過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここではアーロン・ベックと「認知療法」「ベック抑うつ尺度(BDI)」について書いていきたいと思います。

アーロン・ベックについて


アーロン・ベック

アーロン・ベック(Aaron Temkin Beck)は1921年アメリカのロードアイランド州プロビデンスにてロシア系ユダヤ人移民の家庭の5人兄弟の末っ子として生まれます。

活発で外向的だったベックは、8歳の時に重い病気に罹患し、それからは内省的で勉強好きな少年になりました。

医学の道を志すも途中で様々なことに怯える恐怖心に駆られ、克服するために医師の訓練を受けます。

ブラウン大学を卒業し、イェール大学で医学博士の学位を取得し、ロードアイランド病院に勤務します。

フィラデルフィア精神分析研究所にて精神分析を学び、うつ病の研究を行っていましたが、精神分析の理論やアプローチを感じ、1961年には決別しています。

そしてベックは認知療法に着目し、ベック研究所(今は娘のジュディスによって運営)にて認知療法と研究を行っていきます。

1963年に「抑うつ質問票(評価尺度)」とうつ病の認知療法を提唱し、1976年に「認知療法」を出版します。

25の著書と600以上の論文を発表し、アメリカ心理学会や精神医学会など様々な学会から受賞し、認知行動療法(CBT)の理論的基礎を築きました。

ベックは精神分析の技法や理論に疑問を感じる点は多くあったものの否定的ではなく、うつ病やパーソナリティ障害などの病態に対して肯定的な見解も示しており、2010年にはジークムント・フロイト賞も受賞しています。

主著には、

1972年「うつ病ー原因と治療」
1976年「認知療法ー精神療法の新しい発展」
1980年「うつ病ー臨床的・実験的・理論的な考察」
1999年「憎しみに囚われた人ー怒りや敵意、暴力の認知的土台」

などがあります。

認知療法


この頃の心理療法や理論として「行動主義」と「精神分析」の二つの学派が主流であったもののその有効性に疑問を投げかけていたのは「認知」や「知覚」に着目した実験心理学者達でした。

ベックは自分が行ってきた精神分析では良くなる者、悪くなる者、変わらない者がおおよそ同数であったり、科学的検証を否定する学会の態度に疑問を持っていました。

ベックが診ていたうつ病患者は、自分や未来などを否定的に捉えて解釈していることが多いことに気づき、着目していきます。

このように自動で思考する「自動思考」や成長によって固定化されていく信念「スキーマ」が効果的な治療への糸口になると確信し、自分の知覚や解釈が現実的か、歪んでいるのかを認識し、正しく評価する認知療法を発展させていきます。

この認知療法は多くの患者に適応的に働き、科学的検証を行うことでその有用性が明らかになり、精神分析よりも早い速度で好転していくこととなった。

精神分析家は導師的要素やカリスマ性が強く、その点にも疑問を感じていたベックは、認知療法の効果や有用性は治療家にあるのではなく、療法にあることを強調しました。(「精神分析とは信仰をベースとした療法である」とベックは語っています)

アルバート・エリスの合理情動行動療法(REBT)、ウィルピの系統的脱感作、ラザルスのストレスコーピングなど様々な心理理論と療法を参照し、行動療法を組み入れ「認知行動療法」として発展させていきます。

それは治療家や学派を超えて、患者やクライエントにとってより有効性の高い治療法を確立するという精神があるからこそ実現できているのです。

そしてこのオープンなマインドによってこの認知行動療法には多くの心理技法が応用として取り入れられ、病態や疾患によって柔軟に対応でき、科学的検証によってその技法と理論は更新され、発展し続けています。

今世界中で最も汎用性と科学的根拠の多い理論と技法を持つ「認知行動療法」はベックなしでは成し得なかったと言えます。

※精神分析療法も科学的根拠の重要性を認め、エビデンスが増えてきており、病態や疾患によって有効性が高いものもあります。現在では、どのような状態であるかに対して、その状態に対して有効お性の高い技法の選択がされる傾向が高まってきています。

ベック抑うつ尺度(ベック抑うつ質問票:BDI)


ベック抑うつ尺度(ベック抑うつ質問票;Beck Depression Inventory、通称BDI)は、ベックによって考案された抑うつ(うつ病)を客観的に評価する検査です。

ここ数日の気分に一番近い答えを答案していく方法で21問の設問があり、今現在使われているBDI-Ⅱは13〜80歳を対象としています。

定期的に測定することで自分自身の状態を客観的に知ることとしても活用されています。

11〜16点ノイローゼ(軽いうつ状態)、17〜20点うつ病の境界線(専門家の治療を要する)、21〜30点中程度のうつ状態、31〜40点重いうつ状態、40点以上極度のうつ状態とあり、17点以上は専門家への相談と治療が必要になります。

またベックは、抑うつ状態の評価だけではなく、絶望度の尺度、不安尺度などの評価検査も発表し、活用されています。

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

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