「共感しすぎてつらい」「気持ちを汲み取りすぎて自分もつらくなる」「疲れてしまう」というようにエンパスという能力が高いためにストレスが多かったり、疲れやすくなったり、苦悩が多い毎日を過ごされている方がいます。

そういった方々の苦悩とカウンセリングの有用性について説明と考察を行っていきます。

エンパスとは何か?


エンパス(empath)とは、共感性を現すempathyを語源とする近年作られた言葉で、意味としては「共感性」や「共鳴性」の高い人や能力を表します

相手の気持ちを察知する能力が高いだけでなく、相手の気持ちが自分のことのように感じてしまう能力も高いとされています。

相手が辛い気持ちを抱えている場合、自分も辛い気分になってしまうということです。

また心理的だけではなく、身体的な苦痛や苦悩も同様に感じやすい場合もあり、自分も具合が悪くなってしまうことがあります。

この能力が高いということは、一部の仕事や人間的な魅力である「才能」として活かされるものでもありますが、高すぎたり、負の影響が高い場合は、自分を苦しめて苦悩させてしまうことにも繋がってしまいます

エンパスの能力として特徴的なものとして、

・相手の感情がわかる、自分の事のように感じる
・相手の思考や考え方がわかる
・相手の本音や隠している思いがわかる
・相手の身体的な苦しみを感じ、自分のことのように感じる
・相手の経験が自分が経験したかのように感じる
・嘘か本当かわかる能力に長けている
・たくさんの人の感情や思いを感じる
・他者の影響を受けやすい

などがあります。

このような共感性や他者を感じる力がなければ、人間は集団として機能していなかったかもしれません。

人類がここまで発展してきたのは、他者との協力と協同して生きてきたからです。

そこには「共感性」や他者を「尊重」、「理解する能力」が求められます。

それほど重要な能力ですが、その能力が高すぎたり、共鳴性が強まるとストレスや苦悩につながってしまいます。

エンパスの苦悩とストレス


エンパス能力による苦悩やストレスとして、

・相手の感情か自分の感情かわからない
・相手の感情や気持ちを感じてつらくなる
・相手の身体的苦悩を自分も感じてしまい、具合が悪くなる
・相手の不遇な出来事を自分が体験したかのようにつらくなる
・人の嘘や裏の思いを察知してしまい、つらくなる
・いろんな人の気持ちや感情を感じるため集団にいることが大変
・悪口や陰口を聞いてすごく嫌な気分になる
・人が怒られていても自分も怒られているような気持ちになる
・目に見えないものや幽霊などを感じてしまうことでストレスや苦悩になる
・他人の影響を受けて自分がわからなくなる
・人ごみや集団が苦手になる
・適応しにくい職場や仕事が多い
・病院が苦手

などがあります。

上記のようなストレスや苦悩が持続的・慢性的に続いてしまうことは非常に辛く大変なことです。

多くの場合、無意識的に察知したり、感じたりしてしまうことも多いため、なかなか自分ではコントロールする難しさがあります

エンパスとHSP


エンパスという言葉は、あまり学術的には定義付けされていないため明確な概念を言葉で説明することが難しいものです。

似たような言葉として「HSP(Highly Sensitive Personの略名)」があります。

HSPとは?

非常に繊細で、感受性が強く、敏感な気質をもった人という意味で、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士の研究によって提唱された概念です。

