現在最も利用されているエビデンス(科学的根拠)の高い心理療法として「認知行動療法(CBT)」があります。

この記事では「認知行動療法」について全体像をまとめて説明しています。

そもそも「認知」とは何か?


認知(英語:cognition)とは、何かの対象を知覚した上で、「解釈」をしたり、「理解」「判断」をするプロセスのことです。

もう少しわかりやすくすると、

①感覚・知覚で対象を知る

②認知(解釈・理解・思い込み・判断)

③情動や気分などの感情や思考

④行動

のような流れで感情や思考、行動が決定されていきます。

この認知とそれからつながる感情や思考は、自動的で無意識的な動きであることが多く、特に「認知」は、なかなか気づきにくい部分です。

人それぞれによってある程度同様の流れになるパターン化が形成されており、認知が変容することによってその後の感情や思考、行動に変化が訪れることが年々明らかになってきています。

この「認知」にフォーカスする認知療法と「行動」にフォーカスする行動療法を組み合わせたのが「認知行動療法」になります。

わかりやすくなることも多いので、認知行動療法が生まれるまでの歴史的な流れを次に説明していきたいと思います。

認知行動療法の歴史と流れ


記憶に関する有名な研究者エビングハウスは「心理学の過去は長いが、歴史は浅い」と言いました。

太古より心理やこころの研究が行われ、シャーマニズムや宗教、そして哲学の世界で主に探求されてきました。

17世紀にデカルトが心と体を分けて考える「心身二元論」を提唱し、19世紀に入り、ヴントが心理学ではじめての実験室(心理学の誕生とされる)を設立しました。

※心理学とは心理やこころのみを対象にしているように誤解を受けますが、「心や行動に対して科学的研究を行う」学問です。

様々な要素の集まりが人間の意識であると捉えるヴントの「要素主義」から、無意識にも焦点を当てて精神を分析する「精神分析」、観察可能な行動に焦点を当てる「行動主義」、要素の集まりではなく全体性に注目していく「ゲシュタルト心理学」などが生まれていきます。

パブロフの古典的条件付けやスキナーのオペラント条件づけ、ハルやトールマンなどの新行動主義、ウォルピの系統的脱感作などの理論と技法を用いる「行動療法」を社会的学習理論で有名なアルバート・バンデューラが認知行動療法へと転換させていきました。

そしてスキーマや自動思考、認知の歪みに焦点を当てる「アーロン・ベックの認知療法」と、信念であるビリーフを重視して短期治療を目指す「アルバート・エリスの論理療法」の2つの療法が認知行動療法に多大な影響を与えます。

適した行動をとれるように自身を導く「マイケンバウムの自己教示訓練」や「ズリラ&トーマスの問題解決療法」なども組み込み、統合的な心理技法として徐々に確立されていきました。

その統合を促したのは、ポール・サルコフスキスが強迫性障害患者に精神分析療法ではうまく治療に役に立てられなかったことから認知療法と行動療法を組み合わせ、その有用性を確信したところからとされています。

近年では、マインドフルネスを取り入れた「マインドフルネス認知療法(MBCT)」や「弁証法的行動療法 (DBT)」、不快な反応に過反応せず、今ここから価値づけられた行動を目指す「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)」、心の体質改善と呼ばれるCBTが発展して統合された「スキーマ療法」なども生まれています。

このように認知行動療法は、歴史から生まれた様々な心理学をクライエントへの有用性と科学的な実証(エビデンス)を重視して統合していった心理療法と言えます。

そのため技法も多く、心理療法家によって用いる手段や理論が少し異なることもあります。

認知行動療法(CBT)の内容


先述した通り、認知行動療法(CBT)は臨床上のクライエントにとって有用でかつ科学的根拠が得られる技法と理論が用いられます。

そのため内容は多種多様に有り、説明が難しいところもありますが、一般論として内容について説明していきます。

適応される精神疾患としては、

  • うつ病
  • 不眠症
  • 統合失調症
  • 不安症
  • パニック症
  • 社交不安症
  • PTSD
  • 一部パーソナリティ障害

などがあるとされています。

エビデンスを重視し、クライエントに最適化する認知行動療法は上記疾患にとらわれず、一般的な悩みや問題、ビジネスシーンなどでも活用されています。

実際に相談すると最初に行うのが「アセスメント」で、認知行動療法(CBT)が「最適であるかどうか?」という点と「どのような構成と介入で行っていくか?」を決めていきます。

