過去の心理学者・臨床家・研究者の人物像や提唱された内容から今に学べることは多くあります。
ここではウィリアム・グラッサーと「選択理論とリアリティー・セラピー」について書いていきたいと思います。
ウィリアム・グラッサーについて
ウィリアム・グラッサー(William Glasser)は1925年アメリカのオハイオ州クリーブランドの時計修理職人の家庭に生まれました。
化学技師の訓練を受け、ケースウェスタンリザーブ大学にて化学工学の学士号を取得しますが、徴兵されてしまいます。
兵役後は大学へと戻り、臨床心理学の修士号と精神医学の修士号を取得します。
ウィリアム・パワーズの知覚操作理論(PCT)に感銘を受け、独自の理論を構築し、「選択理論」を提唱していきます。
1967年にリアリティ・セラピー研究所を設立し、研究を行いながら学生へ「選択理論」を教えていきます。
リアリティ・セラピーでは心理療法士やカウンセラーを育成し、その活動はアメリカのみならず日本を含む世界中にオーガナイズされています。
グラッサーは数多くの賞を獲得していますが、セラピストとして最も栄誉のある賞と言われるアメリカ精神医学協会による「マスター・セラピスト」を授与されています。
主著には、
1965年「現実療法ー精神医学への新しいアプローチ」
1969年「落伍者なき学校ー落ちこぼれは救えるか」
1998年「グラッサー博士の選択理論」
2003年「警告!あなたの精神の健康を損なう精神科に注意を」
などがあります。
選択理論とリアリティー・セラピー
グラッサーは、保守的な精神医学と薬物治療を公然と否定し、精神的な問題の大半は健全な人間的経験であり、行動変容によって改善することができると提言しました。
リアリティー・セラピーの臨床を重ねていくことによってグラッサーは、「人間が生まれつき社会的存在である」との見解に達します。
精神病や精神疾患、精神の問題の原因の多くは「人と人との関係」であり、みじかな人間との対人的抗争が不和と怨念を生み、精神に症状を作ってしまう。
であるならば人と人との関係を変えていくことで改善、解決していくものも多いとグラッサーは言います。
向精神薬に頼らなくても人間関係を改善すれば良いという提言は書籍化と相まって多くの人びとに影響を与えています。
そのような考え方を土台として、「選択理論」は全ての行動は自分の選択であると考えます。
選択理論には、
①生存の欲求
②愛と所属の欲求
③力の欲求(欲するものを手にする、人の役にたつ、承認欲求など)
④自由の欲求
⑤楽しみの欲求
という5つの基本欲求があります。
これらは誰でも遺伝的に持っている欲求ですが、人によってその強さや満たし方、我慢の度合いなどが異なります。
最新の選択理論の活動としては、
・組織へのマネジメント(ボス&リード)
・個人カウンセリング(リアリティ・セラピー)
・学校への浸透(選択理論を取り入れている学校)
・日常生活への適応
などに対してその理論が広まっており、現実的に生かされています。
このような「選択理論」を基本として個人へのカウンセリング技法として「リアリティ・セラピー」」があります。
リアリティー・セラピーは現実療法とも呼ばれ、過去ではなく今現在に焦点を当ててより良い未来を作るための評価と行動計画を策定していきます。
カウンセラーとクライエントは暖かく信頼できる関係性を持ちながらも、自分の行動の責任は「自分にある」という選択理論の原則を重要視します。
そのため人のせいにしたり、責任転換する、自責するような習慣やクセが経過とともに変容するような方向性も持ちます。
自分の行った行動を自分の責任にするという行為は非常に厳しい感覚を持つ方もいるかもしれませんが、その厳しさに裏打ちされる「力強さ」を獲得できるとも言えるかもしれません。
参考文献
心理学大図鑑 キャサリン・コーリンほか
記事監修
公認心理師 白石
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