子供の場合は、Highly Sensitive Childと表記し、一般的に「HSC」と呼ばれています。

統計的には人口の15〜20%、5人に1人ぐらいの割合であてはまる性格的気質と言われています。

HSPは、病気ではなく正常な特性であるという前提を持ちます。エンパスも同様に特性であると言えます。

生物学的には、人間だけではなく、多くの生き物にHSP気質を持つ種が存在し、生き残り戦略として「注意深さ」を持っています。

そのため怖がりであったり、引っ込み思案であったり、神経質であったりすることもあります。

HSP気質を持っていない人たちから誤解を受けやすく、あまり理解されないため、自尊心が低くなってしまう傾向があります。

HSP気質を持つ方は、ストレスを感じることが多く、学校や職場、家庭で気疲れしやすく、生きづらさを感じることが多いとされています。

アーロン博士によると、HSP気質はすべて内向的といった単純なものではなく、70%は内向的、30%は外向的といった結果が調査によって明らかになりました。

HSP気質の特徴として、

・感覚が鋭い
・繊細
・敏感
・考えすぎる
・こだわりが強い
・気が散りやすい傾向
・内省的
・感情を強く感じやすい
・ストレスを感じやすい
・傷つきやすい
・細かいことによく気づく
・気疲れしやすい
・動揺しやすい
・緊張しやすい
・人に左右されやすい
・空気を読む
・人の気持ちをよく汲み取る
・環境に左右されやすい
・痛みや不快感に敏感
・想像力が豊か
・人より時間がかかる
・哲学的傾向がある
・芸術的傾向がある
・石橋を叩きすぎる
・驚きやすく怖がりやすい
・共鳴しやすい
・感情移入しやすい
・人見知りしやすい
・他社との境界線があいまい
・空想や妄想が多い
・大勢や騒がしいところが苦手
・静かな生活を望む
・一人になりたくなる
・ほかの人(子)と違う感じがする
・善意を大切にしている
・同時に処理することが苦手
・快適欲求が強い
・ミスや失敗を恐れる
・暴力的なものが苦手
・変化に対応しにくい
・競争が苦手傾向
・緊張しやすい
・洞察力に優れている
・気がつきやすい
・本質的なものを好む
・自己犠牲的傾向が強い
・直感力に優れている
・規則正しい
・感情をストレートに出さない
・身体症状や不安という形で表現しやすい

などがあります。

肯定的に活かされればいいのですが、これらの特徴によって現実的にうまくいかず、問題や悩みとなってしまうこともあります。

そういった「うまくいかない経験」を繰り返すことにより

  • 自己肯定感が弱くなる
  • 自己否定感が強くなる
  • 自尊心が低くなる
  • 自信が持ちにくくなる

などの特徴も併せ持つことが少なくありません。

HSPの人(子供)には、厳しく注意したり、厳しく罰を与えて注意するよりも優しく理解を促すように注意する方が効果的であることもわかっています。

HSPとエンパスの違いについての考察

エンパスとHSPの違いを明確に説明することは難しいですが、上記までの説明をみて「自分はどちらの特性を持っているのか?」「両方の特性を持っているのか?」が少しわかると思います。

エンパスはスピリチュアル系と呼ばれる業界でもよく用いられるため、「目に見えないものを察知する能力=エンパス」といった解釈がされてもいます。

エンパスとHSPの違いで特徴的なのが、「自分のことのように感じる」という共感性や共鳴性であると考えられます。

両特性ともに「察知する」「感じ取る」能力に長けていますが、HSPよりエンパスの方が「自分のことのように感じる」共感と共鳴が強く、そういった問題や苦悩も多いと報告されています。

エンパスの苦悩に対するカウンセリング


エンパス能力が高いことによる以下のような問題に対してカウンセリングを行っています。

・人の気持ちを汲み取りすぎてつらい
・人の意図を感じてつらい
・人の悪意を感じてつらい
・自分のことのように感じてつらい
・他人といることに疲れてしまう
・集団が苦手
・目に見えない存在を感じてしまって苦しんでいる

エンパス能力はその方の才能であったり、特性でもあるため、どれくらいの能力の高さやどれくらいの適応的な使い方にしていくかのゴール設定が人によって異なります。

あまりにつらく、疲弊している場合、特性や才能と言われても「ピンと来ない」ことも多くあります。

またこの能力に固執して被害が大きくなっていることもまれにあります。

そういったところは人によってどのようにしていきたいか大きく異なりますので、お一人お一人の目的に合わせてカウンセリングに入っていきます。

エンパスでの苦労や苦悩が蓄積されている場合、その苦しみに焦点を合わせて、相談される方が自分のペースで話し、受容され、共感されていくことにより気持ちが楽になる、スッキリすることを重視した内容で進めていきます。

エンパス能力が高い特性や才能が先天的にあることも多いですが、後天的に強めているケースも非常に多くあります。

エンパス能力をクライエントにとって最適な形へ持っていくためには、後天的に強めた理由を知ることも大切になることがあります。

「だから自分はこんなに感じやすいんだ」「だからこんなにつらかったんだ」ということが腑に落ちると「ふっ」と力が抜けて、自分にとって最適な能力に落ち着くこともあります。

そういうことが理解されると今後の生き方にも影響が出ることも多く、カウンセリングの重要な核になることも多いものです。

またエンパス能力の使い方にも注目していくと気づきや理解が深まることもあります。

現状の無意識的な使い方を知り、意識的に使い方を変えたり、幅が効かせることができるようになるとエンパス能力の方向性や無意識的な変化も期待できます。

この方法は、地道に行うことが最善です。すぐに変化は期待できませんが、早くに変化したら「ラッキー」というような感覚で長期的に行っていくことが推奨されます。

クライエントの苦悩が癒され、エンパス能力も適切な形へと落ち着いてくるとようやく「才能」や「特性」であることが感じられるようになります。

ここで自己肯定感や自信も高まる傾向にあります。

このようにクライエントに応じて適切な形へ伴走していくようなイメージでカウンセリングは進み、適切なところで終了、完走となります。


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記事監修
公認心理師 白石

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