一生涯のうち6~7人に1人が罹患するという調査結果があるほど私たちに身近な「うつ病」ですが、医師の診断を受けて医療を受けている人はその全体の約25%と言われています。

残りの約75%の人たちは自分がうつ病であることに気づいていなかったり、受診しづらい状況があったり、医療を拒否しているなどのスタンスがあったりするようです。

そのような現状を踏まえ、「うつ病」について様々な角度から理解が得られるように説明し、カウンセリングの有用性についても書いていきたいと思います。

うつ病とは何か?


うつ病(英語:clinical depression)は世界で3億人以上の有病者がいると報告されるほど身近な気分障害です。

主な精神的な症状は、

  • 気分の落ち込み(抑うつ)
  • 気分が暗くなる・ネガティブになる
  • 過去の出来事を繰り返し考えてしまう(反すう)
  • 楽しめない・喜べない
  • やる気が出ない・思考力や集中力の低下(制止症状)
  • 焦燥感とイライラ感
  • 自分を責めてしまう
  • 自信の消失
  • 希望が持てない・絶望感
  • 大きな病気になっているのでは?と思う(心気妄想)
  • 過剰に失敗を思いつめる(罪業妄想)
  • お金があってもないと思い込んでしまう(貧困妄想)
  • 重い場合は、死にたくなるほどの苦痛と希死念慮

などがあります。

身体的な症状として、

  • 食欲や性欲が出ない
  • 不眠(過眠)
  • 疲れやすい・体の重さやだるさ
  • 肩こり・首コリ・頭痛・めまい
  • 胃腸症状
  • 口の渇き・動悸・息苦しさ
  • 月経異常

などがあります。

「うつ病」であると気づかずに未治療で日常生活を送られている方も多く、WHOの調査では世界のうつ病の未治療率が56.3%と推定するほど治療も約半数しか受けていない現状があるようです。

うつ病の種類

うつ病という言葉は一般的によく用いられますが、実際には非常に多くのうつ病の種類があります。

うつ病の分類や診断はアメリカ精神医学会が作成している「DSM」やWHOが作成している「ICD」が更新されるたびに分類や名称が変更され、情報が混乱されやすいこともあります。

ここでは、日本で良く用いられる精神疾患分類・診断のDSM-5での説明を見ていきます。

※以前はうつ病と双極性障害をまとめて「気分障害」としていましたが、DSM-5ではうつ病は「抑うつ障害群」、双極性障害は「双極性障害郡および関連障害群」と分かれて分類されています。

抑うつ障害群には、

  • 重篤気分調節症
  • うつ病/大うつ病性障害
  • 持続性抑うつ障害(気分変調症)
  • 月経前不快気分障害
  • 物質・医薬品誘発性抑うつ障害
  • 他の医学的疾患による抑うつ障害
  • 他の特定される抑うつ障害
  • 特定不能の抑うつ障害
  • 抑うつ障害群の特定用語

と分けられて分類されています。

大うつ病性障害と聞くとすごく重症であるイメージがしてしまいますが、これが一般的に言われるうつ病の医学的専門用語に該当します。※重症の場合は、「重症○○病(障害群)」と記載されます。

うつ病/大うつ病性障害では、

①ほぼ毎日ほとんどの時間で「抑うつ症状」がある
②ほぼ毎日ほとんどの時間で「興味や喜びの減退」がある
③食事療法を行っていないにも関わらず食欲の減退・増加による「体重減少・増加」が認められる
④ほとんど毎日、「不眠」もしくは「過眠」がある
⑤ほとんど毎日、心が落ち着かず動き過ぎる「精神運動焦燥」や心も体も動けない「制止」がある
⑥ほとんど毎日、「疲労感」や「気力」の減退がある
⑦ほとんど毎日、「無価値感」や「過剰な罪責感・不適切な罪責感」がある
⑧毎日、「思考力・集中力の減退」や「決断困難」がある
⑨「死についての反復的思考」がある

