私たちは何かアクション・行動をするときにその行為の動機をいちいち意識をすることは少ないかもしれませんが、多くの行動には動機があり、その働きによって影響を受けています。

心理相談の中でもこの「動機付け」を明確化したり、矛盾を解消することで行動がうまくいくようにしていく心理技法が用いられることがあります。

「行動のキモ」をおさえていくことでより良い改善が期待できるかもしれません。

この記事では、4つの「動機付け」と「動機付け面接法」について説明していきたいと思います。

そもそも「動機付け」とは何か?


動機付けとは、英語でモチベーションといい、行動の起点となり、目標に向かってその意欲と行動を維持するものです。

この機能は、人間だけが持つものではなく、多くの動物の行動には「動機付け」が根底に有ることが分かっており、その「行動の強さ」は「動機付けの強さ」に比例しています。

動機付けには、大きく分けると

①生理的動機づけ
②社会的動機付け

に分けることができ、②の社会的動機付けには、

③達成動機づけ
④内発的動機づけ
⑤外発的動機づけ

の3つで構成されています。

生理的動機づけ


生きていく上で最重要の行動である、

●お腹が減った、飢えによる食欲と食事を獲得するための行動
●睡眠
●排泄
●身体回復の為の行動

などの行動の起点となります。

達成動機づけ


自分の有能さの証明や成功欲といった個人的動機、他者から認められたいという他者関係動機、社会的貢献をしたいといった社会的動機などが相まって動機づけられると考えられています。

成功・達成したいという「成功接近動機づけ」と失敗したくない(恥ずかしい姿を見せたくない)という「失敗回避動機づけ」の二つの合力が想定されています。

この動機付けを行う場合、

●自分のちからの証明、成功、達成への欲求を起こす
●他者との関係での欲求を起こす
●社会に与える貢献についての欲求を起こす

といった3つの視点から考えていくことが有用です。

この動機が高い人は、失敗した時に自分の能力や力不足に原因を帰属させる特徴が有り、動機が低い人は、失敗した時に運が悪いことや問題の原因を外部に帰属させる特徴があります。

内発的動機づけ


自分の知的好奇心や関心が惹かれ、主体的に行動する動機付けです。

この動機付けによる学習は効率的で継続的な傾向が強く、

①感性動機(感覚や感性を刺激するもの)
②好奇動機(興味を引く刺激)
③操作動機(操作や活動による刺激)
④認知動機 (情報から解釈・見出すことによる刺激)

の4つに分けられます。

このように内発的動機づけは賞罰に依存しない行動と言えます。

せっかく内的動機付けがしっかりあるにも関わらず、報酬を設定することによって動機付けややる気が低減する現象のことを「アンダーマイニング効果」といいます。

こういった現象を知っておくことも内的動機付け効果を高めるためには必要になります。

外発的動機づけ


外発的動機づけは、報酬や罰、義務、強制など外部によってもたらされる動機付けです。

内発的動機づけは行動そのものが目的になっていることが多いですが、この動機付けでは「なんらかの目的」を得る、回避するために行動するという点が大きく異なります。

即時的にはうまくいくことも多いですが、持続するには報酬の再設定なども必要になっていきます。

一般的には「内発的動機付け」の方が有用に思えますが、両立も可能であったり、使いようによってはそれぞれ有益な効果を得ることができるものですので活用次第と言えます。

マクレランド「動機と3つの鍵」


アメリカの心理学者デイヴィッド・マクレランドは「人の動機こそが仕事場で成功するかしないかを決める最良な予言である」と考えました。

その動機は、

①力への欲求(他者への影響をもたらし、管理しようとする衝動)
②達成への欲求(努力を惜しまず、うまく改善しようとする衝動)
③帰属への欲求(他者との間にあたたかい人間関係を形成・維持しようとする衝動)

