過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここではヴィクトール・フランクルと「ロゴセラピー(実存分析)」について書いていきたいと思います。

ヴィクトール・フランクルについて


ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl)

ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl)は1905年ウィーンに生まれたオーストリアの精神科医(心理学者)です。

アルフレッド・アドラーやジークムント・フロイトに師事し、ウィーン大学では教授として働き、市立病院では神経科の部長を務めました。

ナチスによる影響でユダヤ人が治療することを禁じられて解雇され、家族とともに強制収容所に収容されます。

不幸なことに両親と結婚したばかりの妻が亡くなってしまいます。

フランクルは、アメリカ軍による解放によって再び、ウィーンの病院にて治療を行うようになり、プライベートでは1947年に再婚します。

ナチス収容所での体験を元に書いた「夜と霧」が世界中でたくさんの人が読み、今に語り継がれています。

ロゴセラピー(実存分析)


紀元前ブッダは、「苦しみは欲望によって惹き起こされるものであり、欲望を放棄する必要がある」と説き、古代ギリシャのアイスキュロスは「叡智は苦しみを通してのみ到来する」と語っています。

心の苦しみについては古くから語られ、心理学の世界では哲学的な手法、客観的な指標を用いた科学的な手法などさまざまな理論と技法が生まれていきました。

当時の心理学の世界ではフロイトの「精神分析」が主流とされ、アドラーの個人心理学と並びウィーン学派三大潮流と呼ばれたのがフランクルの「ロゴセラピー」です。

ロゴセラピー(英語:Logotherapy)とは、「実存分析」や「意味中心療法」とも呼ばれ、フランクルが開発した自分の人生の生きる意味を見出すことで心の病や苦しみを癒す心理療法です。

ロゴとはギリシャ語で「意味」という意があり、自分の生きている意味や苦しみに意味を見出すことによって苦しみから解放し、本来的な人生の歩みができるとする考えです。

強制収容所の体験から人間には苦しい破滅的な状況を耐え抜くためには、「決断能力」と「態度の自由の能力」が必要だと気づき、決して環境だけが問題ではないことを提唱します。

「苦しみは、その意味を見出された時に苦しみではなくなる」という名言を残しています。

そして皆同じではなく、それぞれの人にそれぞれ独自の人生の意味が存在しており、その意味を見出すことによってその人生は苦しみに耐えうる意味のある人生となるという点が強調されています。

ロゴセラピー(実存分析)には以下の3つの価値があります。

①創造的価値:職業や趣味など創造的活動による価値
②体験的価値:自然や芸術の体験など新たな体験による価値
③態度的価値:勇気や気品など困難な時にでも自分が取る態度による価値

この3つ全てではなくとも意味を見出せる価値が増えるほど良いものとしてロゴセラピーでは柔軟に考えます。

技法としては、

怖がって予期不安が出るような回避状態から真逆の方向、立ち向かう方向へ向かっていくことを望み、実行する決断をしていくことで乗り越えていく「逆説志向」があります。

不安への態度にユーモアが非常に役に立つため、ユーモアを持つ態度も重要視されます。

またフランクルは無意識が創造性や決断を行なっていると考えていたため、必要以上の過剰な思考や自省を取り除く「反省除去」という技法も使われます。

フランクルの独自の考えは、その独自性から「フランクル心理学」と呼ばれることもあります。

「科学的ではない」とアカデミックな世界では批判がありますが、未来に焦点を当てたポジティブな心理療法と言えます。

後史としては、サルトルら実存主義哲学者たちは、「私たちの人生は神から与えられた目的などなく、自分で自分のために見出す必要がある」と説き、マーティン・セリグマンは「完全な人生には喜びと意味、フロー体験が必要だ」とポジティブ心理学を立ち上げ、ダン・ギルバートは「不幸なのは自分がどのように不幸を考えているかによる」と主張しました。

フランクルの名言


数多くの名言を残しているフランクルの言葉を4つ最後に紹介したいと思います。

どんな時も人生には意味がある。どんな人のどんな人生であれ、意味がなくなることは決してない。だから私たちは、人生の闘いだけは決して放棄してはいけない。

ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl)

あなたが人生に絶望しようとも人生があなたに絶望することはない。誰かや何かのためにできることがきっとあります。その時があなたを待っている。

ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl)

あらゆるものを奪われた人間に残されたたった一つのものは、与えられた運命に対して自分の態度を選ぶ自由、ようするに自分のあり方を決める自由である。

ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl)

自分を忘れたとき、本当の自分を発見する。本当の自分を表現するとき、自分はいなくなる。

ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl)

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

記事監修
公認心理師 白石

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