過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここではイグナシオ・マルティン=バロ「解放心理学」について書いていきたいと思います。

イグナシオ・マルティン=バロについて


イグナシオ・マルティン=バロ

イグナシオ・マルティン=バロ(Ignacio Martin-Baro)は1942年スペインのバリャドリッドに生まれます。

1959年にイエズス会に入り、南アメリカへ派遣され、現地の大学で哲学や文学、心理学、社会心理学を学び、博士号を取得します。

神学を学ぶためフランクフルトへ赴き、エルサルバドルでは研究を行い、1970年にはベルギーのセント・ジョン・バーチマンス大学で学士号を、1977年にはシカゴ大学で社会科学の修士号、同大学で社会心理学と組織心理学の博士号を取得します。

ホセ・シメオン・カーニャス中米大学(UCA)にて心理学の講義を行い、心理学部長を務め、1986年にパブリック・オピニオン大学研究所を創設します。

不正や暴力が日常茶飯事であったエルサルバドルの支配者に対して公然と批判的態度を示したため、軍の暗殺部隊によって暗殺されてしまいます。

彼の創設した「解放心理学」はのちの研究者たちによって引き継がれ、発展しています。

主著には、

1983年「行為とイデオロギー」
1989年「体系・集団・権力」
1994年「解放の心理学論集」

などがあります。

解放心理学


マルティン=バロはイエズス会の流れからエルサルバドルなど中央アメリカとの縁を持ち、社会的に抑圧された人々を助けることに人生を捧げた心理学者です。

既存の心理学は社会的・政治的問題を視野に入れていないことに疑問を感じます。

精神的な問題は、その個人のみで起きているのではなく、家族、友人、人間関係そして特に社会と政治が深く関わっていることを強く提起しました。

貧困と深刻な不平等を目の当たりにしたバロは、「トラウマは個人と社会の間の相互作用という観点から理解されねばならない」と語っています。

バロのこのような考え方は「解放心理学」と呼ばれ、当時の心理学の

①科学に道徳的要素が欠けていること
②白人、中流階級、男性を対象とした研究が非常に多いこと
③社会的不平等に対処できないところ

に問題があること批判的に示しました。

近年、カウンセリングや心理学の世界では「生物-心理-社会モデル(bio-psycho-social model)」という考え方が取り入れられてきています。

人間の心理的問題や身体的な症状・病気は、生物的要因(医学的要因)、心理的要因、社会的要因がそれぞれ分離しているのではなく、多くの場合、相互に影響し合った複合的な問題からなるという考え方です。

バロの提起がこのような形でつながって、今に活かされているように感じます。

悩みや精神的問題は、時代や文化、日本の社会や政治も私たちが思っている以上に原因のひとつとして大きく影響を受けているのかもしれません。

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

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