の9つの中で①および②の少なくとも一つを含み、合計5つ以上が同じ2週間以内に存在しているかが診断のポイントとなっています。

また臨床的に意味のある苦痛、社会的、職業的、ほかの重要な領域における機能の障害を引き起こし、物質による生理学作用や疾患、統合失調症、妄想性障害、躁病、その他精神病障害群によるものではないものとされています。

実際に精神科医の先生にお聞きすると、この診断法が全てではなく、上記に該当していてもうつ病ではないと診断されることもあり、また該当していなくても重度のうつ病として緊急性がある場合もあるとおっしゃられていました。

もう少し別の表現でうつ病の種類をみていくと、

  • メランコリー型うつ病(典型的なうつ病)
  • 仮面うつ病(精神的症状よりも肩こりや倦怠感など身体症状が特徴的)
  • 双極性障害抑うつ(俗に言う躁うつ病:Ⅰ型とⅡ型がある)
  • 気分変調性障害(軽度抑うつ症状が2年以上続く)
  • 非定型うつ病(遊びでは気分が良い特徴があるうつ病)
  • 季節型うつ病(冬季と夏季に発現するうつ病)
  • 微笑みうつ病(笑みを絶やさないために気づかれにくい)
  • 婚前うつ病(マリッジブルーと言われる結婚前のうつ病)
  • 産後うつ(マタニティーブルーと呼ばれるホルモンバランスの乱れによる)
  • 退行期うつ病(60代くらいの老年期にかかりやすい)

などがあるとされています。※( )内は一般的なわかりやすく、端的に説明しています。

いろいろな診断や解釈、先生の臨床経験、エビデンス、DSMやICDの更新により分類や診断基準も変更されるため、詳しくは主治医の先生に相談し、自己判断をしないことが大切です。

そもそも「抑うつ」や「反芻」って何?

抑うつ(英語:depression)とは、気分が落ち込んだり憂鬱で、意欲が低下した状態のことを指します。

鬱々(うつうつ)とする、鬱っぽさなどを表す言葉です。

医学的には「抑うつ状態」と表現されますが、一般的には「鬱っぽい(うつ状態)」という言い方をすることが多く、基本的には同じ意味です。

抑うつについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

反芻(はんすう)とは、「なんでこんなに落ち込んだんだろう」「なんであんなことをしてしまったのだろう」という考えが繰り返し浮かんできたり、関係のないことへ飛び火して、ネガティブな思考を繰り返してしまうことです。

考えたくないのに浮かんでくる想念や思考に悩まされる場合、この反芻によって起こっていること理解する必要があります。

特に「抑うつ的反芻」は、自分の抑うつ気分や抑うつ気分に陥った原因や結果を消極的に考え続けてしまい、抑うつ状態を慢性化させてしまいます。

反芻には、「考え込み型」と「気晴らし型」の2つに分けられることが多く、ポジティブな場合もあれば、ネガティブな場合もあります。

問題を解決・改善するための「考え込み」や気持ちの軽減を目的とした「気晴らし」であればいいのですが、問題を自分の至らないところへと結びつけ、自責することで必要以上に自分の価値を低下させ、自信を失い、抑うつ状態へと発展させてしまう反芻には注意が必要です。

問題を回避・保留するよりも苦しい方法ですが、問題に直面・対峙する方が反芻による慢性的な悪影響を受けにくくなることが多いのですが、無理をして行うのも危険な時があります。

専門家に相談しながら安全面を確保し、適切に行うことが推奨されます。

反芻について詳しくはこちら

学習性無力感とうつ病

学習性無力感(英語:Learned helplessness)とは、ポジティブ心理学で有名なマーティン・セリグマンが提唱した概念で、努力を重ねても望む結果が得られない経験が続くと「何をしても無駄だ」と認知するようになり、不快な状態を乗り越えようとしたり、脱する努力を諦めてしまうことを指します。

学習性無力感は、乗り越えよう、戦おうという方向に行かないばかりか、逃げたり回避しようとすることすらできなくなることも意味しています。

繰り返し失敗してしまうことによって「もう無理だ」と諦めた経験はないでしょうか?

