「発達障害」という言葉を知っていても実際どういう障害があるのか?どういった特徴があるのか?わからないこともあると思います。

ここでは発達障害について理解が促されるように説明していきたいと思います。

※発達障害の種類は、国によって、DSM-5、ICD-10(11)などによって異なります。

発達障害とは?


発達障害(英語:Developmental disability、略名:DD)とは、生まれつき脳の発達が通常とは異なっていたり、脳に障害があるために発達に支障をきたしていることをいいます。

発達障害は、社会や日常生活での支障をきたす障害ではあるものの、生まれつきの特性や個性でもあります。

通常低年齢からその症候が現れていることも多いものですが、「発達障害」という概念の認知が近年になってようやく広まったため、大人になって気づくというケースもあります。

そのため「大人の発達障害」という言葉も広まりましたが、大人になって発症したというわけではなく、そういった要素がありながら大人になって顕著にわかるようになったケースや努力不足・不器用ということで認識していたということも要因としてあります。

日本の行政支援である「発達障害者支援法」の定義では、

・自閉症
・アスペルガー症候群
・広汎性発達障害
・学習障害(LD)
・注意欠陥・多動性障害(ADHD)
・その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの(選択性緘黙、吃音、トゥレット症候群など)

と定められています。

医学界での発達障害では、WHO(世界保健機関)による国際疾病分類ICD(International Classification of Diseases) や米国精神医学会の DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental)などを基準として診断されます。

知的障害との違い


知的障害とは、

  1. 知的機能に制約があること
  2. 適応行動に制約を伴う状態であること
  3. 発達期に生じる障害であること

が18歳までに明らかになる場合に診断されます。

一般的には、読み書き、計算、複雑な概念や抽象的なことが理解しにくいといった特徴があります。

知能指数(IQ)である「知的能力」と社会生活に適応する能力である「適応能力」の両方の状態から判断し、診断されます。

発達障害の中にある「学習障害」は読み書きや計算などの学習障害はありますが会話や判断力などの知能面では障害が見られません。

「知的障害」では学習面に加えて知能面においても障害を持つことが大きな違いとなります。

次の項に発達障害についての説明を行なっていますので診断基準などが異なることがわかると思います。

発達障害と知的障害の診断基準の違いはあるものの、どちらか一方のみあるケースもあり、また併発していることもあります。

分類の仕方にすぎないという側面であるという認識をされることが一般的です。

下の図をみてもらうと関係性や区別が分かりやすいと思います。(黄色の円が知的障害にあたります)

厚生労働省 政策サポート

発達障害の種類と特徴


発達障害は、身体的障害とは異なり、見た目で分かりにくい特徴があります。

そのため発達障害と理解されなかったり、安易に努力不足というレッテルを貼られることもあります。

そのため当事者のみならず、当事者以外の方が「発達障害」に対して知識と理解を得ることも非常に大切となります。

ここでは発達障害の種類と特徴について説明していきます。

自閉症(自閉性障害)

自閉症とは、先天的な脳機能の違いなどにより、対人関係の特異性やコミュニケーションの障害、言葉の遅れ、強いこだわりなどがみられます

知的障害を伴う場合と伴わない場合があり、知的障害を伴わない自閉症を「高機能自閉症(アスペルガー症候群)」と呼ばれています。

自閉症は、3歳までに

①対人関係やコミュニケーションの困難さ
②言葉や発達の遅れ、
③興味範囲の狭さや物事への強いこだわり

があることが特徴的です。

アスペルガー症候群

上述のとおり、知的障害を伴わないが対人関係の特異性やコミュニケーションの障害、言葉の遅れ、強いこだわりなどがみられます。

アスペルガー症候群は他者理解・共感力の欠如が特徴的です。

ゲノム解析によると遺伝率は50~90%とされています。

・他人の情緒を理解するのが苦手
・裏の意味を理解できず、真に受けやすい
・間違いの指摘や意見の否定を通常より強く苦痛を感じる
・順序だったもの・規則的なものに魅力を感じる
・真面目な傾向が強い
・傷つきやすくトラウマになりやすいことが多い
・コミュニケーション障害からイライラしたり落ち込んだりしやすい

といった特徴があります。

うつ病や依存症、タイムスリップ現象(フラッシュバック)などの二次的な症状が併発することもあります。(二次的併存症)

