過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではセルジュ・モスコヴィッシと「社会的表象と共通感覚(コモンセンス)」について書いていきたいと思います。
セルジュ・モスコヴィッシについて
セルジュ・モスコヴィッシ(Serge Moscovici)は1925年ルーマニアのブライラに住むユダヤ人家庭のもとに生まれました。
ブカレストの学校に通っていましたが、反ユダヤ人法により退学を余儀なくされ、強制労働キャンプに連行されますが、1941年の歴史的悲劇である組織的大虐殺を生き延びます。
第二次世界大戦中にはフランス語を学び、哲学書を読み、1949年には心理学の学士を取得します。
難民奨学金などを利用してダニエル・ラガーシュから精神分析を学び、博士号を取得します。
研究は特に社会構成主義の分野で功績を残し、活動はヨーロッパのみならず、アメリカとヨーロッパの様々な大学で教壇に立っています。
主著には、
1961年「精神分析ーそのイメージとそこ公衆」
1976年「社会変容に対する社会的影響」
1981年「群衆の時代ー大衆心理的考察」
などがあります。
社会的表象と共通感覚(コモンセンス)
精神分析学から社会構成主義へと関心を寄せたモスコヴィッシは、どのような思想も理解も「社会的表象」の働きを土台としていると主張しました。
社会的表象とは、日常的な人々の会話や相互のコミュニケーションなどを通じて創造される無数の概念や「共通感覚(コモンセンス)」のことです。
例えばお昼のワイドーショーで討論される内容も、主婦の井戸端会議も、会社の中で話すことも、学校で話している内容も、またそれらがテレビやメディアに反映され、また新たな風が一般大衆に吹く、といった一連の流れも社会的表象であり、私たちは毎日共通感覚(コモンセンス)を創り、更新し続けています。
「正常」と呼ばれる感覚はこの「社会的表象」や「共通感覚(コモンセンス)」にあり、積極的にこれらに参入することで馴染みのなかったものが馴染みのあるものになり、世界を理解可能なものにする枠組みを得ることができるとモスコヴィッシは言います。
その流れは以下のような流れで進むとされています。
人は好奇心のあるものに耳を傾ける
↓
すでに自分が持つ知識と紐づける
↓
他者との会話で分かち合う
↓
伝達されていく
↓
集合的な会話が発展していく
↓
その内容が系統立てられ価値が確立する
↓
社会は集合的共通感覚を生む
↓
馴染みのある良く知るものへと浸透していく
私たちが今「常識」や「正常」だと思っていることは、このような社会的表象や共通感覚(コモンセンス)であり、変容しながらその時代のその時代の「常識」と「正常」を形成していると言えます。
参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
記事監修
公認心理師 白石
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