「コンプリメント」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?

一般的には「褒める」「賛辞」と訳されていますが、「コンプリメント」はブリーフセラピーの中で用いられるひとつの技法です。

人生を生きていくうえで、子育てや職場の人間関係など多くの場面で生かされていくものですので心理職以外の方にも知ってもらいたく、記事にしております。

「コンプリメント」とは何か?


コンプリメント(英語:compliment)とは、「解決志向ブリーフセラピー(Solution Focused Brief Therapy:SFBT」の一つの技法で、相手の話したことや意図を肯定的あるいは支持的に評価することをいいます。

自分の話しを肯定的に捉えてくれたり、支持してくれたらうれしいですよね。

またその意図を汲んで肯定的に支持してくれたら非常にうれしいものです。

コンプリメントを深く知るためにはまずは「ブリーフセラピー」をご紹介していきたいと思います。

「ブリーフセラピー」とは何か?


ブリーフセラピー(英語:Brief Therapy)とは、比較的短期間で問題の解決を試みるアプローチで、問題や原因を掘り下げるよりも解決に至る道を効率的にみつけて実行する心理療法です。

ブリーフ(Brief)とは、「短時間の」「簡潔な」「手短な」という意味があります。

短期間とはどれくらいかはクライエントに応じて異なりますが、一般的には6~10回の面談で終了することが多いとされています。

精神科医であり、有名な催眠療法家でもあるミルトン・エリクソンによる「利用できるものはなんでも活用する」といった変幻自在なスタイルなどの技法や考え方、グレゴリー・ベイトソンのコミュニケーション論やシステム論がブリーフセラピーができるにあたってに大きな影響を与えています。

時間を要する心理療法が多い中、時間を効率的に用いる点や過去や原因に時間を費やすよりも今ある資源を活用していくといった実用的・効率的な視点が強調されています。

ブリーフセラピーの考え方として、

・原因や背景への注視よりも解決の糸口を探すことを重視する
・原因を個人とするより相互関係や相互作用とする
・性格を変えるのではなく、コミュニケーションパターンを変えること
・うまくいっていることを継続する
・うまくいっていないのであれば、今までと違うことを行う
・解決や改善に役立つリソース(資源)をみつける
・問題が資源になることも多い
・過去よりも未来に目を向ける
・例外から糸口を探す
・自他を責める機会をつくらない

といったことが特徴的です。

ブリーフセラピーの中にもいろいろな技法や志向が異なるものがあるのですが、コンプリメント技法を持つ「解決志向ブリーフセラピー」は、相談者(以下クライエント)と協働して満足のいく未来のイメージを作り、その実現に向けた必要な能力や要素について理解を深めていくようなセラピーとなります。

その理解には、クライエントの行動を改めて話していく中でそれが実現に向けた資源になることをフィードバックしていく作業でもあります

「ブリーフセラピー」について詳しくはこちらへ

コンプリメントをより深く理解する


コンプリメントとは、相手の話したことや意図を肯定的あるいは支持的に評価することと説明しました。

ブリーフセラピーでの説明では、行動を改めて話していくなかで資源となる要素をフィードバックするものであり、満足いく未来を作るための原動力になりえる事に気付けるような評価でもあります。

特に自信を無くしている人やお子様にとってコンプリメントは、非常に大切な関りとなります。

また問題がなくともコミュニケーションをより良くするために活用することもできます。

褒めるためには、良いところを見つける必要性があります。

人のいいところを探す、自分の良いところを探していると、いつの間にか癖づいていた「ネガティブな注目」が薄まり、肯定的に捉えやすくなる作用も長期的にあります。

また肯定的に支持された相手、ほめられた相手もうれしい気持ちが芽生えます。

褒められるところがなくても捉え方次第では褒められるものであったり、将来のための大事な能力であったりします。

そういったところを気づくことにより、自分や相手の世界観も広がっていきます。

コンプリメントは、ただ褒める、肯定的にフィードバックするものというものだけでなく、習慣的に活用することによって自分の思考の癖まで変化させられるものになります。

特に職場など活用しなければいけないところでぜひやってみてください。

職場の雰囲気がよくなったり、売り上げがよくなったり、幸福度が上がったり、とても良い影響がもたらされることもあります。

そして習慣づいてきたらお家や人間関係で活用してみてくださいね。

さて話は戻りますが、「褒め方」による影響には、個人差があります。

褒められ方が恥ずかしかったり、嫌みに聞こえたり、拒否感を感じることもあります。

褒めることは、コミュニケーショですので相互関係が大切になります。

相手に響く「褒め方」、相手が気付きやすい「フィードバック」を意識していくと良いでしょう。

また褒めるだけが「コンプリメント」ではありません。

自分や相手、子供の良さや長所、価値を見直して評価することも大切です。

当たり前だと思っているものに価値があったりするものです。

その見直しに「コンプリメント」が役に立ちます。

次に不登校のお子様に対して使われているコンプリメント・トレーニングの一部をご紹介したいと思います。

森田直樹先生のコンプリメント・トレーニング


森田先生の考えでは、不登校を引き起こす原因は、子どもの心の中にあるべき自信の水が枯れてしまったことにあると捉えています。

その自信を心のコップに戻すために「愛情と信頼をもった親の言葉がけ(コンプリメント)」が特に必要となります。

言葉がけは大変なものですが、子供が本来持っている良さや価値を改めて見直し、評価するところから始まります。

次に「今できること」にフォーカスします。

ご飯を食べることしかできないのなら「ご飯食べられたことやその中で食べられたもの」に評価していきます。

シンプルに「ご飯食べてくれてありがとう」でもよいのです。

そうやってできることから肯定的に支持して、愛情と自信を満たしていきます。

しかし注目し過ぎて過干渉になっていることもあるため、少し引いて見守ったり、自分の力で立ち上がることを尊重することも大切な時があります。

できたことを記録しておく「コンプリメント・ノート」も作ってみることも提案されています。

おわりに


このように「コンプリメント」という言葉でも解釈の仕方も違えば、いろいろな活用法もあります。

ご自身で生かせるものがあればぜひ実践してみてください。

うまく活用できると、周囲に笑顔が生まれやすくなり、自分も笑顔になる時間が増えていきます。

慣れるまでは時間がかかりますが、神経系と同じく、よく使えば使いやすくなり、使わなければ使いにくくなる原理と同じですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

■参考文献

場面想定法を用いた相談場面におけるコンプリメントの効果に関する検討 : 賞賛獲得欲求・拒否回避欲求に着目して 川口 智也 白濱あかね 古賀 聡

コンプリメントで不登校は治り、子育ての悩みは解決する ~子どもの心を育て自信の水で満たす、愛情と承認の言葉がけ~ 森田直樹著

記事監修
公認心理師 白石

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