だれでも軽いものであれば経験したことがあると思います。

自分が苦手だと思う領域の中には、このような失敗の繰り替えしと学習性無力感によって形成されたものも多くあるかもしれません。

重いものになるとやる気が出なくなり、無気力状態になってしまいます。

監禁、虐待、暴力、人格否定、いじめ、モラルハラスメント、自分の価値や尊厳が踏みにじられる経験によって大きな精神的ストレスとなり、学習性無力感に悩まされてしまいますが、繰り返し小さな挫折や失敗を繰り返しや積み重ねによっても発現します。

学習性無力感は、不快な感覚である嫌悪刺激の量に左右されるというより、コントロール不可能な体験によって学習性無力感は大きな影響を受けるとされています。

※嫌悪刺激とは、嫌な不快な刺激を意味し、研究では電気ショックなどを指します。

セリグマンは犬の実験から学習性無力感とうつ病の内容はほぼ同様であるとする「うつ病の無気力感モデル」を提唱しました。現在において「うつ病」=同モデルという認識では全て説明がつくものではありませんが、うつ病などにおける「無力感」や「無気力感」を説明をする上での一つのモデルであると言えます。

詳しくは、「学習性無力感」−知っていると役に立つ心理学をご覧下さい。

うつ病の原因


うつ病のメカニズムや原因に関して様々な研究が行われており、新たな発見も多いですが、メカニズムはまだすべてわかっていません。

今現在わかってきている身体メカニズムの中では以下のようなことが起こっていると考えられています。※これらが単体のみならず複雑に絡み合ってうつの病態を作り出している可能性があります。

① 神経伝達物質のモノアミン類(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなど)の低下により心と体の活動がスムーズにいかない。※ドーパミン低下は喜びの消失、ノルアドレナリンは抑うつ・意欲の低下に、セロトニンの低下は不安や焦燥感に影響していると言われています。

②脳の栄養である「脳由来神経栄養因子(BDNF)」が上手く行き届かずに脳細胞が栄養不足によって縮小もしくは機能低下を起こしていると言われています。

③感情を抑える「帯状回(たいじょうかい)」や記憶に関わる「海馬」が縮小している。※慢性ストレスやトラウマティックな強いストレスによってコルチゾールが海馬の神経細胞を破壊することがわかってきています。

④血液中に含まれる「リン酸エタノールアミン(PEA)」が健康な人に比べて低下している。※PEAが低いほどうつ病の重症度が重くなる傾向があり、血液検査で測定できます。

⑤ストレスや生活習慣の乱れなどによる慢性的な体内炎症がサイトカインを暴走させ、脳に到達し、うつ状態を作り出す可能性がある。※研究でラットにサイトカインを注射するとうつ症状に類似する症状が発現しました。

⑥慢性的な緊張状態により脳神経系の接続や構造が変わってしまうことや慢性的な「脳疲労」が起こる。

⑦慢性疲労などにより大人しくしていたヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)の暴走。

うつの原因として生理的な要因を説明しましたが、それはあくまで身体側のメカニズムですから、そのような病態とメカニズムになってしまう誘因(原因)があります。

遺伝的誘因(原因)

親がうつ病を罹患されている場合、子供がうつ病になる確率は1.5倍~3倍になることが分かっています。

うつ病への易罹患性(なりやすさ)の遺伝率は男性29%、女性 42%という報告もあります。これは男女間において遺伝による性差があるということです。

心理的誘因(原因)

性格的特徴としては、

  • ストレスを溜め込みやすい
  • 息抜きやストレスの発散が苦手
  • 他人の目が気になるなど拒絶の過敏性が強い
  • 過剰な真面目度(真面目な特性自体が悪いわけではない)
  • 強すぎる正義感や責任感
  • 自己犠牲が強い
  • 他人への気遣いが強い(頼まれごとを断れないことも多い)
  • 自分でも気づかないほど頑張りすぎる
  • 執着心が強い
  • 頑固なところが多い、強い
  • 几帳面で完璧主義傾向が強い
  • 考えすぎる以降傾向が強い
  • 自信や自己肯定感が低い
  • 物事を悲観的・ネガティブに捉えやすい傾向が強い
  • 正直で、頼みごとを断れず、自分が先に折れ、几帳面で責任感などが過剰に強い(メランコリー親和型性格)
  • 八方美人で優柔不断で悩みが多い傾向が強い(循環気質)
  • 真面目さを周囲にも求める完璧主義傾向が強い(粘着気質)
  • 強い自己愛と万能感を持ち、人の評価が気になる傷つきやすさを持つ(ディスチミア親和型性格)

