置かれた環境に適応できず、そのストレスにより不調をきたす「適応障害」。

ヨーロッパなどでは人口の約1%の方々が適応障害になっていると報告があり、日本にも約100万人以上の適応障害で困られている方々がいても不思議ではありません。

ここでは「適応障害」について詳しく説明し、カウンセリングの有用性についても書いていきたいと思います。

適応障害とは何か?


適応障害(英語:Adjustment disorder:AD)とは、ストレスなどによって環境に適応できず、苦痛を感じて心身に不調が現れ、生活に支障をきたす病気とされています。

軽いものであれば、多くの方が経験しているかもしれませんが、重く慢性的になると「うつ病」などへ発展していくことが少なくありません。

WHOの国際疾病分類「ICD」によると、適応障害は環境の変化やストレス因子が生じて1ヶ月以内に発症し、それらの要因がなくなれば6ヶ月以上症状が持続することはないとされています。

アメリカ精神医学会が発行している診断基準「DSM-5」では、心的外傷およびストレス因関連障害群のカテゴリー内に分類され、ICDが1ヶ月以内の発症としているところが「3ヶ月以内の発症」としているのが特徴的です。

うつ病や気分障害の併発や人格障害・発達障害などの原疾患がある場合も多く、しっかりとした鑑別が重要とされています。

なおうつ病など他の精神疾患がある場合、適応障害よりもその疾患が優先され、診断されます。(例えばうつ病と適応障害が併発していても併記せず、うつ病という診断になります。)

ある精神科医の先生は、「適応ができないということで適応障害になる方もいるが、どちらかといえば過剰に適応してしまう過適応で適応障害になる人が多い」と語っていました。

ここで間違えて欲しくないのですが、「適応が難しい人=適応障害」ではないということです。

誰でも心に余裕がない時には、適応が難しくなる時期がありますし、適応しないほうがいい人もいます。

適応しないほうが良い人とは、科学者や研究者、芸術家、社内で革新的職務を担う人、社会にとって革新的行動・発言を行う人などが該当すると思います。

こういった方々は、その他大勢であるマジョリティの意見に流されず、我が道を進み、革新や変革を起こす、表現することによって成功していきます。

また「同調」を重要視する伝統が強い日本国では、少数派であるマイノリティに対する見解がとても視野が狭い特徴があり、これからの多様性を尊重するこの時代にとって視野を広げて、その多様性を広く受け入れていくことが大切です。

多様な人が受け入れられ、その力を適材適所で発揮し、総合力を高めていくことがとても必要になってくる時代であると私個人として思うところです。

適応障害の症状


適応障害には情緒的症状と行動的症状があります。

情緒的症状には、

  • 憂鬱感や落ち込み(抑うつ)
  • 不安感
  • 怒りっぽくなる
  • 集中力の低下
  • 情緒の不安定さ
  • 焦りや緊張

などがあり、身体症状として不眠やめまい、動悸、多汗、腹痛、食欲低下なども現れることがあります。

行動的症状には、

  • 危険運転
  • 他者への攻撃的言動
  • 違法行為
  • 暴飲暴食
  • タバコやアルコール依存
  • 学業や仕事の業績の悪化
  • 無断欠席
  • 回避と逃亡
  • 接触や接点を避ける
  • 引きこもる

などがあります。

適応障害の原因


適応障害の原因や要因、誘因は複数想定されます。

人によって個性や特性、ストレス耐性やストレス解消法も異なるため一概に語ることはできませんが、色々な角度から考えてみたいと思います。

①ストレッサーが強い

ストレッサーとは、ストレスの元となる出来事や原因のことですが、そもそもストレッサーが非常に強く、負荷がかかる場合、適応障害の原因になることが考えられます。

例えば、普通では考えられないようなパワハラやセクハラなどのハラスメント、イジメや集団による疎外、強いストレスをかけてくる人物、過剰なプレッシャーとなる環境や対象人物などが該当します。

