「落ち込んで鬱々とする」「どこか鬱っぽい気がする」「理由はわからないけどうつうつとする」といった状態になることがあります。
一時的で短期的なものであれば良いですが、持続的で長期的になってくると仕事や学業、日常生活に支障をきたしてしまいます。
この記事では、「鬱々とするうつっぽさ」に対して理解が促されるように説明し、カウンセリングの有用性についても解説していきます。
「鬱々とするうつっぽさ」とは?
「鬱々とする」「うつっぽさ」という言葉はどのような時に使うでしょうか?
一般的には、
・元気が出ない
・気持ちが重い
・気持ちが沈んでいる
・落ち込んで気持ちが停滞している
・やる気が出ない感覚
・エネルギーのない感じや出ない感じ
・憂鬱
・気持ちがよどんで不安定
・不安にさいなまれている
・気持ちが晴れない
・気持ちがどんよりしている
・悲しい気持ちでどんよりしている
・半分寝ているかのようなどんよりとしたうとうと感
・うつ病っぽさ
などを感じる時に用いる言葉です。
問題や悩みがあって鬱々とすることもあれば、理由や原因が見当たらず鬱々とすることもあります。
またこのような状態から
- ネガティブや悲観的になる
- 自責や自己批判をしてしまう
- 何もやる気が出なくなる
- めんどくさくなる
- 落ち込みやすくなる
- 悲しみやさみしさを感じる
- 不安や心配が増える
- 希望が持てなくなる
- 自分の価値を感じれなくなる
- 喜びにくくなる
- 笑うことが減る
- 落ち着かない
- 安定しない
- 集中力が低下する
- ミスや失敗が増える
- 人に会うのが億劫になる
- 生きる気力がわかない
- 死にたくなることがある
といった気持ちが出ることもあります。
このような症状が強い場合もあれば、弱い場合もありますし、一時的なものもあれば、慢性的になっている場合もあります。
自分の感覚で「まだ大丈夫だろう」と思うようなものもあれば、「やばいかも」と思うものもあり、その感覚が正しい場合もあれば、実は頑張りすぎてかなり深刻になっていることもあります。
なかなかその辺りの判断は難しいところですが、精神科や心療内科に受診することや専門家に相談することも検討することも大切です。
特に孤独感や孤立感がある場合は、人の力を借りることが大切です。
人生を歩んでいると様々な出来事に遭遇しますので、誰でもこのような状態になることがあります。
このような「鬱々とする感じ」や「うつっぽさ」は専門用語で「抑うつ状態(よくうつじょうたい)」といいます。
抑うつ(英語:depression)とは、気分が落ち込んだり憂鬱で、意欲が低下した状態のことを指します。
抑うつ状態が強くなったり、慢性化すると「うつ病」と診断されたりします。
なぜ鬱々とし、うつっぽくなるのか?
なぜ私たちは鬱々とし、うつっぽくなるのでしょうか?
私たちは思い通りうまくいっている時や健康である時はこのような状態にはあまりなりません。
思い通りうまくいかないことを繰り返したり、失敗やミス、ストレスの蓄積、精神的ショックを受ける出来事の遭遇、病気や不健康な状態によって鬱々としたり、うつっぽさが出ることが多くなります。
そのような苦痛によりなかなか希望が見出せなくなると「生きる活力」が一時的に失われます。
そしてどんよりとした停滞感が襲ってきます。
その状態は、以前の明るかった自分とは異なり、暗く悲観的になりやすくなります。
何度も挑戦して結果が報われない場合、「努力をしてもムダだ」と諦めと絶望感にさいなまれてしまいます。
そしてこのような自分になってしまったことを自責し、「何で自分はこんなにダメなんだ」と自己批判を繰り返してしまいます。
「あの時こうしていれば」「何でこんなに落ち込みやすいんだろう」「何でこんなにネガティブなんだろう」という思いが湧いて繰り返される「反芻(はんすう)」で毎日困ってしまうこともあります。
このように「鬱々とするうつっぽさ」から派生する苦しみによって当人は非常に辛い状況になってしまいます。
このような抑うつ状態になることが人間だけではなく猿にもあることをご存知でしょうか?
