リーダーシップには、私たちが思っている以上に知らない様々なアプローチと理論があります。
実際の組織やキャリアの中で少しでもでお役に立てられますように記事を書いていきます。
もくじ
そもそもリーダーシップとは何か?
リーダーシップ(英語:leadership)とは、指導者であるリーダーの統率力や能力、スタイルなどを意味します。
「マネジメント」は業務の進捗状況や管理業務において用いられる言葉ですが、「リーダーシップ」はビジョンや方針を策定し、組織を導くことにおいて用いられます。
以前は強いカリスマ性や牽引力のある人間の「特殊技能扱い」であることが多かったリーダーシップですが、現在では誰もが持ちうる能力であり、鍛えることでその能力を伸ばすことができるものと考えられております。
指導・統率するリーダーに対し、その組織のメンバーや部下は「フォロワー」と言ったりします。
リーダーシップはリーダーの能力のみを表すのではなく、近年ではリーダーとフォロワーの相互作用によってリーダーシップが発揮されると考えられるようになってきました。
有名なドラッガーによるリーダーシップの定義として、
①フォロワーが自らの意思で「信頼」する必要がある
②リーダーシップは資質や才能ではなく、目標を達成するための「仕事」である
③特権的な地位ではなく、そのプロジェクトやチームにおける「責務・責任職」である
として3つを挙げています。
リーダーシップ論で有名な教育者ジョン・アデアによるとリーダーシップに必要な資質として、
①一生懸命行うべきことに注力する「熱意」
②人としての信頼関係を作る「誠実さ」
③周囲に不満を持たれても、立ち直り、ストレスに強く、粘り強い「タフネスさ」
④私利私欲ではなく成果に対して公平な判断ができる「公明正大」
⑤人を思いやり、感情を包括する「温かさ」
⑥自惚れや過剰なエゴを排除、自制、そして自省心を持つ「謙虚さ」
⑦生得的に持っている才能でもあり、上記6つの資質により形成される「信頼」
の7つを挙げています。
またアデアは、リーダーの仕事の核として、
①仕事(タスク)の明確化
②計画する
③説明を行う
④統制を行う
⑤評価する
⑥動機付けを行う
⑦組織化
⑧模範となる
の8つ行動を挙げています。
リーダーはこのような7つの資質と8つの行動に磨きをかけ、絶えず発展できるように努めて行く必要があるとされています。
社会心理学の父とも呼ばれるクルト・レヴィンの3つのリーダーシップのスタイルも参考になりますのでご紹介します。
①リーダーが全ての行動を指示する「専任型リーダーシップ」
②メンバー同士で決定できるように補佐役に徹する「民主型リーダーシップ」
③リーダー不在のため、メンバーだけで決定していく「放任型リーダーシップ」
があるとしています。
PM理論
三隅二不二が提唱した、「目標達成機能(P機能)」と「集団維持機能(M機能)」の両側面から捉えるリーダーシップ理論です。
2つの側面の強さにより、
①PM型(両側面の機能が強い)
②Pm型(目標達成機能が強い)
③pM型(集団維持機能が強い)
④pm型(両側面が弱い)
の4種類に分けることができます。(大文字が強い特徴を表します)
生産性は、④の「pm型」が最も低く、①の「PM型」が最も高いとされています。
目標達成も集団維持もどちらも大切に成立させることで生産性を上げ、より良い組織を作る上で不可欠になります。
SL理論
ブランチャードとハーシィーが提唱した、フォロワーの成熟度が高い場合には「関係動機型」が有効で、低い時には「課題志向型」が効果的であると考える理論です。
ようするにまだ成熟していない新入社員には、課題を呈示して仕事を通して関わり、ある程度成熟すると人間関係を特に重要視し、協同して生産性を上げていくことが大切であるということです。
SL理論では、
①教示的リーダーシップ(事細かに指示・監督するスタイル)
②説得的リーダーシップ(考えを表明し、疑問に答えながら行うスタイル)
③参加的リーダーシップ(意見を聞き、適切な解決や決定ができるようサポートする)
④委任的リーダーシップ(話し合いながら部下に任せて成果を促すスタイル)
の4つを状況に応じて使いこなすことが大切であると提言しています。
条件即応モデル
ファイドラーが提唱した理論で、集団の状況によって適合するリーダーシップの特性が決まるという理論です。
部下やメンバーに優しく受容的で関係性を優先する関係動機型を「高LPC」、反対に権威的で部下に厳しく課題志向型を「低LPC」の2つに分けます。
