「生活習慣を変えたいのに変えれない」「そろそろ変わらなきゃいけないのに」「なかなか上手く変えることができない」など生活習慣を変えたいのになかなか変えることが難しいことがあります。
そんな状況に対して、なぜ変えることが難しいか?ということへの理解とカウンセリングの有用性などについて説明と考察を行っていきます。
もくじ
生活習慣について
生活習慣とは、私たちが過ごしている毎日の生活のルーティーンや決まりごとなど繰り返し行っていることを表します。
基本的には、どのような
・食事
・運動
・排泄
・休憩
・喫煙
・飲酒
・睡眠
などを行っているかが自分の生活習慣を知る上で大切になります。
生活習慣は、毎日繰り返していることなので、何をどれくらい行っているかなかなか自分で気づきにくいという特徴があります。
「以前はこうだったのに最近はこの時間が増えて、あれをやっている時間が減ったな」と気づくまではなかなかその変化に気づかないぐらい自然に習慣が変化していたりします。
いつの間にか体重が増加していて「あれっ太ったな」と気づくことで、生活習慣のことを考えたという方も多いのではないでしょうか?
「そろそろ生活習慣を変えなければ」と思うようになるには、
・病気や生活習慣病
・生活習慣の乱れから
・体調不良が続くから
・健康診断で引っかかったから
・病院で指導があったから
・新たな生活や仕事に向けて
・健康を意識して
・家族や友人に勧められた
・好きな人ができたから
・大人になろうと思って
・自分を変えようと思って
・人生をより良くしたい思いから
など人によって様々な理由があると思います。
生活習慣は毎日毎日行っていることなので、その影響は計りしれません。
ですので「生活習慣をより良くしよう」と考えることは素晴らしいことです。
しかし生活習慣を変えようと思ってもなかなか簡単ではないことも多くあります。
そのためまずは「なぜ習慣を変えることがこれほど難しいのか?」を知ることが大切になるかもしれません。
習慣とは何か?
習慣とは、繰り返し反復されることにより学習された行動や反応のことを表します。
動物は本能によって行動や反応パターンがある程度決められたものが多くなりますが、人間は本能以外にも高度な意識や学習を行うことができます。
習慣を変えることは人間ならではの高度な進化であると言えます。
ある習慣が持続的に習慣化してくると「習性(しゅうせい)」という性質的なものになっていきます。
「職業病」などで言われるように、仕事柄染み付いた行動や注目点などが日常生活でも無意識的に反応してしまうことが習性化と言えるかもしれません。
要するに学習が繰り返され、持続的になればなるほど自分の性質や性格的特徴に反映されていくということです。
なぜ習慣を変えるのが難しいか
持続的に習慣化していることを行うことは簡単であり、使いやすいものです。
しかし持続的に行っていない習慣を行おうとすると、非常に難しく、使いにくいものになります。
一度形成された「習慣化」を変えることは容易ではありません。
ちなみに「習性化」したものほど変容させる難易度は上がります。
その理由は、「神経可塑性(しんけいかそせい)の原理」と「危機意識」を知ると理解が深まります。
神経可塑性から考察する
神経可塑性(英語:synaptic plasticity)とは、外界から入ってきた刺激に対して神経系が構造的・機能的に変化する性質です。
ようするに活動や心的経験に応じて、脳や神経が自らの構造や機能を変える性質のことです。
経験によって学習し、その関連する神経が強化されたり、新生(新しく生む)されたりすることで次回以降の経験がよりスムーズになります。
逆に初めて行う体験は神経系の学習が行われていないため、なかなか上手にできません。
車の運転がわかりやすいですが、はじめての運転ではアクセルやハンドルを気にしないと実際の動作につながらないですが、運転を重ねるとあえて意識しなくても運転できるようになります。
このように成功パターンを学習し、再生しやすくしていますが、失敗パターンも同様に学習し、再生してしまいます。
スランプなどはこのような原理で学習され、神経的にも再生されやすくなっている可能性があります。
2000年のノーベル生理学・医学賞は、「学習することにより神経細胞間の結合が増加される」ことを実証した研究に与えられました。
この研究に関与したエリック・カンデルは「学習には、神経構造を変える遺伝子のスイッチをオンにする効果がある」ことを示しました。
神経可塑性の原理は、同時に発火するニューロンがお互いの結束を強める経験の繰り返しによって処理するニューロン間の結合を強化し、ニューロンの構造的変化をもたらします。
逆に長い間経験を中断すると対応する結合は弱まり次第に消失へ向かっていきます。(強固に学習されたネットワークは消失に時間がかかります)
ようするに「よく使用する神経は強化され、使わない神経は弱化」する特性があります。
もう少し補足すると「よく使う神経は使いやすく、あまり使わない神経は使いにくく」なる特性もあります。
