生きていくうえで悩んだり、考えたり、困ったりすることは誰でもあるものです。

昔から使われ、現代まで受け継がれてきた「気にしない」という手法。

現代まで使われ続けているのには意味があります。

一周まわってこの能力をもう一度見直していくことで生きやすくなったり、悩みの袋小路から脱却できることもあります。

少しでも参考になるように書いていきたいともいます。

「気にする」「気にしない」という言葉から考える


これは私たちがよく使う言葉ですが、使いすぎると「気にしすぎ」「気にしなさすぎ」などという言葉もよく用いられます。

「気」という言葉は東洋医学を基礎としていた日本ならではといったところですが、現代のいい方であれば「意識」という言葉に変えることができるかもしれません。

  • 意識する
  • 意識しない
  • 意識しすぎ
  • 意識しなさすぎ

と変換してみるとわかりやすいかもしれませんね。

意識するということは、ある部分にフォーカスすることになるので、エネルギーを使います。東洋医学では「気」は体を動かすエネルギーとして説明されていました。

確かに「気」を使うということは、エネルギーを消費している感じですよね。

そして「気を使いすぎる」「気にしすぎる」ことはそれなりにエネルギーを消費していく様子が理解できます。

そして必要なところに気がいかなくなって、気が回らなくなります。

気にしていく中で嫌な記憶や嫌な予測などでイメージングを行うと脳や身体の交感神経のスイッチがONになることがあります。

その時には戦うか逃げるかができるように筋肉に優先的に血流を回していくので、あまり持続的に行うと心身にとって良い状態とは言えません。

そういった二次的な影響によってもエネルギーの消費や回復を妨げてしまう可能性があります。

人間は「考える力」を手に入れてから様々な道具を生み、社会を発展させていきましたが、その一番の能力によって自らを苦しめるものも生んでしまったと言えるかもしれません。

気にしなさすぎることも問題になりますが、多くの場合、気にしすぎてしまうことで問題が増幅してしまうことが多いのかもしれません。

「気にし過ぎだ!」と言われ続けて


「なんでお前はそんなに気にし過ぎるんだ!!」

「気にするからダメなんだよ!」

「考えすぎるから悪いんだよ!」

「また悩んでるの?」

「またネガティブに考えてるの?」

こういった言葉を近い存在から声掛けされ続けていくと、余計に気にし過ぎたり、ネガティブに考えることが強くなったりすることも少なくありません。

そして「気にしない能力」が失われ、その魅力に気づけないまま苦しんでしまうこともあります。

言われるとやりたくなくなる「心理的リアクタンス」という効果をご存じでしょうか?

心理的リアクタンス(英語:theory of psychological reactance)とは、1966年にジャック・ブレーム(Jack Brehm)によって提唱された理論で、自分の行動や選択を自分で決めたいという人間本来の欲求が犯されると無意識的に抵抗的な反応が起きることをいいます。

誰かに決められたり、強要されるとなぜか抵抗したくなるのはこの働きがあるためです。

誰もが経験しているようなことで言えば「宿題しなさい」という言葉でしょうか。

「○○したらどうだろうか」といったアドバイスよりも「○○しなさい」という強制、強要に近いものほど、この心理的リアクタンスが働いてしまいます。

このような影響を受けて、「気にしない能力」を育めなかった方でも練習していけば、その能力は少しずつ伸びていきます。

※言われるとやりたくなくなる!?「心理的リアクタンス」について詳しくはこちらへ

性格という捉え方と誤解


「私は気にし過ぎる性格だから」

「私は気を使いすぎる性格だから」

と気にする特性と性格を結び付けた認識をされる方が多くいます。

それは最初は誰かに「なんでそんなに気にし過ぎる性格なの?」といった言い回しを聞くことから生まれてくるものです。

そして勝手に性格という認識として刷り込まれていきます。

それはどうにも抗えないことです。

「性格は変わらない」という言葉があります。

その考え方も取り入れている場合には、

  • 気にし過ぎる性格は変わらない
  • 気を使いすぎるこの性格は変わらない

といった極端な内容として認識されていきます。

確かにかわらないその人の気質はあるかもしれませんが、

  • 赤ちゃんの頃
  • 幼稚園や保育園の時
  • 小学生の時の自分
  • 中高生の時の自分
  • 20代のころの自分
  • 30代のころの自分
  • 中年の自分
  • 高齢の自分

そのすべてが瓜二つの同じ性格か、というとどうでしょうか?

ほぼ100人いて100人ともいろいろな性格や特性の変化を感じているのではないでしょうか?