また家族の問題や金銭問題などによる強いストレスで適応が難しくなるケースもあります。

人生で起きる大きな出来事「ライフイベント」によって人は大きなストレスを感じてしまいます。

そのライフイベントとそのストレス度を表すホルムズとレイの「社会的再適応評価尺度」も参考にされてください。

②性格や特性によるもの

原因になるような自分の性格や特性とは、

  • なかなか変化に対応しづらい
  • 支配的欲求が強い
  • 自分のやり方に固執してしまう
  • 周囲の心理や要望を想定できない(空気が読めない)
  • 過剰な完璧主義
  • 過剰な生真面目さ
  • 強い緊張特性や強い恥ずかしがり屋傾向
  • 繊細で傷つきやすい
  • 周囲の要求を必要以上に応える
  • 自分の責任に転換しやすい(自罰的)
  • 劣等感が強い
  • 悲観的・ネガティブに考えやすい
  • 他人の目が気になるなど拒絶への過敏性が強い
  • 傷つくことを恐れ、回避、逃亡する傾向が強い(回避性パーソナリティ)
  • 自信・自己肯定感・自己効力感が低い
  • 正直で、頼みごとを断れず、自分が先に折れ、几帳面で責任感などが過剰に強い(メランコリー親和型性格)
  • 八方美人で優柔不断で悩みが多い傾向が強い(循環気質)
  • 真面目さを周囲にも求める完璧主義傾向が強い(粘着気質)
  • 強い自己愛と万能感を持ち、人の評価が気になる傷つきやすさを持つ(ディスチミア親和型性格)

などが考えられます。

性格は変わらないと言われていましたが、より厳密には変わらない気質的性格もあれば、学習や慣れによって成長・改善する性格や特性もあります。

ですので自分はこんな性格だからダメだと必要以上に自分を責めたり、自罰的に扱はないように注意することも大切です。

一説には、ストレッサーやストレスよりもその後の自分への自罰・自責が最も高ストレスになっていることが多いという報告してもあります。

それに気づかないことも多く、カウンセリングを行っていてクライエントが非常に苦しい「二重ストレス」を抱えているケースも非常に多くあるように思います。

③ストレス耐性・対処能力・回復力

ストレスにどれほど耐えうる力があるか?対処能力があるか?回復力があるのか?によってストレスのダメージや回復力に大きな影響を与えます。

ストレス耐性とは言い換えればそのもろさや弱さを表す「脆弱性(ぜいじゃくせい)」がどれほどあるのか?が重要になります。

脆弱性には、生まれ持ったものと後の経験によるものが合わさり、形成されています。

親や養育者との愛着形成や愛情表現、助けてもらうという経験によって安全感や安心感を子供時代に形成します。

こういった自分の土台がうまく形成できず、揺らいで不安定であれば、ダメージは大きくなりやすい傾向があります。

この部分はとても重要で、大人になっても心理療法やカウンセリングなどを通してある程度その根底に安定感を与えることもクライエントによっては可能です。

イジメや悪口などによって孤立し、孤独感を感じて傷ついてきた経験が多い人は「脆弱性」が過敏になり、より強く感じてしまうことも考えられます。

この場合も本人が求め実践すれば心理療法などが有用になります。

ストレス対処能力とは専門的には「ストレス・コーピング 」と呼ばれ、その対処能力も生得的なものと後天的な学習によって形作られています。

あまり知られていないのですが、人に頼る、相談するという行為ができる人ほどコーピング能力が高いとされています。

伝統教育では過剰な「人に頼らない」「迷惑をかけない」といった教えが刷り込まれていますが、しばしば極論的になることがあり、困った時には人に力を借りる、余裕があれば人に手を貸すといった教育の方が今の世の中で生きやすくなります。

回復力は専門用語として「レジリエンス」という言葉が用いられています。

レジリエンスは気晴らし能力や楽観性、どのように解釈するか、どのように踏ん切りをつけるか、気にしないでいられるかといった認知的な能力が問われます。

要するに「まあいいか」「仕方ない」と思えることが多いほどストレスから回復する力を持つことになりますが、気にしないといけないことは気にしたほうがいいので、その辺りのバランス能力も必要です。