広汎性発達障害

広汎性発達障害(英語:pervasive developmental disorders,、略名:PDD)とは、

  • 自閉症
  • アスペルガー症候群
  • レット症候群
  • 小児期崩壊性障害
  • 特定不能広汎性発達障害

の5つが含まれる総称です。

知的障害と伴う場合もあれば、伴わない場合もあります。

世界保健機関(WHO)が定めたICD-10やアメリカ精神医学会によるDSM-IVにおいて用いられてきた言葉です。

現在ではICD-11やDSM-5に変わり、広汎性発達障害という診断名がなくなり、「自閉症スペクトラム障害」という診断名が新たに用いられています。

レット症候群

レット症候群とは、遺伝子の変異により、知的障害、自閉症、てんかん、常同運動、手もみ動作、失調性歩行などの特徴的な症状が現れ、ほとんどが女性(女児)に罹患する障害とされています。

遺伝子の変異が原因ではありますが、親からの遺伝で起きるものではありません。

指定難病に指定されています。

小児期崩壊性障害

小児期崩壊性障害(英語: childhood disintegrative disorder、略名:CDD)とは、問題なく発達していた状態から学習した能力が喪失し、知的障害や自閉症のような障害が現れます。

他の発達障害より症状が重いことが多く、生涯にわたって介助が必要になることも多くあります。

2歳〜10歳までに発症し、発症までは正常に発達しています。

有病率は男児10万人に1人とされています。

自閉症スペクトラム障害

自閉症スペクトラム障害(英語:Autism Spectrum Disorder,、略名:ASD)とは、

  • 自閉症
  • アスペルガー症候群
  • 特定不能広汎性発達障害
  • 小児期崩壊性障害

を含む概念としてDSM-5で新たにつくられました。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の調査では、アメリカの68人に1人はこの自閉症スペクトラム障害であると確認されています。その調査では男性は42人に1人、女性は189人に1人といったように男性が約5倍ほど高くなっています。

遺伝率は研究によってさまざまな違いがあるために正確な数値を出すことは難しいが、遺伝によって影響を受けることが非常に多いとされています。

診断基準は、「コミュニケーション(対人関係)の障害」と「興味や行動への強いこだわり」に分類して以下のような特徴を有するかどうかで判断されます。

コミュニケーション(対人関係)の障害では、以下の3つの項目で持続的な障害があるかが診断基準となります。

1.会話のやりとりや感情を共有することが難しい
2.人と交流する際、身ぶり手ぶりなどの非言語的コミュニケーションがとれない
3.年齢に応じた対人関係が築けない

興味や行動への強いこだわりでは、以下の4つの項目のうち2つの項目以上が当てはまるかが診断基準です。

1.常に同じ動きや会話を繰り返す
2.同一性への強いこだわりがある
3.非常に限定的で固執した興味がある
4.音や光などの感覚刺激に対して、極度に過敏。あるいは鈍感。

学習障害(LD)

学習障害(英語:Learning Disorders、略名:LD)とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、読み書きや計算などの学習や行うことが困難な状態をいいます。

健常児とは異なった学習アプローチをするため「学び方の違い」と呼ばれる場合もあります。

ADHDやASDなどを伴う場合、それらの状況も踏まえて配慮や支援がされる必要があります。

発達障害の中にある「学習障害」は読み書きや計算などの学習障害はありますが会話や判断力などの知能面では障害があまり見られません。

「知的障害」では学習面に加えて知能面においても障害を持つことが大きな違いとなります。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)

注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは、12歳までに見られる注意持続の欠如や年齢に応じた発達に見合わない多動性や衝動性がある場合のこといいます。

・おしゃべりが止まらない
・待つことが苦手でうろうろする
・注意力散漫
・約束や決まりごとを守れない
・集中し続けられない
・楽しくないとすぐに退屈になることが通常より多い
・じっと座ることができない
・落ち着きなくイライラしているように見える
・物忘れやミスが多い
・静かに待てない
・他人の邪魔をしてしまう

などの特徴があります。

「境界性パーソナリティ障害」にも似たような症状があり、特に見捨てられ不安などがあればその可能性も考えられます。(併発していることもあり)

攻撃性が強い場合は「反社会性パーソナリティ障害」との鑑別が必要になる。

有病率は子供で約5%、大人で2.5%と言われています。

トゥレット症候群

トゥレット症候群(英語:Tourette’s Syndrome、略名:TS)とは、多くある運動チックとひとつ以上の音声チックが一年以上続くチック障害です。

チックとは、本人の意思に関係なく、急に肩をすくめたり、顔をしかめたり、咳払いや声を上げてしまうような動作を繰り返してしまうことをいいます。

小児期に発症し、軽快したり増悪したりを繰り返します。トゥレット症候群の約半数は18歳までにチックが消失するといわれています。

吃音

吃音(英語:Stuttering)とは、一般的には「どもる」ともいわれ、なめらかに話すことが年齢や言語能力に比して不相応に困難な状態をいいます。

・反復(単音や単語の一部を繰り返す)(例:「き、き、き、きのう」)
・引き伸ばし(単語の一部を長くのばす)(例:「きーーのうね」)
・ブロック(単語の出始めなどでつまる)(例:「・・・・・っきのう」)

