精神科や心療内科などで処方されるお薬「向精神薬」についての理解が促されるようにこの記事では説明していきます。

これらの情報は医師や信頼できる情報をもとにまとめています。

当カウンセリングを利用されているクライエントやご覧頂いている方の「お薬への理解」が促されるように偏りのない情報提供を心がけております。

なおこの情報がすべて正しいというものではなく、医師や学会、最新研究等によって情報更新や考え方が異なることもありますので、あくまで主治医の指示に従ってください。

向精神薬とは何か?


向精神薬(読み:こうせいしんやく、英語:Psychoactive drug, Psychotropic)とは、「精神に向かっていく薬」と書くように、精神症状や精神疾患に用いられる薬剤の総称として用いられている言葉です。

向精神薬による治療は、精神疾患の症状などを軽減させる対症療法的に用いられています。

向精神薬の効果や反応性は、人によって異なる個人差も多く、その効果や反応を正確に測定することが難しいとされています。

そのため科学的根拠であるエビデンスを基礎に置きながらも患者の状態などをケースバイケースで医師が判断しながら処方されているのが現状です。

依存や副作用が懸念される薬剤もありながら効果も期待できるため、「リスク」と「効果」を慎重に検討されながら使用、継続、中断されることが望ましいケースが多くあります。

カウンセリングを行うクライエントによっては向精神薬での治療を行いながらカウンセリングを併用するケースがよくあります。

薬の使用、継続、中断などの判断は、医師や薬剤師などによる判断や指示が最も大切になります。

向精神薬を服用することを好まれない患者さんも少なくなく、早くやめなければと「焦り」や「悪いことをしている感覚」などを強めて、かえって心理的負担が増えてしまうことがあります。

しかし向精神薬の効果もエビデンスで証明されており、最適に用い、最適に終了していくことが大切です。

そのあたりの鑑別はプロフェッショナルである医師の判断に委ねることが基本となります。

もちろん患者側には「自己決定権の自由」がありますので、医師や薬剤師と話し合い、適切な処方と継続、中断などが行われるように協力・協同していく必要があります。

向精神薬は適応とされる疾患別に

・抗精神病薬
・抗うつ薬
・抗不安薬・睡眠薬
・気分安定薬
・精神刺激薬

という5つの分類に分けられます。

それらの詳しい内容や薬剤について次に説明していきます。

抗精神病薬


抗精神病薬(英語:Antipsychotics)とは、もともとは統合失調症の治療薬として主に1990年代以降に開発され、ドーパミンやセロトニンなどさまざまな受容体に対して働きかける向精神薬です。

錐体外路系副作用(EPS)が比較的少なく、体重増加や糖尿病の悪化リスクがあることがあります。※錐体外路系副作用(EPS)とは、手足が震える、動作が鈍くなる、足がむずむずする、じっとしていられないなどの運動症状を指します。

抗精神病薬に適応とされる症状としては、

・幻覚・幻聴
・妄想
・精神運動の興奮
・感情障害
・意欲障害
・会話や行動の障害
・考えがまとまらない状態

などがあります。

統合失調症だけではなく、「双極性障害の躁状態」や「焦燥感の強いうつ病」へも使用範囲が拡大されています。

薬理学的分類として「定形」と「非定型」に分けられています。

定形抗精神病薬

「定形抗精神病薬(第一世代)」は、ドーパミンD2受容体を遮断する薬理作用があり、思考や感情をうまくまとめることがうまくできなくなってしまったり、幻覚、妄想、会話の障害、行動の障害、意欲の障害などがある場合によく用いられます。

・クロルプロマジン(フェノチアジン系 、商品名:コントミン、ウインタミン)
・ハロペリドール(ブチロフェノン系、商品名:セレネース)
・スルピリド(ベンズアミド系、商品名:ドグマチール)

などが「定形抗精神病薬」の代表的な成分です。

非定形型抗精神病薬

「非定型抗精神病薬(第二世代)」は、ドパミンD2受容体やセロトニン5-HT2受容体などの拮抗作用により、幻覚、妄想、感情や意欲の障害などを改善し、現在の抗精神病薬として主流とされているお薬です。

・リスペリドン(商品名:リスパダール)
・パリペリドン(商品名:インヴェガ錠)
・オランザピン(商品名:ジプレキサ)
・クエチアピン(商品名:セロクエル)
・アリピプラゾール(商品名:エビリファイ)
・ブロナンセリン(商品名:ロナセン)
・アセナピン(商品名:シクレスト)
・クロザピン(商品名:クロザリル)

