「もう生きていても意味がない」「生きる希望がなくなった」「絶望感に襲われる」「暗いトンネルの中で身動きできない」といった絶望感に悩まされることがあります。
それは以前とは違う感覚であり、以前の自分とは違う人物のようでもあります。
私たちはこれらの「絶望感」をどう理解し、どのように扱えばいいのか、カウンセリングの有用性も踏まえて考えていきたいと思います。
もくじ
絶望感とは何か?
絶望感を辞書で調べると、
希望が全くなくなったという気持ち。望みが絶たれてどうにもならないという思い。「再逆転されてチームに絶望感が漂う」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
とあります。
・希望がもてなくなるとき
・望みが絶たれたとき
・どうあがいてもどうにもならないとき
に「絶望感」という感情が現れます。
実際にこのような状況になったときに、
・もう無理だ
・何をやっても意味がない
・努力しても無駄だ
・諦めよう
というような気持ちが湧いてきます。
そしてそれが自分の人生にも感じるようになってしまうと「生きていても意味がない」「なんのために生きているんだろう」と感じてしまうものです。
そのような気持ちを振り切りながら前を向いて努力をすることによって希望が見えたり、改善したり、解決したり、成功したりすることもあります。
しかし努力を何度も重ねても打ち砕かれ、逆により深く苦しい絶望感に打ちひしがれることもあります。
努力する方向性が誤っているために失敗を繰り返してしまうこともあれば、正当に努力をしていても不遇の連続によりうまくいかないことが続いてしまうこともあります。
このときに誰かあなたの理解者はいますか?
誰かに話し、気持ちを整理し、糸口を見つけられる機会がありますか?
そういった周囲の温かな機会があればいいのですが、なかなかそのようなことや理解者が少ないことも多いかもしれません。
そのような状況になったときどのように対処したり、扱えばいいのでしょうか?
絶望感の扱い方
失敗し、再度努力しても失敗し、打ち砕かれて絶望感と精神的苦痛を抱える方がいるとします。
元気でうまくいっている人から「諦めずに頑張ればなんとかなるから前を向いて希望をもとう」という励ましと助言をくれたとしましょう。
それは当人にとって嬉しい場合もあれば、逆に苦しく感じてしまうこともあります。
このように絶望感を味わった人間でなければなかなかわからない胸中の思いがあります。
たしかに前を向いて再度挑戦することがいかに大事かがわかっていても絶望感の最中ではそのように思うことがなかなかできないことがあります。
絶望感の扱い方は「精神的ショック」と「学習性無力感」について理解することがカギになります。
これらを理解した上で少し時間が取れるなら取りつつ、大切に時間を過ごされることが重要です。
精神的ショックのしくみを理解する
精神的ショックな出来事が起きたとき「そんなことありえない」と否定したり、否認したくなります。
なぜならそのような出来事が起こると思わなかったからです。
こころに衝撃が走ります。
この段階では、出来事を受け入れることができないために
①否認「そんなわけない、そんなことあるわけない」
②ショック状態「呆然とする、言葉が出ない」
などが起きます。
この段階では無理して受け入れるよりも心に身を任せて行くことが大切です。
そして時間が経つごとに、少しずつ出来事を受け入れていきます。
この段階では、
①感情が表れる(悲しみ、怒り、虚しさ、憎しみ)
※逆に感情が感じられなくなることあります
②罪悪感(自分の問題だと感じる場合)
③相手を責める思い(相手が問題だと感じる場合)
④身体化・転換(頭痛、吐き気、めまい、体の違和感)
などが起こります。
