過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここでは心理学の行動理論に影響を与えた一人であるエドワード・ソーンダイクと「試行錯誤」「S–R連合学習」「ハロー効果」について書いていきたいと思います。

エドワード・ソーンダイクについて


エドワード・ソーンダイク

エドワード・ソーンダイク(Edward Thorndike)は1874年アメリカのマサチューセッツ州ウィリアムズパークに生まれたアメリカの心理学者(教育学者)です。

ウィリアム・ジェームズに感化され、彼のいるハーバード大学で心理学を学び、動物を用いた学習研究を行います。

のちにコロンビア大学に移り、ジェームズ・キャッテルのもとで動物の知性について研究を行い、博士号を取得します。

この研究で、動物の行動は「試行錯誤」による学習であることを特徴付けて提唱しました。

ソーンダイクは教育心理学に関心を持ち、グリーブランドの女子大を経て、約40年間コロンビア大学にて教壇に立ちました。

1912年にはアメリカ心理学会の会長に選出され、74歳で亡くなるまで研究と執筆活動を続けました。

ソーンダイクの功績は、心理学では「試行錯誤説(S-R連合学習)」、教育学では「教育評価測定」が有名であり、心理学でいう行動主義や結合主義の代表的な心理学者です。

主著には、

1905年「心理学原理」
1910年「心理学の教育学への寄与」
1911年「動物の知能」
1927年「知能の測定」

などがあります。

「試行錯誤」と「S–R連合学習」


ソーンダイクの最初の研究は迷路を通り抜けるようニワトリを学習させるものでした。

研究が進むにつれて猫を用いてパズルボックスから抜け出す猫の学習能力に着目していきました。

パズルボックスと仕掛け(装置)

その研究は、お腹を空かせた猫がひとつだけ扉を開くことができる押しボタンや紐などの装置があるパズルボックスの中で行います。

その仕掛けは、餌が見えるのにとることができないのですが、紐を引くと扉が開き、餌を取ることができます。

猫は試行錯誤しながら仕掛けを見抜いて脱出し、餌を獲得していきます。

そして繰り返し行うことで猫はより短時間で成功していくことから「試行錯誤学習」が行われていることを確認することができました。

そして試行錯誤の回数も繰り返し行う回数が増えれば増えるほど減っていきました。

このような一連の実験の結果としてソーンダイクは「効果の法則」を提起しました。

満足や快をもたらす反応は繰り返されやすく、結合が強くなり、起こりやすくなる(満足の法則)。

逆に不満足や不快をもたらす反応は繰り返されにくく、結合が弱くなり、起こりにくくなる(不満足の法則)。

そして満足(快)や不満足(不快)のレベルが強いほど結合力は大きくなる「強度の法則」を発表しました。

これらの現象は、学習によって刺激(S)と反応(R)との間に結合が生じ、それに対応する神経コネクションが大脳に作られる「S–R連合学習(結合主義)」によって行われるとソーンダイクは考えました。※この実験では刺激(S)とは餌のことです。

要するに快や不快が強いものほど脳や神経に強く結合を刻み込むということです。

これはのちに「強化理論」呼ばれるものへと発展していきます。

どうやっても抜け出せない、餌を取れなくなる仕掛けに変えるとこれまでの学習や神経結合は弱まり、「なんのプラスもない」といった学習へと変貌し、以前の学習が抹消されていきます。

のちの研究では、反復された刺激–反応結合(S–R連合学習)は強化されていくが、反復されないものは弱まることを明らかにしていきます。

同時期に実験を行なっていたイヴァン・パヴロフの「条件反射」や「パヴロフ条件付け」などの研究とソーンダイクの「試行錯誤」「S–R学習」などの研究は、のちにワトソンの「恐怖条件付け」、スピアマンの「g因子」、スキナーの「オペラント条件付け」研究への影響と発展に貢献していきます。

そのためソーンダイクは、心理学でいう「行動主義」に多大な影響と発展に寄与した研究者の一人と言えます。

▪️レディネスの法則
学習者の成熟度、経験値、学習度合い、準備度合いによって「S–R連合学習」が変化することも明らかにし、「レディネスの法則」として発表をしています。
極端に言えば、赤ちゃんに学習を行うのと成人に学習を行うのでは効果に差があるということです。

ハロー効果(光背効果)


ハロー効果(英語:halo effect)とは、光背効果とも呼ばれ、ある対象を評価する際にその対象の特徴的な印象に引きづられて評価を行なってしまう認知バイアス(認知の歪みや偏り)の一種のことです。

権威のある専門家が発言する専門外の意見でも優秀な見解であると思い込んでしまうことや悪い印象の人が悪いことを他にもしていると思い込むなど良い印象からポジティブな方向へ向かうハロー効果と悪い印象からネガティブな方向へ向かうハロー効果があります。

これもソーンダイクが1920年に発表した論文で提唱されており、ハローとは成人の頭上に描かれる光輪を指します。

私たちの評価はこのような印象に引きづられて行なっていることが多くあり、対人関係や自分への評価が適正に行われていないこともしばしばあるように思います。

またビジネスや広告の世界では、あえてこのような効果を引き出して良い印象から良い商品であるかのように(良い商品かもしれませんが)魅せていく手法がよく用いられます。

CAVDテスト


ソーンダイクは、「動物の知能」を刊行後、人間の知能へと関心を向けていきます。

知能は、遺伝的要因だけに起因するのではなく、経験により学習が行われ発達していくと考えました。

人間の知能を測定するために「CAVD」の4因子

・成就(コンプレーション)
・計算(アリスメティック)
・語彙(ヴォキャブラリー)
・活用(ディレクション)

をテストで測る方法を1927年に提唱しています。

この知能4因子説は、機械的な知能だけでなく、想像力や対人的能力を含む計測であったため後の知能検査の礎となります。

また教育に客観的な測定を導入し、合理性や教育効果の向上、試験などの改善を図ろうとした教育測定運動の発展に寄与しています。

参考文献

心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

記事監修
公認心理師 白石

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