過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここではブルーノ・ベッテルハイム「冷蔵庫マザー理論とその論争」について書いていきたいと思います。

ブルーノ・ベッテルハイムについて

ブルーノ・ベッテルハイム

ブルーノ・ベッテルハイム(Bruno Bettelheim)は1903年オーストリアのウィーンの製材業を営む家庭に生まれます。

父親が早くに亡くなったため学業は中断し、家業を継ぎましたが、大学に戻り、哲学や美術史を学びます。

ユダヤ人であったために強制収容所に入れられましたが、ヒトラーと同じ誕生日ということで奇跡的に解放され、アメリカに亡命します。

心理学の勉強はしていたものの学位を持っていませんでしたが、学位を持っていると自称し、教授として教壇に立つことができました。(実際の取得した博士号は美術史もしくは哲学)

シカゴ大学の知的障害児の訓練教育施設などで健常児と障害児の心理について研究を行います。

ベッテルハイムは昔から「抑うつ」の症状を慢性的に持っており、妻が亡くなると1990年に自殺し、死後に経歴詐称や治療結果の捏造などさまざまな問題が明るみになり、高かった評価が失墜しました。

冷蔵庫マザー理論とその論争


自閉症を研究していた児童精神科医レオ・カナーが「自閉症の子供は母親の愛情に問題がある」といった内容の「冷蔵庫マザー理論」を提唱し、ベッテルハイムはその提唱を支持し、書籍化して世界中に広めてしまいます。

適切な愛情を築けないために自閉症になるという発想は、フロイトの精神分析を学んでいたベッテルハイムにとって非常に支持しやすい下地があったのかもしれません。※精神分析学自体に問題があるというわけではありません。

しかし自閉症の子供の問題のほぼ全ての責任をその親(特に母親)に帰属させる極端な論調へと変化してしまい、世界中でその考え方が広まってしまいました。

バーナード・リムランドらのほかの心理学者がそれに異を唱え、この理論の極端性や問題点が明るみになり、ベッテルハイムの権威は失墜していきました。

自閉症児を持つ母親はその当時、かなりの自責の念と罪悪感を感じていたようです。

この冷蔵庫マザー理論の論争を肯定的に捉えることができるものとして、この論争があって「先天的な」「遺伝的要素」に注目が非常に集まったことが挙げられます。

また障害の診断基準や社会による障害の捉え方も影響が大きく存在し、今では一つの原因に帰属させることは意味がないという理解に変わってきているように感じます。

今現在でも民間の心理学の世界では、極論的でキャッチーな宣伝文句で注意を引いて、マーケティングを行うものも多く存在します。

色々と曖昧で何が正しいかわかりにくい世界で「実はこれが正しいんです」と提示されると人間は不思議と惹かれていくものです。

しかしこのホームページを見ていただけれるとわかると思いますが、心理学にこれが正しいという一つだけのものはありません。

色々な考え方や捉え方があって成り立っている、色々な技法やアプローチがあるからこそ自分に適したものを判断できるものです。

ですので一言で語ることはできず、どうしても曖昧な表現になりかねません。

しかしそういったものこそ現実なのかもしれません。

※心理学の歴史のおいて多くの極端な提唱があり、その反証が提示され、複雑的に発展して今があることがほとんどであり、そういった流れがあるという理解が重要かもしれません。

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

記事監修
公認心理師 白石

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