などが特徴的です。

幼少期からの吃音症は行政的な定義上は発達障害とされており、一概に吃音症=発達障害とは言えないという意見もあります。

選択性緘黙

選択性緘黙(英語:Selective Mutism、略名:SM)とは、場面緘黙症とも呼ばれ、会話や発言など話すことができるにも関わらず、特定の状況になると話すことが困難になってしまうことをいいます。

家では普通に会話できていても幼稚園・保育園・学校などでうまく話せないことが多いとされています。

恥ずかしがりや人見知り、引っ込み思案でも同様の緘黙が起きますが、その強さや持続性がより強いものを指します。

脳の扁桃体が過剰反応による不安の強さなどが要因として指摘されています。

「話さない」のではなく「話せない」ということが理解として大切なところです。

社交不安障害や分離不安障害などの鑑別や併発などの検討も必要とされます。

発達性協調運動障害

発達性協調運動障害(英語:Developmental coordination disorder)とは、学習や日常生活に支障をきたす運動障害をいいます。

運動障害には、協調運動と全身運動(粗大運動)および微細運動(手先の操作)の障害があります。

協調運動とは、いろいろな動きをひとつにまとめる運動のことを指し、

・縄跳び
・体操
・ボール遊び
・自転車
・楽器の演奏
・図工
・ボタンをかけることができない
・靴の左右を間違える
・箸をうまく使えない
・力の加減がわからなずうまくいかない

などの協調運動が上手く行えないことが特徴的です。

ただの努力不足や不器用と決めつけられていることもあります。

医療機関や相談先の探し方

地域にはそれぞれの発達障害者支援センターや市町村保健センター、児童相談所があり、問い合わせに応じて発達障害の相談や診療を行っている医療機関に関する情報を提供してもらうことができます。

発達障害情報・支援センターによる「発達障害者支援センター一覧」のHPからご自身の地域にある相談先を探すことができます。

全国にある児童相談所の連絡先HPから探すこともできます。

発達障害に詳しい医師を探すには、一般社団法人日本児童青年精神医学会「認定医」から探していくことも推奨されます。

さまざまな情報を得たい場合には、発達障害情報・支援センターのHPから探していくと良いと思います。

権利と尊厳について


少しでも理解が広がるように、障害を持つ方に対する権利や障害観について重要な提言がされた「障害者権利条約」の内容をわかりやすく簡潔に説明していきたいと思います。

※ここでは個人の見解は省きます。

障害者権利条約(英語:Convention on the Rights of Persons with Disabilities)とは、2006年の国連総会において採択され、2020年現在日本を含む182カ国が批准しているあらゆる障害者の尊厳と権利を保障するための条約である。

ここでいう「あらゆる障害者」とは、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害、その他の心身の機能の障害などを指します。

この条約の一番重要な点は、障害は個人ではなく社会にあるという視点を強調しているところです。

障害がある子供や大人を差別や偏見から守り、社会的理解や配慮がなされ、社会へ参加できるようにしていくことが大切だということです。

また「われわれのことを我々抜きで勝手に決めるな!(英語: Nothing about us without us!)と言うスローガンを掲げ、障害者の視点から作られた条約であることも特徴的です。

条約では、

・当事者の自尊心と自己決定権の重視
・不可侵性の保護(人権がおかされないこと)
・雇用や医療、生活での差別禁止
・社会からの隔離や孤立の防止
・個性や違い、多様性の理解と尊重を促す
・選挙権や社会参加の権利
・インクルージョン(誰にでも参画や貢献するチャンスがあり、平等な機会があること)
・医学的実験からの保護やインフォームドコンセントの権利(わかりやすい説明と合意があること)
・社会全体の偏見や不理解への働きかけや政策の強調
・生きやすさや利用しやすさを考えたアクセシビリティ
・機会の平等

などの重要性を強調されています。

障害者自身の努力のみならず、障害者以外の者や社会全体が理解し、配慮を行えるようにしようとすることがとても重要になります。

記事監修
公認心理師 白石

「皆様のお役に立つ情報を提供していきたいと思っています」

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