最近よく目にしたり、耳にする「HSP」という言葉があります。

繊細で敏感な人を指す意味でよく用いられていますが、ここではその「HSP」について詳しく説明をし、カウンセリングの有用性について検討していきたいと思います。

HSPとは何か?


HSP(Highly Sensitive Personの略名)とは、非常に繊細で、感受性が強く、敏感な気質をもった人という意味で、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士の研究によって提唱された概念です。

子供の場合は、Highly Sensitive Childと表記し、一般的に「HSC」と呼ばれています。

統計的には人口の15〜20%、5人に1人ぐらいの割合であてはまる性格的気質と言われています。

HSPは、病気ではなく正常な特性であるという前提を持ちます

生物学的には、人間だけではなく、多くの生き物にHSP気質を持つ種が存在し、生き残り戦略として「注意深さ」を持っています。

大胆派と繊細派がいて、人類は生き延びてきた

エレイン・N・アーロン

そのため怖がりであったり、引っ込み思案であったり、神経質であったりします。

HSP気質を持っていない人たちから誤解を受けやすく、理解されないため、自尊心が低くなってしまう傾向があります。

HSP気質を持つ方は、ストレスを感じることが多く、学校や職場、家庭で気疲れしやすく、生きづらさを感じることが多いとされています。

アーロン博士によると、HSP気質はすべて内向的といった単純なものではなく、70%は内向的、30%は外向的といった結果が調査によって明らかになりました。

HSP気質の特徴として、

・感覚が鋭い
・繊細
・敏感
・考えすぎる
・こだわりが強い
・気が散りやすい傾向
・内省的
・感情を強く感じやすい
・ストレスを感じやすい
・傷つきやすい
・細かいことによく気づく
・気疲れしやすい
・動揺しやすい
・緊張しやすい
・人に左右されやすい
・空気を読む
・人の気持ちをよく汲み取る
・環境に左右されやすい
・痛みや不快感に敏感
・想像力が豊か
・人より時間がかかる
・哲学的傾向がある
・芸術的傾向がある
・石橋を叩きすぎる
・驚きやすく怖がりやすい
・共鳴しやすい
・感情移入しやすい
・人見知りしやすい
・他社との境界線があいまい
・空想や妄想が多い
・大勢や騒がしいところが苦手
・静かな生活を望む
・一人になりたくなる
・ほかの人(子)と違う感じがする
・善意を大切にしている
・同時に処理することが苦手
・快適欲求が強い
・ミスや失敗を恐れる
・暴力的なものが苦手
・変化に対応しにくい
・競争が苦手傾向
・緊張しやすい
・洞察力に優れている
・気がつきやすい
・本質的なものを好む
・自己犠牲的傾向が強い
・直感力に優れている
・規則正しい
・感情をストレートに出さない
・身体症状や不安という形で表現しやすい

などがあります。

肯定的に活かされればいいのですが、これらの特徴によって現実的にうまくいかず、問題や悩みとなってしまうこともあります。

そういった「うまくいかない経験」を繰り返すことにより

  • 自己肯定感が弱くなる
  • 自己否定感が強くなる
  • 自尊心が低くなる
  • 自信が持ちにくくなる

などの特徴も併せ持つことが少なくありません。

HSPの人(子)には、厳しく注意したり、厳しく罰を与えて注意するよりも優しく理解を促すように注意する方が効果的であることもわかっています。

敏感なタイプに多い職業

昔から敏感なタイプに多い職業として

  • 科学者
  • カウンセラー
  • 宗教家
  • 歴史家
  • 弁護士
  • 医師
  • 看護師
  • 教師
  • 芸術家

などがあります。

敏感さが個性となって、仕事へ反映されます。かえってそのほうが繊細な仕事ができるものです。

4つのHSPの特徴「DOES(ダズ)」


アーロン博士によるとHSPには、「DOES(ダズ)」と名付けた4つの特徴があり、この4つ全てに当てはまる人がHSP気質を持つと定義しています。

D:Deps of processing「物事を深く考える」
O:Being easily overstimulated「過度に刺激を受けやすい」
E:Being both emotionally reactive generally and having high empathy in particular「感情の反応性が強く、共感性が高い」
S:Being aware of subtle stimul「物事を繊細に感じる感受性が高い」

