過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではジャン・ピアジェと「認知発達理論」について書いていきたいと思います。
ジャン・ピアジェについて
ジャン・ピアジェ(Jean Piaget)は1896年スイスのヌーシャテルの中世文献学を研究する父と信仰心の厚い母のもとに生まれます。
ピアジェはプロテスタントの教育を受けながら、生物学に早くから興味を持ち、10歳頃という若さで白スズメの観察を論文にして自然史博物館の館長に認められるほどでした。
生物学を勉強するためにヌーシャテル大学を卒業し、精神分析など心理学へと関心が強くなり、チューリッヒ大学やパリ大学などで心理学を学びます。
1921年ジャン・ジャック・ルソー研究所の所長となり、ジュネーブ大学やローザンヌ大学などで教壇に立ちます。
プライベートでは、ヴァランタン・シャトネーと結婚し、3人の子供を授かります。
この3人の子供への観察と子育てが土台となって有名な「ピアジェの認知的発達」の提唱へと繋がっていきます。
1955年には発生的認識論国際センターを創設し、世界規模で多くの賞と功績を残し、亡くなるまでこのセンターの所長を務めます。
主著には、
1932年「児童道徳判断の発達」
1947年「知能の心理学」
1952年「児童における知能の起源」
1966年「児童心理学」
などがあります。
認知発達理論
ピアジェは認知発達における研究を幅広く行い、多くの功績を残したことから「発達心理学」の父と呼ばれています。
ピアジェは子供の成長につれてどのように知能が発達するのかという「発生的認識論」について関心を持ち、研究を行っていきます。
子供は能動的で自立した学び手であり、教師はその子供が自分で創造性や想像力を発揮できるように指示することが大切であると考えました。
ここでいう「能動的」とは、試した、やってみたい、動きたい、マスターしたいという自然な欲求から学習が行われることを指します。
研究を行っていくと、子供にはその年代に応じた思考法があることを提唱し、その見解は大人のミニチュアであるという当時の見解を覆すものでした。
発達には段階があり、まず最初は、「感覚運動期(0〜2歳)」から始まります。
この時期は自分の観点から自己中心的にしか見えない時期であり、感覚と運動が「表象(イメージ)」を介さずに結びつき、反射的な行為が多いものです。
見えなくなっても存在できると理解できる「対象の永続性」、繰り返し行動の「循環反応」、真似をして学ぶ「模倣行動」などが特徴的です。
この時期に目の前にはない対象をイメージしたり、行為の前に思考するようになってくると次の段階である「前操作期(2〜7歳)」に入ります。
この時期では、同じように自己中心性が強い時期ですが、思考に比較や検討ができる論理性が備わってきます。
またあらゆるものに命が宿っていると考える「アミニズム」、想像と現実が区別できない「リアリズム」、自然なものでも人間が作ったと思ってしまう「人工論」などが特徴的です。
前半の2〜4歳は目の前になくてもイメージをして行為を行えるため「象徴的思考期」と呼ばれ、後半の4〜7歳は理性によって考えられるようになるため「直感的思考期」と呼びます。
次の「具体的操作期(7〜12歳)」では、数や量の保存概念が成立して情報処理を頭の中で行えるようになり、自己中心性から相対的な観点が備わってきます。
そして「形式的操作期(12歳以降)」では、抽象的な概念を操れるようになるため推論や推測、仮説に基づいた思考ができるようになります。
観察から得られたものではなく想定したものから判断して結論づける「形式的演繹」なども特徴的です。
また発達の仕組みとして、
①シェマ(認知構造として情報処理の枠組み)
②同化(新しい情報を既存のシェマで処理する)
③調節(同化できない時に認知の方法を変えて処理する)
④均衡化(同化と調節の認識精度を高める)
といった4つの処理行為により学習と発達を行うことができるとしました。
ピアジェは発達の研究から教師に必要なことはそれぞれの認知発達を見積もった上で、内的な動機付けとなりうる課題を与えることだとしています。
最後にピアジェの名言を二つ紹介します。
知能とは、どうした良いかわからない時に発揮されるものだ
ジャン・ピアジェ(Jean Piaget)
教育の目標は、新しい事柄を成し得る能力を持った人間を創造することだ
ジャン・ピアジェ(Jean Piaget)
参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
記事監修
公認心理師 白石
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