この記事では「パーソナリティ障害」についての理解が促されるように説明と考察を行なっていきます。

パーソナリティ障害とは


パーソナリティ障害(英語:personality disorder 略名PD)とは、当人に重大な苦痛をもたらしたり、機能的に障害があったり、日常生活に支障をきたす思考や観念、反応、対人関係パターンが慢性的である場合に医師により診断されます。

現在のところ「遺伝子的な影響」と人生における「環境による影響」が同じくらいパーソナリティ障害の原因として影響していると考えられています。

またどこまでが正常なパーソナリティでどこからがパーソナリティの障害かは人や文化によって異なる感覚がありますが、DSMやICDなどの国際的な基準によって医療分野では、さまざまなパーソナリティ障害の診断基準が設けられています。

パーソナリティ障害は、小児期や青年期から始まる持続的な「著しい苦痛」や「機能失調」がある場合に診断されます。

パーソナリティ障害は、単体だけではなく、複合的に重なりあったり、ほかの精神疾患との併発している場合もあります。

多くの方にとって以下のパーソナリティ障害の特徴をみてもらうと、自分にも多少の傾向があるように感じるかもしれません。

また大きなストレスやトラウマティックな出来事との遭遇により、その傾向が強くなることもあるかもしれません。

誤解がないようにあえて説明しておきますが、パーソナリティ障害は、差別的な意味で用いるのではなく、障害として認識することにより苦痛の多い当人が「より良く生きる」ための医療面での治療や支援、社会面でのサポートを行えるように考えられています。

どうしても名称がそのような誤解を生むことがありますが、当人の苦痛を和らげたり、周囲の理解を促したり、適切な治療を計画したり、仕事への配慮や社会生活を円滑に行うためにあります。

また当事者のみだけではなく、周囲の家族や関係者にも適切なサポートと支援も必要な場合も多くあります。

DSMにおけるパーソナリティ障害


DSMとは、精神障害の診断と統計マニュアルのことで英語の「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」の頭文字をとった略名です。

アメリカ精神医学会によって精神障害の分類のための共通言語と標準的な基準を提示するために出版されています。

DSM-5では、10種類のパーソナリティ障害を類似する特徴に基づいて3群(A群、B群C群)に分類しています。

A群の「奇異型」と呼ばれるところには、

・妄想性パーソナリティ障害
・シゾイド(スキゾイド)パーソナリティ障害
・統合失調型パーソナリティ障害

の3つが説明されています。

B群の「劇場型」と呼ばれるところには、

・反社会性パーソナリティ障害
・境界性パーソナリティ障害
・演技性パーソナリティ障害
・自己愛性パーソナリティ障害

の4つが説明されています。

C群の「不安型」と呼ばれるところには、

・回避性パーソナリティ障害
・依存性パーソナリティ障害
・強迫性パーソナリティ障害

の3つが説明されています。

ICDによるパーソナリティ障害


ICDとは、WHO(世界保健機関)が疾病などの国際的な統計基準として公表している「疾病および関連保健問題の国際統計分類(International Classification of Diseases)」の略名です。

現在の臨床現場ではICD-10が用いられていますが、約30年ぶりに改定されたICD-11が今後日本で適応されていきます。

ICD-11の日本語での診断名などは2020年11月現在まだ決まっておりませんが、日本精神神経学会の案を記載しておきます。

・パーソナリティ症<障害>
・パーソナリティ症<障害> 軽度
・パーソナリティ症<障害> 中等度
・パーソナリティ症<障害> 重度
・パーソナリティ症<障害> 重症度は特定不能
・顕著なパーソナリティ特性
・否定的感情
・脱抑制
・離隔
・非社会性
・制縛性
・ボーダーラインパターン

ICD-10での分類として、

  • 妄想性パーソナリティ障害
  • 統合失調質パーソナリティ障害
  • 非社会性パーソナリティ障害
  • 情緒不安定性パーソナリティ障害
    • 衝動型
    • 境界型
  • 演技性パーソナリティ障害
  • 強迫性パーソナリティ障害
  • 不安性(回避性)パーソナリティ障害
  • 依存性パーソナリティ障害
  • 他の特定のパーソナリティ障害
  • パーソナリティ障害、特定不能のもの

があります。

パーソナリティ障害についての理解


DSMやICDに記載されているパーソナリティ障害についての一般的に理解されている特徴を説明していきます。

妄想性パーソナリティ障害(PPD)

妄想性パーソナリティ障害(PPD)とは、猜疑性(さいぎせい)パーソナリティ障害とも呼ばれ、他人から見て明確な理由や根拠がない場合でも、人から攻撃される、裏切られる、陥れられる、利用されるなどの不信感や疑念を激しく持ってしまう特徴があります。

男性に多く、統計的には人口の0.5~2.5%にみられます。

被害妄想的に捉えやすくなったり、人を信用できなかったり、疑い深くなってしまうことで非常に強い苦痛を感じてしまいます。

シゾイドパーソナリティ障害(SPD)

