「解離(かいり)」という言葉をご存知でしょうか?

一般的にも用いることがある言葉ですが、ここでは心理学で解釈されている「解離」について理解が促されるように説明を行い、カウンセリングや心理療法の可能性についても考察していきたいと思います。

解離とは何か?


解離という言葉を辞書で調べると、

 解け離れること。また、解き離すこと。
 一つの分子が可逆的に分解して、その成分原子や原子団、分子あるいはイオンに分かれること。イオンに分解する場合は特に電離という。
 意識・記憶・同一性・知覚・感情などの心的機能の統合性が失われた状態。

デジタル大辞泉(小学館)

とあります。

一つの意味としては、「解けて離れる」という意味が有り、2のような物理的意味があり、3のような心理的機能の統合性の喪失状態を表しています。

心理学で用いられる「解離(英語: Dissociation)」とは、自分にとって受け入れ難い出来事や観念、感情を自分の普段の心から切り離し、統合性が失われた状態を表します。

切り離されるものとして、

  • 意識
  • 思考
  • 記憶
  • 同一性
  • 知覚
  • 感情
  • 人格

などがあります。

受け入れがたい出来事や観念、感情などから自分を守る「防衛機制(ぼうえいきせい)」と呼ばれる現象でもあり、今の現状に適応していくための「適応機制(てきおうきせい)」と呼ばれる現象でもあります。

そのため無意識的に「解離」が行われることが多くなります。

誰にでもあるような日常的な「解離」もあれば、「解離性障害」といった障害レベルのものまであります。

誰にでもある正常な「解離」として、

・空想やゲームの世界に入っていて我に返る
・飲み過ぎで覚えていない
・何かに集中してそれら以外に気づけない
・人の話が聞いてるはずなのに頭に入っていない
・途中のできごとの一部が思い出せない
・気がついたらやっていた

などがあります。

ですので「解離」という言葉は、正常な状態でも起きる日常的なものでもあります。

しかし精神的ショックの大きい出来事、慢性的なストレス、トラウマになるような体験などによって記憶喪失になったり、多重人格になるような「解離」もあります。

問題となりやすい「解離」症状として、

・通常の物忘れでは説明できない忘却(解離性健忘)
・2つ以上のパーソナリティを持つ二重人格や多重人格
・憑依と訴えることもある同一性の破綻
・非現実感を感じる
・体外離脱体験
・傍観者のように感じる体験(離人感)
・自分の意識で制御できない(解離性トランス)
・運動機能や感覚が薄くなる・失われる
・感情や気持ちが麻痺したかのような状態
・気配に過敏になる
・事実以上の他者から見られている感覚がする
・今いる場所から姿を消す(解離性遁走:とんそう)
・記憶の一部もしくは全てを忘れ、新たな地で仕事を始める(解離性遁走)
・連続性がなくなり、不連続になる
・「そんなことしたっけ?」というように記憶にない行動を取る
・夢遊病
・体が硬くなって動かなくなること(カタレプシー)
・体を動かしたり言葉を交わしたりできなくなる(解離性昏迷)
・運動障害
・声が出なくなる
・難聴
・もうろうとする(立てなくなる)
・眼精疲労
・錯乱状態になる
・ボーっとする
・どうやってここまで来たかわからない
・買った覚えがないものがある
・状況によって大きく人格が変わるように感じる
・頭の中から声が聞こえて命令されたりする
・リストカットなど自傷行為
・アルコール・薬物依存
・摂食の問題
・その他自己破壊行動
・他者への暴力行為
・自分がない・主体性がない

などが該当すると考えられています。

「解離」が関係しているものとして、

・解離性障害
・統合失調症
・急性ストレス障害 (ASD)
・心的外傷後ストレス障害 (PTSD)
・境界性パーソナリティ障害

などの疾患や障害があります。

解離の原因や要因


「解離」現象が起きやすい原因や要因として、

・もともと持っている素因
・幼少期などの経験
・虐待や性的虐待、ネグレクト
・トラウマ
・安心できない状態で育った
・いじめ
・疎外感
・被暗示性の高さ(暗示のかかりやすさ)
・多重人格が形成されやすい慢性的な状況
・解離しないように養育できなかった親などの養育者
・災害
・戦争
・大きな精神的ショック
・受け入れがたい出来事や観念、感情
・非常に強い罪悪感