などがあるとされています。

すべての特性や特徴が悪いということではなく、その傾向が過剰に強い場合に心理的誘因(原因)になってしまうことがあります。

また必要以上に考えてしまうことを繰り返したり、気にしないことができなかったり、心理的な思考の癖・思い込みなどによっても影響してしまうこともあります。

自分でも無意識的に過去の出来事を繰り返し想起して、そのたびにストレスを強く感じる「反芻(はんすう)」によってうつ病も慢性化してしまうことも多くあります。

ストレスに対する強さや弱さは個人により異なり、「脆弱性(ぜいじゃくせい:ストレス耐性)」によっては非常に強いリスクになることも考えられます。

対処法であるコーピング能力も人によって異なり、ストレス処理能力を上げていくことでリスクを下げることができます。

意外と知られていないこともありますが、人に相談する・頼ることができる人はコーピング能力が高いとされています。(日本の伝統教育と見解が相違していますね)

レジリエンスとは回復力のことですが、そういった回復力が上手ではないこともリスクを高めます。

自信や自己肯定感が低い状態の方はうつ病になることで自己嫌悪になり、さらに自信や自己肯定感を低下させてしまう負のスパイラルが起きてしまうことも少なくないです。

性格的特徴や思考の癖、脆弱性、コーピング、レジエンスなど上記に書いたものはカウンセリングや心理的な学習、実践練習などである程度変容させることができ、成長の幅がありますので、自分がそうだからダメだと思い込まない方が良いと思われます。

疾患による誘因(原因)

脳の外傷や腫瘍、認知症、パーキンソン病、糖尿病、甲状腺機能低下症・亢進症、クッシング症候群、アジソン病、全身性エリテマトーデス(SLE)などの疾患により抑鬱症状や「うつ病」が併発されることがあります。

あるお医者さんは、うつ病と感じても甲状腺の検査を必ず行うとおっしゃっている先生もいます。

自分自身で決めつけず、一応全身の検査を行なった上で疾患がないかを調べることが推奨されています。

薬剤性誘因(原因)

人によってはお薬によってうつ病が惹起される場合があり、

  • ベンゾジアゼピン
  • ステロイド
  • インターフェロンα(IFNα)
  • 性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト(GnRH誘導体製剤)
  • H2受容体遮断薬の胃薬
  • 降圧剤
  • 抗がん剤
  • 抗結核薬
  • メタンフェタミンの乱用

などがあるとされています。

詳しくは薬剤師や医師の先生に相談されてください。

※アルコール依存性もうつ病のリスクを大幅に増加するというデータもあります。

環境的誘因(原因)

環境的誘因(原因) では、

  • 家族の中での問題(虐待・ネグレクト)や愛情・サポート不全
  • 栄養不足や睡眠不足などの生活習慣の乱れ
  • 会社や仕事における人間関係や過剰なストレス(プレッシャー)
  • 友人や恋人との人間関係や問題
  • 災害やトラウマティックな出来事の遭遇
  • 借金など経済的問題
  • 失業や低賃金などの雇用の問題
  • 死別・離婚・介護など大きな負荷がかかるライフイベント
  • 誰にも相談できない状況
  • 誰にも理解されない状況
  • 孤独や孤立
  • 未来に希望が見出せない絶望的状況

