過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここでは心理学に多大な影響を与えた人物であるジークムント・フロイトと「無意識」「自由連想法」「自我・エス・超自我」について書いていきたいと思います。

ジークムント・フロイトについて


ジークムント・フロイト

ジークムント・フロイト(独:Sigmund Freud)は1856年オーストリアのフライベルクの毛織物商人の家庭で生まれます。

母親から「私の黄金のジギー」と呼ばれるほどの自慢の息子であったようです。

幼少期にウィーンへ移り、17歳にはウィーン大学に入学し、物理や医学、生理学を学び、脳性麻痺や失語症などの研究を行い、医学の学位を得ます。

1884年にはコカインの研究、1885年にはジャン=マルタン・シャルコーのヒステリー患者に対する催眠療法に興味を持ち、彼のもとで学んで行きます。

1886年には「男性のヒステリー」と言う論文で女性のみの病気とされていたヒステリーに対して新たな見解を提唱するが、大きな反発を受けます。またこの年にはシャルコーの催眠療法を用いた医療施設を開業しました。

当初、催眠療法を行なっていましたが、効果が一時的であったり、効果がある場合もあればない場合もあるといった状況から新たな治療法を模索していきます。

患者の幻覚や幻想を言葉で物語るように求めるだけで精神状態を改善することに成功していた医師ヨセフ・ブロイアーと出会い、無意識的な領域への関心が高まっていきます。

1895年に二人で共著した「ヒステリー研究」では、抑圧された記憶を無意識から解放して意識化し、溜め込まれていた感情が解放されることで症状が消失していくことが書かれています。

そして臨床と治療を繰り返しながら生まれたのが「自由連想法」で、ある言葉を与えられたときに心に浮かぶまま自由な考えを連想しながら話していくことで心理的に明らかになっていない思いや考えを明らかにしていく方法です。

1896年父がなくなると不安症が強くなり、友人ヴィルヘルム・フリースへの依存が高まったことからフリースが分析者となり、自身を使って研究していきます。

無意識の中には父に対する敵意や母に対する性愛などを回想や夢分析から見出し、次第に父の死に対する心の整理がついていきます。※フリースへの依存心もなくなっていったようです。

その後、無意識の研究、「自我・エス・超自我」の構造理論などを確立します。

1908年には精神分析学会を設立し、フロイト学派の将来を保証するものとなります。

そのほかにも彼の提唱した概念や理論として

・力動論(心のエネルギーの抑圧や葛藤などの動向)
・リビドー(性的エネルギー)と性的一元論
・防衛機制(無意識において行われる自己防衛操作)
・意識、無意識、前意識(局所論)
・退行(自我が対抗して弱くなり病人となる)
・発達論(口唇期、肛門期、幼児性器期、エディプス期、潜伏期など)
・無意識という概念が広く認知される
・エディプスコンプレックス

など多くのものがあります。

晩年には「抑圧に注目してきたが、抑圧するものにも注目しなくてはならない」として自我に注目した精神分析を行い、「自我心理学」として娘アンナ・フロイトに受け継がれていきます。

最愛の弟子ユングとの別れやアドラーとシュテーケルの勉強会離散、家族や親族の死など孤独で苦しむことも多くありました。

戦時中には、飢えと寒さをしのぎながらもフロイトは、多くの戦争神経症患者を診察しました。

1930年代にはナチスによるユダヤ人迫害が激しくなり、故郷を惜しみながらイギリスに亡命します。

末期ガンを患い、83歳で末期ガンにより亡くなっています。

彼の提唱した理論や技法はさまざまな肯定的発展と批判的発展を繰り返しながら現在でも大きな影響を与え続けています。

⬛️フロイトの「性」について
フロイトの提唱した「性」の概念とその結びつきの印象に誤解を受けていることが多くあります。フロイトの捉える「性」には、セクシャルな要素だけではなく愛着やぬくもり、快感や満足感なども含まれた広い意味があります。そういった広い意味での「性」が満たされないことで問題が起きてくると考えました。

「無意識」と自由連想法


フロイトによれば私たちが日々自覚している精神は、私たちの心的現実の総和の一部に過ぎず、表層的であると言っています。

意識は無意識の操り人形のようであるが、その無意識には多くの苦しみや抱え込んでいる観念が多く存在している貯蔵庫だという表現もしています。

特に精神を圧倒しかねないものはアクセス可能な記憶から分離されて、無意識に保管されると考えました。

そのためフロイトは先ほど説明した「自由連想法」や「夢分析」を通して患者の無意識を解放していく治療法を行なっていきます。

夢は願望が満たされているかどうかが現れるもので、無意識からの意識への暗号化を解読するかのようにフロイトは解釈していました。※小さな建物は多くの場合、抑圧された性的情動であると解釈されました。

自由連想法では、意図を加えず自由に話していくことで心の中にしまい込んだ隠している(隠れている)思いや感情がうっかり表に出てくることが重要です。

そしてその感情や思いをしっかり整理したり、解放させていくこの行為の実感をを「カタルシス」と呼びました。

また幼少期の無意識化された愛情態度が治療家や他者に向けられる「転移」の概念や抵抗を克服する上での利用していく手段を見出したことも非常に大きな功績であると言われています。

フロイトによって無意識の概念が広がるきっかけになりましたが、彼はこのように言っています。

詩人と哲学者が、私よりも前に「無意識」を発見していた。私が発見したのは、無意識を研究するための「科学的方法」だ。

ジークムント・フロイトの言葉

自我・エス・超自我


フロイトは人間の精神機能を説明するために以下の3つに分けて説明しています。

◉超自我(スーパーエゴ)=コントロールや自覚できない無意識的な理性

◉エス(イド)=本能や欲望、衝動とその貯蔵庫です。

◉自我(エゴ)=調整の役割を持ち、コントロールできる自律的自我とコントロールできない防衛機制があります。

無意識的なエスの本能や欲求に翻弄されることが多くあるものの無意識的な超自我や意識的な自我で理性をもって統治しようとしているのが人間の精神であると考えました。

参考文献

精神分析的人格理論の基礎 馬場禮子著
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

記事監修
公認心理師 白石

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