過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から学べることは多くあります。

ここではジョゼ・クストディオ・デ・ファリアと「催眠」について書いていきたいと思います。

ファリアについて


ファリア(参照:心理学大図鑑)

ジョゼ・クストディオ・デ・ファリア(José Custódio de Faria)はポルトガル領であったインドのゴアの裕福な家庭に生まれ、父の助力もあり、神学の博士号を取得し、システィーナ礼拝堂で説教を行っていました。

女王のチャペルにて説教を求められた時、聴衆を見てうまく舌がまわらなくなりました。

それを見かねて父が「彼らはみな、わら人形だ。わらは刈ってしまえ」(翻訳によっては「あれらは野菜だ。野菜を切れ」)という一言で一瞬に緊張が解け、説教を流暢に行うことができました。

単純な一言であれほどまで自分の精神状態が変化したことに興味を持つようになります。

太古の昔よりシャーマニズムやトランス療法などの治療が行われてきましたが、ペルシャの医師アヴィケンナが11世紀にトランスについての書を学術的に発表し、18世紀にはドイツの医師フランツ・メスメルが動物磁気(メスメリズム)について発表いたしました。

メスメルは、催眠現象を心理学的な作用ではなく物理的作用であると唱えたが、その後にフランス王立科学アカデミーによって、そのような物理的作用は存在しないと証明されました。

催眠やトランスに興味を持ったファリアは、「磁石に由来するものは何もない。いっさいは被験者に由来し、被験者の想像力のうちに起きている」と主張しました。

著書には「明晰な睡眠の原因について」があります。

ファリアはフランス語が堪能でなかったり、騙されたり、詐欺師扱いを受けるなど不遇な経験も多かったようです。

ファリアの催眠療法


ファリア(参照:心理学大図鑑)

自分の役割は被験者が正しい精神状態へと導く「集中人」であるとファリアは考えていました。

彼の催眠療法は、

①正しい資質を備えた被験者にすること
②椅子に座り、リラックスしもらう
③指示があるまで睡眠について考えてもらう
④穏やかに威厳を込めて「眠れ」と命令する

という手順で「被験者が明晰な睡眠に入る」というものです。

メスメリズムでは患者に触れたり、太鼓のリズムなどで患者を催眠状態に導いていたようですが、ファリアは言語を用いた催眠を行いました。

女王のチャペルでの父の言葉はそれほどに影響があったのだと伺えます。

また催眠状態の被験者に幻視を起こした後、催眠暗示を与えることにも成功しました。

後にスコットランドの外科医ジェイムス・ブレイドが眠りを意味する「ヒプノス」と状態を意味する「オシス」を結合させた「ヒプノシス(催眠)」という言葉が誕生するにあたって、このファリアの催眠療法が根幹になっていると言われています。

ブレイド以降は、1880年代のフランスの心理学者エミール・クーエの「自己暗示」、同時期にはトラウマに対する催眠療法を行ったフランスの神経学者ジャン・マルタン・シャルコーやジークムント・フロイトの「無意識」「精神力動学」などへの発展の基礎となったといわれています。

ファリアの提唱した重要な点は、被験者の「想像力」「被暗示性」です。

被暗示性とは、催眠や暗示のかかりやすさを意味しています。

正しい資質を備えた被験者に行うということは、「想像力」や「被暗示性」の高い人やそれらが高くなる状態でなければならないということだと思われます。

小説のモチーフになったファリア


アレクサンドル・デュマ・ペールの小説「モンテ・クリスト伯」のファリア神父として登場します。

投獄されているファリア神父は、無実の罪で投獄された瀕死の主人公ダンテスに知性と生きる力を与え、自分の死体と主人公をすり替えて脱獄に成功させるといった内容です。

脱獄に成功した後の9年後、社交界は謎めいた貴族「モンテ・クリスト伯爵」の噂話でもちきりでした。

その伯爵はファリア神父から与えてもらった情報をもとに巨万の富を手に入れたダンテスでした。

その後、自分を陥れたものたちへの復讐が始まるといった小説です。

どうやら実際のファリアも同じところに投獄されていた経験があるようです。

おわりに


心理学には様々な学派や療法があります。

催眠療法の学術的起点として重要なファリアの研究と提唱を学ぶためにこの記事では書いているのですが、参考文献があまりありません。

私個人としては催眠療法に明るくないですが、実際の日常生活として暗示や催眠に似ている作用を感じることが実に多くあるように感じます。(広告とか人が話す言葉など)

また高い想像力や被暗示性によって治癒・改善に役立つこともあれば、それらによってかえって悪化したり、混迷したり、騙されることもあります。

自分の持っている想像力や被暗示性をうまく活用することで、人生にうまく活かせるものも多くあるかもしれません。

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか著
モンテ・クリスト伯 アレクサンドル・デュマ


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