私たちが人生を歩んでいく中で「悩む」ことや「悩み」を抱えることがあります。
そもそも「悩み」とは何なのか?を焦点に当てることで、解決策や改善策の糸口の参考になるようにこの記事を書いていきたいと思います。
もくじ
「悩み」という言葉
悩みを辞書で調べると、このように書いてあります。
悩みとは、物事がうまくいかず、どうしてよいか迷い、あれこれ苦しむこと。
小学館 類語例解辞典
「悩み」「苦悩」「苦悶」の順で、苦しみの程度がより深刻になる。したがって、「軽い悩み」とはいうが、「軽い苦悶」とはいわない。
goo辞書
とありますが、私たちの一般的な日常会話では「悩み」という言葉を使っています。
中国語で悩みは、「烦恼」という言葉になるようで、簡体字を変換すると「煩悩(ぼんのう)」となります。
煩悩といえば仏教の言葉ですよね。
煩悩(ぼんのう)とは、「身心を悩まし煩わせる心のはたらき」を意味する仏教の用語。迷いや苦しみの原因となる心のけがれ。
実用日本語表現辞典
悩んでいるときに「心のけがれ」とは言われたくないですが、欲があれば悩みが出るといった考えが仏教にはあります。
欲自体が無くなれば、確かに悩みは消えることが多いのでとても良い方法ですが、そんなに簡単なことではないことも多いと思います。
ですが悩みを解決するときの一つの手段として「欲」に対してアプローチすることも大切かもしれません。
「悩み」とは何か?ー正体を探るー
では実際に「悩み」とは何か?についてみていくとこのようなことが特徴的です。
まずは「問題が起きている」もしくは「問題意識がある」という状態が前提にあります。
ここで間違えはいけないのが「問題がある」という状態のみを指すのではなく、「自分がそこに問題意識を持っている」という時にも悩んでしまうということです。
しかし問題がある、問題意識があっても解決法や打開策があれば悩みません。
ここから言えるのは、「解決策」や「改善策」、「打開策」がない状態であるということです。
また選択肢が複数有り、その選択が拮抗しているときにも悩みます。
さてここまでで言えることとして、
①問題が起きれば起きるほど悩む可能性が増える
②問題意識が強い人ほど悩む可能性が増える
③解決策や改善策がみつけられないほど悩む可能性がある
④どちらに選択するかを決めれないとき(わからないとき)に悩む可能性がある
と言えます。
しかしこれだけでもなさそうなのです。
それは「悩み癖」がある場合でしょう。
遺伝的にその傾向が強い方もいるでしょうし、ライフイベントなどで自信を失ったり、自分を信頼できなくなって悩みがちになることもあります。
悩むことが辛いけど、実は好きだという嗜好の方もいらっしゃいます。(嫌いな人も多いですが)
また社会的な問題からみていくと「時間に余裕があればあるほど考える時間が増え、悩むことが増える」可能性もあるかもしれません。
現代は少し前の時代よりは時間的に余裕があり、頭や心の中で思考する時間が多いこともあって、悩む機会を増やしている可能性があるのです。
この時代間や世代間のギャップは大きく有り、一昔前の常識が今ではパワーハラスメントという問題に発展するように「悩みの質」も変わってきています。
ようするに「悩みが量産しやすい時代に生きている」とも言えるかもしれません。
さてここまでみていくと感じることは「探せば探すほど私たちは悩める」ということが挙げられるかもしれません。
向上心があって問題意識を持つことは非常に良いことですが、あまりに問題意識が強すぎることによっての弊害も知っておかなければなりません。
悟りを開くという目標の方はあまりいないと思いますから「煩悩」と捉える必要はないですが、欲がでればでるほど悩みも出やすいと言えるでしょう。
またその欲求に執着しすぎていることによって悩みが長期化してしまうことがあります。
「悩むのは良いこと?悪いこと?」
これは愚問のようにみえますが、意外と重要なテーマであることもあります。
それは悩んでいることが悪い、恥ずかしいことだと感じ、自分の自己評価を下げている方も意外と多いからです。
「普通はそんなにみんな悩んでいないから」といったイメージを持っている場合、そういったことが起きやすいかもしれません。
私も多くの方の相談を受け、こんな方がこんな問題を抱えているのか?と思うほどの経験をしています。
あまり悩みは他人に言わない方も多いのであまり知られていませんが、多くの方が人生の中でなにかしらの悩みを持ちながら精一杯生きていることのほうが多いのではないでしょうか。
人に言わないし、「悩みある?」なんてあまり聞かないからこそ見えにくい世界です。
悩みは実は何かを吟味したり、本当にどちらにすればよいか真剣に考えることにつながっていないでしょうか?
