心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではフィリップ・ジンバルドー「スタンフォード監獄実験とルシファー効果」について書いていきたいと思います。
フィリップ・ジンバルドーについて
フィリップ・ジンバルドー(Philip Zimbardo)は1933年ニューヨークのシシリア系イタリア人移民の家庭に生まれます。
ユダヤ人やラテン系移民と間違われて、幼い頃から偏見と差別に遭う経験を多くしており、のちの心理学の研究に関心を持つ下地となったようです。
のちに服従についての心理学的研究を行うミルグラムとは高校の時の同級生でした。
ブルックリン大学で学位を取得し、イエール大学で博士号を取得した後はスタンフォード大学で教壇に立ちます。
プライベートでは、ローズ・アブデルヌールと結婚し、子供も授かりますが、1971年に離婚しています。
ジンバルドースタンフォード監獄実験からルシファー効果について提唱したことで有名で、高校の同級生のミルグラムはアイヒマン実験において集団心理における服従の恐ろしさを明らかにしています。
実験に関して様々な論争がありましたが、アメリカ心理学財団はジンバルドーの貢献を讃えて賞を授与し、その2年後にはアメリカ心理学協会の会長に就任しています。
主著には、
1972年「スタンフォード監獄実験」
2007年「ルシファー効果」
2008年「タイム・パラドクス」
2010年「心理学と人生」
などがあります。
スタンフォード監獄実験とルシファー効果
ミルグラムの実験の結果から自分の倫理観や道義から外れていても集団心理による権威への服従が勝り、非倫理的な行為に及んでしまうことが明らかになりました。
その後すぐに、ジンバルドーは無限の力を持つ権威者(地位の者)に自分がなるといかに人々に振る舞うのかを研究していきます。
1971年に24人の中流階級のアメリカ人大学生を被験者として、コインの裏表で「看守」か「囚人」の役割を得て、スタンフォード大学の地下の擬似監獄で実験を行いました。
囚人への完全な支配権を看守に持たせていたため非常に危険な暴挙が増え、わずか6日で強制終了しなくてはならない事態になってしまいました。
どの看守も権力を乱用し、食事も与えず、退屈になると囚人の人格を貶めるようなゲームで楽しみ、囚人の中にはひどい鬱状態やトラウマティックなショック状態になる者も出たようである。
善人であっても残忍な振る舞いに正当な権利と承認があれば、その環境に適応し、残忍な振る舞いに手を染めてしまうということが明らかになったのです。
このように環境や権力、地位、同調圧力によって善人が悪人(悪魔)になるようなことを「ルシファー効果」(ルシファーはキリスト教において悪魔の意)と命名されました。
このルシファー効果が出やすくなる社会的プロセスとして、
①他人の非人間化
②匿名性がある
③個人の責任の分散化(拡散)
④権威に対する盲目的服従
⑤集団への適合性
⑥悪への受動的寛容性
⑦無意識的に行動を行う
の7つがあるとしています。
ジンバルドーは、「私たちの研究は、善人を悪人に走らせる社会や制度の力の大きさをあらわにした」と語っています。
権力や地位のある状態になればなるほど、自分の自制心や自省心が問われるのだと思います。
参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
記事監修
公認心理師 白石
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