またしっかり睡眠を取ったり、食事などの生活習慣、趣味などでの熱中なども影響します。

④過去のトラウマ

過去に経験したトラウマティックな出来事がうまく消化されず、恐怖や不安、苦手意識が強くなることで適応に難しさを感じる人も多くいます。

  • 人前での失敗によって人前で何か発言することが恐怖になる
  • 過敏性腸症候群など胃腸の状態によって恥ずかしさと恐怖を感じる
  • 食事の苦手意識により会食恐怖になる
  • 嘔吐恐怖症によって日常生活が支障をきたす
  • 対人的トラウマによる対人恐怖症
  • あのトラウマの原因になった人物と似た人がいる場面での恐怖と不安
  • あのトラウマの原因となった環境に似た環境がある場面での恐怖と不安
  • 災害・虐待・いじめなどによって安心感が欠如し、恐怖と過敏性が非常に強くなる

などが考えられます。

トラウマをお持ちの方は、安全性や安心感をある程度担保した状態で、必要に応じて心理療法やカウンセリングなど向き合う作業を行っていくことで、少しずつ以前の安心感や安全性を心の中に取り戻す作業を行っていくこともできます。

トラウマについて詳しくはこちらをご覧下さい。

⑤疾患や病気によるもの

などの精神的な疾患などによって精神が不調になり、その不安定さが適応を難しくさせているケースもあります。

また「がん」などの緊急性の高い病気や難病などの罹患により絶望感を感じたり、やる気が阻害されることで適応障害も併発してしまうこともあります。

適応障害の治療


「環境調整」やストレス対処能力などを高める「心理療法」などが治療として優先されていますが、補助的に不安が強い時に抗不安薬、抑うつに抗うつ薬、不眠が見られる場合は睡眠薬などの西洋薬が処方され、体質などを踏まえて漢方薬も使われています。

「環境調整」では、原因となっているストレスの軽減を行うため一時的に「お休み」することや職場の場合であれば希望部署へ転属するという方法も考えられます。

学校を辞める、仕事を辞めることでストレスを簡単に排除できるのですが、辞めたあとにひきこもりがちになり、社会的関わりも減って、時間もあるため悩む時間が多くなり、余計にストレス過多な環境になってしまう方もいます。

またそこから抜け出す、這い上がる労力も相当な負担であることも想定しておく必要があります。

そのため安易に辞めることは避け、学校や職場の関係者、家族、医師(産業医)とともに慎重に検討し、決定していくことが重要です。

ストレスに対して

  • 脆弱性がある(とてもストレスに弱い特性がある)
  • コーピング能力が低い(相談できない、一人で抱える特性がある)
  • レジリエンスが弱い(回復テクニック・回復力が弱い)

などの因子がある場合、そこを立て直すべく心理療法やカウンセリングを行っていきます。

これらは気づきや実践による学習・訓練によりある程度強化することができますので「自分はストレスに弱いから。。。」と必要以上に思い込まない方が良いかもしれません。

心理療法としては、

  • 認知行動療法(CBT:解釈や思い込み、癖に気づき適応的に変容していく)
  • 対人関係療法(自尊心を高め、他者との関係を見直して再構築していく)
  • 問題解決療法(問題を明確化し、解決策を実践、検証していく)
  • ソーシャル・スキル・トレーニング(SST:社会生活スキルを訓練していく)
  • アサーション・トレーニング(自分も相手も大切にした自己表現の練習)
  • EDMR(眼球運動によるトラウマを改善していく)
  • カウンセリング

などが用いられます。

おわりに


「そんなことで。。。」と適応障害はなかなか理解されることが少ない状況が多くあると思います。

その理解されない苦痛と合わせて適応障害の苦痛を感じるため、その苦痛は必要以上に重くなってしまう特性があるのです。

一人で悩むことをやめて、家族や親しい人への相談が難しければ、病院やカウンセラー、職場の産業医などへ適切に相談することによってより良い状態を作るための治療や理解が得られると思います。

多くの相談を頂き、心理療法やカウンセリングを行ってきた結果、クライエントがしっかりと改善動機を持って理解と変容、練習をしていけば適応の難しさのハードルを越えることができ、新たな人生の幕開けとなるケースを多く見てきました。

少しでもこの記事の情報がお役に立てられれば幸いです。

最後までお読みいただき、有難うございます。

記事監修
公認心理師 白石

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