過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではジェローム・ブルーナーと「認知発達」について書いていきたいと思います。
ジェローム・ブルーナーについて
ジェローム・シーモア・ブルーナー(Jerome Seymour Bruner)は、1915年アメリカのニューヨークでポーランドからの移民の息子として生まれます。
生まれつき目が見えませんでしたが、白内障手術の後から視力が回復していきます。
12歳の頃には、父親が癌でなくなるという不遇に遭い、悲嘆で苦しむ母は頻繁に転居を繰り返しました。
そういった背景から心理学に関心を持ち、デューク大学やハーバード大学で心理学や動物心理学を学び、博士号を取得します。
第二次世界大戦時は戦力研究所(知能部)にて従軍し、戦後は後にアメリカ心理学会の会長を務めるアーミテージ・ミラーとともに共同研究を行います。
1960年にミラーとともに認知研究所を立ち上げ、90歳以上になっても教壇に立ち続けました。
ブルーナーは心理学者ではありますが、教育心理学、認知心理学、文化心理学に非常に大きな功績をあげている人物です。
主著には、
1960年「教育の過程」
1966年「認識能力の成長」
1990年「意味の行為」
などがあります。
3つの学習と認知発達
発達とは、ピアジェによると「環境を探索しようとする自然な好奇心の産物である」と考え、ヴィゴツキーは「経験を通じて意味を発見し、相互関係において学習する」と主張しました。
情報処理過程である「認知」と「脳」に関しての関心が高まっている時代においてブルーナーは、認知がどのように発達するかに関心を持ち、幼児の認知過程の研究を行っていきました。
特に「共同注意」の発見は、認知発達のプロセスの大転換が起こるような大きな提唱でした。
■ブルーナーの考える共同注意
①大人と視線を合わせる(2ヶ月頃:二項関係)、②指差しなど外界への対象を共有する(9~10ヶ月:三項関係) ※現在の研究では、三項関係や視線追従は3ヶ月くらいから生じるとされています。
ブルーナーによると「学習」は、
①経験による学習(Action-based)
②知覚による学習(Image-based)
③言葉を介した学習(Language-based)
の3つがあると考えました。
子供は大人とのナラティブ(物語・語り)から「こころを理解する」ということも明らかにしました。
またブルーナーは、知識の獲得は経験的過程だというピアジェの見解に同意を示し、社会的相互関係によると考えるヴィゴツキーの認識にも同意しています。
そして発達には「指導」が必ず必要であるが、それは児童が受動的であることよりも能動的で理性を働かせるように指導を行うことが大切であると主張しました。
教師に大切なのは「励まし」とそういった「指導」であるとブルーナーは言っています。
このブルーナーの提言によりアメリカ中の教育、特に先生の意識改革や教育理念に変容を起こし、世界中に波及しました。
またブルーナーは、
知ることは過程であって、産物ではない
ジェローム・シーモア・ブルーナー(Jerome Seymour Bruner)
という名言を残しています。
情報を知ることだけが知識ではなく、情報をもとに推論を駆使して意味を見出したり、他の情報と再構成し、改訂したりしながら産物を築く「包括的な知識」となるということです。
そしてその情報に対する認知に大きな影響を与えているのが「文化」であるとブルーナーは語り、文化心理学の研究を行っています。
参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
記事監修
公認心理師 白石
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