認知行動療法は大きく分けると、

①行動療法
②認知療法
③その他の療法

の3種類に分類できます。

その場だけではなく日常生活に活用できるように「宿題」や「課題」が設定されることも多くあります。

順に説明していきたいと思います。

①行動療法


行動療法とは、無意識的に学習として関連付けられた「条件付け」を消去、変容させていく方法や望ましい行動の「強化」「弱化」を行っていく技法です。

少し専門的にはなりますが、パブロフの古典的条件付け理論から派生した行動療法とスキナーのオペラント条件付け理論から派生した行動療法を両方用います。

不安に感じているものを段階的にレベルの低いものから馴化(慣れ)していく「曝露療法(エクスポージャー法)」や逆に最初から最も強い刺激に順化させていく「洪水法(フラッディング法)」などが代表的です。

また他者が適応している姿を見て学習する「モデリング法」も用いられます。

身体をリラックスさせることで心理的に良い影響をもたらせる方法として自律訓練法やリラクセーション法があります。

リラックスをするためにあえて力をいれ、力を抜くということでうまくいく場合は「漸進的筋弛緩法」を用います。(系統的脱感作)

トークエコノミー法やバイオフィードバック、セルフモニタリングなどで「強化」を行ったり、レスポンスコスト法や条件性制止法などで「消去」を行っていくこともあります。

活動記録表をつけて過去のことを考えない、不適応な思いに惑わされないことに気をつけて行動を行う「行動活性化療法」なども有用です。

②認知療法


認知療法は大別して「アーロン・ベックの認知療法(および ジュディス・ベックの中核信念 )」と「アルバート・エリスの論理療法」に分かれます。

アーロン・ベックの認知療法


自動で思考する「自動思考」や成長によって固定化されていく信念「スキーマ」が効果的な治療への糸口になります。

自分の知覚や解釈が現実的か、歪んでいるのかを認識し、正しく評価することが重要です。

自分の解釈や認識が歪んでいることを「認知の歪み(偏り)」と言い、

①「全か無かの思考(All-or-nothing)」0か100か?白か黒か?というような極端な判断軸(二極思考)で考えてしまい、グレーがない認知パターンです。

②「過度の一般化(Overgeneralization)」一部の要素をすべてのことのように当てはめて捉えてしまう認知パターンです。経験や根拠が不十分なまま早まった一般化を行ってしまいます。

③「すべき思考(should statements)」「~しなければならない」といった基準で物事を考え「そうでなければならい」と思ってしまう認知パターンを指します。

④「マイナス化思考(Disqualifying the positive)」ネガティブや否定的な側面ばかり目がいき、それが全てであるように思い込んでしまう認知パターンです。

⑤「選択的抽象化(selective abstraction)」全体的に見ることができず、悪い部分のほうへ目が行ってしまい、良い部分が除外されてしまい結果、現実を悪く見てしまう認知パターンをさします。

⑥「結論の飛躍(Leap conclusion)」当人に確認することなくネガティブや否定的に推測してしまう「心の読み過ぎ(Mind reading)」と物事が悪い方向になると先読みしてしまう「先読みの誤り(Fortune-telling)」の二種類の認知パターンがあります。

⑦「感情の理由づけ(Emotional reasoning)」事実や根拠よりも感情を根拠として、自分の考えが正しいと結論を下す認知パターンをさします。

⑧失敗や悪いことが実際より大きくみえる「拡大解釈(magnification)」と成功や良いことが小さく見える「過小解釈(minimization)」してしまう認知パターンです。

⑨「レッテル貼り(labeling)」「私は~な人間だ」「あの人は~な人間だ」というようにレッテルを貼り、誤った人物像を創作してしまう認知パターンのことを指します。

⑩「個人化(personalization)」自分とは関係ないものでも自分のせいだと自責の念や罪悪感を感じたり、自分を称賛してしまう認知パターンのことを指します。

などの10のパターンがあるとされています。

※この10パターンは、ベックが基礎を築き、デビッド・バーンズがその研究を引き継ぎ発表された「偏りや誇張、非合理的な認知パターン」です。

これらの認知の歪みにより問題が起きている、悪化させていることを改めて認識し、変容していくことで問題や悩みの改善へと導いていきます。

ジュディス・ベックの中核信念


ベックの娘さんジュディスベックは「中核信念」という概念を提唱し、お父さんの基礎を発展させて行きました。

人は幼少期の頃から①自分自身について、②他者について、③自分をとりまく世界について一定の信念を持ちますが、その信念の最も重要な核(コア)になるのが中核信念(コア・ビリーフ)です。