神経の損傷が行われた場合もそれを代償するように脳や神経における可塑的な変化があります。
「傷ついた神経回路は修復されない」「神経は新しく新生されない」と信じられていましたが、最新の研究では、神経回路は修復され、新しい神経細胞も生まれることがわかってきました。
習慣化するまでに時間がかかるということは、神経を新生したり、既存の神経ネットワークの回線を一から作らなければならないということです。
そして既存の神経ネットワークの方が使いやすい状態のため3日坊主が起きやすくなることも説明が付きます。
このように神経系と神経可塑性からみると、習慣にする(習慣化)ことは、新たな神経ネットワークを「育む」必要性があるということです。
使って育てていくと、使わなくなった神経は弱く、使いにくくなるため、持続的な繰り返しが重要である意味も納得できます。
習慣を変えて新たな習慣化に成功した場合、今度はその神経系を弱めることは難しくなります。
そのようになれば「リバウンド」や「逆戻り現象」などはかなり抑えられるということです。
「危機意識」から考察する
生物で最も大切なことは命を守り、生き残り、命を次の世代に繋げることです。
そのためには、変化に対応し、危険から身を守らなければなりません。
環境はいつも同じこともありますが、災害や他の生物、同種が自分のテリトリーや生息範囲を脅かすこともあります。
命を守るには、今起きている状況から学習し、新たな反応を起こさなければなりません。
そして次にそのような事態が起きた時に安全性の高い、適応的な反応を起こさなければ命を危険にさらしてしまいます。
生物は環境に適応するために学習を用い、習慣化し、新たな習性を獲得してきました。
キリンは高い木の葉を食べるために長い年月をかけて首を長くすることに成功し、人間は大きな脳と知恵を獲得していきました。
「学習⇒習慣⇒習性」という流れは、進化のプロセスそのものとも言えるかもしれません。
人間も含めて多くの生物は長い年月をかけて生息環境に適応するために「習慣を変える」必要性に迫られてきました。
命の危険性を感じてようやく「禁煙をした」「生活習慣を変えようと思った」というケースは非常に多いと思います。
それは生物学的には理にかなっているものであり、われわれ地球の生物が行ってきた「危険性」や「危機」を感じて進化を遂げてきたプロセスです。
ようするに「危機意識」が習慣を変えることに大切な役割を果たしていると言えます。
しかし危機意識を感じる頃には手遅れであったり、被害が大きく膨れ上がっている場合もあるため、本能的な危機意識がでるのを待っているとリスクが大きくなることもありますので注意が必要です。
また「危機意識」がでていてもなかったかのように扱う「抑圧」や「抑制」を行うことや都合よく解釈するといった高度なこころの機能もあるため、危機意識を見ないように、なかったかのようにすることもできます。
生活習慣を変えるために
生活習慣を変える難しさは上述したように「神経可塑性」や「危機意識」などを理解することにより、時間がかかるということ、危機意識があまり出ない状況で行うには強い意志が必要なことがわかります。
そのあたりが難しさであり、断念してしまうことの多い理由となります。
その理由を知った上で考えていくと、
・時間をしっかりかけて地道に行っていくこと
・危機意識を持つこと
・持続できる自分や持続しやすい環境を持つこと
などが大切になります。
「やっぱり簡単にはいかないんだな~」と残念な気分になるかもしれませんが、習慣が「当たり前」になり、習性化してくると逆に今の習慣が行いにくくなります。
そして習慣化するときに大変だった「苦痛」は習慣化の後には、「あの苦痛」ではないかもしれません。
しかし自分の気持ちが慣れ親しんだ「甘い習慣」を改善後もずっと求めているならば、非常に苦しく、リバウンドや逆戻りが起きるかもしれません。
そこでどれくらいの環境に適応していくことが良いのか?を考えることは大切かもしれません。
厳しい環境に適応すれば、慣れが生じるため、厳しい環境へのストレス負荷は弱く感じやすくなります。
甘い環境に適応すれば、厳しい環境へ慣れていないため、ストレス負荷を強く感じやすくなります。
しかしこれは自分の本心がどこにあるかが重要です。
厳しい環境に適応してもそれが良いと思えず、甘い環境に戻りたいと思えば、厳しい環境へのストレス負荷は大きくなり、疲弊してしまいます。
自分の本心はどこを求めているのか?を正直に感じながらも、今後の人生を本心から何処に持っていきたいかを考えていくことが習慣を変えていくには重要です。
この本心へのアプローチは、当カウンセリングで行っているセッションの中でも重要な意味を果たします。
本心を気にせず習慣化できることもありますが、本心に上手く向き合いながら習慣化していく方法があるということです。
習慣を変えることについては、「新たな習慣をつくる習慣化のコツ」に詳しく説明と考察を行っていますが、ここでそのコツをいくつか紹介したいと思います。
コツ①ある程度の期間を想定する(6ヶ月以上は想定する)
コツ②これからの生き方と習慣化(これからどう生きたいかが重要)
