過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。

ここではドナルド・ウィニコットと「攻撃性と発達」「憎しみへの寛容性」「母性的没頭とほどよい母親」「独りでいられる能力と移行」について書いていきたいと思います。

ドナルド・ウィコニットについて


ドナルド・ウッズ・ウィニコット(Donald Woods Winnicott)

ドナルド・ウッズ・ウィニコット(Donald Woods Winnicott)は1896年イギリスのデボン州プリマスでよく知られた裕福な家の末っ子として生まれました。

父ジョン・フレデリック・ウィニコット卿は貿易商人として成功し、寄付をするなどポジティブな影響を周囲に与えている存在であったようですが、母は抑うつ症状に苦しめられていたようです。

特別大きな不遇もなく子供時代を過ごし、15歳の時に鎖骨の骨折がきっかけとなり医師になることを志し、ケンブリッジ大学で学びながらジーザスカレッジで医学を学びます。

第二次世界大戦では軍医として従軍したのち、医学部を卒業して1920年に医師資格を取得し、1923年に4歳上のオペラ歌手アリス・テーラーと結婚しました。※アリスは精神的に不安定になることが多かっうぃにこっと

その結婚と同じ年にロンドンのパディントン・グリーンこども病院の内科医となり、約40年間にわたり勤務します。

ウィニコットは、小児科医と精神分析医の2つの立場を堅持した珍しい臨床家でした。

9歳の頃から夢を思い出せず、抑制が多いことを自覚していたウィコニットは、ジェームズ・ストレイチーから10年間精神分析を受け、英国精神分析協会の訓練生となり、1935年39歳の時に精神分析家となります。

この時期の精神分析では、メラニー・クラインの英国独立学派、アンナ・フロイトの大陸学派、そしてウィニコットやフェアバーンなどの対象関係学派の3つの学派が形成されました。

メラニー・クラインに感銘を受け、関係が深まる時期もありましたが、見解の相違もあり、離れた立場になっていきます。

1948年に父が亡くなり、翌年にアリスと離婚、精神障害者のためのソーシャルワーカーをしていたクレアと再婚します。

1971年に心臓発作で亡くなるまでに臨床とともに200以上の論文が執筆されました。

主著には、

1949年「逆転移における憎悪」
1953年「過渡的対象と過渡的現象」
1960年「親–子関係の理論」

などがあります。

発達による攻撃性の変容


ウィニコットは、「攻撃性(aggression)」は、愛の原初的な一部であるとし、活動性の起源と同義であると考えました。

攻撃性は、自我の初期の段階では思いやりのない状態であるが、思いやりのあるものへと変わる中で罪を感じ、最終的には葛藤をする形へと変わっていくとしました。

健康な幼児は罪を抱えることができ、母親の助けを借りて「修復」することができます。

憎しみに寛容になること


養子になった子供は、愛されるだけでは不十分なことも多く、憎まれていることを実感した後でしか愛されていると信じることができないとウィニコットはいいます。

苦しみを深く味わった子供は、拒絶されたり無視されたり、捨てられた過去の投影があり、憎悪と憎まれる欲求を深く持つことが多いと言及しています。

両親は子供の憎悪を受け入れることが大切であり、自分の中に出てくる憎悪に対しても承認していかなくてはなりません。

これは養子に限ったことではなく、一般の家庭でも同様に考えるべきで、多くの場合母親が先に子に対して「憎悪」の感情を持つと言及しました。

また精神分析を行なっている時にこの憎悪が治療者に向かう「転移」があったり、逆に治療者側が患者側に憎悪が向かう「逆転移」がしばしば起こります。

「憎しみに寛容になること」とその寛容さが親子でできることは心理的にも発達的にも良い影響がもたらされるように感じます。

母性的没頭とほどよい母親


ほどよい母親(good enough mother)とは、幼児の依存に対して適度な関わり合いや提供を行うことでその子供の万能感を育て、現実を認識しやすくなります。

妊娠の終わりから出産後週数間に乳児の母親への同化と依存状態を「母性的没頭」と呼び、この時期の記憶は思い出すことが難しく、抑圧されるため非常に重要であると考えました。

冷たい態度や関心を向けられない場合だけではなく、過剰に幼児に没頭してしまうことも問題となることが多いとしました。

そしてその時期に問題があれば「原初的不安」が出やすくなってしまいます。

独りでいられる能力と移行


情緒発達の成熟度として「独りでいられる能力(capacity to be alone)が重要な指標であるとウィニコットは提唱しました。

母親を自分に内在化する経験によって、母親がいなくても独りでいられる能力が育っていきます。

そのためには「母親と一緒にいながら独りであるという体験をする」ことです。

また自分の内的世界に良い対象がいることが重要であり、そこに不安な対象があると独りでいることが困難になってしまいます。

6ヶ月から1歳前後までの期間にて見られる、母親との分離などの状況で母親やその乳房の代理として愛着を持つ毛布やタオル、ぬいぐるみなどの対象のことを「移行対象(transitional object)」と呼び、その現象を「移行現象」(transitionalphenomena)としました。

ウィニコットによればこうした対象が「自分は万能ではない」という現実を受け入れるプロセスとなり、母子未分化から分化していく状態へと促すとしています。

これはある意味「錯覚」のようなものであり、大人でいうと芸術や宗教の中に備わっていることも多く、嗜好や癖、依存しているもの(addiction)なども関係が深いと考えられます。

幼児のニーズに対してほどよい母親であれば、自分の想像する能力に対応する外的現実があるのだという「錯覚」を幼児が持つことができるとウィニコットは言及しています。

参考文献
D・W ・ウィニコットの情緒発達理論と精神分析 中野 明德
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか

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