確かに少ないに越したことはないですが、そんなに少なくていいのでしょうか?(多少あってはダメでしょうか?)
そんなに人間って完璧でしょうか?
でも堂々巡りしているときはつらいですよね。
先が見えない、好転する気配がない、うまくいく気がしないといった感じも付随することもありますよね。
悩みの扱い方と対処法
さて実際の「悩み」に対する扱い方と対処法をいろいろな視点から説明していきたいと思います。
※これらの方策は全て必要というわけではなく、方策のアイデアとしてご参考いただけたら幸いです。
①解決策や改善策を探す
その悩みを解決するにはどのようなことが必要でしょうか?
それが見つからないから多くの場合、悩みます。
解決策が見つかればいいのですが、簡単ではないこともあります。
解決策がない、なかなか見えない問題というのも実は多くあったりします。
そういったときに解決策ばかりにフォーカスがいくことによって改善策が見えなくなることもあります。
そういったときは、少し目標をスモールステップ化して改善策から始めてみると良い場合もあります。
②妥協点を見つける
自分の欲求やゴール設定にこだわりすぎて難しい場合、妥協点を探ることも大切かもしれません。
人間は多くの場合、妥協はあまり好みません。
しかし現実は何十億人もの主人公が混在している世界なので妥協をしなければうまくいていかないことも多くあります。
妥協点を見つけるという心の柔軟性は自分の人生にとって素晴らしい能力になってくれることがあります。
③自分の欲求を見直す
欲求があるからこそ人生は素晴らしいものになるのですが、時として問題を引き起こしてしまいます。
その欲求はそのまま変わらなくても良いでしょうか?
その理想は本当に叶いそうでしょうか?(現実的でしょうか?)
もう少し現実的に考えるとどれくらいが妥当でしょうか?(スモールステップ化)
欲求を無くすことによってその問題が解消したり、欲求を少し変更することでその問題が改善したりすることもあります。
この方策も好きではない方も多いですが、前述した意味で欲求を見直すことも一案としてあります。
④受け入れる(肯定的諦め)
受け入れるという心理的技術は一般的で当たり前なものですが、実に奥が深く、非常に効果がある方策です。
現実を受け入れ、「まあ仕方ないか」と受け入れられる心を得られることはその方の人生にとって心の器を広げる作用にもつながります。
それは自己成長であり、今後の生きやすさにも繋がっていきます。
⑤勇気を出す
解決策や改善策が分かっていても、それを実行できない場合も悩みます。
そしてそのときには多くの場合、勇気が必要です。
こうなったらどうしよう、うまくいかなかったらどうしようと不安や心配でぐるぐる悩むこともあります。
この場合、少し勇気を振り絞って行動をすることで道が開けることも多くありますが、なかなか身動きが取れないこともあります。
そんな場合、周囲に理解してもらったり、新たな方策を得たり、味方をつけて挑戦してみてはどうでしょうか。
⑥情報を精査して決断する
情報がいろいろありすぎて混乱したり、どちらを選択すればいいかわからない時があります。
また現時点では「わからない」が正解のときだってあります。
そんな時、様々な情報を一度整理して、慎重に判断して、決めていくことが大切です。
⑦自分だけでは答えが出ないときに他者に相談する
自分の考えは多くの場合、正しいと思ってしまいます。
しかし実は自分の思い込みや偏見によって事実を歪んで見えてしまうこともあります。
また解決策や改善策も今までの成功体験からしか判断できないこともあります。
他者に相談することによって「客観性」という視点が得られるばかりか、自分の本当の気持ちが言葉に出たり、他者の方策を知ることもできます。
相談する人によってはその悩みに共感や理解をもらえ、気持ちが癒えて、次のステップに進みやすくなることもあります。
自分で思っているより、他者に相談することはとても得られるものが多くあります。
⑧自分の気持ちを対象者に伝える(話し合う)
勇気を持って自分の心情や意見を対象者に伝えることはとても勇気がいることです。
簡単ではないことも多いですが、伝えることによって成功・失敗という二択だけではなく、次の判断や決断を生むための情報が得られるという利点もあります。
どのように話すかによって結果も変わってきます。
できなくてもいいですが、まず相手の気持ちを理解し、尊重しながら自分の心情や意見を言うと成功率が高まります。
⑨関係フレーム理論を知る
心理学の「関係フレーム理論」について簡単でもいいので、理解しておくと非常に有用な場合があります。
人間には、無意識的に勝手に色々な情報と情報を結びつけ、関係付ける「関係フレームづけ」という機能があります。
例えば、自分を見て笑った人がいるとします。本当は自分に対して笑ったとは限らないですが、自分がなにかしたかな?あれかな?やっぱり自分は何かおかしいのかな?などと派生して勝手に解釈してしまいやすいということです。
悩んでいるとき、この関係フレームづけの連鎖によって事実以上に自分を苦しめてしまうことも多くあります。
そんなときこの機能がそうさせているのだということを知ることも重要です。
できるだけ事実だけをみる練習をして、必要以上に悩みの連鎖を起こさないように気をつけることで道が開けることもあります。
また「関係フレーム理論」や「関係フレームづけ」について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
⑩心や思考の世界に入りすぎていないか?
