過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここではアルフレッド・アドラーと「劣等感コンプレックス」「個人心理学」について書いていきたいと思います。

アルフレッド・アドラーについて


アルフレッド・アドラー

アルフレッド・アドラー(Alfred Adler)は1870年ウィーンの郊外で穀物商を営む中産階級家庭の6人兄弟の次男として生まれます。

幼い頃は、くる病や声帯の痙攣に悩まされたり、虚弱であったようです。

弟の幼死や5歳ごろの肺炎で死にかかった経験などからアドラーは医師になりたいと志すようになりました。※往診に来ていた医師の酷い態度と言葉に憤りを感じ、良い医者になると決意したとも言われています。

ウィーン大学で医学の学位を取得後、中下層階級の人が多く住む診療所で眼科や内科の医師として勤務します。

視力の弱い人が聴覚を非常に発達させていることや弱さを努力で克服している患者との出会いが多くあり、「器官劣等性」「補償」などの概念の提唱に繋がっていきます。

1897年には社会活動家のライザ・エプシュタインと結婚し、のちに4人の子供をもうけました。

ジークムント・フロイトから招かれ、ともに研究やウィーン精神分析学会の立ち上げに関わりますが、見解や意見が異なり彼の元から離れていきます。

フロイトの唱える「無意識的衝動」によるもの以外にも社会的要因による影響があることをアドラーは主張していました。

1911年、アドラーは仲間とともに自由精神分析協会(のちの個人心理学会)を設立します。

1916年からの第一次世界大戦では軍医として従軍し、神経症患者の診察を行います。

1922年には児童相談所を設立し、精神的な健康を作る上での考えを多くの人々に伝えていきました。※無給で働く心理学者が運営する児童相談所(クリニック)のモデルはここからヨーロッパ全土へ広がっていきました。

世界大恐慌後、1935年にアメリカに移住し、2年後に亡くなるまで多忙な毎日をおくられました。

アドラーの心理学と理論はその当時よりも時が経つにつれて評価が高まり、1952年にアメリカ・アドラー心理学会が設立されました。

日本でも近年「嫌われる勇気」といった書籍によりブームとなりました。

主著には、

1912年「神経質について」
1927年「個人心理学の実践と理論」
1927年「人間本性の理解」

などがあります。

「器官劣等性」「補償」「劣等コンプレックス」



器官劣等性とは、もともと生まれ持って機能的に劣っている身体的機能のことです。

人間は他の人より優れていたい(優越追求)や劣っていたくないという欲求を持っており、無意識的に「劣っていると感じる」状態から「劣っていない状態」「同等な状態」「優れている状態」へと向かおうとすることを「補償」とアドラーは呼びました。

※行き過ぎると「過補償」という状態になる。

そしてこの器官劣等性に注意を払い過ぎると「劣等コンプレックス」に陥ることもあります。

劣等コンプレックス(inferiority complex)とは、

・自分は劣っていると感じる
・確信が持てない
・自己肯定感の不足や疑念
・個人にも集団にも起きる
・一度出ると強められる方向に進みやすい
・自尊心を回復する補償行動も多くなる
・モチベーションになる場合もあればそれが低下する場合もある

といった特徴があります。

この劣等コンプレックスは、

・内気な性格
・子供の時の成長環境
・精神的・肉体的制限や器官劣等性
・差別的特徴
・経済状況や地位、性別
・神経症

などによって引き起こされる可能性が高まるとしました。

アドラーはこの劣等感や劣等コンプレックスを過剰に埋め合わせようとする「過補償」の状態が神経症の原因だと考えました。

また「神経症は絶えず劣等感を当人にもたらしてしまう」とアドラーは言いました。

しかし劣等感は全ての人が持っているもので、病気ではなく、むしろ健康で努力と成長のための刺激であるとアドラーは言っています。

⬛️優越コンプレックス
劣等感を利用しながら人の同情や支援を引き出したり、人を見下して自分を満たそうとすることであったり、優越性を提示して周りをコントロールしようとすることを「優越コンプレックス」とアドラーは呼びました。
優れた自分を見せることで劣等性を補償するという意味で劣等コンプレックスの一種であるとしました。

個人心理学


個人心理学(individual psychology)はアドラー心理学とも呼ばれ、個人を分割の集合体として観るのではなく、分割できない個人全体として観ていく心理学です。

個人心理学には、

①「目的論」–個人の目的と創造性を大切にする
②「独自的主体性」–その人らしい独創的な主体性を大切にする
③「全体主義」–矛盾や葛藤、対立などはなく、全体として目的に向かっている
④「社会統合論」–人間は社会的な存在でありm多くの問題は対人関係
⑤「仮想論」–人間は自分をマイナスに感じやすく、相対的マイナスから相対的プラスに向かって行動する

といった5つの基本理論があります。

アドラー心理学での治療は、来談者の「共同体感覚」を育成する目的でカウンセリングや心理技法を用いています。

共同体感覚とは、人間のコミュニティやグループでともに大切にしている感覚やモラルやルールといった見えない共同的な感覚のことであり、非常に利己的で自己中心的であれば問題が起きやすくなります。

どのような相対的マイナスを感じ、どのように補償して、どのような相対的プラスを目指しているのか、を知る「ライフスタイル分析」を行うことも特徴的です。

アドラー心理学では、その人が日常生活の困難を解決できるように援助することを「勇気付け」といいます。

それは相手の褒めるといった気分を良くすることが目的ではなく、困難の解決の援助を行うことです。

褒めるということは上下関係を前提としているため安易に褒めるという形よりも当人が自分の力を信じられたり、勇気を育むことができるような表現が大切になります。

⬛️課題の分離
ついつい人の課題も自分の課題にしてしまうことが多い中で、その課題が本来誰のものであるかを明確化し、介入しないようにしていく考えです。
他人の課題と自分の課題がわかったら、自分の課題だけを行うことが重要です。
例えば、「批判された」は相手の課題、「批判されて悩んだ」は自分の課題といった感じです。

アドラーの名言

アドラーは多くの名言を残し、今に伝えられています。

その中のいくつかをご紹介します。

「人間である」とは、劣っていると感じることだ。

アルフレッド・アドラー

困難を克服することは勇気と自尊心、そして自分を知ることに繋がる。

アルフレッド・アドラー

機嫌の悪い時には、劣等感のサインであると解釈する必要がある。

アルフレッド・アドラー

人間にとって価値のある達成とは、社会的に有益で有用なものだけである。

アルフレッド・アドラー

状況によって意味が決まるのではなく、私たちがどのように意味を与えるかによって意味が決まるのだ。

アルフレッド・アドラー

経験が思考や失敗の原因ではない。私たちが俗に言う「トラウマ」という経験からショックで苦しむのではなく、ショックから私たちの目的に合うようにトラウマを作るのだ。

アルフレッド・アドラー

※最後の名言は、賛否両論あると思いますが、そういった視点も持っているとそういうケースに対処することができます。

参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

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