自分やお子さんが「HSPであるかどうか」を知りたい方の為にアーロン博士のHPに記載されているセルフテストのリンクを貼っておきます。

Are You Highly Sensitive?(日本語訳ページ)

HSCのセルフテストはこちらです。

Is Your Child Highly Sensitive?(日本語訳ページ)

HSSのセルフテストはこちらです。

High Sensation Seeking Test(日本語訳ページ)

アーロン博士の提唱する4つの気質


アーロン博士の提唱する4つの気質には、

  • HSP
  • HSS
  • HSS型HSP
  • 非HSP非HSS

があるとされています。

HSPは、上述したように非常に繊細で、感受性が強く、敏感な気質を持った内省的傾向のタイプです。14%の人が該当しているというデータがあります。

HSS(High Sensation Seeking)は刺激探求型気質を意味しており、静かな生活を好むHSPとは異なり、外向的傾向で好奇心が強いタイプを指します。 30%の人が該当しているというデータがあります。

HSS型HSPは、敏感や繊細さを持っているが、刺激を求めてしまう人のことを指します。好奇心旺盛だけど傷つきやすく、疲れやすい特徴があります。6%の人が該当しているというデータがあります。

非HSP非HSSは、上記特徴に該当しないタイプを指します。50%の人が該当しているというデータがあります。

HSPかどうか判明させたほうがいいのか?


人によって「HSP」と判明して、心が救われる方もいれば、嫌悪感に苛まれる方もいます。

前者の場合、生きづらさや自分の性格的気質に悩まされてきたことがこの新たな概念によって納得性を持つことができ、心が救われた気分になります。

「HSPだから今までこうだったんだ」という理解により、不思議と安堵したりもします。

そのように理解して、その後の人生がより良くなる方向へと進むことができれば、それは喜ばしいものです。

後者の場合では、そういった気質で自分を規定されたくなかったり、その気質を認めたくなかったりするような理由があるようです。

当カウンセリングでは、こちらの判断でHSPかどうかを決めておらず、クライエントにとって「最善であればどちらでも良い」と考えるスタンスを持っています。

ただ注意が必要なところがあるように思います。

HSPに関して、「この気質は変わらない」という表現をされている場合がありますが、果たしてどうでしょうか?

ショックを受ける出来事に遭遇し、傷つき、自信を失っている時にはHSPのような気質の特徴は強くなる傾向があります。

元気で自信に満ち溢れている時はHSSのような気質の特徴が強くなる傾向があると思います。

またカウンセリングや心理療法を行ってきた経験からクライエントが自分と向き合い、それを実生活に生かして行動することにより「気質の変容」が見られることを沢山見てきました。

最新の研究では遺伝子のスイッチがオンになったり、オフになったりすることが明らかになっています。

確かに変わらないところや変える必要のないところもあるでしょうが、変わるところもあるように思います。

また気質に固着して考えることにより、自分のそれ以外の能力が発揮できないこともあります。

「HSPだからHSSの人とは合わない」「自分はHSPだからHSSは持っていない」といったように人生の可能性をいつのまにか狭めてしまうことがあります。

何よりアーロン博士の提唱したこれらの概念によって、うまく活用され、人生がより良くなることを望みます。

HSP気質に対するカウンセリング


HSP気質を持っているご本人による相談か、HSP気質を持つ子供のお母さんの相談か、HSP気質を持つ人の親、旦那さん、兄弟姉妹、彼氏、彼女、友人などの相談か、によってカウンセリングが異なります。

