「メタ認知(にんち)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

近年、様々な観点から重要視され、一般的にも目にする機会も増えてきているように思います。

知っていると役に立つ心理学用語として「メタ認知」について解説していきたいと思います。

メタ認知とは?


メタ認知は、アメリカの心理学者ジョン・H・フラベル(John・H・Flavell)によって提唱された心理学用語です。

メタ(英語:Meta)とは「超越した」、「高次の」という意味があり、認知(英語:cognition)とはそれが何であるのかを判断したり、解釈する過程やその意識のことをいいます。

メタ認知(英語:Metacognition)とは、自分の認知をより広い視点やより高いところから観る認知のことを指します。

「認知していることを認知する」という客観的な認知です。

「メタ認知とは認知過程及びその関連事物(情報やデータなど)に関する自分自身の知識をさす。例えば、私がAよりもBの方が学習が困難であると気づいたとしたり、あるいはCが事実であると認める前にそれについて再確認しようと思いついたとしたら、それはメタ認知を行っているということだ。」—J. H. Flavell (1976, p. 232)

メタ認知-脳科学辞典

認知はついつい主観的になっていくことが多く、自分自身の状態を客観的に全体的に見ることができなくなってしまいます。

昔から自分を客観視する重要性を教わってきたのもわかります。

自分をモニタリングする能力と言い換えることもできます。

メタ認知能力が高いと自分の状態や性格、長所、欠点、行動パターン、失敗パターンが見えやすくなりなりますので感情のコントロールが行いやすく、達成や成功の確率が上がり、失敗の回避が行われやすくなります。

要するに自分のコントロールの舵取りが行い易くなります

また他人を見る余裕があったり、他者とのバランス、空気を読むなどに長けますので円滑なコミュニケーションや適応的な人間関係の構築に役立ちます。

ですので社会適応能力も高くなると言えます。

メタ認知能力が高い方もいれば、低い方もいます。メタ認知をよく使う方もいれば、あまり使わない人もいます。

このように個人差がありますが、「メタ認知」を知り、学び、繰り返し用いることで学習が促進され、メタ認知能力を鍛えることが可能です。

ある研究から5歳以降からある程度のメタ認知能力が備わっていくということがわかっています

メタ認知的知識


メタ認知には知識的側面と活動的な側面があります。

知識的側面である「メタ認知的知識」には、

  • 人変数に関する知識
  • 課題変数に関する知識
  • 方略変数に関する知識

があります。

※方略とは、意図的な工夫、計略、戦略といった意味です。

「自分は○○が得意だけど、○○は苦手」といった個人内の比較に基づく個人内変数に関する知識、「あの人よりこの人の方がこの能力が高い」といった個人間の比較に基づく個人間変数に関する知識、「時間が経てば、忘れ去られていく」といった一般的な知識の一般的な人変数に関する知識などがあります。

要するに人に関する知識のメタ認知のことをいいます。

また「こうするより○○する方が良い」といった課題変数や方略変数に関する知識もあります。

メタ認知的知識(英語:Metacognitive knowledge)は、人、課題、方略などを判断するための知識であり、学習的・経験的に蓄積され、必要に応じて活用しています。

メタ認知的活動


メタ認知的活動(英語:Metacognitive regulation)には

  • メタ認知的モニタリング
  • メタ認知的コントロール

があります。

メタ認知的モニタリング(英語:metacognitive-monitoring)とは、自分自身や課題、方略に対してモニタリングを行うことで気づき、評価、予測、点検などを行っていくことです。

メタ認知的コントロール(英語:metacognitive-control)とは、モニタリングによる気づき、評価、予測、点検をもとに課題達成に向けた方略の目標設定や計画、修正などを行っていくことです。

メタ記憶とは?


