病院で検査を行っても原因が不明な腹痛に悩まされることがあります。

一次的なものであればいいのですが、頻繁に症状が現れ、苦痛と不安に感じてしまうこともあります。

そのような時にカウンセリングと心理療法でできることについてまとめております。

少しでも参考になれば幸いです。

腹痛とは何か?


腹痛(英語:stomachache)には、

・内臓痛
・体性痛
・関連痛

の3種類があると言われています。

内臓痛は、消化管が収縮(縮まる)、伸展(伸び広がる)、痙攣(けいれん)することなどによって周期性のある差し込むような鈍痛が起きることが多い特徴があります。吐き気や悪心、冷や汗といった症状をともなうことがあり、歩行や体を動かすことで改善する傾向にあります。

体性痛は、体性知覚神経が刺激されることにより内臓痛よりも強い鋭い痛みと持続性が特徴で、体を動かしたり、咳をしたりすると痛みが強く感じる傾向があります。

関連痛とは、痛みの発生とは離れた臓器などが原因となって現れる体表に現れる痛みです。

疾患と腹痛の関係性を現す「内臓痛」

原因不明の腹痛について


頻繁に腹痛に見舞われる場合、病院やクリニックで検査を受けることが大切です。また検査の種類が少なければより多角的に多くの検査をしてくれる病院を探すことも重要です。

それらの検査でも物理的・器質的な異常が見つからない場合、

・機能性腹痛症候群(FAPS)
・過敏性腸症候群(IBS)
・機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)
・自律神経失調症
・身体症状症(身体表現性障害)
・心身症

などの病名や症候名が診断されることがあります。

お薬や治療によって改善が見られればいいのですが、なかなか改善や治癒が難しいご状況の方も多くいらっしゃるとお聞きします。

また心理領域でのアプローチや併用も有効であることが多く報告されています。

そういったご状況の方に対して心理領域からできることについて次に考察していきたいと思います。

原因不明の腹痛に対しての考察


原因不明の腹痛とは人により異なることも多いかもしれませんが、

・ストレスがあると腹痛が出る
・対象の場所にいる時や行く前に腹痛が出る
・対象の人物に会っている時や会う前に腹痛が出る
・必ずこの時間になると腹痛が出る
・因果関係がわからずランダムに腹痛が出る
・悩んだり、感情が強くなると腹痛が出る

などのような状況があります。

因果関係がストレスや心理的な影響と関係しているとわかるものから何が原因かわからないという状況もあります。

原因や因果関係がわからないということは非常に不安にさせるもので心的苦痛も当人の重い負担になってしまいます。

原因や作用機序などまだわかっていないところが多い前提でどのようなメカニズムによって「腹痛」が起きてしまうのかを考察していきます。

自律神経失調モデル

精神的ストレスなどによって自律神経のバランスが失調し、腹痛が誘発されてしまう可能性があります。

自律神経が整ってくると回復していく「腹痛」がこのモデルに該当すると思われます。

ストレスや囚われがなくなることによって改善しやすい傾向が有るように思います。

筋緊張モデル

ストレスや無意識的な力み(りきみ)などによって自分でも気づいていない筋緊張によって発現してくる「腹痛」のモデルです。

リラックスできない、安心できない、気が抜けないなどの状況で起こりやすいかもしれません。

筋緊張が起こりやすい身体状態を改善することが大切であり、リラックスしたり、緩めたり、ほぐしたりする身体的な事と心理的・神経的な穏やかさと安らぎが必要になります。

感覚過敏モデル

腹痛に関係している神経などが過敏になってしまうことにより発現してしまうモデルです。

その背景には、感染症後などの物理的影響やトラウマや恐怖条件付けなどの心理的影響が関連している可能性があります。

過敏性が穏やかになり本来の鈍感性を取り戻すことにより変容するタイプの「腹痛」がこのモデルに該当すると思われます。

時間はある程度かかりますが、特殊な心理療法を用いて改善していくことが多いものです。

腹痛は特に知覚過敏によるものが多いとされています。

少しの刺激で強い腹痛が出る神経システムや身体の状態を改善することが大切です。

学習-神経可塑性(シナプス可塑性)モデル

神経やシナプスは、くり返し長期にわたって使用することによりその神経(シナプス)を強化したり、新たな神経を形成する可塑性(かそせい)という仕組みがあります。

腹痛につながる条件付け学習などによってこのように神経の形成や強化が行われ、発現してしまうモデルです。

既存の学習を強化しないようにすることを基本として、消去する、新たな学習で再構築することによって改善するタイプの「腹痛」がこのモデルに該当すると思われます。

医学博士のマイケル・モコヴィッツは慢性痛をこのように定義しています。

慢性痛とは、「学習された痛み」である。

マイケル・モコヴィッツ

神経可塑性を利用した改善を視覚的にイメージしやすい画像を紹介します。

神経可塑性によるニューロンの変化(引用:神経可塑性と認知 COGNIFIT

上のイメージは新たな学習による神経ネットワークの変化を表しています。

恐怖・不安モデル

恐怖や不安が強ければ自律神経も乱れやすく、感覚を研ぎ澄まして身構える必要があるため「過敏」になりやすくなる傾向が有るように思います。

腹痛の痛みが怖い「腹痛恐怖」、腹痛がでることに不安を感じる「腹痛不安」などによって恐怖であったり、不安感が強くなりますので自律神経が乱れやすく長期化してしまう傾向があります。