コツ③小さな目標の達成癖をつける(日々の達成感が大切)
コツ④長期的な報酬性を感じる(その習慣で人生を生きるとどんな人生になるかを想像する)
コツ⑤ストレスコーピング(ストレスをうまく発散・対処していく)
コツ⑥危機意識
コツ⑦自分が決定する(人に言われたからやるということより自決する)
コツ⑧失敗を許容する力(うまくできないことがあっても続ければいい)
コツ⑨アンビバレンスとメタ認知(やめたい・やりたくない気持ちもでるものです)
コツ⑩こころに振り回されず「ただやるのみ」(あまり考えずにただやるということだけでいい)
コツ⑪環境設定(人との間で応援、サポート、管理、報告を設定)
コツ⑫いままでの失敗経験は当てにならない(過去の経験はあまり関係ない事も多い)
カウンセリングの有用性
コーチングや家族や友人への「宣言」でも有用であり、カウンセリングだけが有効で有用というわけではありません。
ご相談される方(以下クライエント)に対して、ご本人の主体性も考えながら、受容的・共感的な態度で支援・サポートを行えるのがカウンセリングの良いところです。
自分で決めるということは人に決められて行うことよりも意志とモチベーション、そして実行力も高まる傾向にあります。
そういったクライエントの主体性を大切にされながら、生活習慣を変えることによって生じる苦痛や苦悩などをカウンセラーへ相談することができます。
気持ちが楽になったり、スッキリするといったところもありますが、自分の意志やモチベーションを回復させたりするような向き合い方もあります。
生活習慣を変えるためには、「なぜ変える必要があるのか?」という必要性と危機意識が最も重要であることが多いものです。
自分だけでは気づきにくいポイントも話しながらアウトプットしていく中で気づきや理解が深まっていきます。
このような生活習慣を変える必要性が明確になればなるほど意志やモチベーションは自然なものになっていきます。
途中でやめたいという気持ちがでることがあってもその気持ちをうまく扱うことに長ければ問題は少なくなります。
意外と大切なのが、目標を決めて日々自分と伴走してくれる存在がいるということです。
プロのアスリートでもコーチや伴走してくれる人、監督がいるものです。
生活習慣を変えることにコーチや伴走者、監督がいてもいいのです。(もちろんご自身お一人で行ってもいいです)
人の目があるということは、私たちをキリッとさせてくれる態度へ向かわせてくれる大切なものです。
そういった面でも習慣化するための環境を整えることも大切です。
・多少の失敗も許容できるこころを育てる
・地道な努力ができる自分を育てる
・これからどう生きていくかをあらためて考える
・習慣化した後の人生を考える
・長期の目標と日々の目標の設定
・ストレスコーピング能力を育てる
・周囲の資源の活用
・危機意識を感じる
・自己決定力を育てる
・自分の気持ちの扱い方と脳の使い方
・ただやるという実行力を育てる
・多方面から考える環境設定
など「習慣化の12のコツ」もクライエントに応じてセッションの中でテーマにしていき、クライエントにとって最善に活用していきます。
最初は大変かもしれません。
途中も大変かもしれません。
しかしある一定のところで「あれっ」となるポイントがあります。
そこまで行けば感覚が少し変化していると思います。
新たな習慣化による「喜び」が「苦痛」を超えるときにもそれを感じるかもしれません。
途中で生物学的な話の中でお伝えしましたが、新たな習慣を取り入れるということは生物学的には「進化する」という大きなことでもあります。
少し大げさに感じるかもしれませんが、それくらい大きなことでもあります。
新たな環境に適応して私たちは進化して生き延びてきました。
それは永遠に続くものかもしれません。
過去の歴史から見ると、こんなに「甘えられる環境」を作ることが出来る時代はなかったかもしれません。
それは非常に喜ばしいこともありますが、節度を守らなければ問題も多くあり、そういったバランスをとることが非常に難しい時代かもしれません。
自分にとって最適なバランスを見つけ、最適な生き方で進む能力が今問われているのかもしれません。
当カウンセリングでは、生活習慣を変えようと思われている方に最善の支援やサポート、管理を行えるようにカウンセリング、コーチング、心理療法などを用いて応援しております。
★関連記事
新たな習慣をつくる習慣化のコツ
「すぐに諦めてしまう癖」とカウンセリング
「やる気が出ない無気力状態」に対するカウンセリング
「学習性無力感」−知っていると役に立つ心理学
記事監修
公認心理師 白石
「皆様のお役に立つ情報を提供していきたいと思っています」
全国どこからでも専門的なカウンセリングと心理療法を受けることができます。
一度限りですが「10分無料電話相談」ができます。ミスマッチの回避や自分に合う相談先かどうかを判断することなどにお使いください。(メールではなく直接お電話ください)
電話番号:090-2862-4052
メール:mail@s-counseling.com