カウンセリングや心理療法を行っているのですが、悩みは心だけの問題ではなく、私たちの社会や制度、経済、モラル、向かっている方向性に大きな影響を受けます。

未来の人間と地球環境にとって非常に重要になる「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」とは何か?をできるだけわかりやすく説明していきたいと思います。

SDGsとは何か?


SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です

下記のような画像を見たことはないでしょうか?

SDGsの17の目標
SDGsの17の目標
  1. 貧困をなくそう(No Poverty)
  2. 飢餓をなくそう (Zero Hunger)
  3. みんなに保健と福祉を提供できるようにしよう (Good Health and Well-Being)
  4. みんなに質の高い教育を提供できるようにしよう(Quality Education)
  5. ジェンダー平等を実現しよう (Gender Equality)
  6. みんなに安全な水とトイレを提供できるようにしよう(Clean Water and Sanitation)
  7. みんなにエネルギーを提供できるようにしよう、そしてそれはクリーンになものにしよう(Affordable and Clean Energy)
  8. 持続可能な働きがいと経済成長にしよう (Decent Work and Economic Growth)
  9. 産業と技術革新の基盤をつくろう (Industry, Innovation and Infrastructure)
  10. 人や国の不平等をなくそう (Reduced Inequalities)
  11. 安全で持続可能なまちづくりを行おう (Sustainable Cities and Communities)
  12. つくる責任つかう責任を持とう (Responsible Consumption and Production)
  13. 気候変動に具体的な緊急対策をしよう (Climate Action)
  14. 海の豊かさを守ろう (Life Below Water)
  15. 陸の豊かさも守ろう (Life on Land)
  16. 平和と公正をすべての人に提供しよう (Peace, Justice and Strong Institutions)
  17. 世界全体で協力して目標を達成しよう (Partnership)

このような17分野の大きな目標と、それらを細かく設定した169項目の達成基準があります。

持続可能な開発目標(SDGs)に法的拘束力はありませんが、「地球上の誰一人取り残さない(leave no one behind)」というスローガンのもとに持続可能な開発を全世界で協力して進めていくことが重要視されています。

影響力の大きいG20と人口1億人以上の43か国の中では、2018年1月時点で33か国がSDGsの達成に向け取り組むことを公言しており、もちろん日本も参加しております。

実際どれくらい達成できているのかは、下図の「世界のSDGs達成度ランキング」(千葉商科大学のMIRAItimesより引用)をご覧下さい。

順位国名達成度順位国名達成度
1デンマーク85.235アメリカ合衆国74.5
2スウェーデン85.0   
3フィンランド82.838オーストラリア73.9
4フランス81.539中国73.2
5オーストリア81.1   
6ドイツ81.155ロシア70.9
7チェコ80.7   
8ノルウェー80.757ブラジル70.6
9オランダ80.4   
10エストニア80.2102インドネシア64.2
11ニュージーランド79.5   
12スロベニア79.4115インド61.1
13イギリス79.4116バングラデシュ60.9
14アイスランド79.2   
15日本78.9130パキスタン55.6
16ベルギー78.9   
17スイス78.8153アフガニスタン49.6
18韓国78.3154ニジェール49.4
19アイルランド78.2155シエラレオネ49.2
20カナダ77.9156ハイチ48.4
出典元:Sustainable Development Report https://www.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/1193050_1501.html

上図は2019年のランキングになりますが、2020年の日本のランキングは17位(達成スコアは79.17)です。

アジア諸国では一応、日本は一番達成度が高いことがわかります。

開発や発展がある程度進んだ先進諸国で活発に行われており、途上国では達成スコアが低い傾向があります。

それはある程度は仕方ないところもありますが、それぞれの国ができる限りの努力と連携を行い、協力していくためにSDGsのような指針が大切になります。

今までの「自分たちさえよければ」という考え方では今後はどうにもならない事態になることがわかってきています。

特に気候変動は最たるものです。

そのためには経済活動の向かう先が重要になります。

ESG投資


持続可能な世界を実現するためには経済活動、ビジネスの観点を外すことができません。

ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3つの観点に配慮した責任ある投資のことをいいます。

ようするにSDGsに貢献している企業に投資しようとすることです。

世界のESG投資は年々増えてきており、3000兆円を超えるほどになってきています。

世界中で起きる気候変動や新型コロナウイルス、人間の権利や平等性の問題への注目、改善すべき必要性を感じてきている証です。

私たち一人ひとりの注目や何を優先して購入するか経済を動かし、地球と人間の共生を実現する上で欠かせない原点になります。

SDGsと格差社会


国際的なNGO(非営利組織)の「オックスファム」が2020年1月20日のダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)に合わせて発表した最新の報告書世界では、「世界の富裕層の上位2100人の資産が世界の総人口の6割にあたる46億人分の資産を上回る」というデータを発表いたしました。

