過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではエリオット・アロンソンと「認知的一貫性理論」について書いていきたいと思います。
エリオット・アロンソンについて
エリオット・アロンソン(Elliot Aronson)は、1932年アメリカのマサチューセッツ州チェルシーのユダヤ人家庭に生まれました。
幼少期は大恐慌時代で、反ユダヤ主義によってイジメに遭うことも多かったようですが、アロンソンは運、機会、才能、直感の組み合わせに基づいて人生は進歩すると信じていました。
大学にて経済学を専攻していましたが、間違ってマズローが教える心理学の教室に迷い込み、その内容に感銘をうけ、心理学に専攻を変えます。
ブランディス大学で学士号を、ウェズリアン大学で修士号を、スタンフォード大学では社会心理学者レオン・フェスティンガーのもとで学び、博士号を取得します。
ハーバード大学など様々な大学で教壇に立ちながら研究を行い、様々な賞を受賞し、20世紀の最も影響のある心理学者100人に選ばれています。
またアメリカ心理学会において著述と教育、研究の3部門で受賞したのは、アロンソンただ一人です。
主著には、
1972年「社会的動物」
1978年「ジグソー学級ー生徒と教師の心を開く共同学習法の教え方と学び方」
2007年「なぜあの人は過ちを認めないのかー言い訳と自己正当化の心理学」
などがあります。
認知的一貫性理論
認知的不協和(英語:cognitive dissonance)とは、自分の信念や認知とは異なる明確な反証との遭遇によって起こる不快感や居心地の悪さを表す社会心理学用語です。
決まったルーティーンや習慣的な思考パターンと信念が変更したり、破られると非常に不快な気分になるものですが、とても明確な反証に遭遇すると内的な一貫性の欠如が生まれ、「認知的不協和」という居心地の悪い状態に身を置くことになります。
その居心地の悪さや不快な気分を解消させるためになんとかして信念に合致する新たな証拠を求めてしまう傾向が強くなるとアロンソンの師であるフェスティンガーが研究で明らかにしています。
この認知的不協和の理論を洗練させたのがアロンソンです。
それは「認知的一貫性理論(認知的斉合性理論)」と呼ばれ、人間は合理化が進んだ動物であり、他人にも自分にも合理的に見せようとすると考える理論です。
人間の体にはホメオスタシスという恒常システムがあり、不均衡を均衡状態に回復させるように、心や認知機能にもこのようなシステムがあるということです。
アメリカの州兵が国家のカンボジア侵攻を反対する学生を銃殺してしまう事件があり、その件に関係ない学生まで巻き添えになってしまった悲惨な事件をアロンソンはテーマにしました。
反対していた学生たちは死に値する、巻き添えになった学生達も梅毒や其れ相応の罪を持っているなどのようにデマが出るようになってしまいました。(本当にひどい話ですが、こういうデマはよく起こります、特に心の中で)
それは葛藤に苦しめられた精神の安堵を求めるものであり、とても望ましいとは思えないことであるが、それでも認知的不協和の苦しみから合理的理由付けを行いたい人間の姿がそこにはありました。
ここからアロンソンはこのように言います。
馬鹿げたことをする人々が、必ずしも狂っているとは限らない
Elliot Aronson
参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
記事監修
公認心理師 白石
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