進化生物学の研究で以下のようなことが明らかになりました。
■オナガザルの調査と研究(Mcguire,Raleigh,1987)
群れの中での順位とセロトニン濃度が相関し、群れの順位が高いオスはほかのオスより2倍近くセロトニン濃度が高く、順位の低いオスはセロトニン濃度が低いことがわかりました。
群れの順位が高かったオスが順位降下すると、セロトニン濃度もそれに伴って低下しました。地位を失ったそのオスは、うずくまり、食事をとらなくなる人間と同じ「抑うつ状態」となりました。
抑うつ状態を示したオスにセロトニン濃度を上げる薬剤を投与したところ症状が消えました。
また普通の順位のオスにその薬剤を投与すると群れの中の順位が上がって行きました。
猿もうまくいかないことがあると精神的ショックを受け、抑うつ状態になるということです。
私たちは猿のような地位や順位に明確さはありません。
しかし無意識的には自分で感じ取っているかもしれません。
そのような意味で考えると、今所属しているコミュニティーでの地位や待遇、人間関係などが壊れると「鬱々としたうつっぽさ」が出やすかもしれません。
steavensとprice(1996)により提唱された「ランク(地位)理論」というものがあります。
抑うつとは、社会的地位(ランク)を失い、それを奪い返すことに自信を持てない時に生じる適応的反応であると考える理論です。
ランクを奪われた者が闘争や競争を繰り返すと、被害や損害は大きくなる可能性があり、適応度が減少するため「抑うつ状態」を示します。
この状態は、周囲に戦える状態ではないことを示すものでもあり、自分に相応しい地位に適応しようとするものでもあります。
何とも不快な気分になるかもしれませんが、これで全てを説明できるものではありません。
被害や損害を少なくするために「抑うつ状態」になることがあるということです。
そして自分の能力に応じた適切な場所へ向かっていくこともできます。
また努力しても上手くいく自信がないという見通しの時にも「鬱々としたうつっぽさ」が出てくることがあるということです。
この研究では、素直に負けを認めると抑うつが消えることが明らかになっています。
逆に負けを認められない場合、抑うつ症状がなかなか消えないこともわかっています。
失敗やミス、自分の能力を正しく分析し、至らないところは至らないと受け入れていくことが大切になります。
■病気による影響の場合、医師の診断が必要な場合
抑うつ症状を引き起こす病気や疾患があります。脳血管障害、冠動脈疾患、脳腫瘍、事故などによる脳や神経への外傷、認知症、パーキンソン病、甲状腺機能障害、腎不全、糖尿病、感染症、悪性貧血、癌、精神疾患などが該当します。
鬱々とするうつっぽさに対するカウンセリング
ご相談される方(以下クライエント)がどのような「鬱々感」や「うつっぽさ」があるのか?どのような背景でこの状態になったのか?どのように対処しているかなどをクライエントのペースで話していきます。
自分のことを話すということは客観的に自分を見なければなりません。
そして全貌をカウンセラーに伝えていくとみえてくる景色が少しずつ変化します。話していく中で気づきが生まれたり、理解が深まったりすることがあるからです。
カウンセリングでは、カウンセラーが受容的・共感的な態度でお話を伺っていきます。
話すということは基本的な欲求でありながら、好きなように話せるという機会は一般的には少なく、通常は制約があります。
そのような制約の少ない、秘匿性の高い、守られた場所で話していく様はなかなか経験できるものではありません。
自分の中で処理しにくい問題でもそのような場で、共感的・受容的な態度に見守られながら話していくことで気づきが生まれたり、言葉に出して初めて外に出すような経験を通してすっきりしたり、気持ちが楽になっていったりします。
カウンセリングでは自分の思っている本音を声に出していくことが大切です。特に誰にも言えないようなことならなおさら重要になります。
話していく中で「ようやく涙が出ました」「話すってこんなにいいことなんですね」というお声をいただくことがカウンセリングではよくあります。
自分の心の世界だけでさまよっている時には出ない「こころの動き」が出せるように思います。
「うつっぽさ」の理由を追いかけていると「だからこんなにつらかったんだ」というような事実が判明し、感動とともに涙されるようなことも起こることがあります。
鬱々とするうつっぽい状況では、「頑張る」という通常の方法がうまくいかないことがあります。
頑張るところと頑張らないところをしっかり理解することでなぜこんなに苦しみ、思い通り行かなかったかの理由がわかります。
心もすっと力が抜けて、少し体も緩みます。
「ダメな自分」や「至らない自分」をいかに扱うかがとても重要なケースが多いものです。
受け入れることが難しく、受け入れると余計に弱くなってしまうのではないかという危惧がある場合もあります。
しかしその危惧を見事に裏切ってくれるかのように落ち着いていきます。
冷静に自分を見ることができ、「良いところも悪いところも含めて自分なのだ」という地点に立つと安定した土台に立っていることが体感的にも理解できます。
この感覚から自信や自己肯定感、自己効力感なども高まったりすることもあります。
苦痛が伴うこともありますが、乗り越えた先には「成長した自分」が待っています。
鬱っぽさや鬱々とする状況には、精神的ショックや努力が報われない経験が背景にあったりします。
そのような場合、精神的ショックがどのようにこころやからだに作用し、どのような経過を辿るか、なぜ努力が報われなかったのかを適切に見ていくことで、「そういうことでなっていたんだ!」と明確に理解できたりします。
理解できると気持ちも楽になり、客観的に物事も見ることができるようになります。
時に絶望感にさいなまれることもありますが、どのように絶望感を扱えばいいか理解できている人と出来ていない人では大きな差を生んでしまいます。
今までのカウンセリングで乗り越えていったクライエントから生まれた「抑うつ状態」に対する大切なポイントがたくさんあります。
そういったポイントをクライエントに応じてお伝えしながら、一歩ずつ改善していけるように地道にカウンセリングを進めていきます。
自分の理解が進み、受け入れが進むと新たな方向性が見え始め、自分の活力が蘇ってきます。
エネルギーが出てくるので、気分も明るくなり、本来持っていた自信も回復していきます。
このような状況になって、「向き合って良かった」「苦しんだけど良かった」という思いが出たりします。
そして「なんであんなに悩んでいたんだろう」という言葉が出てきたりするものです。
このように文章化すると簡単なように思われるかもしれませんが、地道に一歩ずつ丁寧に向き合っていくことが大切です。
この機会に丁寧に自分と向き合ってみるのもいいかもしれません。
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記事監修
公認心理師 白石
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