統的な処罰が家庭によっては行われていたこともあるでしょう。

日本人の愛情表現の曖昧さや肌と肌を触れ合う行為の希薄さも影響があるかもしれません。

「いつまでも抱っこをするとダメな子供になる」「助けると自立できなくなる」とあえて厳しくされてきた伝統もあったかもしれません。

今では虐待やネグレクトと判定できるようなことも過去では、ある程度許容されてきていることにも一因があるかもしれません。

このような日本の伝統と世代間連鎖を知ることも大切になることもあります。

またどのように考えても理解できないことも一部事例ではあるようにも思います。

どのような原因や要因でも当人にとっては、

  • 愛されない不安や恐怖
  • 受け入れられない不安や恐怖
  • 助けてもらえない不安や恐怖
  • 見捨てられる不安や恐怖

などを感じていたということが大事です。

幼児のような未成熟な時では自分ひとりでは生きていけないため、それは命に関わる恐怖であったりもします。

原因や理由は、人によってそれぞれ異なります。

愛着形成によって見捨てられ不安や分離不安が現在でもぬぐいされないこともあるかもしれませんが、ここで注意しなければならないことがあります。

必ずしも家庭環境による愛着形成がすべての原因とは言えないということです。

脳機能の問題、遺伝的な素因、先天的な原因、その後の人生での喪失、いじめなどの後天的なトラウマ、思い込みや誤解など関係していることもあります。

また過去を改めてみていくことが当人にとって有効な場合もあれば、今あるその不安をどう扱うか?という現在から未来にかけて働きかけをしていく場合も有効であることも多くあります。

カウンセリングと心理療法の有用性


人によって不安やそこから生まれる行動、原因や理由が異なります。

ご相談されるクライエントが

・どのような見捨てられ不安(分離不安)があるのか?
・どのような気持ちになったり、行動するのか?
・そのどこに悩んでいるのか?
・どのようにしていきたいのか?

という点を理解し、クライエントの目的に添ってカウンセリングは進んでいきます。

自分の本当の気持ちに注目されていなかった経験も多く、カウンセリングでは丁寧に温かくその気持ちに注目していきます。

大人であっても子供のような心情を持っていたとしてもどのような思いが出ても大丈夫なのです。

その注目されていなかったところを改めて注目していくことにより、当時の思いが湧いてきたり、いろいろな気づきが得られることもあります。(人によっては注意が必要な場合もあります)

大人のクライエントであれば、それらの感情を丁寧に大切に見ていくことにより、ある意味今の自分が親のような感覚になって過去の自分を理解していくようなプロセスを踏むこともあります。

激しい情動が収まったり、癒されたりしてくると親の視点に立つこともできるかもしれません。

子供の視点と親の視点とそれらを取り巻く視点からみていくと「そういうことだったのか」という納得性とドラマティックな場面に行き着くこともあります。

なかにはぬぐい去れないこともあるかもしれませんが、そこにはまた意味があるものです。

どこに納得をするのか?という点は、クライエントによって異なります。

カウンセリングの中でみつかるものもあれば、親に確認したり理解される経験で見つかる場合もあれば、当事者との対決によって生まれるものもあるかもしれません。

どのような方向でもカウンセラーは伴走しながら注意深く見守っていきます。

時によっては、クライエントとカウンセラーとの間で「過去の子供時代の自分」と「対象の親」との関係性が蘇るかのように反映される「転移(てんい)」という現象が起きることもあります。

これは悪いものではなく、「転移」であることを認識することが大切です。

そしてそこをテーマにしていくことでクライエントにとって有益な結果をもたらすこともできます。

過去を振り返ってこのように行うこともあれば、今の状態からいかにして改善・変容していくか?という方向でカウンセリングが進むこともあります。

科学的根拠であるエビデンスから考えると「認知行動療法(CBT)」などを用いることも有益です。

その場合、どのように行動し、不安を軽減させていくかを協同して考えて、実行していくかをプランニングしていきます。

自分の捉え方や解釈へのアプローチにより見える景色が変化することもあります。

クライエントにとって相談の目的であるゴール地点は異なるかもしれません。

変化や変容を行いたい方もいれば、その苦しみを解放したい方もいます。

またそういった変化・変容を行いたくない方もいるかもしれません。

どのような目的であれ、クライエントの目的地にまずは向かうためにカウンセリングや必要な心理療法を用います。

そのように進んでいく中でまた新たな気づきが生まれたり、目的地の変更が自然に起きたりもします。

なにより無理してぐいっと捻じ曲げるようなことはせず、自然に向かう先が決まっていくようなナチュラルさが大切かもしれません。

なぜなら多くの方は自分の本音を抑えて、長期にわたる無理や我慢、抑制、抑圧をしてきている背景があるからです。

ですのでペースもクライエントに応じて適切に進みます。

親御さんからの相談では、子供さんとのセッションよりも先に親御さんのセッションを行うことが多くあります。

世代間連鎖などのしくみや理解がなされることによりいろいろな効果を期待できることが有り、その変化を子供が感じ取り、子供さんもセッションの参加が促されたりします。

人類が誕生して長い年月をかけてようやくこのような「愛着」と「愛情」の問題に取り組める時代になりました。

この時代でやっておくことで次の世代や今生きておられる方にとって有益な影響を与えることもできるものです。

なにより自分が生きやすくなるのであれば、それだけも大きなことです。

■参考文献

乳幼児の心理的誕生―母子共生と個体化 マーガレット・S. マーラー 他著


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