などが示唆されています。

理由がどうであれ、本人の資質や性格的特徴、置かれている環境や状況によってその体験を解離的に処理するしかなかった場合に「解離」現象が起きます。

そのため些細なことや小さなストレスの蓄積などでも「解離」が起こることもあります。

「抑圧」「分離」「分裂」「遮断」との違い


自分を守る「防衛機制(ぼうえいきせい)」や今の現状に適応していくための「適応機制(てきおうきせい)」には「解離」と似た働きをするものがあります。

概念を提唱した人物が異なることなどの事情もあり、言葉の違いやどこまでの概念を含めるかといったことにより明確な違いを見いだせず、混乱してしまうこともあります。

心の仕組みや「解離」を理解する上で、参考になるところもありますのであえて記載していきます。

抑圧(英語:repression)

受け入れがたい、耐えられない経験・記憶・感情、実現不可能な願望、衝動的な欲求などを自分を防衛するために意識下へ押し込めることで忘れようとしたり、排除して消すような無意識的な防衛機制です。

無意識的なので自分自身気づかないうちに忘れていることが多く、思い出せない、気づかないものです。

抑圧はヒステリー、神経症、強迫障害などへの関連が研究により発表されています。

気持ちを押し殺すというような意識的な働きは「抑制(よくせい)」といいます。

学派や学識によって認識は異なりますが、「解離」は抑圧の要素を含むと捉える認識もあれば、抑圧しきれないもの・抑圧では自己防衛できないときに切り離すことが「解離」と認識されていたりもします。

隔離・分離(英語:isolation)

思考や感情を切り離したり、感情と行動や記憶を切り離すような防衛機制です。

ようするに現実に見合った感情を感じなくなるようなときに「分離」という防衛が起きていると言えます。

その時に感情は隔離されています。

愛する人と死別したが悲しくないといったケースもあれば、やめたいのにやめられない強迫症の強迫行動にも関連が深い。

学派や学識によって認識は異なりますが、「解離」は隔離や分離の要素を含むと捉える認識があります。

また対象として、

  • 隔離・分離の場合は、感情や情動を出来事や行為から切り離す
  • 解離の場合は、出来事や記憶、感情を自分から切り離す

という違いがあります。

分裂(英語:splitting)

自分の悪い部分が良い部分によって汚されることを防ぐため、自分に対する良い部分と悪い部分を分裂させ、別々のものとして隔離する防衛機制です。

自分も他者も良い側面と悪い側面があると捉えることができにくくなります。

スプリッティングは、赤ん坊が満足させてくれる親の側面(良い対象)と、満足させてくれない親の側面(悪い対象)を、良い面と悪い面を分けたままに見なして、同じ個人に統合することができないことに由来する。

分裂 (心理学) – Wikipedia

分裂し隔離した「悪い部分」は他者への投影に働くことが多いとされています。

また良い部分の価値を引き上げて誇大して理想化する「原始的理想化」という防衛機制もあります。

白か黒かといった極端になってしまうのが「分裂」でもあります。

学派や学識によって認識は異なりますが、「解離」は分裂の要素を含むと捉える認識があります。

分裂と解離の違いについての説明は、統合失調症(旧:精神分裂症)と解離性障害の違いで考えていく方法もあります。

○統合失調症:幻覚・幻想・幻聴などがあるが別人格ではない。現実認識が出来にくい。妄想では、決まった内容が繰り返される。

○解離性障害:別人格がある。現実認識ができていることが多い。妄想では、創造的に広がり内容が変化する。

遮断(途絶)(英語:blocking)