メタ記憶(英語:metamemory)とは、自己の記憶や記憶過程に対する客観的な認知のことをいいます。

自分の記憶をどれだけ客観的に認知できているかということです。

自分がどんなことができてどんなことができなかったか、などの記憶への理解や認知に重要な役割を果たします。

また都合の良いように変化してしまいやすい記憶に対して客観的に認知する能力は非常に重要です。

どうすればメタ認知能力が伸びるか


どうすればメタ認知能力が伸びるのかを紹介する前になぜ「メタ認知」が生まれるのかを知っておくことが重要になります。

メタ記憶の発達に関する考察によると、自分の過去の経験に関する内省的な意識の発達に伴いって客観視するモニタリングやより良い判断や行動を行うようになるようです。

自分を省みるということでメタ認知を用いるということです。

※「省みる(かえりみる)」とは、自分のしたことをもう一度考える、反省する意味です。

逆に言えば、自分を省みない場合、メタ認知能力を育てることができないということです。

それができるようになるのが5~6歳ぐらいと言われています。

ちなみにマカクザルやイルカにも確かさ(確信度)におけるメタ認知能力があることが分かっています。

ですので、自分を省みようとする精神がメタ認知には必要不可欠と言えます。

現状維持や慢心している精神状態ではメタ認知を使う動機がありません。

反省、内省といった要素だけではなく、目標を設定したり、現状をより良くしたいといった想いも「自分を省みようとする精神」につながります。

メタ認知を自分のペースで使う

メタ認知は、繰り返し使う事によって鍛えることが可能です。

かといって普段慣れていないのにあらゆるシーンでメタ認知を使うことは非常に難しいものです。

自分のペースで少しずつ用いる方が有用になります。

感情や欲求が強い時は、メタ認知を行うことができませんので少し冷静になった時に行ってみてください。

カウンセリングを行っていると「こんな自分もいるんだな」「こんな思いがあったんだ」「いろいろ話していくとみえてきたものがある」といった気づきに多く出会います。

カウンセリングは「メタ認知の宝庫」ともいえるでしょう。(すこし大げさですね。。。)

そういった経験がますますメタ認知能力を向上させてくれます。

メタ認知トレーニング(MCT)

ハンブルク大学のMoritz教授らが妄想の認知バイアスに対する新たな心理教育・介入法を開発し,メタ認知トレーニング( Metacognitive Training:MCT)と名付けました。

自分の持っている先入観や偏った見方などの「認知バイアス」を理解することから始まり、モニタリングを行い、コントロールを行っていきます。

精神疾患患者向けのグループワークが基本です。

個人的に行うのであれば、認知行動療法(CBT)のなかでメタ認知やMCTに類似したアプローチも行われます。

ポイントをおさえる

メタ認知能力の向上には

  • 全体的・総合的な視点を持つ
  • 自分を偏りなく理解する
  • 主観なのか?客観なのか?が判別できる
  • 囚われている視点からメタ認知へ移行する方法の上達
  • 長所と短所、メリットとデメリットを総合的に観る
  • なぜそのような行動を取るのかが説明できる
  • 相手の気持ちや相手の求めるものを汲み取る
  • より良い解決法や改善法を見つける
  • モニタリングしながら修正していく

などのようなポイントをおさえていくことが必要です。

注意するべきこととして完璧にしようと思わないで、今より少しでも上手くできれば良しとしていくことです。

近年注目されている座禅、瞑想、マインドフルネスなどもメタ認知能力の向上につながります。

大切なバランス感覚


メタ認知能力が向上することによる利点は多いものですが、メタ認知能力をあげようと躍起になったり、メタ認知のことばかりを考えてしまってはうまくいきません。メタ認知能力だけが向上してもバランスを欠いてしまっては本末転倒になります。

長期的な視点で能力を向上させるようにバランスよくメタ認知を使っていくといいと思います。

人間のこころには、無意識と意識があります。そこにメタ認知を含めて「メタ認知-意識-無意識」といった構造で捉えていくとバランスよく認識できやすいと思います。

当カウンセリングでは、「メタ認知能力向上に特化したカウンセリング(MCC)」を行っております。

メタ認知の視点に慣れていきながら繰り返し学習していくことにより自然にメタ認知能力を向上させるものです。

なにより「メタ認知」という心理学用語を知ることにより、ご覧頂いている方の何かしら役に立てられれば幸いです。

参考文献・サイト

メタ記憶の発達に関する考察 上原泉
メタ認知-ウィキペディア(Wikipedia)
カオナビ【メタって何?】メタ認知とは? 意味、2つの鍛え方、ビジネスの具体例など 
メタ認知 脳科学辞典

記事監修
公認心理師 白石

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