感情や罪悪感、相手への怒りや憎しみ、また体の症状としてでてくることもあります。
「なんとかしなきゃ」と動きたくても衝撃とショック状態を味わっているのでなかなかうまく動くことができない場合も少なくありません。
この段階では無理して何かできるものではありませんので心が感じるまま受け入れてあげていくほうが良い状況です。
周囲の方も言葉で刺激を与えるよりもただそばにいたり、話を聞いてあげたり、相手に応じて対応するほうが良いです。
なかなか受け入れることが難しい場合も多く、自責の念にかられ
①絶望的になる
②希望がもてなくなる
③他人が羨ましく感じ、孤独感が強くなる
④死にたくなる
⑤動けなくなる
⑥抑うつ状態になる
⑦体に症状が出てくる
⑧感情が麻痺する
などの気持ちや状態が現れてくる段階に入ります。
現実逃避をしたくなったり、ひきこもりたくなるような心理状態になります。
またそのような精神的ショックを受けている自分やそのように考えている自分を受け入れがたく感じてしまうこともあります。
この状態では、なかなか心や体が動いてくれないような時期ですので慎重に判断しなければなりません。
カウンセリングや相談を行う時期に多いのがこのような時期か、この時期を少し経過してもう一度頑張ろうとする時期に多く感じます。(実際はどの時期でも有用です)
この時期の絶望感や希望が持てないと思ってしまう現象に惑わされないようにしていくことが大切です。
この時期がすぎれば、また希望を感じて立ち上がっていくことができますが、この時期は本当に絶望的に見えやすくなりますし、希望を感じにくくなるものなのです。
出来事から精神的ショックを受け、感情に囚われ、絶望的になり、時間が経過しながら少しずつ自然に受け入れが進み、笑顔が少し増え、心が少し軽くなりを繰り返していきます。
人の温かさや優しさが必要になりますが、自分の中で時間を使って処理したいために「そっとしておいて欲しい」こともありますので本人が嫌がらないようなサポートが周囲に求められます。
ある時期にくると自分でも意識的に向き合える時期が訪れます。
こころを整理したり、いつまでも責めていてはいけないと感じ、前に進もうとしていきます。
前に進んでいるとふとした時に苦しくなることもありますが、その苦しみも「そういうもんだ」と受け入れながら進めていくことで少しずつ本来の自分を取り戻していきます。
そしてあのショックな出来事を肯定的に捉えることができるようになった時には、以前の自分より大きな自分へと成長していることを感じることができます。
そこまできてようやく感謝が生まれます。
ここまで来るのに数週間の場合もあれば数年~数十年といった場合もありますが、出来事や向き合い方、周囲や専門家のサポートによって異なるものです。
今までやってきたことを建設的な意味で諦めたり、自分により適応的な人生へとシフトチェンジが起きたり、「あの出来事があったから」と言えるような人生を歩んでいくことができます。
それには時間がある程度必要になります。
学習性無力感のしくみを理解する
学習性無力感(英語:Learned helplessness)とは、ポジティブ心理学で有名なマーティン・セリグマンが提唱した概念で、努力を重ねても望む結果が得られない経験が続くと「何をしても無駄だ」と認知するようになり、不快な状態を乗り越えようとしたり、脱する努力を諦めてしまうことを指します。
別名として「学習性無気力」「学習性無力症」「学習性絶望感」という名前で呼ばれることがあります。
学習性無力感は、乗り越えよう、戦おうという方向に行かないばかりか、逃げたり回避しようとすることすらできなくなることも意味しています。
繰り返し失敗してしまうことによって「もう無理だ」と諦めた経験はないでしょうか?