シゾイド(スキゾイド)パーソナリティ障害(SPD)とは、身の周り(社会的関係)への興味や関心、自己表現が欠如してしまう特徴があります。

人と交わり合う事によって相手に飲み込まれたり、自分の独立性を失うことを嫌ったり、怖がったりします。

そのため他人との関わりを避けようとすることもあり、「孤独」であることが多くなります。

喜怒哀楽などの表現も乏しく、賞賛や批判に対しても感情が平坦になってしまうことも特徴的です。

統合失調型パーソナリティ障害

統合失調型パーソナリティ障害とは、対人交流を好まず、現実よりも非現実的な話題を好み、奇異な思考や行動が生活を支配してしまう特徴があります。

統合失調症と異なり、はっきりとした幻覚、妄想がないとも言われていますが、ほかのパーソナリティ障害よりも幻覚・幻聴・妄想傾向は強いとされています。

遺伝的な影響が他のパーソナリティ障害より強く反映される傾向があります。

アメリカでは社会から受け入れやすくなるためアスペルガーという診断がされることも少なくありません。

他人と親しい関係になることができず、家族以外とのつながりがなかなかできにくい特徴があります。

反社会性パーソナリティ障害(ASPD)

反社会性パーソナリティ障害(ASPD)とは、人の権利やルールを無視して自分が欲しいものを手に入れてしまったり、自分が楽しむために法を犯したりしてしまう特徴があります。

なかなか良心の呵責を感じることができず、自分に非を認めらない傾向があります。

アルコールや薬物などの依存症もよくみられます。

境界性パーソナリティ障害(BPD)

境界性パーソナリティ障害(BPD)とは、ボーダーとも呼ばれ、自分や他者のイメージが不安定であったり、感情や思考が自分で制御不能状態になったり、衝動的で破壊的な行為を行ってしまう特徴があります。

見捨てられ不安、不適切な怒り、感情が不安定、依存症、極端な人間関係、自己同一性障害、慢性的空虚感や抑うつ、妄想的な思い込みや解離症状などの特徴もあります。

30代以降など年齢によって軽減することも多いと報告されています。

アメリカの調査では、BPDの患者の91%が小児期の外傷体験を持っていたという報告もあります。

幼少期のネグレクトや早期分離、虐待なども関係が深いことが示唆されています。

演技性パーソナリティ障害(HPD)

演技性パーソナリティ障害(HPD)とは、自分に注目をひこうとして虚言、演技、性的誘惑、犠牲者演技を行う特徴があります。

日常が退屈と感じ、新しい刺激を強く求める傾向もあります。

自分に注目がないと楽しくない、作り話をついついしてしまう、騒動にまで発展する場合がある、その場所や流行に影響されやすいなどの特徴もあります。

自己愛性パーソナリティ障害(NPD)

自己愛性パーソナリティ障害(NPD)とは、自分は優れていて特別な存在でなければならないと思う特徴があります。

また権力や称賛を求めますが、他者に対する共感性はあまり感じることができません。

強い劣等感や愛されないという感覚による防衛や適応と考えられていますが、それだけでは説明できないこともあります。

ありのままの自分が過剰に悪く見えてしまうという視点もあります。

恥をかくことを非常に恐れ、現実と理想の狭間で強迫観念がでやすい特徴があります。

回避性パーソナリティ障害(APD)

回避性パーソナリティ障害(APD)とは、自分は社会的に不適格で劣っているという感覚が強く、恥をかく・否定的評価・嫌われる・排除されることを非常に怖がるために社会的な交流を回避しようとする特徴があります。

そのため他者への不信感も高まりやすく、孤立や孤独を感じることが多くなります。

年齢とともに軽減してくることが多いとされています。

依存性パーソナリティ障害(DPD)

依存性パーソナリティ障害(DPD)とは、自分では決断できない、責任を負えない、保護されたい、人との接点がなければ不安が強い、他者への依存心が強いといった特徴があります。

依存性パーソナリティ障害は依存対象の人がいなくなれば別の人物を探すのに対し、分離不安障害の場合は特定の人物に執着する特徴があります。

見捨てられ不安が境界性パーソナリティと同様にありますが、自己破壊行動はあまりみられない違いがあります。

強迫性パーソナリティ障害(OCPD)

強迫性パーソナリティ障害(OCPD)とは、自分なりの秩序や完璧主義によって、かえって支障をきたしてしまう特徴があります。

細部に囚われて本来の目的を忘れてしまう、息抜きができない、不必要なものでも捨てることができない、人に任せられない、頑固で妥協できない特徴もあります。

強迫性障害では、手洗いや戸締りなど何度も何度も反復行動をして人よりも時間をかけてチェックするような特徴がありますが、その繰り返しを他人へ強要することはあまりみられません。

強迫性パーソナリティ障害は、そういった一つの行動へのこだわりではなく、自分のやり方、ルールといった作業全体へのこだわりがあり、他人も同じ手順でやってくれないと安心していられないといった特徴があります。