  • 頑張って○○していたからそこからその性格が伸びてきて
  • 悩みがちになってネガティブ傾向が強まった
  • みんなから頼られて自信がついて積極的になった
  • 仲良しのお友達がいて明るくなった
  • 特に何も気にしていなかった

その時の環境や状況、どの性格をよく用いていたか、遺伝子的な発現など、多種多様な影響を受けて自分の性格が変容していると思います。

性格や気質など言葉の解釈もありますが、「気にし過ぎる」「気を使いすぎる」方でも使い方次第で変わってくことができるということです。

ただし自分で意図してその方向に向かわなければいけませんし、多少の努力は必要になります。

そして持続的に使い続ければ脳神経系のネットワークが再構築されて、「気にしない能力」を使いやすい状態へもっていくことも可能になります。

脳神経系の可塑性から考える


脳神経可塑性(英語:synaptic plasticity)とは、外界から入ってきた刺激に対して神経系が構造的・機能的に変化する性質です。

ようするに活動や心的経験に応じて、脳が自らの構造や機能を変える性質のことです。

可塑性が起こる神経系とは、

・脳・中枢神経
・ニューロンの軸索や樹状突起
・シナプス
・神経伝達効率
・伝達物質

です。

経験によって学習し、その関連する神経が強化されたり、新生されたりすることで次回以降の経験がよりスムーズになります。

逆に初めて行う体験は神経系の学習が行われていないため、なかなか上手にできません。

車の運転がわかりやすいですが、はじめての運転ではアクセルやハンドルを気にしないと実際の動作につながらないですが、運転を重ねるとあえて意識しなくても運転できるようになります。

このように成功パターンを学習し、再生しやすくしていますが、失敗パターンも同様に学習し、再生してしまいます。

スランプなどはこのような原理で学習され、神経的にも再生されやすくなっている可能性があります。

2000年のノーベル生理学・医学賞は、「学習することにより神経細胞間の結合が増加される」ことを実証した研究に与えられました。

この研究に関与したエリック・カンデルは「学習には、神経構造を変える遺伝子のスイッチをオンにする効果がある」ことを示しました。

神経可塑性の原理は、同時に発火するニューロンがお互いの結束を強める経験の繰り返しによって処理するニューロン間の結合を強化し、ニューロンの構造的変化をもたらします。

逆に長い間経験を中断すると対応する結合は弱まり次第に消失へ向かっていきます。

ようするに「よく使用する神経は強化され、使わない神経は弱化」する特性があります。

発達期には、軸索が伸び新たな結合や繋ぎ換えが行われ、複雑なネットワークが形成される時期です。神経回路の再編と「シナプス可塑性(英語:synaptic plasticity)」が顕著です。

大人になっても既存のシナプス結合強度を変化させる「シナプス可塑性」による変化が行われています。

神経の損傷が行われた場合もそれを代償するように脳や神経における可塑的な変化があります。「傷ついた神経回路は修復されない」「神経は新しく新生されない」と信じられていましたが、最新の研究では、神経回路は修復され、新しい神経細胞も生まれることがわかってきました

神経可塑性によるニューロンの変化(引用:神経可塑性と認知 COGNIFIT

このことから新たな学習や性格の使い方によってどの能力が伸びていくかに影響を与えることができるということです。

逆に言うと「気にし過ぎる」「気を使いすぎる」ネットワークが強力に張り巡らされていると、気にし過ぎることや気を使うことが簡単にできてしまいます。

しかしそれも少しずつ使わないように練習していくことで神経系にも心理的にも効果が表れていきます。

※「神経可塑性(シナプス可塑性)」について詳しくはこちら

どうすれば「気にしない能力」を伸ばせるか?


どうすれば「気にしない能力」を伸ばせるでしょうか?

人によって千差万別なので、すべてを一つの回答にゆだねることはできません。

しかし伸ばしていくためには大きく分けて2つの方法があります。

①行動によって伸ばしていく

行動を起こすことによって変化させることは非常に有効です。

しかし「気にすることをやめる」「気を使うことをやめる」といった極端な目標設定はうまくいかなかったり、余計に落ち込むことになることもあるので気を付けるべきでしょう。

大切なのはスモールステップに分解して少しずつ進めていくことです。カウンセリングなどではこの設定を一緒に見ていくことが多いです。

そして「やめる」という言葉や方向づけがうまくいかない結果を招くこともあります。

使わないようにするということはなかなか難しいこともあります。

ですので使えないようにする方法を考えていくと比較的容易に減らしていくこともできます。

②心理的アプローチによって伸ばしていく

次に紹介するのが心理的アプローチです。

  • 気にし過ぎるのはなぜか?
  • 何が気にし過ぎる原因や要因になっているか?
  • どのような全体像になっていて、どのように強化しているか?

その要因や原因に対してアプローチしていくことで自然に「気にし過ぎる」「気を使いすぎる」ことを減らしていきます。

このように行動アプローチと心理アプローチがありますが、人によって好みや効果的な方法が異なることがあります。※両方用いると効果的な方もいます。

「気にしない能力を伸ばすため」のカウンセリング


カウンセリングしらいしでは、この「気にしない能力」を伸ばすことを目的に行うセッションがございます。

うまく使えていなかったこの能力を伸ばしていくことで、本当にフォーカスするべきところに意識ができるようになったり、リラックスしやすくなったり、副交感神経を使って回復しやすい心身をつくっていくことにつながっていきます。

うまく活用できるようになっていくとその後の人生にとっても生きやすくなることが多いですね。

気にしない能力は自然に身についてくると「気にならない」ことが増えてきます。

記事監修
公認心理師 白石

「皆様のお役に立つ情報を提供していきたいと思っています」

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