恐怖や不安に対してアプローチを行い、それら感情が軽減すると改善がみられる「腹痛」がこのモデルに該当します。

身体化モデル

抑圧された衝動や葛藤、不安、ストレスなどが様々な身体症状となって表れる適応・防衛機制のことを「身体化」といいます。

人間には欲求が満たされない場合や心理的苦痛から自我を適応させたり、守るための働きがあります。

そのことを心理学では「適応機制」とか「防衛機制」といいます。

身体化は以下のようにさまざまな捉え方ができます。

  • 抑圧された衝動や葛藤、不安、ストレスの身体化
  • 相手にストレスを抱えていることを示すための身体化
  • 助けて欲しいという抑圧を表現する身体化
  • もう限界なのに限界と思えない自分に対しての身体化
  • 休む必要があるのに休まないことによる訴えとしての身体化

などのように自分や周囲の状況によってこのような捉え方が役に立つことがあります。

個人による差異

上記のような6つのモデルが単体もしくは複雑に絡み合って発現している可能性があります。

原因不明の腹痛に対するカウンセリングと心理療法を多く行ってきた経験から考察を行いました。

人それぞれ気になるところや背景などが異なっており、一概にひとくくりにできないような傾向があるように感じます。

原因不明の腹痛に対するカウンセリング


病院やクリニックに通い、治療されているケースではカウンセリングを行うこと、併用することを主治医に伝え、許可を得てはじめてカウンセリングを行うことができますのでご了承ください。

原因不明の腹痛に対するカウンセリングでは、どのような腹痛がどれくらいの頻度や強さで発現するか、どのようにして悪化し、どのようにして改善するか、どのようなことが悪影響や好影響をあたえているかどうかを改めて理解していく必要性があります。

多くの場合、相談されるクライエントのペースで話しながらカウンセラーは受容的・共感的にお話を聞いていきます。

話すということは基本的な欲求でありながら、好きなように話せるという機会は一般的に少なく、通常は制約があります。

そのような制約の少ない、秘匿性の高い守られた場所で話していく様はなかなか経験できるものではありません。

自分の中で処理しにくい問題でもそのような場で、共感的・受容的な態度に見守られながら話していくことで気づきが生まれたり、言葉に出して初めて外に出すような経験を通してすっきりしたり、気持ちが楽になっていったりします。

出来事などのストレスだけではなく、腹痛自体がストレスになっていることもあり、「腹痛⇒ストレス⇒自律神経の乱れや筋緊張、神経異常⇒腹痛」といった悪循環が起こっている場合も少なくありません。

そのためストレスだけではなく、症状自体のストレスも含めて「心的苦痛」や「つらさ」にスポットを当ててカウンセリングを行う場合もあります。

慢性化している場合はなおさら「つらい」ものです。

クライエントの状況から上記に挙げた

・自律神経
・筋緊張
・感覚過敏
・学習-神経可塑性(シナプス可塑性)
・恐怖や不安
・身体化

に対してアプローチを行っていきます。

上記の6つのモデルを理解していくことによって、原因がわからない苦しみが癒されたり、希望が持てるようになることもあります。

少しずつ気持ちが楽になり、腹痛も自然に改善が進んでくるとさらに気持ちが軽くなり、自律神経にも身体にも好影響を与えます。

「なんであんなに悩まされていたんだろう」という状態へ持っていけるように一歩ずつ丁寧に進めていきます。

腹痛が学習性の癖になっていることも多く、焦りが禁物です。

「まだ治ってない」「まだ治ってない」と毎度のように刷り込んでいくようなことが起きないように気をつけなければなりません。

どのように焦りを扱うか、どのように改善していくは人によって異なることもあり、カウンセリングの中でクライエントに最適化していきます。

ストレスの耐性(抵抗力)や回復力、対処能力(コーピング能力)を向上させることにより「ストレスに強くなる」といった成長を加える事ができるのもカウンセリングならではかもしれません。

そのような自己成長につながると、カウンセリング終了後の人生において大きな心的財産をつくることに繋がります。

なによりあの痛みやストレスに悩まされない毎日が過ごせますように大切にカウンセリングを行っていきます。


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記事監修
公認心理師 白石

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