パーソナリティ障害の当人の捉え方


遺伝的要素や環境的要因などの背景からなかなか自分にそういった障害があると当人が認めることができないことも多いかもしれません。

また「障害」という言葉をひどく差別的に当人が捉えている場合には余計にその難しさがあります。

個性と障害の境界線の引き方は非常に難しいものです。

残念ながら違う個性同士が協力して生きていく現代生活の中でルールや守るべきことがなければ無法地帯になるため、その範疇を越える言動はどうしても「正常ではない」という記述がされてしまいます。

このパーソナリティ障害についての記事もどのように書くことが望ましいか難しいところです。

遺伝的要素や養育者との関係、愛着形成、養育者との分離、愛情、関わり方、身体的虐待、精神的の虐待が故にこのような特徴になられている方々が多くいます。

パーソナリティ障害を知ることにより「だからこのように生きづらかったんだ」という理解が促されればという思いで書いております。

自分の生きにくさ、自分が起こしてしまう問題をすべて自分のせいにして苦しんできた方にとって「障害」であることで気持ちが楽になったりすることもあります。

「わからずにやってしまう」という苦しみから「わかる」を少しでも取り入れてもらい、少しでも生きやすくなって頂ければ幸いです。

しかし「障害」ということでなんでもやっていいかというとそうではありません。

障害を持つ人であろうと、持っていない人であろうと社会やルールに適応することには努力がつきものです。

パーソナリティに機能的障害を持つ方々の人権的理解も大切にされながらもその障害を乗り越えたり、個性化したり、うまく扱えるようにしていく行為は、機能的障害を持っていない方も同じです。

生まれながらに苦労や努力なしに適応できる人はなかなかいません。

精神療法では、自分を変えたい、治療を行いたい人には一定の効果が期待できると報告されています。

しかし当人にその意志がなければ難しいとされています。

今ご覧頂いている方がどのような方かは想像できませんが、パーソナリティ障害を持つ方もその周囲の方々も非常に多くの苦労をされてきている方が多いと思います。

地獄のような状況が続いている方々もいます。

少しでもそういった状況の方々が生きやすくなりますように切に願っております。

権利と尊厳について


少しでも理解が広がるように、障害を持つ方に対する権利や障害観について重要な提言がされた「障害者権利条約」の内容をわかりやすく簡潔に説明していきたいと思います。

※ここでは個人の見解は省きます。

障害者権利条約(英語:Convention on the Rights of Persons with Disabilities)とは、2006年の国連総会において採択され、2020年現在日本を含む182カ国が批准しているあらゆる障害者の尊厳と権利を保障するための条約である。

ここでいう「あらゆる障害者」とは、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害、その他の心身の機能の障害などを指します。

この条約の一番重要な点は、障害は個人ではなく社会にあるという視点を強調しているところです。

障害がある子供や大人を差別や偏見から守り、社会的理解や配慮がなされ、社会へ参加できるようにしていくことが大切だということです。

また「われわれのことを我々抜きで勝手に決めるな!(英語: Nothing about us without us!)と言うスローガンを掲げ、障害者の視点から作られた条約であることも特徴的です。

条約では、

・当事者の自尊心と自己決定権の重視
・不可侵性の保護(人権がおかされないこと)
・雇用や医療、生活での差別禁止
・社会からの隔離や孤立の防止
・個性や違い、多様性の理解と尊重を促す
・選挙権や社会参加の権利
・インクルージョン(誰にでも参画や貢献するチャンスがあり、平等な機会があること)
・医学的実験からの保護やインフォームドコンセントの権利(わかりやすい説明と合意があること)
・社会全体の偏見や不理解への働きかけや政策の強調
・生きやすさや利用しやすさを考えたアクセシビリティ
・機会の平等

などの重要性を強調されています。

障害者自身の努力のみならず、障害者以外の者や社会全体が理解し、配慮を行えるようにしようとすることがとても重要になります。

パーソナリティ障害の治療や支援


お薬による抑うつ状態・不安・不眠・衝動性・気分不安定性の改善を行いながら心理療法・精神療法を行うことが一般的です。

心理・精神療法では、

・弁証法的行動療法(DBT)
・スキーマ療法
・SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)

などが用いられます。

多くの場合、パーソナリティ障害を「治す」ということよりも先に自分を理解するということが一番大切になります。

晩熟現象のような年齢や経験に伴って症状が軽減してくることも多く有ります。

そういった交流や経験をカウンセリングや心理療法で体感していくことにより癒えるものがあったり、軽減するものがあったり、気づきがあったり、改善するものもあるかもしれません。

しかしまずは自分への理解と納得が促されるように進めていくことが有用であることが多く、「建設的なあきらめ」なども当人にとって非常に重要であったりします。

当人のみならず周囲の家族などの理解が促されるように進めていくことも大切であり、支援とサポートは当人を含めた周囲に対しても行われることが重要であったりします。

病院やクリニック、カウンセラーや心理士(師)以外の相談先として各地域にある精神保健福祉センターなども活用されてみると良いかもしれません。

記事監修
公認心理師 白石

「皆様のお役に立つ情報を提供していきたいと思っています」

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