などが「非定形型抗精神病薬」の代表的な成分です。

抗うつ薬


抗うつ薬(英語:Antidepressant)とは、うつ病のような気分障害、抑うつ状態、希死念慮(死にたいと願うこと)などに対して用いられる向精神薬です。

抗うつ薬を用いる適応としては、

・抑うつ気分
・意欲低下
・不安
・焦燥感
・不眠
・食欲低下
・希死念慮

などの症状があります。

うつ病だけでなく、不安障害や強迫性障害、PTSDなどにも使用が拡大されています。

  • 三環系抗うつ薬(TCA)
  • 四環系抗うつ薬
  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
  • セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
  • ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)

などが抗うつ薬にはあります。

三環系抗うつ薬(TCA)

三環系抗うつ薬(TCA)は、モノアミントランスポーター阻害作用などにより、セロトニンを増やす働きがあり、臨床効果が現れるのに服用から1~2週間はかかるとされています。

・イミプラミン(商品名:トフラニール・イミドール)
・クロムプラミン(商品名:アナフラニール)
・アミトリプチリン(商品名:トリプタノール)

などが「三環系抗うつ薬(TCA)」の代表的な成分です。

四環系抗うつ薬

四環系抗うつ薬は、三環系やSSRI、SNRIと比較すると即効性があるのが特徴的で、三環系抗うつ薬よりも副作用が少ないのが特徴です。

・ミルタザピン(商品名:リフレックス・レメロン)
・マプロチリン(商品名:ルジオミール)
・セチプチリン(商品名:テシプール)
・ミアンセリン(商品名:テトラミド)

などが「四環系抗うつ薬」の代表的な成分です。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、副作用を少なく、より選択的に作用することを目的として開発された抗うつ薬で、セロトニントランスポーター阻害作用により、うつ症状や不安の改善に用いられます。

・パロキセチン(商品名:パキシル)
・フルボキサミン(商品名:デプロメール、ルボックス)
・セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)
・エスシタロプラム(商品名:レクサプロ)

などが「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」の代表的な成分です。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)とは、セロトニンとノルアドレナリンの再吸収を阻害し、これらの神経伝達物質の濃度を増加させる働きがある抗うつ薬です。

・ミルナシプラン(商品名:トレドミン)
・デュロキセチン(商品名:サインバルタ)
・ベンラファキシン(商品名:イフェクサー)

などが「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」の代表的な成分です。

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)とは、ノルアドレナリンの遊離を促進したり、セロトニンの働きを改善する働きを持つ抗うつ薬です。

SSRIやSNRIで効果が不十分であった場合に効果があることがあったり、SSRIやSNRIにNaSSAと併用することでより高い効果を得ることもあるようです。

ミルタザピン(商品名:リフレックス・レメロン)が「NaSSA」の成分です。

抗不安薬・睡眠薬


抗不安薬(英語:Anxiolytic)とは、不安障害や不安症状に対して用いられる薬剤で、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬が多く、それらは精神安定剤(トランキライザー)と呼ばれています

睡眠薬(通称:眠剤、英語:Hypnotic)とは、睡眠時の緊張や不安を取り除き、寝つきをよくしたり、睡眠による障害を改善する目的で使用されます

睡眠薬と抗不安薬は、ともにベンゾジアゼピン受容体などに働きかけることで鎮静・リラックス効果が得られます。(ベンゾジアゼピン系以外の抗不安薬や睡眠薬もあります)

なぜ抗不安薬と睡眠薬が同じところで説明されているかというと、その作用のうち、「催眠作用」が強いか「抗不安作用」が強いかというバランスの違いで、「睡眠薬」と「抗不安薬」とに別れていることが多いからとされています。

適応として、

・不安症・不安障害
・不眠症・不眠障害
・激越(げきえつ、感情が激しく高ぶること)
・興奮
・けいれん
・筋緊張

などの症状や障害に用いられます。

即効性があるため興奮や激越の初期に用いられることも少なくありません。

連用により慣れて効果を感じにくくなる「耐性」や「依存」が生じやすく、注意が必要です。

ベンゾジアゼピン系として、

超短時間作用型のトリアゾラム(商品名:ハルシオン)
短時間作用型のエチゾラム(商品名:デパス)・ブロチゾラム(商品名:レンドルミン)・クロチアゼパム(商品名:リーゼ)
中間型のフルニトラゼパム(商品名:アメル)
長時間型のクアゼパム(商品名:ドラール)