感情を意識に上がらないようにブロックする防衛機制です。

「解離」や「抑圧」などで意識下や切り離されたところにある出来事や観念、感情などを意識に上がらないように遮断している状態です。

また向き合おうと思ってもうまく思い出せない、感じられない時にこの「遮断」という防衛機制が働いている可能性があります。

直面化する場合は、安全性を確保した上で慎重に行わなければなりません。

一部スピリチュアル・自己探求の末に


精神世界の探求、真理の探究、悟りの研究、スピリチュアル系の探究などを行われる方も以前よりは一般的になっているかもしれません。

書籍やセミナー、それを伝える先生方も多く、広告やブログなどで接点が近くなってきているかもしれません。

そういった探求等によりこころやからだが癒されたり、救われたり、人生が意味があるものへ昇華されることもあり、人類の多様性として発展してきているのかもしれません。

しかし問題点も報告されています。

・スピリチュアル的な覚醒により人格が変わった
・自分がわからなくなった
・何が正しいかわからなくなった
・目に見えない存在が憑依する
・以前の自分では行わなかった言動を取ってしまう
・現実感が乏しくなって、見に見えない世界が顕著になる

などのような現象です。

それが日常生活や他者にとっても問題なければいいのですが、周囲が危険性を感じたり、ご本人が「本当にこれはよくなっているのか?」という疑問を持つことがあるようです。

その方や周囲の方にとって適応的であればいいのですが、上記のような「解離」や「統合失調」症状がでることもあり、少し注意を払って進まれる必要があることもあります。

なんでもかんでも病気や障害として結びつけることは人権や多様性に反することでもありますが、厳格な倫理規定や第三者機関がない領域での探求には危険性があるということも知っておくと良いかもしれません。

多面性と多重人格


少し気をつけておく必要があることとして「多面性」「多重人格」の違いです。

多面性とは、「仕事では厳しいが家庭では優しい」「あの人の前では優しいけど、この人の前では違う」といった誰でもよくある多面的な要素です。

多重人格や解離性同一性障害(DID)の方々は、状況や相手に応じてなかなか人格をコントロールできません。

そのため自分が意図していないにも関わらず別人格が出てしまい、制御ができずに苦しんでしまうことが多くあります。

異なる重要な点として「解離性同一性障害(DID)」での別人格は、根本的に別人になり、名前や年齢、表情、性別、性格、行動まで変わってしまう特徴があります。

自覚がない「解離」



無意識的に「解離」が行われるということが解離の特徴としてあります。

そのため「解離しているな」と自覚できないことが多くあります

ご本人にとってはおかしいと思う感覚がない場合もあります。

ですので周囲の人が「あれっ?」と違和感を感じて気づかれることが実に多くあります

解離には、学術的に「正常な解離」と「病的な解離」という言葉で分けられていますが、当事者や周囲がどれほど困られているかが重要な目安になります。

日常生活に著しく支障がある場合、

・精神科
・心療内科
・全国にある精神保健福祉センター

などに相談することも大切です。

カウンセリングと心理療法の可能性


まず当事者が暴力を受けている、虐待、性的虐待、ネグレクトなどの影響を受ける影響下にある場合は、すみやかに保護され、安全性を確保しなければなりません。

そう言った上で、自分のもつ「解離」による苦悩やそれに関わる症状をどうにかしたいと相談がある場合においてカウンセリングや心理療法が用いられます。

まずは相談されるクライエントが、

・どのような解離や症状があるのか?
・どのように対処しているか?
・どのような原因や背景があるのか?
・周囲の理解やサポートはどのような状態か?
・どのようにしていきたいか?

といった内容を知ることから始まります。

「どのようにしていきたいか?」という点は、クライエントによって異なることもあり、明確でないこともあります。

「解離を直す」「統合する」という大目標の設定もクライエントの希望であれば無理のない範囲で進めていくことができますが、解離した断片を統合していくことだけが目的ではありません。

そのような大きな目標がかえって苦しみを生む場合もあります。

クライエントの主訴から進み、自然な流れで自然な形になっていくようなセッションが理想かもしれません。

またどのようにその自分を捉えるか、どのように付き合っていくか、どのように生きていくか、などもクライエントにとって大切な要素になります。

軽度なものであれば誰でもある「解離」。

精神的ショック、強烈なストレス、トラウマになるような出来事との遭遇等により障害になってしまうこともあるのが「解離」です。

そこには受け入れ難かった傷つきや苦しみがあることが多いかもしれません。

そういったところをカウンセリングや心理療法にて向き合う際には、安全性を重視して、慎重に行わなければなりません。

またご本人の意志もとても大切になります。

■参考文献

「解離」に関する臨床心理学的考察 廣澤 愛子


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