過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここではマーティン・セリグマンと「3つの幸福な人生」「学習性無力感」について書いていきたいと思います。

マーティン・セリグマンについて


マーティン・セリグマン(Martin Seligman)

マーティン・セリグマン(Martin Seligman)は1942年ニューヨーク州オルバニーに生まれます。

プリンストン大学で哲学の学位を取得し、ペンシルバニア大学で心理学の博士号を取得します。

コーネル大学やペンシルバニア大学で教壇に立ち、抑うつの研究から「学習性無力感」の理論が形成されました。

心理学が病気に対しての研究ばかりを行ってきたが、どうすれば幸福になれるかについてはあまり研究されていないことに気づいたセリグマンは、娘さんの自己を契機にネガティブな側面よりもポジティブな側面に関心を持つようになります。

1998年にアメリカ心理学会の会長に選任された際に、ポジティブ心理学を創設し、新しい心理分野として普及に努めた影響を加味してセリグマンを「ポジティブ心理学の父」として称されるようになります。

弱さにも強さにも同等に関心を持ち、最悪の状態を修復することにも最善の状態を作ることにも同等に関心を持つべきだ

マーティン・セリグマン(Martin Seligman)

主著には、

1975年「うつ病の行動学」
1991年「オプティミストはなぜ成功するのか」
2000年「ポジティブ心理学」ミハイ・チクセントミハイ共著
2002年「世界で一つだけの幸せ」

などがあります。

3種類の幸福な人生


セリグマンは様々な研究から、並外れて幸せで満ち足りている人びとには、他者と強調し、ともにいることを楽しめる傾向があることに気づきます。

セリグマンが提言した3種類の幸福な人生とは、

①良い人生ー個人的成長とフローの実現
②有意義な人生ー自分より大きな何かのために活動すること
③喜ばしい人生ー社交的に振る舞い喜びを追求すること

としている。

①と②は永続的な幸福をもたらすが③なしには実現されないとも述べています。

社会的関係性や交友関係を社交的に振舞うことの重要性をセリグマンは提言しました。

他人との関係性によって私たちは大きな影響を受け、時にストレスも多いこともあると思いますが、自分の人生の豊かさや幸せのために改めてその重要性を再認識しておく必要性があるかもしれません。

学習性無力感


学習性無力感(英語:Learned helplessness)とは、セリグマンが提唱した概念で、努力を重ねても望む結果が得られない経験が続くと「何をしても無駄だ」と認知するようになり、不快な状態を乗り越えようとしたり、脱する努力を諦めてしまうことを指します。

別名として「学習性無気力」「学習性無力症」「学習性絶望感」という名前で呼ばれることがあります。

学習性無力感は、乗り越えよう、戦おうという方向に行かないばかりか、逃げたり回避しようとすることすらできなくなることも意味しています。

重いものになるとやる気が出なくなり、無気力状態になってしまいます。

監禁、虐待、暴力、人格否定、いじめ、モラルハラスメント、自分の価値や尊厳が踏みにじられる経験によって大きな精神的ストレスとなり、学習性無力感に悩まされてしまいますが、繰り返し小さな挫折や失敗を繰り返しや積み重ねによっても発現します。

学習性無力感は、不快な感覚である嫌悪刺激の量に左右されるというより、コントロール不可能な体験によって学習性無力感は大きな影響を受けるとされています

※嫌悪刺激とは、嫌な不快な刺激を意味し、研究では電気ショックなどを指します。

トラウマは主に嫌悪刺激の量に左右されるといわれていますのでその違いがあります。

どうコントロールしてもうまくいかない経験の繰り返しが学習性無力感を形成してしまう大きな原因となります。

コントロールできると捉えることができる認知は、嫌悪刺激によるストレスを緩和するとも言い換えることができます。

次に「学習性無力感」が提唱されるきっかけとなった実験(少し倫理的に引っかかりを感じるかもしれません)を紹介したいと思います。

スティーブン・マイヤーとセリグマンの共同研究では、鍵をかけた檻に犬を閉じ込め、痛みを伴う電気ショックを繰り返し与えました。

2人はこれを「逃避不能ショック」と呼びました。

何度か電気ショックを与えた後、鍵を開けて、檻の扉を開き、逃げられる状況を作り、再び電気ショックを与えました。

それまで電気ショックを与えられていなかった犬たちはすぐさま逃げ出しましたが、電気ショックを繰り返し受けていた犬たちは、全く逃げようとせず、ただその場に横たわり、鳴きながら脱糞していました。

逃避不能の経験によるショックは、強烈な学習として認識され、無力感を感じ、あっさり諦めてしまいます。

このような学習から生まれる無力の認知と努力を諦めてしまう現象を「学習性無力感」と呼びました。

その後、猿や人間に対しても実験を行い、「うつ病」に類似した症状が発現することも明らかになりました。

このことからセリグマンは学習性無力感とうつ病の内容はほぼ同様であるとする「うつ病の無気力感モデル」を提唱しました。

現在において「うつ病」=同モデルという認識では全て説明がつくものではありませんが、うつ病などにおける「無力感」や「無気力感」を説明をする上での一つのモデルであると言えます。

「学習性無力感」について詳しくはこちらで説明しています。

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか著
身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 ヴェッセル・ヴァン・デア・コーク著
人間の学習性無力感に関する研究 鎌原雅彦 亀谷秀樹 樋口一辰
学習性無力感の生起事態における特性的自己効力感と免疫機能の変動 久野真 由美 矢澤久史 大平英樹

記事監修
公認心理師 白石

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