などがあります。

ベンゾジアゼピン系の注意点として特に「依存性」が挙げられています。

非ベンゾジアゼピン系のゾルピデム(商品名:マイスリー)、ゾピクロン(商品名:アモバン)、エスゾピクロン(商品名:ルネスタ)は作用機序や効果、依存性などがベンゾジアゼピン系に類似します。

近年、ベンゾジアゼピンと異なる作用部位を有する

  • メラトニン受容体作動薬であるラメルテオン(商品名:ロゼレム)
  • オレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサント(商品名:ベルソムラ)

なども開発されてきています。

抗不安薬や睡眠薬の服用に注意が必要なものとして、

・ハングオーバー(持ち越し)
・筋弛緩作用と転倒
・認知機能障害と健忘
・呼吸抑制
・反跳性不安と反跳性不眠
・離脱症状
・奇異反応(本来予想されるはずの作用の逆の反応が生じること)
・アルコールとの相互作用

などがあります。

気分安定薬


気分安定薬(英語:Mood stabilizer)とは、もともとは双極性障害の躁状態と鬱状態の気分の波を安定化させる目的で開発された向精神薬です

躁状態や気分の波が激しい場合、精神運動興奮などに用いられ、抗うつ薬や抗精神病薬との併用も多くあります。

副作用の防止や狭い治療有効域であったりするため、血中濃度測定(TDM)が重要視されています。

気分安定薬には、

  • 炭酸リチウム(ミネラル)
  • 抗てんかん薬(バルプロ酸、カルバマゼピン、クロナゼパム、ラモトリギン)
  • 一部非定型抗精神病薬

などがあります。

副作用として、

・薬疹
・腎機能異常
・甲状腺機能異常
・心機能障害

などに注意が必要です。

精神刺激薬


精神刺激薬(英語:psychostimulant)とは、ドーパミンの受容体に結合するメチルフェニデートやアンフェタミンのように、突然強い眠気を催すナルコレプシーや注意欠陥・多動性障害 (ADHD) の治療薬として処方される向精神薬です。

メチルフェニデート

メチルフェニデート(商品名:コンサータ)は、ドーパミン再取り込みを阻害し、速攻性に優れ、主症状の70%以上に有効とされています。

副作用として、食欲低下や動悸、体重減少、不眠、依存リスクがあります。

6歳以上が服用可能で、12時間作用するため日中の症状に適応できます。

アトモキセチン

アトモキセチン(商品名:ストラテラ)は、ノルアドレナリン再取り込みを阻害し、覚醒作用に乏しく、依存性があまりありません。

効果に2~8週間を要すると言われています。

副作用として、悪心、食欲低下、頭痛、眠気があります。

服用前に心電図異常がないか確認することが大切です。

起床直後や夕方から夜間にかけての症状に適応できます。

グアンファシン

グアンファシン(商品名:インチュニブ)は、α2aアドレナリン受容体を刺激し、依存性があまりありません。

効果に1~2週間を要すると言われています。

副作用として、低血圧、徐脈、傾眠、頭痛などがあります。

おわりに


向精神薬についての基本的な情報をまとめて説明してきました。

日々研究が進められ、新たなエビデンスや薬剤が見出されています。

できるだけ副作用を少なくしようと日夜研究されています。

実際、向精神薬に否定的な捉え方をされる方もいれば、肯定的に捉えている方もいます。

心理的な問題は「心理で」といいたいところですが、脳や神経系、伝達物質の方からアプローチするといかに有用であるかも理解しております。

自然志向の人であればあるほどこのような向精神薬を用いる気持ちが持ちにくくなるかもしれません。

もし用いることを決めたのであれば、お薬を信頼して服用することも大事かもしれません。

西洋医学でも東洋医学でもその他医学、代替療法などすべての心と体に関わる治療や療法の目的は「患者さんやクライエントにとって有効で治療効果の高いもの」を提供することです。

どの医学が優れているか?と「いがみ合う」のが目的ではありません。

患者さんの健やかな健康に寄与することが目的です。

そういった意味でもさまざまな専門分野の先生方が垣根を越えて連携できていく時代が進んでいくことも大切だと思います。

■参考文献
向精神薬マニュアル 融 道男著
精神科の薬がわかる本 第4版 姫井 昭男 著
公認心理師 現任者講習会テキスト 日本心理研修センター監修