心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここではレイモンド・キャッテル「流動性知能と結晶性知能」「性格特性論と16因子質問紙」について書いていきたいと思います。

レイモンド・キャッテルについて


レイモンド・キャッテル

レイモンド・キャッテル(Raymond Cattell)は1905年イギリスのスタッフォードシャー州に生まれました。

化学で最優秀の成績をおさめた後に心理学に転向し、1929年ロンドン大学で心理学の博士号を取得します。

ロンドン大学とエクセター大学で教壇に立った後、レイセクター児童指導クリニックに勤め、1937年にアメリカへ渡ります。

クラーク大学やハーバード大学、イリノイ大学で教鞭をとり、ハワイ大学で教授として最後まで勤めました。

プライベートでは3度の結婚をしています。

キャッテルは知能や因子分析、パーソナリティの研究で有名な心理学者として功績を挙げています。

主著には、

1971年「能力」
1987年「知能」

などがあります。

流動性知能と結晶性知能


キャッテルは学生の頃、スピアマンから学んでいる経験があり、「g因子(学習の基礎的な一般知能)」の影響を受け、それを発展させていきます。

それが「流動性知能」と「結晶性知能」です。

流動性知能とは、どのような論点でも内容でも適用可能な思考能力や推論能力を指します。作業記憶と関係があり、やり方や方法がわからないときに用いる手段として用いる知能であり、遺伝的に受け継がれ、ピークは成人初期でその後は徐々に下降していくと考えました。

要するに問題解決能力であり、生理学的な知能と言えます。

結晶性知能は、知識の貯蔵や作業仮説、判断機能を指します。

学校や仕事、社会生活、人間関係などの経験に基づいた知能が結晶性知能であり、この知能は生涯にわたって増加し、65歳くらいまでは一定しており、その後徐々に下降すると考えられています。

社会的立場や年齢、国籍、文化、宗教によって大きく差異があるのがこの知能でもあります。

この2種の知能は独立してはいますが、お互いに相関関係があり、この2種の知能によって知能である「g因子」が成り立っていると提唱しました。

性格特性論と16パーソナリティ因子質問紙


パーソナリティの特性について研究を行ったオルポートの提唱を発展させて、一貫して出現する行動傾向や性格的特徴のまとまりを「性格特性」という言葉を用いて提唱したのがキャッテルです。

その分析には因子分析を用い、「キャッテルの16因子質問紙」の16因子は以下の通りです。※翻訳によって表現が異なります。

  • 知能
  • 情感
  • 衝動性
  • 自我強度
  • 自己充足
  • 支配性
  • 大胆さ
  • 繊細さ
  • 空想性
  • 抗争性
  • 不安の抑制
  • 浮動的不安
  • 公共心
  • 猜疑心
  • 狡猾
  • 罪悪感

また

①共通特性(数量化できる他者と共通した特性)
②独自特性(数量化できないその人独自の特性)
③表面的特性(外部から客観的に観察できる表面的な特性)
④根源的特性(外部から観察できない因子分析によって抽出される内面的特性)

の4つの特性が相互作用的に影響を与え合い、全体的な特性とパーソナリティを形成すると考える理論も提唱しています。

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

記事監修
公認心理師 白石

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