また2014年に発表されたOECDの調査によると、加盟国の多くの所得格差が過去30年で最大となっています。

人口における最富裕層10%が最貧層10%の約9.6倍の所得となっており、1980年代には約7倍であったことから、世界的に所得の格差が開いていることになります。

貧困層は世界的に見て減少傾向にあるものの、日本では増加傾向にあります。OECD加盟41カ国中ワースト8位という結果です。

仕事による給料格差もありますが、東京都(2014年:451.2万円)と沖縄県(212.9万円)などにみられる地域間格差もあります。

お金だけでなく、医療格差、教育格差、情報格差、男女格差、世代間格差などの問題もあります。

十分な資産を持つ富裕層がいる一方で、1日に2米ドル以下で生活する極度の貧困状態で生活している人もいるという現状にあり、経済格差は改善するべき深刻な問題です。

SDGsの「10.人や国の不平等をなくそう (Reduced Inequalities)」と格差が広がっている現状をいかに改善していけるのか?

資本主義経済では、必ず格差が生まれる仕組みでもあり、この資本主義から発展したより良い経済社会システムの構築や制度も検討される時代になってきています。

奪い合う過剰な競争の仕組みから、持続可能な分け与えと協力、適切な競争にどこかでシフトチェンジしなければ戦争に発展するなどの危険性が高いとも言われています。

ジェンダー平等とは何か?


ジェンダー平等とは、「男性だから」「女性だから」といった性別によって決めつけられることや性別による差をなくして、平等にしようとする試みです。

男女格差などは「ジェンダーギャップ」などと言われ、2020年のランキングで日本は、153か国中121位という不平等な状態を表しています。

社会的な性別の違いによる役割分担にしばられることなく、一人ひとりが自分の能力を生かして、自由に行動したり生活したりできるようにしようという「ジェンダーフリー」という考え方も重要になってきています。

これまでは性の違いは、男性と女性に分けるのが一般的でありましたが、男女以外にも多様な性があります。

Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)の頭文字をとり、「LGBT」と一般的に表現されています。

このように人間の多様性を認め、性の問題にとらわれず、個人の特徴を活かせる社会と受け入れられる許容性が求められています。

気候変動による影響


気候変動による台風、洪水、ゲリラ豪雨、熱波などの影響で大きな被害が出ることを近年よく体験しています。

そういった危機感もありますが、農業や漁業への壊滅的な被害をもたらした時により強い危機感を感じると言われています。

私たちが生きていく上で欠かせない食料に問題が現れ、海面上昇による被害も考えると「気候難民」も相当な数になります。

そうなってくると社会や経済も崩壊してしまう危険性もあります。

SDGsにあるように気候変動に対する施策が重要になりますが、SDGsが掲げている経済成長や開発と気候変動政策は両立し得ないという見解もあります。

多くの科学者が指摘し始めたように、そもそも経済成長と二酸化炭素削減は、求められているペースでは両立しえないものなのです。つまり、無限の経済成長を追い求める資本主義に緊急ブレーキをかけない限り、気候変動は止まらない。これが問題の核心部分なのに、SDGsはそこから人々の目をそらさせる。その点を危惧しています。

経済思想家・斎藤幸平氏 SDGsは「大衆のアヘン」。資本主義に緊急ブレーキを!

ブレーキのかけ方を間違えると大規模な貧困や不況から大壊滅を招きかねませんが、一部の国だけではうまくいきませんので全世界で協力して緩やかに迅速に改革できることが鍵になるかもしれません。

消費することによって成り立っているこの経済システムのために私たちは毎日必要以上の労働とストレス、悩みを抱えているのだと思います。

もしかすると誰かが悪い(例えば権力者や超資産家)ということよりもこのシステム自体がうまくいかない時期に来ているのかもしれません。

なぜただのカウンセリング屋がこの記事を書くのか?


現在までに約1万件の相談を受けてきましたが、個人間の心理的問題も確かにありますが、経済や社会の仕組み自体に問題の本質があるのでは?と思うこともたくさんありました。

これだけ頭の良い生き物が自分たちが作った仕組みの中で身動きがとれない事態になっています。

しかしそんな事を否定的に捉えていると経済活動や生活を上手く行うことができなくなることもあります。

ですのでこの仕組みの中でいかに上手く生きていくかに注力することになるのですが、なんとも滑稽で虚しくなることもあります。

私たち人類が協力して上手く分配し、適切な協力と競争を行い、資源を大切にすればいいのですが、言葉で言うのは簡単で、被害がなくその方向へ移行することの難しさは想像以上です。

しかしながら理想を持つことは大切だと思います。

みんなの資産や生活、労働に余裕があれば、余裕のある心が生まれ、悩みやストレス、心理的な問題も大幅に減るのではないでしょうか。

もしこの仕事が必要なくなれば、私は快く転職いたします。


★日本の取り組みについて詳しくはこちらでご覧下さい。

SDGsアクションプラン2020


記事監修
公認心理師 白石

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