過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではスタンレー・ミルグラム「集団と服従」について書いていきたいと思います。
スタンレー・ミルグラムについて
スタンレー・ミルグラム(Stanley Milgram)は1933年ニューヨークでパン屋を営むハンガリー出身のユダヤ人家庭に生まれました。
ミルグラムは、学校での成績は非常に優秀でリーダー的な精神を持ち合わせており、高校の頃の同級生には、スタンフォード監獄実験でのちに有名になるフィリップ・ジンバルドーがいました。
ハーバート大学では人格心理学研究のゴードン・オルポート指導のもと心理学の博士号を取得し、ソロモン・アッシュと共同で「同調性」の研究を行います。
イエール大学では教壇に立ちながら「服従」の実験と研究を行い、プライベートでは、アレクサンドラ・メンキンと結婚し、二人の子供を授かります。
ハーヴァードで行なった実験が論争を巻き起こし、終身在職権が拒絶されますが、その後はニューヨーク私立大学で教鞭をとりました。
主著には、
1963年「服従の行動的研究」
1967年「小世界問題」
1974年「服従の心理ーアイヒマン実験」
などがあります。
集団と服従
ドイツのナチスの残虐な虐殺に関わっていた犯罪人アドルフ・アイヒマンの裁判にミルグラムは関心を持ち、アイヒマンが言う「ただ命令に従っていただけ」という言葉の真意と服従の研究を行っていきます。
ミルグラムの実験では、権威のある人から電気ショックを与えるように命令されると予想をはるかに超えて40人全員の被験者が300ボルトまで電圧を上げて苦痛を与えてしまいました。(本当の電圧ではなく演技ですが被験者は本物の電流が流れていると信じていたようです。その後被験者を欺いた問題が倫理的問題に発展します。)
ここから集団内の権威ある存在に服従しようとする強い傾向が人間にあることを明らかにしています。
ミルグラムは、この服従心は幼い頃から親や大人に従順に振る舞い、順応してきたところに由来すると考えるのが妥当であると言います。
ナチスの集団的な残虐行為はこの服従の力によって普通の人が自分の大切な倫理観や道徳心、意思決定を失わせたのです。
社会を持つ人間は、高次の権威や地位をもった他者やルールに従うことで形成されています。
私たちが意思決定して行なっている行動や思考もこのような社会の影響を無意識的にも大きく受けています。
私たちが正しいと思って行なっていることもその時代であるからこそ正しいと言えるのかもしれませんし、自分の意思で行っていると思いきやその環境に突き動かされているだけなのかもしれません。
このような視点は非常に見えずらく無意識的であるため、時に意識的に考えることで役に立つこともあるように思います。
特に失敗や「なんであんなことをしてしまったんだろう」という失態などで。
権威の服従に最も広範囲に影響するのが「責任感の喪失」である。
スタンレー・ミルグラム
参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
記事監修
公認心理師 白石
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