カウンセリングや心理療法を行う上で心理アセスメントは欠かせない役割を果たしますが、相談される機関や専門家によって異なることも少なくありません。

民間では簡易的な場合も多いかもしれませんが、精神疾患を扱う専門機関や臨床心理士・公認心理師の相談では厳格に行う場合も少なくありません。

また民間、専門機関問わず近年この心理アセスメントの重要性が認識されてきています。

カウンセリングや心理相談を受けるにあたって、一般の方やクライエントが理解しておくと役に立つ「心理アセスメント」についてわかりやすく説明していきます。

心理アセスメントとは?


アセスメント(英語:assessment)とは、評価、査定、調査、鑑定、診断などの意味を持つ言葉です。

心理アセスメントとは、面接、観察、心理検査を通してクライエントの主訴や問題、それらの原因や背景、問題点を明らかにし、その問題を解決するための具体的な治療計画、技法などの説明をクライエントにわかり易く説明を行い、同意のもとで適切な介入と支援を行う上で必要不可欠な役割があります。

クライエントが訴える問題をさまざまな角度からカウンセラーが見立てて、最適な方法で改善、治療、解決していくために心理アセスメントがあります。

診断との違いは、問題点や不適応な側面だけではなく、その人らしさの性格、特性、潜在的な可能性まで捉えた全人格的な理解が行われるのが心理アセスメントの重要な点です。

カウンセラーが理解するだけでなく、クライエント自身もこのアセスメントの流れの中で自己理解が深まることも少なくありません。

心理アセスメントの目的として一番大切なのは、適切な介入や支援を行うことです。

そのためにクライエントを全人格的に理解する必要があります。

理解していく手法として、①面接法、②観察法、③心理検査があります。

面接法は、初回の面接であるインテーク面接などで行われる言語・非言語のやりとりを通してクライエントを理解しようとする方法です。

種類としては、構造化面接法、半構造化面接法、非構造化面接法の3種類があります。

必要に応じてクライエントだけではなく、家族との面接も行う場合があります。

観察法は、クライエントの実際の場所などでの態度や姿勢、行動や言動などを観察することでアセスメントしていく方法です。

心理検査によってクライエントの理解や面接や観察ではわからない情報を収集することでアセスメントを行う方法です。以下のような知能検査と性格検査があります。

知能検査・・・WISC、WAIS、WIPPSI、ビネー式知能検査
性格検査・・・①質問紙法:Y-G検査、MMPI、16PF、②投影法:ロールシャッハ、TAT、P-Fスタディ、文章完成法、描画法(バウムテスト、HTP、家族画)③作業検査法:内田クレペリン精神検査

これら以外にも大切なのが、関係機関からの情報です。

クライエントに関係する医療機関、教育機関、企業、福祉機関、その他相談機関からの情報は心理アセスメントで重要な情報となります。(クライエントやご家族同意の上)

とても大切になってくるのが、カウンセラーとクライエントの信頼関係です。

一般的にラポールと呼ばれる「信頼関係」が深まらないと自己開示が進まないケースもあり、クライエントを深く理解することができません。

理解できないことにより不利益を受けるのはクライエントになってしまいます。

ですのでカウンセラーや心理職に求められるのは、誠実さ、相手への尊敬、非審判的態度、受容的態度など人間的資質が重要になってきます。

できるだけ情報を協力的に提供することで最適最善な支援につながります

アセスメントを行う上で必要な情報の把握


アセスメントを行う上で必要な情報は、主訴や相談する機関によって異なることもあります。(主訴とは相談したい最も主要な訴えのことです)

ここでは基本的な相談による情報と精神科臨床での情報をまとめて紹介します。

なお情報は単純に把握するだけではなく、客観的な情報と主観的な情報を分けることはとても重要な意味を持ちます。

主訴および関連情報の把握

クライエントが訴える主訴とその他の問題、悩みなどの情報をしっかりと把握しなければアセスメントが意味をなし得ません。

そしてそこにはクライエントのニーズがあります。カウンセリングや心理療法が進む中でニーズや主訴が変化することもありますが、そこには大きな心理的な力動があり、適切に把握することが必要です。

関係ないかな?と思うことに重要な関係性がある場合があります

クライエントの基本情報の把握

アセスメントに必要なクライエントの基本情報には以下のようなものがあります。

基本情報・・・氏名、年齢、性別、職業、家族構成

身体的側面・・・病気や症状、生育状況、身体的特徴や運動機能など

心理的側面・・・認知や言語などの知的側面、情緒や情動、意識、注意、学力、精神症状、逸脱行為や違法行動、癖、遊び、特技、価値観など

社会的側面・・・家族や友人・学校・職場などの人間関係、就労状況、地域との関係性、金銭管理、社会的スキル

生活習慣や身だしなみ・・・食事、運動、睡眠、排泄、姿勢、表情、服装など

生育歴の把握

アセスメントに必要な生育歴の情報には以下のようなものがあります。

胎児期の母子の状態、出生時の情報、出生後の状況から、病歴、受診歴、死別、家族の疾患や障害、離婚、再婚、家庭環境、家族の関係性、経済的問題、学校での経験、友人関係での経験、暴力、いじめ、不適切なしつけ、就職、転職、犯罪などについて可能な限り把握することが望ましいとされています。

