「ついつい自分を責めてしまう」「自分を責めすぎてしまう」「責めてしまう自分をコントロールできない」など自責によって悩んだり、それに伴う苦痛で困ってしまうことがあります。

この記事では「自責」に関して理解が促されるように考察し、カウンセリングの有用性について説明していきたいと思います。

自分を責めるとはそもそもどういうことか?


「自分を責める」とは、自責(じせき)とも呼ばれますが、自分の過ちをとがめること、「自分が悪い」と責任の所在を自分におくことを指します。

自分を責めることにより、反省が行われ、次回にそうならないように対処や方略(手立て)を考えることができます。

それはとても基本的で伝統的に用いられてきた人間独自の学習の方法です。

自戒として戒めることにより責任を感じ、軽はずみな行動を避けるためには重要な役割を果たします。

このような自分を責めるという行為は、意識的に「自分が悪いんだ」と自責する方向へ持っていくものもあれば、無意識的に「ついつい過剰に自分を責めてしまう」といった自責もあります。

自分を責めるという行為には学習や自戒という役割を持ちますが、現代では過剰な自責により精神的な苦痛を慢性化してしまうことが問題となっています。

特に無意識的に自責してしまう場合、なかなかコントロールできず、落ち込みを繰り返し、苦痛とともに心的疲労も重なり、うつや精神疾患などに発展してしまうこともあります。

このようにある程度であれば有用である「自分を責める」行為ですが、慢性的であったり、強すぎる過剰な自責であったり、コントロールできない無意識的な自責がある場合、何らかの対処を行わなければなりません。

自責癖


自分を責めることが習慣的になり、なんでも「自分が悪いんだ」「自分のせいだ」といったような心の方向性に考えてしまう癖がついている場合、自責による悪影響はその方向性の強さに比例して強くなります。

遺伝による性格的特徴の影響もありますが、強めるか弱めるかは自分の捉え方や考え方の修正や受け入れなどによってある程度変えることも可能です。

「自分のせい」にしたほうが良いこともありますが、「相手のせい」や「運が悪かった」などの影響もあることが実際は多いかもしれません。

「自分が悪いんだ」という方向性に持っていく理由にはそれなりの経験をされていることもあり、カウンセリングを行っていると「だからこんなに自分を責めてしまうんだ」ということが明らかになったりします。

・相手のせいにできない自分と過去の経験
・相手に注意できない自分と過去の経験
・喧嘩や口論ができない自分と過去の経験
・もともとそういう性格であることと過去の経験
・人のせいにすることが悪いことだと極端に認識していること

などのような影響によって「癖」を強めていることが多くあります。

カウンセリングでは、そのようなところを丁寧にみていきながら、少しずつ相談されるクライエントのちょうど良い落としどころに落ち着いていきます。

責任の所在ってなぜそんなに必要なのか?


問題が起きた時に大切なのは、

・問題で被害を被った方への謝罪
・被害者の方の許し
・法律やルール、手順の遵守
・今後そのようなことがないように対処・対策を考える
・そのようなことが起きないように行動を変える

などのようなことです。

しかし日本では独自の文化が有り、「罰(ばつ)」を受けなければいけないような伝統がありました。

昔で言うと「斬首」や「切腹」であったり、「みせしめ」などがありました。

今なら「そんなことでそこまでするなんて!!」と残酷に思ってしまうことも多いかもしれません。

太古の昔、家族や親族などで形成された集団生活から他人とも共存する村などの集団へと移行していくに従って守るべきルールが出来上がっていきました。

他人と協力や共存を行うには、そのようなルールがなければ自戒することができず、統制が取れません。

そのルールや規則を破ると、どれほどダメなことなのかをわからせるために「みせしめ」が過剰に行われた時代もありました。

このように責任を知り、ルールや規則を守るためには、責任の所在を明らかにし、どれほど責任が大事かを理解できるように蓄積してきた背景があります。

また動物的な本能を抑えなければルールや規則を破ってしまうことも多いため、「理性」を育てることにも力を入れて教育が繰り返されてきました。

日本は狭い国に多くの人が密集して共同生活をしている特徴を持つことも理由としてあげられるように「人の目を気にする」「モラルを気にする」といった特徴が強い民族です。

それはとても大切で素晴らしいものですが、過剰になると少しのことでも許せなくなり、「自責」や「自戒」を必要以上に行ってしまうことも多くあります。

我々日本人の素晴らしい特徴でもある「自責の念」ですが、我々が苦しむことが多い「過剰な自責の念」はそろそろ落ち着かせる時代に入ってきているのかもしれません。

現代で大切にされてきているのは、自分を責めることより相手に対する謝罪とそのようなことが起きないような反省や方策です。

自責することが一番大切なのではないのです。

責任の所在や原因を追求することに力を入れすぎて、本末転倒になることもあります。

わたしたちの遺伝子に組み込まれた過剰な自責がどれほど必要か「疑ってかかる」ことも大切かもしれません。

自分を責める「自責」と「自己嫌悪」


自分を責めていると、

「なんて自分はダメなんだ」
「なんで自分はいつもこうなんだろう」

と自己嫌悪になってしまうことがあります。

自己嫌悪から

・自信がなくなる
・自己効力感(自分は実現できるという思い)が弱まる
・自己肯定感が弱まる
・やる気やモチベーションが落ちる
・諦めやすくなる
・気持ちが折れる(やめてしまう)
・落ち込む
・抑うつ