の3つの欲求の内、一つが主導的なものになり、当人の作業効率を形づくるとマクレランドは主張しました。

支配したいという「力への欲求」はマネージャーやリーダーにとって重要な動機ではあるものの組織と会社のために発揮されなければチームとして機能しなくなります。

マクレランドの考えでは、質の高い仕事は「達成への欲求」から生まれると考えました。

目標に向かって向上し、競争心を駆り立てるからです。

「帰属への欲求」は他者との良好な関係を好みますので、その傾向が強いものはマネージャーになることはまずないと言います。

これらの動機付けは、無意識のうちに埋め込まれた人格的特性に由来するとしています。

それは自覚的に気づいている人は少なく、ヘンリー・マレーとクリスチアナ・モーガンらが考案した無意識の諸相を表に出す「主題統覚検査(TAT)」を活用することをお勧めしている。

■主題統覚検査(TAT)
TATはロールシャッハ・テストに代表される被験者の無意識的なパーソナリティ(性格傾向)を測定することを目的とした投影法の検査の一つです。TATでは人物やあらゆる状況が描かれたカードを提示し、被検者に自由なストーリーを語ってもらい、それを臨床家が分析する方法を取っています。

マクレランドは、このTATの結果をリクルートの側面で分析する革新的な仕組みを考案し、ビジネスにおける採用面で大きな貢献をしています。

「動機付け面接法(MI)」とは?


「動機付け面接法(motivational interviewing:MI)」とは、アメリカの心理学者ウィリアム・ミラーとイギリスの 心理学者ステファン・ロルニックらによって開発された心理技法です。

アルコール依存症の治療として良い結果がもたらされ、ギャンブル依存、禁煙、断薬、ダイエット、依存性に対して有益な効果を上げるアプローチとして定着し、ビジネスや教育現場などでも応用されています。

クライエントの中にある「やめたい」と「本当はやめたくない」といった矛盾に注目し、その両価性(アンビバレンス)を認めつつも矛盾を解消することで動機付けを明確化し、目標行動を行いやすくします。

クライエントを中心とした面接・カウンセリングを行い、尊重的態度で共感されながら「気づき」や「動機が強まる」が得やすくなるように進んでいきます。

「動機付け面接法(MI)」の原理として、

①クライエントを理解し、共有する
②矛盾を知り、解消していく
③変わりたくない気持ちにも寄り添い、受容する
④クライエントの自己決定を尊重する

などクライエントとラポールを確立し、行動変容のための下準備をサポートしていきます。

■Prochaska と Clemente (1983)による「行動変容ステージモデル」も参考になります。
①変わらないとまずいかなと思っているけど抵抗感が強い「無関心期(前熟考期)」
②6ヶ月以内に行動を変えようと思っている悩んで熟考する「関心期(熟考期)」
③1ヶ月以内に行動を変えようと思っている「準備期」
④行動を変えて6ヶ月未満の「実行期」
⑤行動を変えて6ヶ月以上である「維持期」

おわりに


4つの動機付けとマクレランドの動機と3つの鍵、 動機付け面接法(MI)について説明していきましたが、いかがだったでしょうか?

何かを変えたいとき、なにかを始めたいとき、その動機がいかに重要で、その動機の種類によって即効性や継続性が異なることも理解していただけたら幸いです。

特に動機には2つの相反する動機の葛藤によって矛盾が生まれ、うまくいかないことも多くあります。

その矛盾を動機を明確にし、今後の人生をどのように生きていくかを再検討していくことでそれらが再構築され、進み良い状態へと変容していきます。

といっても途中の困難やあきらめといった障害は多くの場合で存在します。

そういった大波を乗り越えることができるのも「動機付け」によるモチベーションがあるからだと思います。

カウンセリングしらいしでは、自分だけではなかなか見えづらい「動機付けの明確化」と「矛盾の解消」を行っていくカウンセリングを行っております。

こういった機会にお役に立てください。

最後までお読みいただきありがとうございます。

記事監修
公認心理師 白石

「皆様のお役に立つ情報を提供していきたいと思っています」

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