過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここではアルバート・エリスと「論理療法」について書いていきたいと思います。

アルバート・エリスについて


アルバート・エリス(Albert Ellis)

アルバート・エリス(Albert Ellis)は1913年アメリカのペンシルベニア州ピッツバーグに生まれ、ニューヨークで育ちました。

父は仕事で家をあけることが多く、母は双極性障害を患っていたため、3人の兄弟の面倒を見るのはエリスだったようです。

商売を行い、作家として著作もあったようですが、フロイトやアドラー、フロムらの影響を受け、1947年に臨床心理学の博士号を取得し、カレン・ホーナイ研究所で精神分析の訓練を3年間受けます。

治療に年月がかかり、精神的な世界を重視しすぎている「精神分析療法」に疑問を感じ、短期で精神とともに行動まで治療できるものを模索し、1955年に「論理療法(Rational Therapy)」を提唱しました。

この論理療法は、現在では理性感情行動療法(REBT、人生哲学感情心理学)と呼ばれ、最も有名な認知行動療法の基礎になっています。

エリスは、新しい心理療法を提唱したロジャースの来談者中心療法について効果がうかがえる肯定的側面と同時にセラピストへの依存心が高まる側面があると示唆していることもとても重要かもしれません。

1959年にアルバート・エリス研究所を設立し、アメリカで最も影響力のある心理学者の一人として評され、93歳で亡くなるまで教壇に立ち続けました。

主著には、

1957年「神経症とどう付き合っていくか」
1961年「理性的生き方へのガイド」
1962年「心理療法における理性と情動」
1998年「最適な年の重ね方」

などがあります。

論理療法


論理療法(英語:rational therapy)とは、心理的な問題や生理反応は、その出来事や刺激よりもどのように解釈し、受け取り、「認知」したことによって影響を及ぼすことを重視した心理療法です。

のちにアーロン・ベックが「認知療法(Cognitive therapy)」を提唱し、認知行動療法へと発展していきます。

論理療法の有名な理論として「ABC理論」と「イラショナル・ビリーフ」があります。

ABC理論とは、出来事(A)=結果(C)ではなく、その間に「固定観念や信念(B)があることによって結果(C)に至ると考える理論です。

よく問題となるのは非合理的で非論理的な信念「イラショナル・ビリーフ」であり、それらは「〜すべき、〜しなければならない」という信念であることが多くあります。

また偏った思い込みや事実に基づいていない解釈も多くあり、認知が変容していくことで合理的な思考「ラショナル・ビリーフ」ができるようにしていくのです。

自分や療法家によって不合理的な信念を徹底的に論駁(ろんばく;論争)する「論駁(D)」を行い、合理的なものへと脱皮する「効果(E)」に帰結し、A-B-C-D-EというプロセスでABC理論は完結します。

このような「認知」に関する提言は、古代ギリシャの哲学者エピクトテスにさかのぼります。紀元80年に「私達は出来事ではなく、出来事に対する自分自身の見方に悩まされる」と主張し、個人の見方や信念の重要性は古代より明らかだったようです。

論理療法では、合理的でポジティブな信念や認知だけに目を向ければ良いということではなく、行動を変えることで精神や情動も変化しますし、非合理的信念と認めて変容させていくことで行動も変化していくことも大切にしています。

認知行動療法と似ているところも多いですが、論理療法では特に「ビリーフ(信念)」を重要視しています。

例えば「私は愛されない」という信念を持っている場合、その信念を元に解釈されますのであらゆることにネガティブな反応が出やすくなってしまいます。

「一生私は愛されない」などのように「永遠化」されやすく、長期的に問題を作ってしまいやすくなります。

論理療法は、不健全で硬直した信念に行き着く非合理的な思考パターンを明らかにし、それに対してどのように立ち向かうかを示す心理療法なのです。

おわりに


最後にエリスの名言を2つ紹介します。

人々も出来事も私達をダメにしたりしない。むしろ私達は「自分がダメになってしまう」と信じ込んでしまうことで自分をダメにしてしまう。

アルバート・エリス(Albert Ellis)

人生の最良の時期は、自分の問題は自分で背負わなければならないのだと腹をくくった時だ。そのときに自分の運命は自分が支配しているとわかる。

アルバート・エリス(Albert Ellis)

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

記事監修
公認心理師 白石

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