過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではカレン・ホーナイと「基底不安」「〜すべき理想の自己」について書いていきたいと思います。
カレン・ホーナイ
カレン・ホーナイ(Karen Horney)は, 1885年ドイツのハンブルク郊外に生まれ、のちに医師、精神分析家となります。
ベルリンの大学などで医学を学び、卒業後、両親が亡くなり、うつ病に苦しめられてしまいます。
精神分析医のカール・アブラハムの治療を受け、ドイツ精神分析協会の書記などを行なっていましたが、ナチスの台頭などにより1932年に娘達とアメリカに移住します。
「基底不安」を中核概念にすえた理論をたて、神経症における文化的・社会的要因を重視しました。
またフロイトの男性中心的な部分(女児の男根羨望)などを批判し、フェミニズムなどに影響を与え、新フロイト派として活動を行いました。
心配であるならば行動を起こすべきであって、憂鬱になるべきはない
カレン・ホーナイ
一見ありきたりな言葉ですが、うつで長年苦しんだ彼女であるからこそ、響いてくる言葉です。
基底不安
基底不安とは、親の支配的・拒否的・冷淡な態度などで信頼関係が結べず、心のさらけ出しができないために親のみならず他人と良好な関係を築けず、安心感の欠如や不安を基底とした心理状態になることです。
最終的には許してくれるという親の安心感や親を信じられることで他人も同様に信じられるという感覚を育めない場合に生じてしまいます。
この基底不安を解消しようと子供は、
①依存的態度
②回避的態度
③服従的態度
④攻撃的態度
などの自己防衛を行います。
この基底不安を持つお子さんは、不安と孤独を繰り返しながら相手を求めたり、拒絶したりを繰り返してしまいます。
またこの不安からくる孤独感や無力感を救おうと過剰になることで「神経症的性格」が形成されやすくなると考えました。
「真の自己と過度に理想化された自己との葛藤が神経症の原因とである」とホーナイは考えました。
真の自己と「〜すべき理想の自己」
ホーナイは、「不健全で有毒な社会環境は、個人のうちに不健全な信念を生み出し、自らの最善の潜在能力を実現できずに終わってしまう」と主張しました。
それもいつのまにか自然に信念化が行われているのが怖いところです。
人間には、真の自己と「〜すべきだ」と思っている理想の自己があります。
真の自己が理想の自己になれなかった場合、そのネガティブな作用によって「蔑視された自己」が生まれます。
ホーナイは、このような自己があること、そしてその影響を受けているということを患者さんに特に重視して伝えていました。
神経症はアイデンティティが分かれており、理想の自己を追い求める完璧主義と真の自己を否定する蔑視の自己によって自己嫌悪を繰り返してしまうと考えました。
そして神経症的性格タイプを3つに分けました。
①自己主張型・追従型(他人から承認と愛情を求める)
②攻撃型・拡張型(敵意が強く他者支配の欲求を持つ)
③遊離型・孤立型(主張や攻撃でも注意を引けないため内面の世界に引きこもる)
近年この「すべき」思考や信念に注意を払うことが一般化してきましたが、その原点は彼女の提唱であると思われます。
参考文献
精神分析的人格理論の基礎 馬場禮子著
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
記事監修
公認心理師 白石
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