「悔しくて悔しくて仕方ない」「悔やしさにずっととらわれている」「ああすればよかった」「こうすればよかった」など「悔しさ」と「後悔」で困ってしまうことがあります。

一時的であることも多いかもしれませんが、長期にわたってとらわれ、苦痛を感じてしまうことがあります。

ここでは「悔しさ」と「後悔」について理解が促されるように考察し、カウンセリングの有用性について説明していきます。

「悔しい」とは何か?


悔しさを辞書から参照すると

1物事が思うとおりにならなかったり、はずかしめを受けたりして、あきらめがつかず、腹立たしい気持ちだ。残念でたまらない。「負けて―・い思いをする」「―・かったら見返してやれ」
2後悔される。くやまれる。「わが心しぞいや愚 (をこ) にして今ぞ―・しき」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

と説明されています。

この説明を逆に考えると

・物事に対して思い通りにしたかった
・はずかしめを受けたくない
・あきらめたくない
・負けたくない(勝ちたい)

などの気持ちがその背景にあるのかもしれません。

成功や達成、勝利などの「良い想定」が失敗や裏切られるような結果になった時に「悔しい」と感じると言えます。

またそのプロセスに対しての「頑張った思い」が強ければ強いほど、思い通りの結果にならなかった時の「悔しさ」は比例して強くなります

ですので悔しさは「頑張った証(あかし)」と言われています。

また

・屈辱感を感じるとき
・能力不足を感じるとき
・どうしようもできなかった
・理不尽なことが起きたとき
・辱め(はずかしめ)られたとき
・罪悪感を感じるとき
・邪魔をされたとき
・未練を感じるとき
・運が悪くうまくいかなかったとき

などでも「悔しい」と感じます。

悔しさは「クソー!!」というような怒りの情動がでてくるものもあれば、「しょぼんとする」ような残念でたまらない気分になってしまうものもあります。

起きた出来事を受け入れられず「否認」したい時に怒りは出やすく、少しずつ受け入れが進みながら残念で落ち込んだり、悲しんだりすることがあります。

そして理由を探していくと「ああすればよかった」「なぜあのときこうしなかったんだろう」と後悔します。

「悔しさをバネに」「悔しいから見返す」という伝統的な言葉があるほど「悔しさ」は活用してエネルギーに変えていけるものです。

しかしいつも活用できるかというとそうでもありません。

「悔しくて悔しくてしかたない!!」と人を妬んだり(ねたんだり)、恨んだり(うらんだり)、仕返しをしたくなったり、「なんて自分はダメなんだ」と自分自身がひどく落ち込んだり、ショックを受けて身動きできなくなったりしてしまうこともあります。

後悔(こうかい)とは何か?


後悔とは、後になって「自分がしたこと」を悔やむことを表す言葉です。

失敗やうまくいかないことなどを経験すると「あのときこうすればよかったんじゃないか?」「なぜあんなふうにしたんだろう」と悔やんでしまいます。

失敗やうまくいかないことがあっても「やりきっている」場合や「非の打ち所がない」状態であればあまり後悔することは少ないかもしれません。

逆に言えば、

・やりきれなかった
・頑張る余地があった
・改善の余地があった
・非の打ち所があった
・うまくできなかった
・見通しが甘かった
・理想的ではなかった

場合に後悔をするものです。

後悔は、「至らなかった点」「改善すべきこと」などがみえてくることから良い側面を持ちますが、自分を過剰に責めたり、自己批判の嵐に巻き込むことは本人にとって非常に苦痛で有益でないことも多くなります。

「悔しい」と「後悔」の違い

「悔しい」は出来事が起きてすぐに感じることの多い感情です。

悔しさの怒りや残念な思いが表に出た後、「こうすればよかった」「ああしていたらうまくいっていたのでは?」というような「後悔」がでてきます。

後悔は、客観的に見ることが出来るには少し時間を要するので「後になって悔やむ」と書く字のごとく、少し後になって出てくることが多いかもしれません。

悔しいときは出来事に対して主観的な視点にいる場合が多く、後悔は客観的な視点で生まれやすくなります。

出来事の直後に「悔しさ」が生まれ、修正点や原因、改善点をみつけていくと「後悔」になっていきます。

しなしながら後になっても悔しいこともあり、後悔しているときも○○しておけばよかったと悔しいため、この記事では明確な違いを説明する場所ではないので割愛します。

ただ悔しさも後悔もうまく活用すれば「良いもの」になりますし、過剰な自責や自己批判、他者への恨みや憎しみなどが強くなればなるほど有益ではないものになってしまうことがあります。

しかし自責や自己批判、他者への恨みや憎しみ、怒り、許せない思いや感情がでるにはそれなりの理由がありますので、カウンセリングではそのような理由や要因にスポットを当ててセッションを組んでいくことも多くあります。

後悔と反芻


後悔をして自分を責めたり自己批判をして、「なんて自分はダメなんだ」「どうして自分はこうなっちゃうんだろう」と自分の価値を下げてしまい、自信も失ってしまうことがあります。

そのように弱くなった自分でまた活動するのでなかなかうまくいかないことが多く、再度後悔し、自責や自己批判から自分の価値の低下と自信喪失を繰り返すループに入ってしまうことがあります。