など環境的に強いストレスがかかる状況やなかなか理解されない環境、サポート・支援がない状況などによってもリスクが大きくなってしまいます。

精神的ショックを感じ、絶望感に苛まれ、よくうつ状態が慢性的になる出来事との遭遇がきっかけとなってしまうことも少なくありません。

進化生物学から考える「抑うつ状態」


進化生物学的に「抑うつ状態」は、社会的地位の競争に敗れた時などに生じやすい正常な反応であると考えられ、セロトニンと深い関係があります。

ここで間違えて欲しくないのですが、誰しも社会的地位やポジションの競争に敗れ、敗北し、人生において苦痛を感じるものです。

若い頃に遭遇しやすい「挫折」などが代表的ですが、その後の人生も精神的ショックを伴う出来事の遭遇は多くの方が体験されていると思います。

自分だけではなく、生物的な反応であると解釈し、否定的に受け取らないでお読みください。※もし仮にお読みいただき、苦痛を感じる場合は飛ばしてお読みください。

■オナガザルの調査と研究(Mcguire,Raleigh,1987)
群れの中での順位とセロトニン濃度が相関し、群れの順位が高いオスはほかのオスより2倍近くセロトニン濃度が高く、順位の低いオスはセロトニン濃度が低いことがわかりました。
群れの順位が高かったオスが順位降下すると、セロトニン濃度もそれに伴って低下しました。地位を失ったそのオスは、うずくまり、食事をとらなくなる人間と同じ「抑うつ状態」となりました。
抑うつ状態を示したオスにセロトニン濃度を上げる薬剤を投与したところ症状が消えました。
また普通の順位のオスにその薬剤を投与すると群れの中の順位が上がって行きました。

ランク(地位)理論

steavensとprice(1996)により提唱されたのがランク(地位)理論です。

抑うつとは、社会的地位(ランク)を失い、それを奪い返すことに自信を持てない時に生じる適応的反応であると考える理論です。

ランクを奪われた者が闘争や競争を繰り返すと、被害や損害は大きくなる可能性があり、適応度が減少するため「抑うつ状態」を示します。

この状態は、周囲に戦える状態ではないことを示すものでもあり、自分に相応しい地位に適応しようとするものでもあります。

「抑うつ期」は適応するために再構築する時期として建設的に肯定的に捉えるといいかもしれませんね。

この研究の中では、素直に負けを認めると抑うつが消えることが明らかになっており、逆に負けを認められない場合、抑うつ症状がなかなか消えないこともわかっています。

行動停止仮説

Henriques(2000)による行動停止説では、リスクが利益を上回る場合に適応的に「抑うつ状態」になると考える仮説です。

ようするに身体が「抑うつ状態」になることで強制的に行動を停止するということです。

自分を守るために抑うつが発動しているという考えです。

熟考仮説

Andrews Thompson(2009)による熟考仮説では、抑うつ状態になると同じことを何度も考える「反芻」が起こり、問題に集中し、熟考し、問題解決を行えるようにするために「抑うつ状態」が起こると考える仮説です。

私たちは抑うつや反芻を悪しきものとしてみるからこそ、否定的な抑うつや反芻を増強させているのかもしれません。

うつ病に対する一般的な治療


うつ病に対する一般的な治療として、

①薬物療法(できるだけ副作用が少なく効果的な治療薬を創るため日夜研究されています)
②精神療法・心理療法・カウンセリング
③休養(身体だけではなく心の休養も必要)
④環境調整(入院や自宅療養、社内調整、家族のサポート、デイケア、ソーシャルサポートなど)
⑤経頭蓋磁気刺激療法(薬剤に反応しない方に対して)
⑥電気けいれん療法(重度の場合に、身体への負荷が強いため慎重な検討がされる)

などが挙げられます。

また栄養不足や生活習慣の乱れなども必要に応じて整えていく必要性もあります。

これらは単体で行われるよりも患者さんの意思も汲み取りながら、「複合的」に組み合わせながらその方に適した方法を選択していくことが多いと思います。

近年では特に「生物-心理-社会モデル(BPSモデル)」の重要性が叫ばれています。

人間の心理的問題や身体的な症状・病気は、生物的要因(医学的要因)、心理的要因、社会的要因がそれぞれ分離しているのではなく、多くの場合、相互に影響し合った複合的な問題からなると考える理論です。

