過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここでは心理学の行動主義に影響を与えた一人であるジョセフ・ウォルピと「逆制止法」「系統的脱感作法」について書いていきたいと思います。

ジョセフ・ウォルピについて


ジョセフ・ウォルピ

ジョセフ・ウォルピ((Joseph Wolpe)は、1915年に南アフリカのヨハネスブルクで生まれました。

ウィットウォーターズランド大学で医学を学び、精神科医になってからはジークムント・フロイトに強い感銘を受け、精神分析家を志したようです。

第二次世界大戦では南アフリカ軍の軍医として戦争神経症(※現PTSD)の患者の治療に従事します。

戦場での残酷な状況、ショックやトラウマ、恐怖に罪悪感を持った兵士たちを診て、治療していく中でフロイトの精神分析の効果に疑問を持つようになり、自身で効果的な技法を模索するようになります。

パヴロフの「古典的条件付け(レスポンデント条件付け)」やハルやスキナーの提唱する行動療法に影響を受け、実践に生かしていく中で精神分析の概念(リビドーやエス、超自我)は想像された仮定の操作的概念に過ぎないと思うようになります。

大学へと戻ってからは、系統的脱感作などの行動療法の技法を発展させるが、精神分析関係者からは「原因を特定せずに治療するのは馬鹿げている」と嘲笑されます。

1947年の猫を用いた神経症形成実験では、強い恐怖や不安を与え続けることで猫が神経症を患ったり、新たな条件付けを行うことで治療ができることを明らかにしています。

1960年にはアメリカの市民権を取得し、ヴァージニア大学、テンプル大学などで精神医学の教授として教壇に立ちます。

82歳で肺がんで亡くなるまで研究と後進の育成に努められました。

ウォルピはさまざまな技法を開発したようですが、そのなかでも逆制止法とエクスポージャー法(暴露療法)を組み合わせた「系統的脱感作技法」は現在でも用いられるほどの重要な技法として受け継がれています。

主著には、

1958年「逆制止法による心理療法」
1969年「神経症の行動療法–新版行動療法の実際」
1988年「おびえることのない人生」

などがあります。

ウォルピの逆制止法


20世紀前半はフロイトの精神分析によって席巻され、不安は魂の奥深くにある力の葛藤で起きるといった見解が広まっていました。

戦時中に軍医としてPTSDで強い神経症、恐怖症の患者を治療するにあたってフロイトの精神分析療法では助けることができないどころか、役にも立てないことも多かったようです。

ウォルピは精神分析よりもずっとシンプルで近道な方法があるにちがいないと考え、イヴァン・パヴロフやジョン・ワトソンなどの行動主義の理論と技法に着目していきます。

刺激と反応を条件付けて訓練することで精神や行動が変化していくこの方法を兵士に用いていくことになります。

ウォルピは人間は同時に「リラックス」と「恐怖」といった二つの相反する感情や情動を感じることができないという発見をします。

これをヒントにして筋弛緩法を行なっていき、「逆制止法」として知られるようになります。

トラウマティックな対象や出来事をあえて想起させて、不安ならイメージをやめてリラックスしようと励まし、不安と真逆な感情に集中することで短時間で切り替える条件付けを獲得させることに成功しています。

ウォルピの逆制止法は、患者の過去の分析は全く必要なく、症状に近い行動だけに焦点を当てることで脳と神経系を再条件化することができるのです。

効果が良いだけではなく、既存の技法と比べてみても早く効果が出る技法として行動療法の発展に多大な影響を与えました。

⬛️ウォルピの逆制止法を使う
ネズミ嫌いの恐怖症を治療するときには、その恐怖のイメージをしながら同時にリラックス状態を感じる訓練を用いて恐怖を消去し、ネズミ=リラックスという条件付けを脳と神経系に刻み込んで行きました。
このトレーニングはあなたの何かの克服に応用できますか?

系統的脱感作法


系統的脱感作法((Systematic desensitization)とは、前述した「逆制止法」と慣れていくことで変化させる(馴化)「エクスポージャー法(暴露療法)」が組み合わさった技法です。

まずリラクゼーション訓練で不安や恐怖の反対の神経や精神を用いることで再起させるトレーニングを行います。

不安や恐怖の強さをレベル分けした「不安階層表」を作成し、その難易度が最も低いところから緊張状態を作らないように段階的に慣れていく作業を行います。

※不安階層表はSUD(Subjective Unit of disturbance)の主観的障害単位をMAX100として作成していきます。

逆制止法や脱力などの技術を用いながら慣れに従って次の段階(イメージ内)へ進みます。

イメージ内で行う「イメージ脱感作」が終わると実生活での「現実脱感作」を行うことが多く、そこにも慣れていくと治療が終了していきます。

逆に最も不安や恐怖が強いものにあえてさらす方法としてフラッディング法やインプロージョン療法もあります。

⬛️不安や恐怖にとらわれなくなる反対感情として
ウォルピは不安や恐怖が同時にでづらい情動や気分として、①癒されているとき(リラックスしているとき)②自己主張をしているとき③性的悦楽④食べているとき⑤ユーモアを感じられるとき、としてあげています。
※ウォルピは自己主張訓練としてラグラスとともにアサーション・トレーニングの開発も行なっています。

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

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