だれでも軽いものであれば経験したことがあると思います。
自分が苦手だと思う領域の中には、このような失敗の繰り替えしと学習性無力感によって形成されたものも多くあるかもしれません。
重いものになるとやる気が出なくなり、絶望感とともに無気力状態になってしまいます。
監禁、虐待、暴力、人格否定、いじめ、モラルハラスメント、失敗、挫折、自分の価値や尊厳が踏みにじられる経験によって大きな精神的ストレスとなり、学習性無力感に悩まされてしまいますが、繰り返し小さな挫折や失敗を繰り返しや積み重ねによっても発現します。
学習性無力感は、不快な感覚である嫌悪刺激の量に左右されるというより、コントロール不可能な体験によって学習性無力感は大きな影響を受けるとされています。
ですのでコントロールをしようと思ってもできないことを繰り返すとこのような無力感に襲われることになります。
体内では、通常の時よりはるかに多くのストレスホルモンが分泌されているていることがマイヤーとセリグマンの研究で報告されています。
カウンセリングと心理療法の有用性
最初は自分自身で向き合っていくものですが、時間が経過してもどうしても上手く整理できず、受け入れがたく、前に進めず、身動きがとれなくなることがあります。
そんな場合、自分ひとりで抱えずに家族や友人に相談する、病院やクリニックで診断を受ける、会社や学校へ相談してサポートしてもらうということが大切になります。
「そんなカッコ悪いことするなんて。。。」と思っていれば思うほど必要かもしれません。
人に頼ることを経験することによりその体験の素晴らしさを知り、独りよがりの人生に大きな財産となる体験を得ることにつながります。
またこういった時ほどプロの専門家によるカウンセリングと心理療法が有用になってきます。
家族や友人に相談できることは別として第三者に相談することが功を奏します。
自分と関わりがないからこそ素直に心の内を話せるものです。
カウンセリングと心理療法のアプローチ
最初にどのような出来事があり、どのように感じ、どのように捉えて、今どうなってどう思っているかを相談される方(以下クライエント)が話していきます。
カウンセラーはその話を受容しながら聞いていきます。共感され、恥ずかしいと思っている内容でも受け入れられていきます。
そして受け入れがたい理由を話していく中で「それで受け入れられなくて苦しんでいたんだ」という理由を発見していくこともあるでしょう。
なぜここまで絶望感を感じたのかをより詳しく知ることにより、見えてくるものがあります。
トラウマや恐怖症のような状況も併せ持つ場合、心理的な理論を理解しながら自分に最適なアプローチを選んでいきます。
恐怖やトラウマ化に学習してしまった条件付けを消去・馴化したり、上書きして学習したり、気づきを得ていきます。
そういったなかで少しずつ恐怖感が減り、不安も減っていきます。
また精神的ショックや絶望感などにより大きく傷ついた自分に向き合っていく中でこころが癒されるだけではなく「自分との向き合い方」が上手くなっていくことがわかってくると思います。
なぜこのように精神的なショックを受けたのか?という原点にはクライエントの人生で大切なドラマティックな信念や想いがあります。
そういったクライエントの心情や思いを大切にしつつ、これからどうしていくか、今何をしていくことがいいか、など行動や未来に向けて焦点を合わせることも時期によって重要になります。
前に進みたい気持ちと前に進むのが怖い気持ちが葛藤を起こすこともしばしば起こりますが、それらの気持ちも受容しながらクライエントのペースで進めていきます。
ひとつひとつ丁寧にカウンセリングを行いながら適切な心理療法でアプローチをしていくことで徐々に「本来の自分」と「この出来事によって成長した自分」が頭角をあらわしてきます。
カウンセリングを進めていく中で、あのショックな出来事をどのくらいに扱うかのバランス感覚も大切です。
そしてクライエントにとってちょうど良い適切な受け入れが行われていきます。(何でもかんでも全て受け入れればいいというものではない)
時間やセッションの経過とともに癒えてくるものが増え、本来の活力が取り戻されてくると次の自分の道が少しずつ見え始めてきます。
実際途中には、絶望的に見えやすくなりますし、希望を感じにくくなったりすることもありますがそういう時期だと認知できるようにしていくことが大切です。
「この機会に向き合ってよかったな」と思える段階に入れば、もうその道を歩むだけになりますので適切なタイミングでカウンセリングが終わりになります。
おわりに
人生には様々なライフイベントが訪れます。
絶望感は無ければ無い方がいいかもしれませんが、「あの出来事があったから今の自分がいる」といった輝きを放つ起点になることもあります。
誰でも相談やカウンセリングを受けるかどうか悩むものです。
ましてやそういう相談をしたことがない人であればなおのことです。
自分ひとりで乗り越えることも大切ですが、頼る素晴らしさや話すことで整理され、向き合いやすくなる経験も自分の成長につながります。
再三再度申し上げますが、絶望感を強く感じたり、希望が持てなくなる時期がありますが、そう感じやすくなる時期ですのでそういう時期だと理解し、流されないようにしてください。
その思いに抵抗はしなくていいですが、惑わされないでください。
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記事監修
公認心理師 白石
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