このモデルでは、医学的なアプローチ、心理的アプローチ、社会支援はそれらの状況に合わせて最適に治療・支援・介入が行われることが理想とされています。

そのため、いままで関係していなかった様々な専門家が協力し合い、自治体や公的サービス、企業なども連携し、「チーム医療」を行っていく必要性があります。

またうつ病に罹患されている方がこのBPSモデルを知っておくことによってより多角的な治療を受ける機会と選択ができるようになります。(BPSモデルについて詳しくはここに書いております。)

うつ病に対する心理療法とカウンセリング


うつ病に対して最も使用され、科学的根拠であるエビデンスも多いのが「認知行動療法(CBT)」です。

認知行動療法は大きく分けると、

①行動療法(不適切な学習を適切な学習にしていくために行動と実践を行う)
②認知療法(不適切な解釈や思い込みに気づき、適応的な方向へ変容していく)
③その他の療法(ソーシャルスキルトレーニングやアサーショントレーニングなど多種多様)

の3種類から構成されています。

セッションの場だけではなく日常生活に活用・習慣化できるように「宿題」や「課題」が設定されることも多くあります。

イギリスでは「認知行動療法(以下CBT)」をうつ病の治療の中心に据え、国営の心理療法センターにて心理療法を行う大きな方針を打ち出しました。

急性期は薬で抑えつつ休養をとり、落ち着いてからはCBTやカウンセリングを基本とした心理療法を行い、治療のみならず、再発予防も念頭に置いて行っています。

CBTについてより詳しくは「認知行動療法(CBT)」とは何か?をご覧下さい。

※うつ病には認知行動療法以外にも効果や有用性がみられる心理療法がいろいろあります。

心理療法や精神療法を行う前に「ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)」や「うつ性自己評価尺度(SDS)」などの心理検査が行われることもあります。

さて当カウンセリングでは、CBTとカウンセリングを中心にして様々な心理療法をクライエントの状態に合わせて最適に選択する統合的心理療法を行ってまいりました。

うつ病と一言で言ってもご相談者さん(以下クライエント)の性格や特性、人生での出来事、考え方など人によって千差万別です。

家族や親しい人から理解されず、自分でも自分を理解してあげられていない場合、しっかりとカウンセラーがクライエントをあたたかく理解し、自分自身を理解できる・許容できる素地をつくることが大切です。

なぜうつ病になったのか?といったところもその人の人生によりけりで、カウンセリングでお話をお聞きしながら進めていくと「重要なポイント」が見えていきます。

特にその方の納得できる到達点がしっかり認識でき、解消できなければ改善が見込めないこともあります。

上述したランク理論など進化生物学的な視点も知っておくと非常に効果が得られることが有り、特に「負けを認める」というのは非常に難しいですが、建設的にうまく認めることができれば非常に有用になるかもしれません。

またこの機会に次の目標や人生の目的を再設定して自分自身を再構築し、脱皮する・孵化させる時期という考え方もできるかもしれません。

また心理的な問題にフォーカスするだけでなく、行動に注目していくことで新たな境地が開けてくることも結構あるものです。

精神的ショックから立ち直りまでのプロセス」や「脳神経系の可塑性」などの情報も知っていると役に立つことが多くあります。

うつ病の約7割が1年以内に寛解(回復)し、残りの方はなんらかの部分的寛解が見られると言われていますが、長年にわたってうつ病と向き合い、付き合いながら人生を歩まれている場合も有ります。

人によってご状況も違いますし、重症度も違います。

簡単には比較できない特徴があり、比較していくと焦りや強い苦痛を感じてしまうご状況の方もいらっしゃいます。

お一人お一人のご縁を大切にしながら、その方にとって最適なサポートできれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

■参考文献

うつ病の性差について 杉山暢宏 田名部はるか
うつ病の平均的な治療期間を解説!1年以内に寛解へ向かう割合は? 病院探しガイド
DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き 日本精神医学会 日本語版用語監修
今日の診断指針 総編集 永井良三

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