心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここではアルバート・バンデューラと「社会的学習理論」「自己効力感」について書いていきたいと思います。

アルバート・バンデューラについて


アルバート・バンデューラ

アルバート・バンデューラ(Albert Bandura)は1925年カナダのアルバータ州のポーランド人の両親の元に生まれます。

ブリティッシュ・コロンビア大学を卒業後、アイオワ大学で修士号と博士号を取得します。

学習理論について研究を行い、スタンフォード大学で教壇に立ち、名誉教授を歴任し、アメリカ心理学会の会長も務めます。

社会的学習理論や自己効力感について発表を行い、ソーンダイク賞やライフタイム・アチーブメント賞、16以上の名誉学位を受賞されています。

主著には、

1973年「攻撃性ー社会的学習分析」
1977年「社会的学習理論」
1986年「思考と行為の社会的基礎ー社会的認知理論」

などがあります。

社会的学習理論


1950年代の心理学では、学習は報酬と懲罰によって決定される「行動主義」的観点で考えられていました。

社会的学習理論では、心の中でのリハーサルや他者の行動を観察したモデリングによって学習は行われると考える理論です。

有名な実験として「ボボ人形実験」があります。

3−6歳までの子供36人に対して行われた実験で、成人が人形に暴力的行為を及んだグループでは、ほとんどの子供はそれを真似て暴力的になりました。

成人の暴力的言動を行わないグループでは、子供たちの攻撃性は発揮されないため、私たちは真似てモデリングする学習機能が強く影響していることが実証されました。

このことからバンデューラは、TVなどのメディアで暴力的な映像を映す危険性を訴えます。

そして私たちは環境から影響を受けると同時に環境に影響を与えているという「相互的決定論」もこの理論の中で重要です。

自分の環境の中で暴力的・攻撃生を強める因子が強ければ、自身の心理にその影響受け、また自身の暴力的・攻撃性によって環境に影響を与えてしまいます。

人間の行動のほとんどはモデリングを通じて学ばれる

アルバート・バンデューラ(Albert Bandura)

自己効力感


自己効力感はセルフ・エフィカシー(英語:self-efficacy)とも呼ばれ、バンデューラが提唱した概念です。

意味としては、自分がある状況において必要な行動をうまく実行できることを信じ、自分の可能性を認知していることを指します。

要するに「自分は実現できる能力がある」という認知ができていることです。

■「認知」について
認知とは、物事を知覚した上で判断したり、解釈したりして認識することを指します。物事をそのまま認識することもあれば、自分の価値観や捉え方などを通して解釈が行われて認識することもあります。

自己効力感が強いほど、実際にその実現性は高くなると言われています。

また自己効力感は、困難や壁にぶつかっても、実現できるという確信度合いや信じる気持ちが立ち直りを早くし、チャレンジ精神を復活させます。

この自己効力感を高く認知したり、低く認知したり、個人によって異なるのは、過去に経験した成功と失敗が深く関わっています。

成功してきた事例があればあるほど、それに関連する事例に対して自己効力感は高くなります。

新しい挑戦に関しても成功事例を多く経験していると「実現できる」という確信度合いは高まります。

実現できるという確信は、やる気やモチベーションを向上させ、実現の成功確率を高めます。

反対に失敗を繰り返すことにより「実現できない」という確信度合いが高まり、やる気やモチベーションを低下させ、時に不安や恐怖といった感情にとらわれ、失敗の可能性を引き上げてしまいます。

このような自己効力感は人格の特性として長期的に形成されることもあり、「特性的自己効力感(GeneralizedSelf-Efficacy)」と呼ばれることもあります。

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

記事監修
公認心理師 白石

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