反応(感情、身体、行動)

自動思考

状況

媒介信念(ルール、構え、思い込み)

中核信念

のように認知の階層があり、中核信念は一番深い階層にあります。

わかりやすく理解するために「知らない人が自分の方向を向いて笑う」という現象を例としてみていきましょう。

「ただこちらを向いている状態で笑っている人がいる」が事実ですが、中核信念や媒介信念がどのように反応に影響しているのかをみていきましょう。

反応:「すごく腹が立ったが無視した」

自動思考:「こちらを見て馬鹿にするように笑っていると思った」

状況:「知らない人が自分の方向を向いて笑っている」

構え:「馬鹿にする行為は許せない」
ルール:「怒りが出ても表に出さないでおこう」
思い込み:「他者は私に必ず意地悪をしたり、馬鹿にしたりする」

中核信念「私は人から蔑まされる存在だ」「私はよく嫌われる」

上記のような中核信念(コア・ビリーフ)と媒介信念(ルール、構え、思い込み)が反応を起こす状況に遭遇することで自動思考と反応(感情、身体、行動)が生まれます。

「アルバート・エリスの論理療法」


論理療法の有名な理論として「ABC理論」と「イラショナル・ビリーフ」があります。

ABC理論とは、出来事(A)=結果(C)ではなく、その間に「固定観念や信念(B)があることによって結果(C)に至ると考える理論です。

よく問題となるのは非合理的で非論理的な信念「イラショナル・ビリーフ」であり、それらは「〜すべき、〜しなければならない」という信念であることが多くあります。

また偏った思い込みや事実に基づいていない解釈も多くあり、認知が変容していくことで合理的な思考「ラショナル・ビリーフ」ができるようにしていくのです。

自分や療法家によって不合理的な信念を徹底的に論駁(ろんばく:論争)する「論駁(D)」を行い、合理的なものへと脱皮する「効果(E)」に帰結し、A-B-C-D-EというプロセスでABC理論は完結します。

論理療法では、合理的でポジティブな信念や認知だけに目を向ければ良いということではなく、行動を変えることで精神や情動も変化しますし、非合理的信念と認めて変容させていくことで行動も変化していくことも大切にしています。

そして論理療法では特に「ビリーフ(信念)」を重要視しています。

③その他の療法


その他の療法として、

◎EDMR
◎メタ認知療法
◎マインドフルネス認知療法(MBCT)
◎弁証法的行動療法 (DBT)
◎アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)
◎スキーマ療法
◎問題解決技法
◎社会生活技能訓練(SST)
◎アサーション・トレーニング

なども活用されています。

認知再構成法(コラム法)


認知再構成法(コラム法)とはアーロン・ベックが開発した認知や自動思考を客観的に分析し、変容していくために用いられる技法です。

認知行動療法の代表的な技法です。

先述した「知らない人が自分の方向を向いて笑う」という現象を例としてみていきましょう。

①出来事:知らない人が自分の方向を向いて笑っていた

②気分:すごく嫌な気分(90%)緊張(50%)怒り(60%)

③自動思考:自分を蔑んでいる、自分はやはりおかしい人なんだ

④自動思考の根拠:いつも軽蔑の目や嘲笑される、自分はおかしい人だとやはり思うから

⑤その根拠の反証:でも今は何もおかしなことはしていない、おかしい人だと思い込みすぎてる?

⑥適応的思考:たしかに笑われることもあるけど、いつも馬鹿にされる人間ではない

⑦今の気分:すごく嫌な気分(20%)緊張(10%)怒り(40%)

このように7つの要素を書き出していくことで全体像をつかみ、思い込みや自動思考に気づき、変容につながる「気づき」を得ることができます。

おわりに


認知行動療法(CBT)は説明しだいでどこまでも書くことができますが、要点をかいつまんで全体像をまとめる趣旨でこの記事を書きました。

私自身この技法と理論が好きな理由としては「クライエントにとって科学的根拠の高い有用な理論と技法を採用する」という大きな軸があることです。

技法や理論はより良いものへと発展、更新されていきます。

その良いものを提供し、クライエントに還元・貢献することが一番大切であって、カウンセラーや学者は二の次、三の次だと個人的には思います。

少しでも皆様のお役にたてられたら幸いです。

最後までお読みいただき、有難うございます。

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