現在の状況

相談の特質上過去の話に遡ることも多いため、現在の状況や家庭状況もしっかり把握しておくことが大切です。

精神科臨床の6つの視点

津川(2009)が、精神科臨床の経験からまとめた、クライエントを理解するための心理アセスメントの六つの視点とポイントも紹介しておきます。

1.トリアージ A.自傷他害の程度、B.急性ストレス(悪化しているか)なのか慢性ストレスか、C.トラウマの有無(含むcomplex PTSD)、D.援助への動機や期待の程度、E.いま自分が提供できる援助リソース

2.病態水準 A.病態水準と防衛規制、B.適応水準、C.水準の変化、D.知的水準と知的な特徴(とくに、動作性能力)、E.言語と感情のつながり具合

3.疾患にまつわる要素 A.器質性障害・身体疾患の再検討、B.身体状況の再検討、C.薬物や環境因(大気など)による影響の可能性、D.精神障害概念の再検討、E.症状をどのように体験しているか

4.パーソナリティ A.パーソナリティ特徴(とくによい資質)、B.自己概念・他者認知を含む認知の特徴、C.ストレス・コーピング、D.内省力の程度、E.感情状態

5.発達 A.平均的な発達、B.思春期や青年期の特徴をはじめとする年代ごとの心理的な悩み、C.年代に特有の症状の現れ方、D.発達障害傾向の生むとその程度(発達の偏り)、E.ライフ・プラン

6.生活の実際 A.地域的な特徴、B.経済的な面、C.物理的な面(地理、家屋など)、D.生活リズム、E.家族関係を含む対人関係

支援計画をつくる


目標設定

クライエントと話し合いながら目標を決めていきます。

抽象的になりやすいのでできるだけ具体的にしていくことが大切です。

目標は長期的な目標だけではなく、小さな積み重ねが意欲の向上や自己効力感につながるため短期的な小さな目標を決めていくことも重要です。

可能な支援と適切な介入

クライエントの状況から目標に向かって進む中で最適な心理療法を提案することが大切です。

それには信頼性、妥当性、安全性に配慮がなければなりません。

近年エビデンス(科学的根拠)に基づいた心理アプローチが重要視されています。

ひとつの指標になるエビデンスですが、それだけで適切な支援と介入ができるものではないこともあります。

エビデンスに関してくわしくはこちらをクリック

エビデンスに基づきながらもさまざまな情報把握から最適な心理療法を提案していくことが大切です。

情報によってはより最適な相談先、専門家、専門機関が該当すると判断した場合は、カウンセラー側が他の専門機関への繋ぐリファーを行うことがあります。

全ては、クライエントの最善を鑑みて行われます。

カウンセラーのみならず、医療従事者や家族、職場、学校関係者、公的機関などさまざまな連携を行いながら最適な支援と介入が行われる必要があります。

人間の心理的問題や身体的な症状・病気は、生物的要因(医学的要因)、心理的要因、社会的要因がそれぞれ分離しているのではなく、多くの場合、相互に影響し合った複合的な問題からなります

そのような人間を総合的・多元的にみる新しい医学観のことを「生物-心理-社会モデル(bio-psycho-social model)」といいます。

くわしくは「生物-心理-社会モデル」をご参照ください

支援と介入の評価

カウンセラーのカウンセリングや心理療法などの支援・介入の評価をクライエントとカウンセラーが協同して評価します。

心理相談が進んでいく中でその都度行われ、最適化していくことが求められます。

アカウンタビリティとインフォームドコンセント


アカウンタビリティとは「説明責任」という意味で、インフォームドコンセントは、「十分な情報を得た上での合意」という意味があります。

心理職では専門的な立場からの説明責任とクライエントにわかりやすい説明を十分に行った上で合意された支援と介入を行う必要があります。

クライエントに合意がないまま、勝手な心理療法やカウンセリングを行うことは倫理的配慮に欠けます。

十分に説明が有り、納得し、協同していくことはカウンセリングと心理療法を行う上でとても重要な信頼関係の構築となり、クライエントの利益につながりやすい支援と介入になります。

終わりに


カウンセリングや心理療法を行うにあたって、心理アセスメントの重要性が少しでも伝われば幸いです。

心理アセスメントが的確に行われていることによって、実際その後に有益な影響をもたらすことが多いものです。

当カウンセリングでは、心理アセスメントをクライエントの状況や相談内容に応じて柔軟に行うようにしています。

何より皆様がよりよいカウンセリングや心理療法を受けられますように願っております。

ご拝読ありがとうございます。

■参考文献・サイト

津川律子『精神科臨床における心理アセスメント入門』金剛出版、2009年

公認心理師 現任者講習会テキスト 改訂版 日本心理研修センター監修