あまり聞きなれない「DOHaD仮説」ですが、知っていることで役に立つ可能性があるかもしれないと思い、記事にしました。

少しでもお役に立てば幸いです。

「DOHaD仮説」とは何か?


「DOHaD( Developmental Origins of Health and Disease )仮説」とは、成人病および生活習慣病胎児期発症起源説と呼ばれることもあり、胎児期から出生後早期の環境がその後の人生及び成人期における病気や生活習慣病のリスク要因になるとする仮説です。

この仮説は1986年にイギリスの医師David Barkerらの論文により提起され、「Baker仮説」と呼ばれています。

「子宮内で低栄養な胎児は出生時に体重が減少し、子宮内発育遅延ないし子宮内発育制限が起きたり、環境に適応するためエネルギーを溜め込みやすくなり、栄養環境が良い状態になると過栄養となることから疾病を発症するリスクが高まる」という点をこの論文で論じました。

特に妊娠9週目以降の成長期はリスクが高くなりやすい為、注意を促しています。

また生理学的には細胞分裂が遅くなったり、インスリンや成長ホルモンが過剰に分泌されることにより、筋肉や肝臓の発達が遅れたり、血管の弾力性が損なわれる可能性も示唆しました。

そしてこれらの理論を「胎児プログラミング仮説」として提唱しました。

■日本の低出生体重児の状況
母体の痩せ願望などの関連からここ40年間の平均体重は男女ともに200g減少し、低出生体重児(2,500g未満)の割合も、男児で8.5%、女児で10.7%まで増加(平成25年)しています。厚生労働省から「妊娠中に強い体重制限を行わず、正常体型の妊婦の体重増加目標を7~12kg とする妊産婦のための食生活指針」が示されています。

飢餓状態で育った子供が肥満になりやすいことが世界的によくみられていた時代であり、低出生体重児が成人期に糖尿病や高脂血症、高血圧、心血管疾患、がん、メタボリックシンドローム様症状を発症するリスクが高まるといった疫学調査もこの時代に多く報告されていました。

巨大児や早産でも発症リスクが高まる点や世代間連鎖などに対しての説明不足もあり、この 「Baker仮説」 の矛盾点が指摘され、GluckmanとHansonによって提唱されたのが「DOHaD仮説」です。

この仮説をもう少し異なった説明をすると、「発達早期の環境からその後の環境予測による適応反応が起こり、その適合の差によって将来の疾病リスクに関与する」と言えます。

近年の研究からこの反応は「遺伝子の発現部位を調節するエピゲノムの変化を介して行われる」ということもわかってきています。

これは、

●食べ物などの栄養状態
●薬物などの化学物質
●身体的・精神的ストレス

などが影響を与えるとされています。

バランスの良い栄養状態や必要最低限の化学物質の摂取、ストレスの低減を考えることで少しでもお子さんの将来の疾患リスクを下げることができる可能性があります。

これがどこまで関与するかどうかは未だ議論があり、この「胎児期から出生後早期の環境」だけが原因で発症するといった極論ではなく、その可能性を高める要因となる、といったリスク要因のひとつとして捉えることが大切です。

この手の情報は「実は○○が原因だった」といった極論的になりやすい特徴がありますが、基本的には世代間連鎖や遺伝、胎児期から出生後早期の環境、その後の人生における経験、環境、栄養状態、ストレス、ライフイベントなどさまざまな要因が合い重なって疾患に至ることが多いと考えられます。

また出生体重と関連して発症する疾患として以下のようなものがあると考えられています。

(1)低出生体重との関係が明確な疾患
   高血圧
   冠動脈疾患
   Ⅱ型糖尿病
   脳伷塞
   脂質代謝異常
   血液凝固能の亢進

(2)低出生体重との関連が想定されている疾患・病態
   慢性閉塞性肺疾患
   うつ病
   統合失調症
   行動異常
   子宮および卵巣重量
   思春期早発症
   乳がん、前立腺がん、睾丸がん他

※上記引用:

DOHaD仮説ー我が国の周産期の現状と今後の課題 日本産婦人科医会 常務理事 宮﨑亮一郎

精神疾患や発達障害など心理的影響


ここでは精神疾患や発達障害など心理的影響について書いていきたいと思いますが、注意点があります。

胎児期から出生後早期の環境(栄養状態・化学物質・ストレス)によっては精神疾患や発達障害、お子さんの心理的発達や性格的特徴への影響を与える可能性があるとされていますが、影響を与える因子の一つとして可能性があるということであって、それを気にするあまり余計にストレスを増幅させては意味がありません。

妊婦さんの場合は、「完璧に!」というより、少しでもより良い状態を作ってあげるというお気持ちでご覧下さい。

St Clairらによると「1959~1961年にかけて中国で起こった大飢饉において,この時期に母親の胎内にいた子供が成人に達したときに統合失調症の発症率が約2倍になった。」という発表を行いました。

胎児はお母さんの子宮の血流から胎盤を通して栄養を取り込むため、血流が悪いと栄養不足になったり、発育が悪くなってしまいます。

要するに食べ物だけではなく、お母さんの慢性的なストレスや過度なストレスによっても栄養不足になることがあるということです。

この時期には、ストレスを溜めない工夫、周囲の支援(特に旦那さんや両親)、ストレス発散や気晴らし拡張するようなプランニングが必要です。

また慢性的ストレスによるホルモンバランスの異常によって神経系の発達に影響する場合があるとされています。(特に胎盤が未成熟の場合)

妊娠期などある程度ストレスを感じやすいことは仕方がないことですが、パッソンとスレーターは「親族死亡に起因する胎内のストレス・ショックは、低体重児や早産を10%以上、児童期のADHDを25%、成人期の鬱と不安障害をそれぞれ8%と13%増やすことが示された。精神障害については、より近親であるほどその効果が強いことも判明した。」と論文で発表しています。(引用:IDEスクエア 第20回 産まれる前からの格差――胎内ショックの影響

非常に強いストレスが起きたときは周囲のサポートも含めて万全を期す必要性があります。

またこの論文では、所得の低い家庭ほどストレスを受ける量が多いことも指摘しています。

※生まれてきたお子さんに障害や疾患があるからといって必ずしも「胎児期から出生後早期の環境」が悪かったとは言えません。他にも非常に多くの要因や偶発的現象も含まれます。

おわりに


「DOHaD仮説」について説明してきましたが、いかがだったでしょうか?

あまり極論になりすぎないように書いていきましたが、今後世界中で「胎児期から出生後早期の環境」の重要性は益々考えられていくように感じます。

そしてカウンセリングしらいしでは、妊婦さんや出産後のお母さん、妊娠と出産に関するトラブルや悩みの相談に対してカウンセリングを行っております。

話す事によってストレスが低減され、なおかつ問題の解決・改善や周囲のサポートを促せるような仕組みづくりのお手伝いもさせていただいています。

ぜひ上手くご活用ください。

最後までお読みいただき、有難うございます。

参考文献

昭和大学DOHaD班「DOHaDとは」
DOHaD 説をめぐって 柳澤 正義(国立成育医療研究センター名誉総長)
DOHaD仮説ー我が国の周産期の現状と今後の課題 日本産婦人科医会 常務理事 宮﨑亮一郎
IDEスクエア 第20回 産まれる前からの格差――胎内ショックの影響

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