「またこうなったらどうしよう」と不安や恐怖に苛まれることもあります。

後悔の嵐で、まるで「地獄」のような苦しさが続いてしまうことがあります。

「なんでこんなに落ち込みやすいんだろう」
「なんであんなことをしてしまったんだろう」
「なんでいつもうまくいかないんだろう」

と今の状況や過去の出来事を何度も繰り返し考える思考や疑念のことを心理学用語では「反芻(読み:はんすう、英語:rumination)」といいます。

問題を解決・改善するための「考え込み」や気持ちの軽減を目的とした「気晴らし」であればいいのですが、問題を自分の至らないところへと結びつけ、自責することで必要以上に自分の価値を低下させ、自信を失い、抑うつ状態へと発展させてしまう反芻には注意が必要です。

自分の抑うつ状態に陥った原因などに対して「なんでこうなったのだろう」と消極的に考え続けてしまうことを「抑うつ的反芻(英語:depressive rumination)」といいます。

まるで自動再生しているかのように毎日繰り返し頭によぎる「反芻」や「後悔」は経験していない方では理解できない苦悩があります。

自責と自己批判


自分を責める自責と自己批判の傾向が強くなればなるほど悔しさや後悔から発生する苦しみも強くなってしまいます。

責任の所在を自分へ持って行きすぎたり、必要以上に自分に批判的であったりすることは一つの失敗やうまくいかないことを大きな問題へと発展させてしまいます。

しかし自責と自己批判傾向が強い方にはそれなりの理由があります。

変わらない性格だと思っていることもありますが、解釈や捉え方、過去の経験などによって強めているケースや癖のようになっていることもあります。

心理的に向き合ったり、アプローチを行うことで変化していくことも多くあります。

悔しさと後悔に対するカウンセリング


多くの場合、慢性的に感じる悔しさや後悔で悩まれている相談者さん(以下クライエント)が

・どのような内容で悔しさや後悔がでているか?
・どのような苦痛や思いがあるか?
・どのような自責や他責、自己批判、他者批判があるか?
・どのように対処しているか?
・反芻はどのくらいあるか?
・そんな自分をどう思っているか?
・どうしていきたいか?

など全貌を把握できるようにクライエントのペースで話していただきます。

ある程度把握していても声に出して正直に話すという経験はあまりしていないこともあり、改めて自分の外に出すことで理解や気づきが進むこともあります。

そのような苦しい悔しさや後悔に至った経緯や出来事、捉え方、解釈は人それぞれですので、その方に合わせて最適な方法やテーマへ進んでいきます。

とても基本的ですが、「悔しい」思いを自分の話したい形で話していくことが非常に良かったりします。

自責と自己批判、反芻で慢性的に心的負担が蓄積している場合は、特にこころの重荷を下ろせるように話を進めていきます。

カウンセリングでは自分の思っている本音を声に出していくことが大切です。特に誰にも言えないようなことならなおさら重要になります。

自分の心の世界だけでさまよっている時には出ない「こころの動き」が出せるように思います。

話すということは基本的な欲求でありながら、好きなように話せるという機会は一般的には少なく、通常は制約があります。

そのような制約の少ない、秘匿性の高い守られた場所で話していく様はなかなか経験できるものではありません。

自分の中で処理しにくい問題でもそのような場で、共感的・受容的な態度に見守られながら話していくことで気づきが生まれたり、すっきりしたり、気持ちが楽になっていったりします。

慢性化した悔しさや後悔は、自分や人を「許せない」という強い思いを内在していることがあります。

「一生許せない」「墓場まで持っていく」といった重責があることもあり、許せない自分を許すことを始めながらどこまで「許す」かは状況や人によって異なります。

悔しさや後悔は「想定していた」世界とは異なる結果がでることによって発生しやすくなります。

想定していた結果と努力がどれくらい相関しているか?どのような改善点があるか?なども必要に応じてテーマとして扱っていきます。

頑張っても頑張っても結果が出ないことを繰り返していると「学習性無力感」を感じてしまうこともあり、諦めやすくなったり、身動きができなくなることもあります。(学習性無力感の詳しくは下記リンクでご覧下さい)

自分が思っている以上に頑張っているところがあることも多く、その頑張りを認めてあげることが大切な場合もあります。

そして頑張りどころをより適切なところへ変更するとスムーズに結果が得られることもあります。

悔しさや後悔は「諦められない」「受け入れられない」状況であることも少なくありません。

「諦め」や「受け入れ」がある程度進んでくると、主観性と客観性のバランスが取れてくるようになります。

悔しさや後悔を活かせる段階に入っていきます。

失った自信や自分の価値が戻ってくると明るさも取り戻し、現実を生きるエネルギーである活力も回復していきます。

「向き合って良かった」「あの出来事があってよかったのかも」と捉えることができるようになり、カウンセリングが終了に向かっていきます。

このように文章化すると簡単そうに感じてしまいますが、地道にその方のペースで一歩ずつ行っていくことが大切です。

焦らず、テーマを見極めて、今重要なところを毎回のカウンセリングで行っていきます。

時には向き合いたくない苦痛と向き合うと改善が大きく見込められるところに遭遇することがあります。

そういった点を回避せず、うまく向き合うことで、自分だけでは対処できなかった問題を乗り越えることができるようになったりします。

そういった乗り越えが自分の自信や自己効力感を高め、成長した自分でこれからの人生を歩めます。


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記事監修
公認心理師 白石

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