といった問題に発展してしまいます。

まるで自動運動かのように繋げてしまうことも少なくないです。

このような流れから「落ち込みやすさ」の頻度が高まってしまうこともあります。

多くは、「そこまで自分を落ち込ませたくない」と思っているのに無意識的にそのような流れができてしまい、慢性的に繰り返してしまうことがあります。

このような自己嫌悪を止めようとコントロールして少し軽減するものもあれば、なかなかコントロールできずかえって苦しむこともあります。

それは起きた出来事に対して「どれくらい自分を責めるべきか?」を自分が判断しているかを知ることが大切です。

「自分を強く責めるべき!!」と思っているのに自己嫌悪を減らすことはなかなか容易ではありません。

なぜそこまで「自分を強く責めるべき!!」と思っているか?を知り、理解していくことが先決です。

自責と反芻(はんすう)


「反芻(英語:rumination)」は、今の状況や過去の出来事を何度も繰り返し考える思考や疑念を指します。

無意識的に沸き上がってくることが多く、湧き上がってきては意識的に思考し、さまざまな情報と関連付けを行い、その影響を増長してしまうことも少なくありません。

意識的に繰り返し考え続けることを「反芻思考」と言ったりします。

反芻は「抑うつ状態」と関連が深くあります。

抑うつ状態とは、気分が落ち込んだり憂鬱で、意欲が低下した状態のことを指します。一般的には、鬱々(うつうつ)とする、鬱っぽさなどを表す言葉です。

抑うつ的反芻(英語:depressive rumination)は、自分の抑うつ状態に陥った原因などに対して「なんでこうなったのだろう」と消極的に考え続けてしまうことです。

そのような状態が継続的に続くと抑うつ状態を慢性的に持続させ、悪化させることもあることが研究などから明らかになっています。

自責を反芻してしまうことは、自責する機会を増やしてしまいます。

反芻の扱い方を上手く知ることで被害を最小限にしていくことが可能ですが、その方法は人によって異なるのでカウンセリングの中でお伝えしております。

罪悪感と自責


自分を責める「自責」には罪悪感と深く関連することが多いものです。

「自責の根底には罪悪感があり、罪悪感があると自責する」といった関連性です。

罪悪感があるから反省もできますし、自責し、「次はこのようにしよう」と対策を練ることができますので、罪悪感自体は有用なものでもあります。

しかし罪悪感を過剰に感じてしまったり、長期にわたって慢性化させてしまう罪悪感には注意が必要です。

そのような強く過剰で、慢性化した罪悪感は自責を伴って本人を苦しみ続けてしまいます。

「本当にそのような罪悪感が一番大切なのか?」「実はもっと大切なことがないか?」を丁寧に見ていく必要があります。

自分を責めてしまう・責めすぎてしまう状態に対するカウンセリング


まずは相談されるクライエントが、

・どのような自分を責める思いを思っているか?
・どれくらい責めてしまうのか?
・罪悪感はどれくらいあるのか?
・反芻や自己嫌悪の状態はどのような感じか?
・責任の所在に注力しすぎていないか?

などに対して改めて言葉にして話していくことが大切です。

外に出すことによって少し客観的にみることができ、全貌の理解が促されることがあります。

気づきが生まれて少し気持ちが楽になったりします。

「責めすぎてしまう自分」自体を責めているケースも多く有り、そういった厳しい自分を見つめ直すことも大切になります。

そしてなんでこんなに責めていたのか?こんなに責めすぎていたのか?が明らかになってくると「ふっ」と力が抜けることがあります。

責めすぎていた理由を探している中で自分の人生に重要な影響を与えている過去のドラマティックな情動や思い出が想起されることもあります。

それは大変な苦痛であった場合も有り、向き合うと大きな感動を呼び込むこともあります。

力が抜けると同時に張り詰めていたものも緩んでくるのが分かったりもします。

「こんなにもプレッシャーを自分にかけて苦しませていたんだ!」ということもこの時には理解できるようになります。

「自分のせい」にし過ぎているケースでも、必ずそのように強めたのには理由があります。

そういった理由を紐どきながら、理解と納得が得られてくると呪縛から少しずつ解放されていったりします。

しかしなかなか難しいこともあり、一歩ずつ着実に進めるように地道にカウンセリングを進めていきます。

特に癖になっているものは、習慣的に使いやすい神経系や脳の働きが構築されていることもあるので、ゆっくり改善していくことが推奨されます。

神経可塑性(しんけいかそせい)について理解していくことも重要かもしれません。

コントロールができない自責でも、なぜコントロールできないか?という理由がわかってくると少し気持ちが楽になっていきます。

自責と自己嫌悪などで深く傷ついている場合は、その傷や苦しみに焦点を当てて、クライエントのペースでゆっくり話しながら、傷口が言えるような流れでカウンセリングを進めていきます。

少しずつ気持ちが楽になってくると、明るさも少しずつ戻ってきたり、いろいろと頭もまわるようになっていきます。

自分はどれくらい責めるのが適当で、何に注力していけばいいかを理解し、習慣化していくと、今後の人生において悩まされる問題の一つが減ることになります。

そういったところも踏まえながらクライエントが全体的にベースアップしていくように計画していきます。

しかしカウンセリングはクライエントの主体性をとても大切にします。

自ら話し、理解し、気づき、対処をし、行動と実行を繰り返し、新たな自分へと自分で成長を遂げる「場」を提供するだけという側面もカウンセリングはあります。

そういったことからクライエント自身の主体性を育んだり、ストレスのマネジメント能力も高めていくことができます。

気持ちが楽になり、適切な自責へと変化をしていく中で「向き合ってよかった」と思えるようになります。

そして乗り越えた達成感と成長した自分で今後の人生を歩んでいくことができます。

その時のクライエントの目は、相談前の目とは大きな違いがあります。


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記事監修
公認心理師 白石

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