次に
①リーダーとフォロワーの関係性や支持があるかどうか
②課題や目的、手段の明確さがあるか
③リーダーの権限の大きさ
の要因を踏まえて判断していきます。
リーダーにとって集団状況が中程度有効であれば関係動機型の「高LPC」が有効であり、有利もしくは不利かの特徴がある場合は課題志向型の「低LPC」が効果的であるとしています。
ダニエル・ゴードマンの6種のリーダーシップ論
こころの知能指数である「EQ」の概念を発表したことで有名なダニエル・ゴードマンによる6種類のリーダーシップ論をここではご紹介します。
①「ビジョン型リーダーシップ」
⇒ ゴール地点はリーダーが決め、あとは補佐役に徹して目標に向かってメンバーの自律心を高めるアプローチです。
②「コーチ型リーダーシップ」
⇒ リーダーがメンバーのコーチとなり、目標に対して勇気付けやサポートなどの支援をして成長させていくアプローチです。
③「強制・強圧型リーダーシップ」
⇒ 軍隊や災害時など危機的緊急事態を迅速な判断で行うことができるリーダーに全権限があるアプローチです。
④「関係重視型リーダーシップ」
⇒ メンバーとの信頼関係を重視するため同じ立場に立ち、目標に向かっていくアプローチです。
⑤「民主型アプローチ」
⇒ メンバーの意見やアイデアを集め、反映していくアプローチ方法です。
⑥「ペースセッター型リーダーシップ」
⇒ リーダーが手本を見せ、モデリングによりメンバーのスキルや目標を向上させるアプローチです。
一番理想に近いリーダーシップは①のビジョン型と言われていますが、どのようなメンバー構成か、動機付けの状態、緊急度、成長見込みなど、どのような状況や何を求めていくかによって最適なリーダーシップスタイルが異なります。
コンセプト理論と6つのリーダーシップ・アプローチ
リーダーシップとは絶対的なものではなく相対的で流動的なものであると考える「条件適合理論」を背景として状況における理想のリーダーシップ像を議論の的にして作られたのが「コンセプト理論」です。
①カリスマ型リーダーシップ
⇒スティーブ・ジョブスのような並外れたアイデアと実行力で組織を強く牽引するスタイルです。
②変革型リーダーシップ
⇒会社や組織の抜本的なところから改革を行う、変わらなければいけない状況において有効なリーダーシップです。
③EQ型リーダーシップ
⇒組織内の人間関係や感情を重視し、モチベーションの維持に細かく注視するスタイルです。
④ファシリテーション型リーダーシップ
⇒ メンバーと同じ目線に立って傾聴し、自律性や主体性を発揮させるリーダーシップです。
⑤サーバント型リーダーシップ
⇒ 私利私欲を捨て、裏方に回ってメンバーをサポートするスタイルです。
⑥オーセンティックリーダーシップ
⇒ 自分の誠実さと真心から生まれる「自分らしい」価値観と信念に基づき行動していくリーダーシップです。
これら6つのリーダーシップスタイルもどれが最も良いという考えではなく、状況や目的に応じて最善のリーダーシップがあると考えると良さそうです。
おわりに
リーダーシップ・アプローチと7つの理論を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
どのような組織で、どのような目的で、どのようなメンバーであるかによって適合する最善のリーダーシップは異なるものです。
時代に変化とともにトップダウン形式のコミュニケーションだけではうまくいかないことも増えており、共感力や自省心の向上も求められているように感じます。
実際の現場では、自分と組織の活用できる資源を生かすも殺すもリーダー次第の側面も大きくあります。
また自分にはリーダーシップがないと思っていても育てることで実際の現場で役立てることもできます。
リーダーシップを育む歴史は非常に浅く、今後よりそのニーズと需要は高まっていくと考えられます。
またそのお手伝いができればと思っております。
※「リーダシップ」ではなく「リーダーシップ・アプローチ」と表題を書いている理由は、リーダーシップ性は先天的で固定的なものだけではなく、適材適所に応じて必要なアプローチ方法として活用できるものであるという視点を強めたく思い、このように表現いたしました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
記事監修
公認心理師 白石
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