本人による相談では、自分のどのような気質が問題になっていたり、悩みになっているかを明らかにしていきます。

子供の頃から同じように問題であったか?少し改善したり、悪化したりすることはなかったか?などを思い出しながらみていきます。

そういったところからその気質の特徴が見えてきます。その気質を強化するもの、弱化するものがわかるということです。

過去に起きたショッキングな体験によって強化されている場合が多く、精神的ショックとそこから発生する「恐怖-過敏-不安」のメカニズムを知る必要があります。

「恐怖-過敏-不安」のメカニズムは、精神的ショックを受け、恐怖を学習し、自己防衛本能が作動すると「過敏性」を強くして警戒を高め、不安を用いて回避しようとします。

それはもともと持っていたHSP気質を格段に強化してしまうことにつながります。

このような過去の出来事に焦点を当てて、感情のリリースや「認知の偏り」の修正や変容、肯定的・建設的な捉え直しなどを行っていきます。

うまく行うことができるとより一層の心的成長が得られます。マイナスがゼロになるのではなくマイナスがプラスになる感覚です。

HSP気質自体の本人の評価も大切になります。

否定的に捉えている評価や歪んだ評価を行ってると本人の持っているエネルギーまで歪んでしまいます。

そのエネルギーによって「生きづらさ」を強めてしまいます。

その歪みも生きてきた証でもありますが、本人の気持ちに寄り添いながら適切な評価にしていくことが大切です。

また自己肯定感が弱くなったり、自己否定感が強くなったり、自尊心が低くなったり、自信が持ちにくくなったりしていることも少なくありません。

必要以上に自分の価値を低くしている場合が多く、その過剰さに気づくことができるようにカウンセリングを進めていきます。

進んでいくと、どれほど自分が苦しんできたかわかるような「感情」や大切にしてきた「信念」が見つかったりします。

そういったところをカウンセラーとクライエントが協同して大切に、丁寧にみていきます。

その当時は、受け入れ難かったものでも、今では受け入れることができるようになるものです。

特に重要なのが自分の「弱さ(脆弱性)」です。

脆弱性は、先ほどの「恐怖-過敏-不安」と連動していることが多く、HSPの過敏性や繊細さと密接な関係があります。

実際、その弱さは「受け入れるべきではないもの」として否認されていることが多いものです。

しかし、その弱さを受け入れると「弱さを受け入れた強さ」を持つことにつながります。

それはHSP気質を肯定的に捉えることにつながるのです。

このようにカウンセリングが進んでくると本来の自信や自己肯定感を取り戻し、エネルギーが湧き、HSP気質をポジティブに運用できるようになります。

実際は、こんなにスマートに進まないかもしれません。ときに苦しいところに向き合い、逃げたくなることもあるかもしれません。

しかし乗り越えた後の素晴らしい景色とその経験を持って今後の人生を歩めるこころの財産は、何物にも変えがたいものです。

ご本人の相談ではない場合は、周囲の理解によっていかに本人が受ける影響があるのかを説明していきます。

お母さんが相談されるケースでは、心配が強くなり、その心配を子供が感じ取り、「HSP気質を持っている自分は良くない」と子供が汲み取ってしまうことがあります。

自己否定と直そうとしても直らないジレンマを抱え、学習性無力感や自己否定が強まり、自信を失ってしまうことも多々あります。

どのように方策を練っていくかはクライエントの状況にもよりますが、お母さんのこころの不安や心配を穏やかにしていくことが良好な結果に繋がりやすくなります。

本人がカウンセリングを希望しない場合、無理強いをすると良くない方向へ展開することもあり、まずはお母さんや周囲の人たちに対してカウンセリングを行っていきます。

お母さんや周囲の人が変化してくると察知するのが、HSP気質の子供さんです。

その時点で良好な結果が見られる場合もあれば、子供さんもカウンセリングを受ける流れになることもあります。

参考文献
ひといちばい敏感な子 エレイン・N・アーロン著
Highly Sensitive Person


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記事監修
公認心理師 白石

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