関係フレーム理論にあるように私たちは心理的世界や思考の世界に入り込み過ぎると必要以上に関係性を派生させ、最後には自分を責め、悩み、苦悶してしまうことがよく起きます。
適切に思考し、適切にこころを大事にするのであれば良いのですが、悩んでいるときはそのことばかり考えてしまうものです。
そういった時こそ、現実に目を向け、行動に着目していくほうが良いことも多くあるのです。
心や思考の世界でうまく打開策が見つからなくても、行動し、現実が進んでいく中で自然に改善・解決していく悩みも多くあります。
そういった意味で心と行動のバランスも考えていくことも大事です。
⑪肯定的に(建設的に)悩む
「悩むことは良くない」と思っている方はその自分を責めてしまうことが多くなる傾向があります。
そういった場合、「悩むこと」自体を悪く思わず、ポジティブに捉えてあげることも大事かもしれません。
社会や時代、人によって「悩むこと」の評価は変わるものです。
自分が良ければ良いという世界でもありますので、あまりネガティブな方向に捉えず、建設的に悩もうという意気込みを持ってもいいのではないでしょうか?
⑫自分の本当の気持ちに気づく
いろいろ悩んでいると自分の気持ちがわからなくなる時があります。
他者の意見や社会的なモラル・風潮に流されて見えなくなるときがあります。
そんなとき、自分の本当の気持ちに気づくことによって大きな前進が得られることがあります。
自分の中で気づける場合もあれば、他者に話していくと見えて来る時もあります。
自分の本当の気持ちがわかったら、その通りするのか?そうしないと本当に納得できないのか?どのあたりが妥協点なのか?を模索していくと良いでしょう。
⑬本当に悩むべきかを判断する
ここまできて、なにこれ?という感覚の方もいるかもしれませんが、実際によく考えれば「悩むべきものではなかった」ということもよく起きます。
- その悩みは、本当に答えが出るものか?
- その悩みは、すぐに答えが出るものか?
- その悩みは、本当に悩むべきものか?
- 自分は必要以上に問題意識を持ちすぎていないか?
- 自分の思い込みや偏見によってその悩みは生まれていないか?
- 理想が高すぎではないでしょうか?
などを自問することによってみえてくる世界がある場合があります。
⑭悩みを持ったまま進んでも良い
悩みが解決するとスッキリするものです。
しかし全ての悩みが即日に解消されるとは限りません。
悩みを抱えながら人生を歩んでいくというのもまた現実的には多くありえます。
そんな不快感を抱えながら人生を進める自分も苦痛ではありますが、また素晴らしいものであるとも言えます。
⑮問題自体より悩みの方がストレス!?
起きた問題や問題意識自体よりも悩んでいるときのほうがストレス量が大きいということがよく起きます。
そして悩みが慢性化すればするほどそのストレスも慢性化します。
こういったことを知りながら、どれくらい悩むかを考えていくのも重要かもしれません。
惰性に悩んでいるとついつい悩み続けてしまうことも多いものです。
悩む時間と悩まな時間を明確に分けてみるのも良いかもしれません。
終わりに
悩むという大きな枠組みについてこの記事では書いていきましたが、いかがでしたでしょうか?
本当に悩むべきものもあれば、実はそんなに悩むべきでないこともあるかもしれません。
もし本当に悩むべきものであれば、上記に書いたように様々な方策や方法があります。
そんなときに少しでも参考になればと思い、この記事を作りました。
心理師・カウンセラーとして多くのご相談に応じて来て思うことは、悩みが慢性化したときにはぜひ他者に相談してみて欲しいと思います。
第三者である知らない人に相談するということは勇気がいるものですが、なかなか現状を打破できない息詰まった時に自分の気持ちを話しながらともに解決・改善に向かって行く作業は多くの方に喜ばれてきました。
ストレス・コーピング というストレス対処能力の高い人ほど人に相談出来ると言われています。
ある程度自分で悩んでも難しい場合、カウンセラーや友人、その相談に応じられる方々に相談することも大切なのだと思います。
何よりこの記事を見られている方にとって少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、有難うございます。
記事監修
公認心理師 白石
「皆様のお役に立ちますように」